2020年2月21日付で9製品について、適応追加などの一部変更承認が行われています。
今回承認されたのは、2020年1月27日の薬食審・医薬品第一部会と1月29日の薬食審・医薬品第二部会で承認了承されたものの一部と報告品目として挙げられたものです。
- 1 令和2年2月21日付承認一覧(一変承認)
- 1.1 アレセンサカプセル150mg:適応追加「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫」
- 1.2 オプジーボ点滴静注:適応追加「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん」
- 1.3 オレンシア:適応変更「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
- 1.4 ネオーラル内用液:適応追加「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」
- 1.5 ピリヴィジェン10%点滴静注:適応追加「無又は低ガンマグロブリン血症」
- 1.6 モディオダール錠:適応追加「特発性過眠症」
- 1.7 リツキサン点滴静注:適応追加「後天性血栓性血小板減少性紫斑病」
- 1.8 レブラミドカプセル:適応追加「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫」
- 1.9 ロズリートレクカプセル:適応追加「ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」
令和2年2月21日付承認一覧(一変承認)
今回承認されたのは以下の内容です。
一変承認(2019.12.20)
医薬品名 | 承認内容 |
---|---|
アレセンサカプセル | 再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫 |
オプジーボ点滴静注 | がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん |
オレンシア点滴静注用 | 既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) |
オレンシア皮下注 | 既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) |
ネオーラル内用液10% | 川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合) |
ピリヴィジェン10%点滴静注 | 無又は低ガンマグロブリン血症 |
モディオダール錠 | 特発性過眠症に伴う日中の過度の眠気 |
リツキサン点滴静注 | 後天性血栓性血小板減少性紫斑病 |
レブラミドカプセル | 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫 |
ロズリートレクカプセル | ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
アレセンサカプセル150mg:適応追加「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
---|---|
医薬品名 | アレセンサカプセル150mg |
成分名 | アレクチニブ塩酸塩 |
申請者 | 中外製薬 |
追加される効能・効果 | 再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫 |
追加前の効能・効果 | ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 |
指定等 | 希少疾病用医薬品 |
海外承認 | なし(2019年11月) |
審議 | 2020年1月29日 薬食審第二部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- アレセンサ、再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫に対する適応追加の承認を取得
- アレセンサカプセル 150mg 使用上の注意等改訂のお知らせ
- アレセンサカプセル150mg 効能・効果 用法・用量追加のご案内
- ALK阻害剤「アレセンサ」 再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫に対する効能・効果追加の承認申請について
未分化大細胞リンパ腫
未分化大細胞型リンパ腫は悪性リンパ腫の一種です。
非ホジキンリンパ腫のうち、中悪性度に分類される末梢性T細胞リンパ腫の一型です。
未分化大細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫:ALCL*1
CD30、EMA陽性という特徴をもつ大型のリンパ球系細胞が増殖するリンパ腫。
ALK融合遺伝子(腫瘍細胞内での遺伝子組換え)の有無などの特徴から以下のように分類される。
- ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymhoma, ALK positive)
- ALK陰性未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymhoma, ALK negative)
- 原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患(Primary cutaneous CD30 positive T-cell lymphoproliferative disdorders)
- 原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(pcALCL*2)
- リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)
アレセンサ(アレクチニブ)の作用機序
アレクチニブは第二世代ALK阻害薬です。
ALK融合タンパク質を特異的に阻害することでALK陽性腫瘍の増殖を抑制、アポトーシスを引き起こします。
ALK遺伝子は細胞増殖に関わるチロシンキナーゼの一種である未分化リンパ腫キナーゼ(ALK*3)を発現する遺伝子です。
通常、細胞膜に発現しているALKに増殖因子が結合、活性化することで、シグナル伝達が核に伝達され、癌細胞の増殖が促されます。
ALK遺伝子が他の遺伝子と融合してできるALK融合遺伝子はALK融合タンパク質(EML4-ALK融合キナーゼ)を発現します。
ALK融合タンパクは増殖因子がなしで活性化し、常にシグナル伝達が核に伝達している状態になってしまい、癌細胞の増殖が促進されてしまいます。
ALK阻害薬であるアレクチニブはALK融合タンパクに高選択的に結合することで、ALK融合タンパクにATPが結合、活性化するのを防ぐことでALK陽性腫瘍の増殖を抑制します。
オプジーボ点滴静注:適応追加「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん」、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん」
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承認の種類 | 新効能医薬品 |
---|---|
医薬品名 | オプジーボ点滴静注20mg オプジーボ点滴静注100mg オプジーボ点滴静注240mg |
成分名 | ニボルマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | 小野薬品 |
追加される効能・効果 | ①がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん ②がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がん |
追加前の効能・効果 | 悪性黒色腫 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌 再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫 再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌 がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌 がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫 |
指定等 | 食道がん:優先審査品目 |
海外承認 | MSI-Highを有する結腸・直腸がん:アメリカ(2017年7月) 食道がん:なし(2019年10月) |
審議 | 2020年1月29日 薬食審第二部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- オプジーボ®点滴静注の「根治切除不能な進行・再発の食道癌」および「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」に対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得
- オプジーボ(一般名:ニボルマブ)が、食道がん患者を対象とした第III相ATTRACTION-3試験において、化学療法と比較して、統計学的に有意な全生存期間のベネフィットを示した結果を2019年ESMOで発表
- オプジーボ®点滴静注(一般名:ニボルマブ)、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんに対する効能・効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請
オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序
ニボルマブはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(免疫チェックポイント阻害薬)です。
本庶佑先生とジェームズ・P・アリソン先生がノーベル生理学賞(免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用)を受賞した研究を基に開発された薬剤です。
癌細胞が持つ免疫反応を回避する機能を阻害することで効果を発揮します。
活性化された免疫細胞(T細胞やB細胞)の表面には、PD-1*4と呼ばれる、免疫細胞のアポトーシス(細胞自己死)に拘わる分子が存在しています。
PD-1は免疫のブレーキ役(免疫チェックポイント)として免疫応答を調節しています。
また、PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)とて発見されたのがPD-L1とPD-L2です。
PD-1にPD-L1が結合すると、免疫細胞としての反応が抑制されてしまいます。
がん細胞は自身の表面にPD-L1を発現させることで、免疫反応による攻撃を回避します。
オプジーボの有効成分であるニボルマブはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体です。
ニボルマブはPD-1の細胞外領域(PD-1リガンド結合領域)に結合することで、PD-1とPD-L1の結合を阻害します。
その結果、免疫反応にかかっていたブレーキが解除され、がんを抗原とする抗原抗体反応を増強、悪性腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。
免疫チェックポイント阻害薬と高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)
今回、オプジーボに追加される適応のうち、「治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」について説明します。
マイクロサテライトとはゲノム上に存在する反復配列のうち、数塩基単位の配列の繰り返し(マイクロサテライトリピート)部分を指します。
細胞分裂に伴う遺伝子複製では一定の確率でエラーが起こり、異なる塩基配列の遺伝子が複製(変異)されてしまいます。
単純な塩基配列が繰り返されるマイクロサテライト部分は特にエラーが生じやすくなっています。
例えばマイクロサテライトの繰り返し回数が10回のものがあるとして、エラーが生じることで11回になったり9回になってしまったりします。
通常の細胞であればこういったエラーが生じても修復する機能(ミスマッチ修復機能)が存在するのですが、一部の癌細胞では修復機能が欠損しており、異なる反復回数のマイクロサテライトが増えてしまいます。
こういった状態を「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High*5)」と言います。
MSI-Highが見られるということはミスマッチ修復機能が欠損している(DNAミスマッチ修復機能欠損:dMMR*6)ということなので癌細胞の遺伝子全体で変異が起こりやすくなっています。
変異によって生じたタンパク質は免疫反応のターゲットとなる腫瘍特異抗原を作りやすくします。
その結果、T細胞などの免疫細胞は(MSI-Highの)癌細胞を認識しやすくなっているため、ニボルマブなどの抗PD-1抗体が抗腫瘍効果を発揮すると考えられます。
ちなみに、切除不能の結腸・直腸がん患者のうちMSI-Highを持つ割合は約5%と言われており、標準治療のフッ化ピリミジン系抗がん剤(ゼローダ、ティーエスワンなど)を含む化学療法の有効性が乏しいことが報告されています。
MSI-Highをターゲットとする免疫チェックポイント阻害薬は今回のオプジーボで2剤目です。
同じヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)は2018年12月21日により広い範囲の適応として「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を取得しています。
キイトルーダはMSI-Highが確認されればがん種横断的に使用できます。
免疫チェックポイント阻害薬と食道癌
食道がんに対する適応を有する免疫チェックポイント阻害薬はオプジーボが初めてです。
オプジーボは化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS*7)の有意な延長を示し、死亡リスクを 23%低減しています。(ATTRACTION-3試験:Kato K, et al.: Lancet Oncol. 20(11): 1506-1517, 2019)
日本では、シスプラチンと5-FUの効果がなくなった食道がんの二次治療において明確な生存期間の延長効果を示した薬剤がないため、オプジーボが標準治療になるのではないかと期待されています。
補足:免疫チェックポイント阻害薬の各剤の適応
現時点で承認されている免疫チェックポイント阻害薬の適応についてまとめます。
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作用機序 | 製品名 | 成分名 | 適応 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
悪性黒色腫 | 非小細胞肺がん | 小細胞肺がん | 腎細胞がん | ホジキンリンパ腫 | 頭頚部がん | 悪性胸膜中皮腫 | 結腸・直腸がん | 食道がん | 尿路上皮がん | MSI-High固形がん | メルケル細胞がん | TN乳がん*8 | |||
抗PD-1抗体 | オプジーボ | ニボルマブ | ヤーボイ併用 単独:術後補助療法 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | MSI-High | ◯ | – | 結腸・直腸がん | – | – | |
キイトルーダ | ペムブロリズマブ | 術後補助療法 | 化学療法併用 単剤:PD-L1発現 | – | アキシチニブ併用 | ◯ | ◯ | – | – | – | ◯ | ◯ | – | – | |
抗PD-L1抗体 | バベンチオ | アベルマブ | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – | ◯ | – |
テセントリク | アテゾリズマブ | 単剤:2次治療 化学療法併用:1次治療 | 進展型 | – | – | – | – | – | – | – | – | – | ◯ | ||
イミフィンジ | デュルバルマブ | – | ステージ3 | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – | |
抗CTLA-4抗体 | ヤーボイ | イピリムマブ | ◯ (オプジーボ併用) | – | オプジーボ併用 | – | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
※2020.2.21時点
オレンシア:適応変更「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
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承認の種類 | 新効能医薬品 |
---|---|
医薬品名 | オレンシア点滴静注用250mg(①) オレンシア皮下注125mgシリンジ1mL(②) オレンシア皮下注125mgオートインジェクター1mL(②) |
成分名 | アバタセプト(遺伝子組換え) |
申請者 | ブリストル・マイヤーズスクイブ |
追加される効能・効果 | ①既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 ②既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) |
追加前の効能・効果 | ①既存治療で効果不十分な下記疾患 関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎 ②関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る) |
指定等 | なし |
海外承認 | 点滴静注用:アメリカ(2005年12月)、EU(2007年5月) 皮下注:アメリカ(2011年7月)、EU(2012年7月) |
審議 | 2020年1月29日 薬食審第二部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- T細胞選択的共刺激調節剤「オレンシア®点滴静注用250mg」「オレンシア®皮下注125mgシリンジ1mL/オートインジェクター1mL」関節リウマチの効能又は効果に「関節の構造的損傷の防止」に関する記載を追加する製造販売承認事項一部変更承認取得のお知らせ
- T細胞選択的共刺激調節剤「オレンシア®点滴静注用250mg」、「オレンシア®皮下注125mg シリンジ1mL」および「オレンシア®皮下注125mg オートインジェクター1mL」の関節リウマチにおける関節の構造的損傷の防止に係る製造販売承認事項一部変更承認申請のお知らせ
T細胞活性化のメカニズム
T細胞は抗原提示細胞から抗原刺激を受けることで活性化されます。
抗原刺激を受けたT細胞にはCD28が発現し、そこに抗原提示細胞のCD80/86が結合することで、共刺激シグナルの伝達が開始されます。
抗原刺激シグナルと共刺激シグナルが揃うことでT細胞は活性化し、共刺激シグナルがないとT細胞はアポトーシスに向かいます。
抗原提示がない場合、T細胞にはCD28と同じくCD80/86をリガンドとするCTLA-4が発現しており、CD80/86とCTLA-4が結合することで負のシグナル伝達が起こり、T細胞は抑制されています。
オレンシア(アバタセプト)の作用機序
アバタセプトはT細胞選択的共刺激調節薬と呼ばれています。
ヒトCTLA-4受容体とヒトIgG抗体のFc領域を結合した製剤です。
CTLA-4はCD28よりもCD80/86に対する親和性が高いため、アバタセプトはT細胞の活性化を競合的に阻害します。
今回追加される「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」の効能・効果を持つ生物製剤にはアクテムラ、エンブレル、シムジア、シンポニー、スマイラフ、ヒュミラ、レミケードがあります。
ネオーラル内用液:適応追加「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
---|---|
医薬品名 | ネオーラル内用液10% |
成分名 | シクロスポリン |
申請者 | ノバルティスファーマ |
追加される効能・効果 | 川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合) |
追加前の効能・効果 |
|
指定等 | なし |
海外承認 | なし(2019年10月時点) |
審議 | 2020年1月27日 薬食審第一部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
※ネオーラルカプセル、サンディミュン内用液10%、サンディミュン点滴静注用250mgへの適応追加はなし
ステロイド以外で川崎病に使える初の免疫抑制剤(カルニシニューリンインヒビター)です。
ピリヴィジェン10%点滴静注:適応追加「無又は低ガンマグロブリン血症」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | ピリヴィジェン10%点滴静注5g/50mL ピリヴィジェン10%点滴静注10g/100mL ピリヴィジェン10%点滴静注20g/200mL |
成分名 | pH4処理酸性人免疫グロブリン |
申請者 | CSLベーリング |
追加される効能・効果 | 無又は低ガンマグロブリン血症 |
追加前の効能・効果 | 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合) |
指定等 | なし |
海外承認 | アメリカ、EUなど(2019年1月) |
審議 | 2020年1月29日 薬食審第二部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
無又は低ガンマグロブリン血症
免疫グロブリンGが不足していたり作られない状態を免疫不全と言い、以下の2つに分類されます。
- 原発性免疫不全症候群(PID*9):先天性の免疫異常により免疫機能が低下した状態
- 続発性免疫不全症候群(SID*10):癌、HIVなどのウイルス感染、放射線照射、抗悪性腫瘍剤投与、免疫抑制剤投与などにより免疫機能が低下した状態
そのうち、体内で免疫グロブリンGが全く作られない状態を無ガンマグロブリン血症、少しだけ作られる場合や何らかの原因により免疫グロブリンGが低下している場合を低ガンマグロブリン血症と呼びます。
モディオダール錠:適応追加「特発性過眠症」
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承認の種類 | 新効能医薬品 |
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医薬品名 | モディオダール錠100mg |
成分名 | モダフィニル |
申請者 | アルフレッサファーマ |
追加される効能・効果 | 特発性過眠症に伴う日中の過度の眠気 |
追加前の効能・効果 | 下記疾患に伴う日中の過度の眠気
|
指定等 | 希少疾病用医薬品 第一種向精神薬 |
海外承認 | メキシコのみ(2018年10月時点) |
審議 | 2020年1月27日 薬食審第一部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
特発性過眠症
睡眠は不足していないはずなのに日常生活に支障をきたすほどの眠気が日中に現れる病気です。
「特発性」という名前からもわかるように現在のところ原因不明の疾患ですが、遺伝的背景により起こる疾患と考えられています。
日中に強い眠気に襲われる過眠症と言えばナルコレプシーが有名ですが、ナルコレプシーと特発性過眠症は別の疾患に分類されます。
ナルコレプシーはレム睡眠に異常を起こす疾患であるため、情動性脱力発作を主とするREM関連症状が特徴です。
レム関連症状(REM睡眠関連症状)
- 入眠時幻覚
- 金縛り
- 情動脱力発作(カタプレキシー):感情の昂りに合わせて体が脱力してしまう症状
ナルコレプシーはオレキシン神経系の異常が原因であるため、レム睡眠に関連する症状が起こります。
また、睡眠発作が起きた時に必要とする睡眠時間にも違いがあり、以下のような傾向がみられます。
- ナルコレプシー:昼間の眠気は比較的短時間の睡眠で改善するがしばらくすると再び眠気に襲われる
- 特発性過眠症:短時間の睡眠では眠気が十分に改善されず長時間の睡眠を必要とする
このように特発性過眠症はナルコレプシーとは異なる疾患ではありますが、傾眠疾患という点では同じです。
そのため、適応外ではありますが特発性過眠症に使用されているケースもあったようです。
ナルコレプシーのみではなく睡眠時無呼吸症候群(SAS*11)の場合でも「日中の眠気をとる」効果が期待できるわけですから、特発性過眠症に対しても効果を発揮できるのは当然です。
モディオダール(モダフィニル)による覚醒作用
モダフィニルの作用機序は完全には解明されてはいませんが、その研究はかなり進んでおり、解説している論文も存在しています。
モダフィニルの作用機序
- オレキシン神経系を介したヒスタミン放出作用
- 中枢アドレナリンα1受容体に対するアゴニスト作用
- 神経末端におけるノルアドレナリン再取り込み抑制作用
- 局所におけるGABA神経伝達の抑制作用
- ドパミントランスポーター(DAT*12)抑制によるドパミン再取り込み阻害作用
アンフェタミン系薬剤の刺激興奮作用とは異なる機序であるため、報酬系に対する影響は少なく、依存性は少ないと言われてはいますが、DATに作用するのであれば依存性のリスクは除去できません。
承認条件
以下のような承認条件がついた上での承認了承となっています。
- 承認条件:「睡眠障害の診断、治療に精通した医師・医療機関のもとでのみ処方され、薬局では調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう必要な措置を講じること」
モダフィニル製剤(モディオダール錠100mg)の使用に 当たっての留意事項について
これまではベタナミン(ペモリン、「ナルコレプシーの近縁傾眠疾患」)が保険適応上使用可能ではありましたが、「特発性過眠症」そのものに対する適応を持つ薬剤は初になります。
リツキサン点滴静注:適応追加「後天性血栓性血小板減少性紫斑病」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | リツキサン点滴静注100mg リツキサン点滴静注500mg |
成分名 | リツキシマブ(遺伝子組換え) |
申請者 | 全薬工業 |
追加される効能・効果 | 後天性血栓性血小板減少性紫斑病 |
追加前の効能・効果 |
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指定等 | 事前評価済公知申請(2019年8月1日薬食審第一部会) |
海外承認 | なし(2019年10月時点) |
審議 | 2020年1月27日 薬食審第一部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- 抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®」 後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対する適応追加の承認取得について
- リツキサン点滴静注100mg、500mg 使用上の注意等改訂のお知らせ
- リツキサン点滴静注100mg、500mg 効能・効果 用法・用量追加のご案内
日本血液学会から、厚労省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して開発要望が提出され、公知申請の該当性に係る報告書を元に2019年8月、薬食審第一部会で事前評価が行われた結果、申請が妥当と判断されていました。
事前評価済公知申請とは?
海外で承認されている適応について「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に対して開発の要望があった適応外薬のうち、薬事承認の申請について公知申請が適当とされたもので、その後、薬事・食品衛生審議会において公知申請の事前評価が終了したものについては、薬事承認上は適応外であっても、保険適用の対象となります。
参考:公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について
レブラミドカプセル:適応追加「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
---|---|
医薬品名 | レブラミドカプセル2.5mg レブラミドカプセル5mg |
成分名 | レナリドミド水和物 |
申請者 | セルジーン |
追加される効能・効果 | 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫 |
追加前の効能・効果 | 多発性骨髄腫 5番染色体長腕部欠失を伴う骨髄異形成症候群 |
指定等 | なし |
海外承認 | アメリカのみ(2019年10月) 濾胞性リンパ腫:EU(2019年11月) |
審議 | 2020年1月29日 薬食審第二部会 |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- 抗造血器悪性腫瘍剤レブラミド®、リツキシマブとの併用療法における再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫に対する効能・効果及び用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得
- レナリドミド、再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対する効能・効果及び用法・用量に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請について
- 再発又は難治性の低悪性度リンパ腫患者さんを対象とした レナリドミドとリツキシマブの併用療法 (R²群)の結果をASH2018にて発表
濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫はどちらも悪性リンパ腫です。
リンパ球の中のB細胞から発生するB細胞性非ホジキンリンパ腫に分類されます。
※非ホジキンリンパ腫:リード・シュテルンベルグ細胞やホジキン細胞が見られないリンパ腫
一般的にはいずれも悪性度は高くないとされています。
濾胞性リンパ腫
濾胞性リンパ腫:FL*13
リンパ節の中に癌細胞がたくさん固まってできる球状の腫瘍性濾胞が見られるのが特徴で、それが増殖していきます。
濾胞中の癌細胞は、細胞表面マーカー検査でCD20、CD10が陽性、高い割合でBCL2遺伝子を発現しているのが特徴です。
辺縁帯リンパ腫
辺縁帯B細胞リンパ腫:MZL*14
リンパ組織の特定の領域(辺縁帯)から発生する悪性リンパ腫の一種です。
発生した場所 によって以下の3種類に分けられます。
- 脾辺縁帯リンパ腫:脾臓に発生
- 節性辺縁帯リンパ腫:リンパ節に発生
- 節外性辺縁帯リンパ腫:他のリンパ組織に発生
※節外性辺縁帯リンパ腫はMALT*15(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫と同義
レブラミド(レナリドミド)の作用機序
レナリドミドは経口の免疫調節薬(IMiDsR*16)です。
サイトカイン産生調節作用、造血器腫瘍細胞に対する増殖抑制作用、血管新生阻害作用等の薬理作用により効果を発揮すると考えられています。
今回追加される「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫及び辺縁帯リンパ腫」に対する適応ではリツキシマブと併用して用いるようになっています。
ロズリートレクカプセル:適応追加「ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」
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承認の種類 | 新効能・新用量医薬品 |
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医薬品名 | ロズリートレクカプセル100mg ロズリートレクカプセル200mg |
成分名 | エヌトレクチニブ |
申請者 | 中外製薬 |
追加される効能・効果 | ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
追加前の効能・効果 | NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌 |
指定等 | なし |
海外承認 | アメリカのみ(2019年10月) |
承認日 | 2020年2月21日 |
参考資料
- ロズリートレク、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対する適応追加の承認を取得
- ロズリートレクカプセル100mg、200mg 使用上の注意等改訂のお知らせ
- ロズリートレクカプセル100mg、200mg 効能・効果 用法・用量追加のご案内
- FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル、ロズリートレクのROS1肺がんのコンパニオン診断として承認を取得
- ロシュ社が開発中のentrectinibはROS1陽性の肺がん患者さんに対し2年以上にわたる持続的な効果を示した
ROS1融合遺伝子
ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんのおよそ1%に見られる遺伝子変異です。
ROS1遺伝子が他の遺伝子と融合してできたROS1融合遺伝子から生成されるROS1融合タンパクは、増殖因子による活性化を必要とせず、常に癌細胞を増殖させるシグナルをオンにしてしまいます。
ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の作用機序
エヌトレクチニブはROS1(c-rosがん遺伝子1)とTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを選択的に阻害するチロシンキナーゼ阻害薬です。
ROS1とTRKキナーゼ活性を阻害することで、ROS1融合遺伝子もしくはNTRK融合遺伝子を持つがん細胞の増殖を抑制します。
2019年12月に「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」はロズリートレクのROS1肺がんのコンパニオン診断として承認を取得済みです。
コンパニオン診断とは?
分子標的薬は特定の遺伝子異常をターゲットとする薬剤であるため、投与前に遺伝子診断を行う必要があります。
ある薬剤を使用するために必要となる遺伝子診断をその薬剤の「コンパニオン診断」と呼びます。
- companion:仲間、友、相手役など
*1:Anaplastic Large Cell Lymphoma
*2:primary cutaneous Anaplastic Large Cell Lymphoma
*3:Anaplastic Lymphoma Kinase
*4:Programmed cell death-1
*5:MicroSatellite Instability-High frequency
*6:deficient MisMatch Repair
*7:Overall Survival
*8:トリプルネガティブ乳がん
*9:Primary ImmunoDeficiency disease
*10:Secondary ImmunoDeficiency disease
*11:Sleep Apnea Syndrome
*12:DopAmine Transporter
*13:Follicular Lymphoma
*14:Marginal Zone b-cell Lymphoma
*15:Mucosa Associated Lymphoid Tissue
*16:immunomodulatory drugs