【令和3年7月】GSKが複数の先発医薬品の製造中止を発表【イミグラン注・ザイザルOD錠・ザンタック・フルタイドロタディスク・セレベントロタディスク】

2021年7月1日、グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)は複数の製品について販売中止の案内を出しました。

2021年7月1日 弊社製品の販売中止についてのお知らせ

いずれも、2021年12月で販売中止となり、2022年3月で経過措置満了が予定されています。

令和371日にGSKが製造中止を発表した製品

 

イミグラン注

イミグラン注3(成分:スマトリプタンコハク酸塩)の製造が中止されます。

イミグランはMigraine(片頭痛)をもとに命名された製品で日本で最初のトリプタン製剤です。
脳血管の血管収縮作用に関与する5-HT1B/1D受容体を選択的に刺激する5-HT1B/1D受容体作動薬です。
その中でも「イミグラン注3」は最初に承認された薬剤です。

2000年1月 イミグラン注3 承認
2001年6月 イミグラン錠錠50 承認
2003年4月 イミグラン点鼻液20 承認
2007年10月 イミグランキット皮下注3mg 承認

錠剤、点鼻に加えて自己注射可能なキット皮下注が登場したことで注射液は役割を終えたということだと思います。

ザイザルOD錠

ザイザルOD錠2.5mg/5mg(成分名:レボセチリジン塩酸塩)の製造が中止されます。

ザイザルはアルファベット順から最後を意味する「xyz」とallergyの頭文字の「al」から命名(Xyzal)された第二世代抗ヒスタミン薬です。
有効成分のレボセチリジン塩酸塩は、ラセミ体であるセチリジン塩酸塩(先発医薬品名:ジルテック) のR-エナンチオマーです。
レボセチリジンはもう一つのエナンチオマーであるデキストロセチリジンと比較して、ヒスタミンH1受容体に対する親和性が30倍高く、乖離半減時間が16倍長くなっているため、第二世代抗ヒスタミン薬としての治療効果を単一で担っていることが可能です。
ザイザル(レボセチリジン5mg)はジルテック(セチリジン10mg)の半量で製剤化され、両製剤間の薬物動態同等性も示されています。

2010年10月 ザイザル錠5mg 承認
2014年1月 ザイザルシロップ 承認
2020年2月 ザイザルOD錠2.5mg/5mg 承認
2020年2月 ザイザルのジェネリック「レボセチリジン塩酸塩錠/OD錠/シロップ/DS」 承認

ご覧の通り、ザイザルOD錠は薬価収載・販売(20206月)からほぼ1年で製造中止が発表されたということになります。
ちなみに承認されたのはジェネリックが承認されたのと同じタイミングでした・・・。

ザイザルODは発売から1年で製造中止を発表したことに

2020年6月19日 持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「ザイザル錠5mg」の剤形追加 口腔内崩壊錠「ザイザルOD錠2.5mg」、「ザイザルOD錠5mg」発売のお知らせ

OD錠は、口腔内で速やかに崩壊し、唾液のみ(水なし)でも服用可能であることから、特に高齢や小児の患者さん、水分摂取に制限のある患者さんの服用性および利便性の向上が期待されます。
(一部略)
ザイザルOD錠は、UCB Biopharma SRLの協力のもと、GSKと全星薬品工業株式会社とで共同開発され、2020年2月17日に承認を取得しています。

引用元:2020年6月19日 持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「ザイザル錠5mgの剤形追加 口腔内崩壊錠「ザイザルOD錠2.5mg」、「ザイザルOD錠5mg」発売のお知らせ

採算が合わなかったのかそれとも製造工程などなにか別の理由によるものなのか。
製造中止に至った理由については公開されていません。

ぺんぎん薬剤師
コメント患者さんの利便性を考えてわざわざ剤形追加したのに1年で販売中止を決定したんだね・・・。
子ぺんぎん(ジェンツー)
ちっ・・・。

先発希望の小児には自家製剤加算なしでの半割が必要に

ザイザル錠/OD錠の7歳以上15歳未満に対する小児に対する用量は以下の通りです。

通常、7歳以上15歳未満の小児にはレボセチリジン塩酸塩として1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前に経口投与する。

引用元:ザイザルOD錠2.5mg/5mg 添付文書

ザイザル錠5mgしか存在しなかった時はザイザル錠5mgを半割して自家製剤加算を算定していました。
ですが、2020年6月にはザイザルOD錠2.5mgと合わせてレボセチリジン塩酸塩錠2.5mg/OD錠2.5mgが薬価収載されたため、自家製剤加算は算定できなくなりました。
そのため、先発希望の方に対してはザイザルOD錠2.5mgを使用していた薬局が多かったのではないかと思います。

ところがそのザイザルOD錠2.5mgが販売中止になってしまうため、先発希望の場合はザイザル錠5mgを半錠にして対応するしかなくなります。
ですが、後発医薬品に2.5mgが存在するので自家製剤加算は算定できない・・・。
と地味に面倒な状況になってしまいますね。

ザンタック錠/注射液

ザンタック錠75/150、ザンタック注射液50mg/100mg(成分名:ラニチジン塩酸塩)の製造が中止されます。

ザンタックはアルファベット最後の「Z」に制酸薬を意味するantacidの前5文字「antac」から命名されたヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)です。
一部の製剤でN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出され、それがラニチジンの構造に由来するものと判明したことを受け、2019年9月末からザンタックを含むラニチジン製剤は全て自主回収の対象になっていました。(製造中止は発表された時点でも製造中止中)

ラニチジン製剤(ザンタック®︎等)の自主回収〜NDMAの検出

ラニチジン製剤の代替薬として複数のH2ブロッカー、さらにはPPIやP-CABなどの選択肢も存在すること。
また、NDMAがラニチジンの構造に由来して生成されるため完全な除去が困難であること。
これらの理由から製造中止が決定されたのではないかと想像されます。

ザンタックの製造中止が発表された時点でほとんど全てのラニチジン製剤の製造中止/販売中止が発表されています。
(残っているのはラニチジン注50mg/100mgシリンジ「NP」のみ)

フルタイド/セレベント ロタディスク

フルタイド50/100/200ロタディスク(成分名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)、セレベント25/50ロタディスク(成分名:サルメテロールキシナホ酸塩)の製造が中止されます。

フルタイドはFluticasone Propionate(FP)の「Flu」と呼吸を表すtidalから「tid」をとって命名(Flutide)され、ドライパウダーインヘラー(DPI)とエアゾール剤(MDI)両方の製剤を持つ吸入ステロイド薬です。
FPは局所抗炎症作用の強い合成副腎皮質ステロイド剤でフルナーゼ点鼻液にも使用されています。

セレベント(名前の由来は特になし)はβ2受容体刺激性気管支拡張剤(LABA)のドライパウダーインヘラー(DPI)です。

1998年9月 フルタイド50/100/200ロタディスク 承認
2001年10月 フルタイド50/100/200ディスカス 承認、小児適応 追加承認
2002年10月 フルタイド50/100エアー 承認
2007年4月 フルタイドとセレベントの合剤 アドエアディスカス 承認
2009年6月 フルタイド50/100エアーからフルタイド50μg/100μgエアゾールに名称変更
2002年4月 セレベント25/50ロタディスク 承認
2004年2月 セレベント50ディスカス 承認
2007年4月 フルタイドとセレベントの合剤 アドエアディスカス 承認

フルタイドとセレベントともにロタディスク製剤が販売中止となりますが、ディスカス製剤は販売継続されます。
ディスカスはロタディスクと比較して操作が簡便なため、より確実に吸入を行うことが可能になります。

(フルタイド/セレベント)ディスカスは60ブリスター(60吸入用)しか存在せず、ロタディスクは1枚4ブリスターなので使用日数に応じた処方が可能ですが、フルタイド、セレベントともに長期にわたって使用する薬剤であるため、短い日数で処方することの意義は少ないと考えられます。

セレベントについてはロタディスクのみ1回25μgの規格が存在しますが、小児喘息のガイドラインでは吸入LABA単剤の使用は推奨されていない(短期追加治療で貼付剤、経口薬のみ推奨)ため、存在意義は少なかったのだと思います。

適応外になりますが、耳鼻咽喉科の処方でフルタイドロタディスクを短期間のみ使用する処方を何度かみかけたことがあります。(肺到達率が低いことを利用して、喉頭や声帯の炎症に使用)
こういった使い方を希望する場合はディスカスやエアゾールだと使用回数が多すぎて不便かもしれませんね。

残るロタディスクはリレンザのみ

これでロタディスク製剤はリレンザのみになりますが、そのリレンザもインフルエンザ治療薬では最も処方頻度が低くなっています。
昨シーズンはインフルエンザ自体が少なかったのでなおさらですね・・・。

ぺんぎん薬剤師
ロタディスクを触ったことがないって人も多そうだね・・・。

 

子ぺんぎん(ジェンツー)
勝手に回転するんだよ?
掃除用の刷毛がついてるんだよ?

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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