この記事は2021年3月3日に作成した記事です。
2021年3月29日には医薬品製造販売業としての業務を再開、2021年4月6日より日医工は富山第一工場での製造を再開し、これにて業務停止の行政処分は完了しています。
富山県が日医工に対して営業停止の処分を行う!?
twitter上でその情報を目撃した際の感想は「やっぱり・・・」。
実際、twitter上でも同様の感想が多く述べられていました。
みなさんはどうですか?「やっぱり」と思った人もいれば、なんで?と思った人もいるかもしれません。
この記事では2020年4月から始まった日医工の自主回収・出荷停止問題についてまとめます。
人的被害こそ出ていないものの、小林化工のイトラコナゾール自主回収と並ぶ2020年〜2021年2大ジェネリック不祥事の一つと言える日医工問題について、この記事を読んでもらえれば理解していただけると思います。
日医工からの案内が出ています。もし、日医工のお薬を服用するのに不安がある方は下記のリンクをご一読ください。
日医工のおくすりを服用されている患者様へ(2021年3月10日)
この件について業界紙のみではなくテレビ等で一般向けの報道も行われており、不安に思われている方も多いとは思います。
ですが、現時点で服用した方の健康被害を引き起こすような医薬品が出荷されてしまったという情報はないので過去に飲んだことがあるからと過剰に不安になる必要はありませんので、ご安心ください。
また、現在市場に流通している日医工で製造している製品について、安全性・有効性に問題がないことを確認できていることも発表されています。
むしろ現在飲んでいる薬を自己判断で中止してしまうことの方が健康への影響を引き起こしかねません。
どうしても不安な場合は薬をもらっている医療機関に相談するようにしてください。
日医工の行政処分
2021年3月3日、富山県は日医工に対して行政処分を行いました。(すでに終了しています)
https://www.nichiiko.co.jp/company/press/detail/5087/1301/4541_20210303_01.pdf
行政処分の内容は以下のとおりです。
- 医薬品製造業(富山第一工場)の業務の停止:32日間(2021年3月5日(金)〜2021年4月5日(月))
- 医薬品製造販売業の業務の停止:24日間(2021年3月5日(金)〜2021年3月28日(日))
処分理由を見ると今回の行政処分の深刻さがわかります。
- 医薬品製造業の処分
- 品質試験不適合品を製造販売承認書と異なる製造方法で適合品となるよう処理した。
- 品質試験等における不適合の結果について、適切な措置を実施しなかった。
- 医薬品製造管理者が、医薬品の適切な製造管理及び品質管理を行うよう管理監督しなかった。
- 医薬品製造販売業の処分
- 製品の適正な製造販売を行うために必要な配慮を怠り、かつ、製造販売しようとする製品の品質管理を適正に行わなかった。
- 製造販売承認書の内容と異なる方法で製造された医薬品を製造販売した。
- 医薬品等総括製造販売責任者は、必要な品質管理業務を実施しなかった。
行政処分による影響
今回の行政処分により影響を受ける具体的な品目(富山第一工場で製造されている医薬品)は公開されていませんが、おおまかな影響については「医薬品の供給状況について(2021年3月3日」として公開されています。
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/supply_status/data/20210303cl02_01.pdf
これを元に供給状況について簡単にまとめてみます。
- 供給可能なもの
- すでに医薬品卸に出荷されているもの
- 日医工物流センターにある在庫製品(2021年3月4日以前に市場出荷判定を完了しているもの)
※出荷再開まで一部製品の出荷調整の可能性
※供給制限製品については日医工ホームページで公開予定
※業務停止命令除外品目に該当する製品がある場合も別途公表予定 - 富山第一工場以外の製造所で製造し、他社が製造販売承認を取得している医薬品:製造可能、出荷可能
- 供給できないもの
- 富山第一工場で製造し ている医薬品:製造停止、出荷停止(2021年3月5日〜2021年4月5日)
- 富山第一工場以外の製造所で製造している医薬品:製造可能、出荷停止(2021年3月5日〜2021年3月28日)
富山第一工場の業務停止もですが、日医工としての製造販売業の停止(24日間)の方がダメージが深刻そうですね・・・。
日医工としての全製品が製造所から出荷できなくなるわけですから・・・。
(逆に言えば日医工サノフィや他の関連会社が製造販売元のものは出荷可能ということです)
日医工が起こした事件の衝撃
日医工という会社、みなさんご存知かと思いますが、2020年の統合報告書を見ればそのすごさがわかります。
http://nichiiko-ir.irbridge.com/ja/Library/IntegratedReport/main/0/teaserItems1/0/linkList/0/link/IntegratedReport2020_2.pdf
- 国内ジェネリック医薬品売上高1位
2020年3月期 売上高1,900億円 - 国内品目数1位
2020年3月末時点 1,218品目(海外288品目) - 全国病院・調剤薬局 カバー率97%(2020年3月末時点)
- 国内安定供給体制:185億錠(2020年3月末時点)
これだけの大手が2020年4月〜2021年1月に引き起こした自主回収は50成分、67品目数(重複を削除しなければ75品目)にもなり、加えて出荷停止も多く発生しています。
自主回収・出荷停止による多方面への影響
日医工に限った話ではないのですが、ある医薬品が自主回収・出荷停止になった場合、その医薬品が使えなくなるだけ・・・ではすまないんです。
他メーカー製品の出荷調整
ある医薬品が自主回収・出荷停止となり、一時的に市場から消えてしまった場合、当然、医療機関は他メーカーの同成分の医薬品を使用するしかありません。
その場合、どのメーカーに変更するかの検討を行い、在庫次第、患者さんに説明の上、順次切り替えていくのですが、近年では多くの場合、これがすんなりいきません。
医薬品の製造は年間の使用予測に基づいて計画的に行われています。
そこに、急に他メーカーからの切り替えで発注が急激に増えてしまうと生産量が追いつかなくなってしまいます。
生産数が間に合わなくなってしまうと、本来そのメーカーの医薬品を購入していた医療機関にその医薬品を供給できなくなってしまい、そうなると、元々そのメーカーの医薬品を服用していた患者さんが服用を継続できなくなってします。
そのような自体を避けるため、急激に発注数が増加した場合、メーカーは出荷調整(出荷数・出荷先制限)を行います。
つまり、各医療機関の過去の実績により出荷数を調整し、新規取引先への出荷は断るという形です。
過去に実績がある医療機関でも、新たに使用開始する患者さんが増えた場合など、使用量が増えた場合は在庫数が足りなくなってしまう可能性があるので、医薬品が出荷調整になった場合、医療機関は普段以上に医薬品の在庫数に気を配る必要があります。
ぺんぎん薬剤師出荷調整になりそうだと思って予め多めに発注する医療機関が増えることも出荷調整の原因になっちゃうんだよね・・・。気持ちはわかるけど、みんなで我慢!
医療費の問題
今回のように後発医薬品の自主回収・出荷停止が行われ、他メーカーも出荷調整となってしまうと、元々後発医薬品を希望して、そのメーカーの医薬品を服用していた患者さんも先発医薬品を服用せざるを得ません。
医療費削減や自己負担軽減のために後発医薬品を選択していたはずなのに、メーカーの都合により出荷が再開するまでの期間は先発医薬品を服用せざるを得なくなってしまいます。
先発医薬品も出荷調整となってしまった場合は使用する医薬品の成分自体を変更しないといけなくなる場合もあります。
実際、2020〜2021年にかけては日医工だけでなく、小林化工の自主回収や業務停止処分、地震によるニプロの製造一時停止も重なってしまい、先発医薬品の供給も難しくなっている医薬品も存在します。(プランルカストなど)
医薬品卸への影響
今までは、メーカーが自主回収を発表すると、医薬品卸の担当MSさんが訪問し自主回収の手続きを行ってくれました。
医薬品卸には過去に出荷した医薬品の数だけでなく、ロット番号等も記録されているので自主回収対象品目がどの医療機関にどれくらい入庫されたか把握できているからです。
ですが、今回はあまりに自主回収が多く、医薬品卸さんも対応が間に合わないという状況が続いています。
正直、医薬品卸さんからすれば利益になる仕事ではないはずなのに、その対応に追われ、疲弊してしまっているのは、見ていてかなり辛いものがありました。
子ぺんぎん(ジェンツー)自主回収は当事者であるメーカーだけの問題ではなく、患者さんを含めたその医薬品の流通に関する全ての人の負担になってしまうんだよね・・・。
どの後発医薬品メーカーを選べばいい?
今回の日医工や小林化工のように自主回収が相次ぎ、行政処分まで行われ、それが世の中に報道されてしまうと、医療機関としては他のメーカーに変えることを検討する可能性が高まります。
患者さんも報道を見ている中、はっきりとそのメーカーが大丈夫と言えない限り、継続して使用するのが難しくなるケースがあるからです。
ですが、国内1位の日医工と4位の小林化工が相次いで問題を起こしてしまうと、他のメーカーであれば大丈夫なのかどうか不安になってしまう状態です。
また、製造委託という形で表には出ていないが他社の医薬品を製造しているケースがあることも存在し、どのメーカーを選べばいいのか正直、迷う状態というのが現状です。
後発医薬品に対する不信感
このような事件が起き、報道されると、心配なのは後発医薬品に対する国民の不信感が増えてしまうことです。
事件を起こした日医工や小林化工に対する不信感が出るのは仕方がないことなのですが、後発医薬品全体に対する不信感を抱かれるのは困りますし、実際、他のメーカーではこんなことはないはずです。(ですよね?)
また、後発医薬品か先発医薬品かで選ぶのも違うのではないかと思います。
実際、日医工は長期収載品等の先発医薬品の製造販売も行っています。
後発医薬品じゃなくても日医工が製造している医薬品もあるので、単純にジェネリックを避けて先発品を選んだ結果、その薬が日医工製造のものだったという可能性もあります。
長期収載品とは?
特許切れもしくは再審査期間の終了により、同じ適応を持つ後発医薬品が発売されている先発医薬品で、長期間薬価収載されている医薬品のことです。
医薬品は発売から時間が経過すると薬価改定により薬価が安くなっていき、長期収載品については後発医薬品の置き換え率に応じて大きく薬価が下げられています。
採算が合わなくなった長期収載品は先発医薬品メーカーから後発医薬品メーカーに承継されて販売が継続されたり、場合によっては製造中止となってしまうこともあります。
ぺんぎん薬剤師長期収載品は薬価は安くなっており、使用量も減っているかもしれないけれど、一定のニーズがあるから収載され続けている医薬品です。その維持に後発医薬品メーカーが貢献している側面もあるんです。
日医工が製造販売元の先発医薬品やそれに準ずる製品
日医工が製造販売元の医薬品の中で先発医薬品やそれに準ずる有名な医薬品を列挙してみます。(ざっとまとめたので漏れはあると思います)
- グラマリール細粒10%
グラマリール錠25mg/50mg - クリアミン配合錠S0.5/A1.0
- クリノリル錠50/100
- ジベトス錠50mg
- ステロネマ注腸1.5mg/3mg
- セキコデ配合シロップ
- チオデロンカプセル5mg
- デカドロンエリキシル0.01%
デカドロン錠0.5mg/4mg - ドグマチールカプセル50mg
ドグマチール筋注50mg/100mg
ドグマチール細粒10%/50%
ドグマチール錠50mg/100mg/200mg - ドパコール配合錠L50/100
- トリプタノール錠10/25
- ドルコール錠250mg
- ノフロ点眼液0.3%
- フェルムカプセル100mg
- プリンペラン細粒2%/錠5/シロップ0.1%/注射液10mg
- プロチアデン錠25
- ペリアクチン散1%/錠4mg/シロップ0.04%
- ペングッド錠250mg
- ユニコン錠100/200/400
日医工けっこう色々扱っていますね・・・。
心配していたビーソフテンは帝國製薬が製造販売元。
アモバン、セロクラール、ラシックスは製造販売元はサノフィのままなんですね。
後発医薬品の使用を継続していくために
後発医薬品は医療費削減のために必要なものですし、先発医薬品の数年後に承認される医薬品ということで改良が加えられているものも多く存在するため、今後も使用を促進していきたいものです。
ですが、急激な使用量増加による工場規模拡大や薬価削減によるコストカットによる現場の影響が今回の問題につながっているのかもしれません。
今回も問題を日医工、小林化工のみの問題とするのではなく、後発医薬品メーカーだけの問題とするのではなく、日本の医療全体の問題として、徹底的な見直しと現実に即したルールづくり、コストの見直し等をおこなっていかなければないのではないかと思います。
今後の業界、行政の対応を見守っていきたいと思います。
2020〜2021の日医工を振り返る
ここからは今回の行政処分に至る、2020〜2021年の日医工に関するニュースを振り返ってみたいと思います。

2020年4月に始まった日医工の自主回収&出荷停止ラッシュ。
年表にまとめてみましたが、すごい・・・ごちゃごちゃだ・・・。
毎月のように公表される自主回収や出荷停止に対応するため、現場はとても苦労しました。
小林化工やニプロの問題もあったため、採用品の変更や患者さんへの説明に薬剤師は苦労しましたが、医薬品卸さんも納品先の特定などかなり大変だったようです。
この大変な時期に武田テバから日医工への承継も行われ、ただでさえ大変なところにさわせて対応する羽目に・・・。
今回の業務停止処分がくだされるまでの流れを時系列に沿ってまとめておいたのでこれを機に公開と思います。
①2020年4月7日:12成分15品目の自主回収(クラスⅡ)
2020年4月7日に日医工が発表した12成分15品目のクラスII自主回収。
これが一連の事件の始まりでした。
2017年12月に富山第一工場に経口製剤棟の「Obelisk棟」を竣工したのをきっかけに、製造品の安定性モニタリングを実施。
その結果、一部製品に承認規格に見合わないものが発覚し、自主回収となった。
(ミクスonlineより)
自主回収の対象となった医薬品と回収理由を一覧表にまとめます。
子ぺんぎん(ジェンツー)12成分の自主回収!?見直しを行った結果だから悪いものを洗い出したってことかな?
ぺんぎん薬剤師いや・・・。本来、医薬品は有効期限内は問題ないように製造されているはずだから。それに、「実態と手順が異なった」って回収理由のものが3つもあるのが気になる・・・。
日医工の対応:富山第一工場の全製品調査実施
この自主回収を受け、外部機関を交え、富山第一工場における有効期限内全製品の調査が実施されています。
まさか、この後、続々と自主回収が行われることになるなんて・・・。
②2020年5月18日:8成分9品目の自主回収(クラスⅡ)
続いて5月18日には8成分9品目の自主回収が発表されました。
今回も富山第一工場で製造される医薬品が対象であることから、4月7日の自主回収を受けて実施された同工場での全製品調査の家庭で判明したものと思われます。
特に気になるのは4製品の回収理由となっている「承認書に記載のない工程を実施していた」というもの。
どのような工程変更があったかは定かではありませんが、小林化工の事件でも同様の内容が問題となっており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、出荷試験の記録に欠落のあった製品も存在しており、富山第一工場でどのような管理体制が敷かれていたのか非常に気になるところです。
子ぺんぎん(ジェンツー)さらに9品目追加されて合計24品目になっちゃった・・・。
ぺんぎん薬剤師「承認書に記載のない工程を実施、「出荷試験の書類に欠落があった」・・・。このあたり、管理体制の問題なので、今後もどんどん増えそうだよ。
日医工の対応:品質改善策の発表
今回の回収理由を見ると、「承諾書に記載のない工程を実施」、「出荷試験の書類に欠落があった」など、富山第一工場での管理体制にずさんな部分があったのではないかと考えてしまいます。
実際に、日医工はこの自主回収を受けて田村社長の役員報酬の返納、品質改善策の発表を行っています。また、田村会長はGE薬協の副会長を退任しています。
- 田村社長:役員報酬50%返納、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の副会長を退任
- 品質改善策:以下の5点に注力
- 4月に新設したGMP監査室のもとGMP遵守を徹底する
- 人的、試験機器、測定機器の増強を図る
- 人材育成および教育、品質管理体制の組織を見直す
- 7月をめどに新しい日医工グループの品質方針を策定、実施する
- データ・インティグリティの確保のため製造管理および品質管理システムを導入する
ぺんぎん薬剤師これくらいの危機感を持たないといけない問題だと思います。
これをきっかけに改善してくれればいいんだけど・・・。
2020年5月26日:東和薬品 メサラジン錠500mg「トーワ」の自主回収(クラスII)
5月26日、東和薬品はメサラジン錠500mg「トーワ」の自主回収を発表しました。
メサラジン錠500mg「トーワ」は日医工が販売している医薬品ではありませんが、東和薬品からの委託を受けて日医工が製造しています。
https://med.towayakuhin.co.jp/medical/product/fileloader.php?id=70009&t=4
子ぺんぎん(ジェンツー)何故か日医工のホームページには案内なし・・・。確かに製造販売元ではないけれど、自主回収の流れを考えると説明があってもいいんじゃないかなぁ・・・。
2020年7月30日:武田テバファーマの後発品事業の一部を買収すると発表
7月30日、日医工は2021年2月1日付で、武田テバの後発品486品目の製造販売と、岐阜県の高山工場とその従業員、同工場で受託製造している製品の委受託契約を承継することを発表しました。
日医工の買収は下記の2段階で行われます。
- 武田テバが新規子会社を設立
日医工に譲渡する事業はこの子会社に承継 - 日医工が上記の新会社の株式を買い取る
子会社の社名を「日医工岐阜工場株式会社」とする
ぺんぎん薬剤師大洋薬品工業+興和テバ→テバ→武田テバ→日医工。タイヨーを日医工が販売するようになるとは・・・。大洋薬品時代を知っているものとしては感慨深いものがあるなあ・・・。
③2020年7月31日:4成分4品目の自主回収(クラスⅡ)
7月31日、日医工は新たに4成分4品目の自主回収を発表しました。
またか・・・と思いましたが、3つの点滴静注についての自主回収の原因は日医工にはありません。
製造販売元の日医工が共和クリティケアが製造を委託しているソフトバッグ製剤です。
ですが、レバミピド顆粒については回収理由を見ても、ため息が出てしまいますね・・・。
ぺんぎん薬剤師安定性試験を行うために必要な試験検体の保管状況等に逸脱・・・。
子ぺんぎん(ジェンツー)他の製品の検体は大丈夫なの?安定性試験自体の信頼が・・・。
2020年9月8日:ブロチゾラム錠0.25mg「日医工」の一時出荷停止(溶出試験)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/o-20200908cI1.pdf
自主回収ではありませんが、実質同じですね。
「直近の製造ロットの溶出試験において今までと異なる傾向を示したため、出荷を停止」とのことです。
④2020年9月16日:2成分2品目を自主回収(クラスII)
9月16日、新たに2品目の自主回収を発表。
ぺんぎん薬剤師長期安定性試験・・・。
時間が経過しないと出てこない回収理由だけに、今後、他の薬剤でも長期安定性試験の自主回収が続きそうで怖いなあ。
2020年9月16日:メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「日医工」の自主回収(クラスI)
9月16日、メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「日医工」の自主回収(クラスI)が発表されました。
これについてはみなさん御存知の通り、NDMA検出のためです。
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/important/data/20200916cl1.pdf
また、メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「日医工」は日医工が製造販売元ではありますが、東和薬品に製造を委託している品目になります。
2020年10月20日:リシノプリル錠10mg「日医工」の一時出荷停止(溶出規格不適合)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/20201020cI2.pdf
またしても出荷停止。
「出荷判定前の製造ロットにおいて溶出規格に適合しない結果が得られたことにより、 供給が困難な状況であることから、一時供給を停止」とのことです。
子ぺんぎん(ジェンツー)本当、止まらないね・・・。
⑤2020年11月9日:6成分7品目の自主回収(クラスⅡ)
11月9日、6成分7品目の自主回収を発表。
気になることだらけですが、特に気になるのは、4月に自主回収が発表されていたランソプラゾールカプセル「日医工」の対象ロット追加。
半年以上経過してから対象ロットが追加って・・・。半年間も何やってたんですか?
ぺんぎん薬剤師他にも突っ込みたいことはたくさんありますが、もういいや・・・。
2020年12月4日:アンブロキソール塩酸塩徐放カプセル45mg「日医工」の一時出荷停止(溶出規格不適合)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/00810/information/20201204cI1.pdf
「溶出規格に適合していないロットがみとめられたため、一時供給を停止」とのことです。
子ぺんぎん(ジェンツー)ここまでの自主回収理由を見ていると管理体制がずさんだったと想像してしまう。今回のような製品の品質に関する自主回収も起こるべくして起きたのではないかな・・・。
⑥2020年12月9日:3成分3品目の自主回収(クラスⅡ)
ぺんぎん薬剤師う〜ん。一連の自主回収問題の中心には何があるんだろう・・・?このままだと、日医工の製品は採用できないよ・・・。
2020年12月17日:子会社エルメッドが小林化工製造委託品の一時出荷停止
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/20201215cI1.pdf
これは日医工の問題ではなく、製造委託先である小林化工の問題ですね。
12月4日に発覚したイトラコナゾール錠50mg「MEEK」へのリルマザホン塩酸塩水和物 混入を受けて、調査を行うために小林化工製造品目が出荷停止となりました。
関連記事
この記事で取り上げるのは抗真菌薬イトラコナゾール錠50「MEEK」の自主回収についてです。自主回収の対象となるのはあくまでもイトラコナゾール錠50「MEEK」のみで、先発品のイトリゾールをはじめとする他のイトラコナゾール製剤やMEEKの[…]
12月21日:クリノリル錠100を一時出荷停止(製造段階で溶出に課題)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/20201221cI1.pdf
「製造段階において、溶出における課題が発生したため」、一時供給停止となりました。
クリノリル錠100は2020年5月18日に「承認書に記載のない工程を実施」のため自主回収になった製品でもあります。
⑦2021年1月13日:30成分38品目の自主回収(クラスⅡ)
ぺんぎん薬剤師ここにきて38品目の自主回収!しかも理由のほとんどが管理体制の不備によるもの・・・。
富山第一工場における製造管理・品質管理の調査報告を公表
1月13日、日医工は上記の自主回収と合わせて、富山第一工場における製造管理及び品質管理に関する調査概要を公表しています。
2020年3月から実施されていた製品の品質再確認は12月までに終了し、今回の自主回収をもって調査を完了するとのことです。
一連の調査に関連した自主回収は合計7回(2020年4月7日、5月18日、7月31日、9月16日、11月9日、12月9日、2021年1月13日)も行われました。(個人的には5月26日の東和薬品 メサラジン錠500mg「トーワ」の自主回収も含まれるんじゃないかと思うけど・・・)
自主回収の理由の多くを見るに日医工の管理体制の不備が引き起こした結果としか言いようがないのですが、出荷停止についても原因は同じだと思います。
外部弁護士による事実調査・原因調査、改善策の検討も行った。TMI 総合法律事務所所属の約20名の弁護士による調査を実施。同社役員、従業員へのヒアリング、過去の試験記録や各手順書を含む各種GMP資料の確認・精査。実地調査による不適切なOOS処理・逸脱処理や、安定性試験の未実施・処理の問題に係る事実関係やその根本原因について調査・検討が行われた。その結果、OOS 管理や逸脱管理に関する手順書の明確化、初期試験結果の棄却・再試験等の条件の明確化、教育訓練の徹底、組織体制の見直し、企業風土の改革など多岐に渡る改善指導が行われたという。
(ミクスOnline 2021/01/14 より)
子ぺんぎん(ジェンツー)ここから改善を期待したいけど、失われた信頼はあまりに大きいと思う。信頼を回復できるまで頑張ってください。
2021年1月27日:メサラジン錠250mg/500mg「日医工」の一時出荷停止(含量のばらつき)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/20210127cI2.pdf
「直近のロットにおいて、規格に適合した結果が得られたものの、含量のバラツキが製品に影響を与える可能性が示唆された」ため、一時供給停止となりました。
子ぺんぎん(ジェンツー)早くも新たな出荷停止・・・。本当に大丈夫なのかな?
2021年2月1日:武田テバファーマ承継品のプロモーション活動開始
2021年2月1日、武田テバファーマから承継した後発医薬品486品目について日医工がプロモーション活動を開始しました。
承継手続きは2023年頃までかけて行う予定で、製品流通は約2年間、これまで通り武田流通で行うそうです。
ぺんぎん薬剤師ってことは完全に承継されるまではこれまで通り、武田薬品と取引可能な卸からしか購入できないってことだね。
2021年2月25日:9成分10品目の一時出荷停止(製造遅延)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/product_supply/
ぺんぎん薬剤師製造遅延のため、一時出荷停止・・・。
なんで製造遅延の理由を公開しないんだろう?こんなことじゃ信頼回復なんて程遠いと思うけど?
2021年2月25日:武田テバファーマ重複品の切り替え(9成分19品目)
2月25日、日医工は武田テバファーマ一部承継に伴う成分重複品の9成分19品目について、製造販売元が武田テバファーマ(武田テバ薬品)に統合することを発表しました。
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/20210224cI19.pdf
これに伴い、採用している医療機関では製品の切り替えが必要になります。
子ぺんぎん(ジェンツー)製品によっては3月上旬に供給停止・・・。
これまで自主回収や出荷停止でさんざん切り替え対応をさせてきて、さらにこの仕打ち・・・。
ぺんぎん薬剤師日医工からしたら仕方がないことなのかもしれなけれど、あまりに現場のことを考えてない対応・・・。しかも、武田流通だから場合によっては購入先を変更しないといけない・・・。
2021年2月25日:業務停止処分の報道を否定
2月25日、一部業界紙で富山県が日医工に対して業務停止処分を検討していることが報道されました。
情報を耳にした際の感想は「そりゃ、そうなってもしょうがないよね」でした。
たしかに、業界最大手の日医工の一部製品だけ、一ヶ月だけでも出荷停止になれば現場は大混乱となりますが、医薬品に対する信頼を維持するためにはやむを得ない処置だと思います。
原文を転載します。
本日の一部報道について
本日、一部の業界紙において、富山県が当社に対して業務停止命令を出す方向で調整に入ったとの報道がありましたが、当社が発表したものではございません。
また、富山県より現在、業務停止命令は受けておりません。
引き続き、ジェネリック医薬品の信頼回復に向けた企業努力を継続し、安心と信頼への約束≪日医工グループ品質方針≫に従って、全役員・全従業員の意識改革に努め、患者様に寄り添うグローバル総合ジェネリック医薬品メーカーとして安心と信頼をお届けするために取り組んでまいります。
以上
2021年3月3日:行政処分の発表
3月3日、ついに富山県から日医工に対して行政処分が行われました。
https://www.nichiiko.co.jp/company/press/detail/5087/1301/4541_20210303_01.pdf
くわしくはこの記事の最初に書いているので省略しますね。
ぺんぎん薬剤師ほぼ行政処分は決まっていたのに、なんであんな強気なコメント(2/25)を発表しちゃったんだろう・・・。
2021年3月10日:4成分8品目の供給停止
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/product_supply/
子ぺんぎん(ジェンツー)行政処分による製造販売業の停止の影響が出てきたね・・・。これがどこまで増えるか・・・。
2021年3月10日:患者さんへの案内を公開
日医工のおくすりを服用されている患者様へ(2021年3月10日)
これは拡散すべき内容と思うので上記リンクだけでなく内容を転載します。
弊社は、富山県より、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく行政処分を受けました。弊社は、患者様とそのご家族の健康に貢献する医薬品を提供する企業として今般の行政処分を重く受け止め、患者様とそのご家族の皆様に対して心よりお詫び申し上げます。
度重なる自主回収により、患者様とご家族の皆様には大変なご心配、ご迷惑をおかけしておりますが、弊社は、行政からの指摘に基づき、現在市場に流通している日医工で製造した製品について、使用期限内の全ての製造ロットの製造に関する記録・出荷試験に関する記録等を確認するとともに、参考品(品質の評価のために製造後に市場出荷せず製造所で一定期間保管する製品です。)による品質の再確認等を実施いたしました。その結果、現在市場に流通している日医工で製造した製品について、その有効性・安全性に問題がないことを確認いたしました。
なお、この度の自主回収に関連する健康被害の報告は受けておりません。
患者様のお手元にあるおくすりは、医師の指示通りに服用いただきますようお願いいたします。
以上につきまして、ご不明・ご不安な点はご遠慮なく弊社下記窓口にお問い合わせください。
この度は、患者様とご家族の皆様に大変なご心配、ご迷惑をおかけいたしましたことを、重ねてお詫び申し上げます。
報道による情報を元に考える
行政処分の発表から一夜明け、報道から様々な情報が見えてきました。
ミクスOnlineの記事がかなり詳細だったので、ぜひご一読いただきたいのですが、個人的に気になった部分について考えを記載します。
製剤工程・試験で行われていた実態について記載されているので簡単にまとめてみます。
- 不合格となったものを粉砕して再度錠剤にしていた
- 錠剤を乾燥させて再加工処理を施していた
- 不適合となった試験結果を棄却して再試験を実施
- 不適合となったロットから良品選別を行ってそのデータのみを定量試験の数値としていた
要は基準からはずれてしまったものを廃棄するのではなく、誤差範囲として使用していたということなんだろうなあ・・・と思います。
試験をパスさせるために良いデータのみを使用していたということですね。
う〜ん・・・。気持ちはわからないことはないですが、やってはいけないことですし、人の体に入る製品に対してそれをしてしまうのは・・・。
感覚が麻痺してしまっているとしか言えないかなあ・・・。
調査報告書では「生産品目・包装形態の多さから試験を行うための人的・物的設備が不足していたため、優先順位の高い試験を実施するという実務運用が定着していた」と指摘されています。
「出荷試験を優先するために安定性試験を実施していない品目が数多く出てしまった」とありますが、まず、試験をしないということが前提になっているのが異常ですね・・・。
「富山第一工場において製品の廃棄を回避するために薬機法やGMPを軽視した判断がなされていた」
「手順書に詳細な記載がなかったため、作業担当者のレベルや捉え方で作業が変わってしまうような曖昧さが残っていた」
この部分、日医工ほどの大手企業でそのような実態があることに衝撃を受けました。
衝撃を受けたこと自体、勝手な期待があったのかもしれませんが、研究でも再現性が重視されるのですから、製品として出荷されるものにおいて、誰が行っても同じ品質のものが作られるように努力されているのは常識と思っていました。
医薬品は「効かなくても効きすぎてもいけない」ものです。
そのため安定した医薬品を製造するためには、有効成分の品質のみでなく、添加物、混ぜ方や溶かし方など、製剤に関する全ての工程が非常にデリケートに定められないといけません。
そこに加えて、十分な量を生産する必要があるものなので、熟練した技術者による製造のコツなんてものが存在してはいけません。
誰が関わっても高い品質を維持したものを安定して製造できないといけないんです。
ただ、そのためには莫大なコストと時間が必要と思うので、急激な販売拡大に追いついていなかったというのが現実なのでしょう。
これからの日医工に期待すること
人の健康を左右する医薬品の製造において、その業界で一位の会社が不正を行っていた。
この事実は重く、日医工に対する信頼だけでなく、後発医薬品、いや、製薬業界全体への信頼を揺るがすような事件になってしまったと思います。
正直、昨今の後発医薬品業界は大変だと思います。
- 薬価引き下げによる利益の低下
- 後発医薬品利用促進による急激な使用量の拡大
- 大手メーカーの参入による競争の激化
現場からのニーズに応え、製造量を増やしながら、利益を確保していくのは大変なことです。
ですが、医薬品において最も大切なのは「品質」です。
そこを疎かにせず、企業として成長していくために各社が並々ならぬ努力を重ねているものと思います。
今回の事件をきっかけに日医工がどう変わっていくか。
医薬品を製造する過程は外部の人から見えるものではありません。
それだけに、日医工が変わっていってもそれが伝わるまでには多くの時間と努力が必要となります。
ですが、業界一位の企業として日医工がこの困難を乗り越え、さらなる信頼を勝ち取ってくれることを勝手に期待しています。
業界自体はどうなる?
心配なのは今後の後発医薬品業界です。
2020年〜2021年、業界4位の小林化工、業界1位の日医工でこのような大きな事件が起きてしまいました。
それでは、その他の企業はどうなのか?
今、不正が行われているとは思いません(思いたくない)が、今後、さらに厳しくなっていく中で同じようなことが起こってしまうかもしれません。
そこを回避するために、事業が縮小となれば、不利益を被るのは患者さんです。
国は、自治体はもっと早くこういった実態を把握できなかったのか?
現行の制度は医薬品企業を維持していくために無理があるものではないのか?
医療費削減が叫ばれる中、後発医薬品の価値をさらに高めて利用を促進するためには改革が必要なのかもしれません。
今回の事件はそのきっかけとなるのかもしれませんね。