ラスビック錠(ラスクフロキサシン:LSFX)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【ニューキノロン系抗菌薬】

2019年9月20日、ラスビック錠75mgが製造承認されました。
11月19日に薬価収載され、2020年1月8日に発売されました。
勉強会にも参加できたので、現在わかっている範囲でまとめておこうと思います。
発売に合わせてRMPについてもまとめました。(2020.1.8)

抗菌薬を取り巻く現在の環境

今回まとめるラスビック錠はニューキノロン系抗菌薬です。
ですので、最初に、現在、抗菌薬について大きな問題となっている薬剤耐性(AMR*1)対策について簡単にまとめておこうと思います。
と言っても、日本が国をあげて、厚生労働省の委託事業として取り組んでいるものなので、このブログを読んでいる方々には当然の内容でしょうし、かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使って薬剤耐性(AMR)対策~抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 – 厚生労働省など、ネット上に素晴らしい情報がたくさん存在しているので、基本的な考えの部分を引用しておきます。
まずは、AMR対策の必要性についてです。

1. はじめに
(1)策定の経緯
抗微生物薬は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、患者の予後の改善に大きく寄与してきた。その一方で、抗微生物薬には、その使用に伴う有害事象や副作用が存在することから、抗微生物薬を適切な場面で適切に使用することが求められている。近年、そのような不適正な抗微生物薬使用に伴う有害事象として、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増加が国際社会でも大きな課題の一つに挙げられるようになってきている。不適正な抗微生物薬使用に対してこのまま何も対策が講じられなければ、2050年には全世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されている。また、1980年代以降、新たな抗微生物薬の開発は減少する一方で、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌の脅威が増加していることから、抗微生物薬を適正に使用しなければ、将来的に感染症を治療する際に有効な抗菌薬が存在しないという事態になることが憂慮されている。今の段階で限りある資源である抗菌薬を適正に使用することで上記の事態を回避することが重要であり、薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)対策として抗微生物薬の適正使用が必要である。
引用元: 抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 – 厚生労働省

次に、どうして耐性菌が増殖してしまうのか。

抗菌薬投与方法
「耐性化のメカニズム」で述べた通り、抗菌薬が選択圧として働くことによって耐性菌以外の細菌が減少し、耐性菌が相対的に増加することによって薬剤耐性菌は増殖の機会を得ます。体内が「非耐性菌に不利で、耐性菌に有利な環境」であればあるほど、耐性菌は増殖しやすいということです。
この環境を作り出す要因のひとつは、広域抗菌薬の投与です。例えば、アモキシシリンよりもフルオロキノロンのほうが幅広い細菌に作用するため、多くの非耐性菌が抗菌薬の影響をうけ、数が減少してしまいます。つまり、「非耐性菌に不利」な体内環境をつくってしまいます。
一方、抗菌薬の過小投与(量や期間)も問題です。薬剤耐性菌は、耐性であっても高い濃度の抗菌薬に曝露されれば増殖抑制できることが多いのですが、使用される量や期間が少ないと薬剤耐性菌だけが増殖できる環境をつくってしまうことになります。つまり、「耐性菌に有利」な環境です。菌の発育を妨げるために必要な最小の濃度(最小発育阻止濃度:Minimum Inhibitory Concentration = MIC)と、耐性菌の出現を抑えられる濃度(耐性菌出現阻止濃度:Mutant Prevention Concentration = MPC)の間の濃度は、耐性菌選抜域(Mutant Selection Window = MSW)と呼ばれ、理論的に最も耐性菌をつくりやすい濃度域です。細菌がこの濃度域の抗菌薬にさらされるのを避けるため、十分量、十分期間の抗菌薬投与が必要です。
引用元: かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使って薬剤耐性(AMR)対策~

ラスビック錠は様々な菌に対して抗菌作用を発揮する抗菌スペクトルの広いニューキノロン系薬ですが、AMR対策が重要視される中で承認された新規経口抗菌薬です。
そのことを踏まえてこの記事を読んでいただければと思います。

ラスビック錠ってどんな薬?

ラスビック錠ってどんな薬なの?

杏林製薬が創薬した経口フルオロキノロン系抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)だよ。有効成分はラスクフロキサシン(LSFX*2)でグレースビット(シタフロキサシン)以来、12年ぶりの経口キノロンとなります。

ぺんぎん薬剤師
もうそんなに経つのか・・・。
  • 新規のレスピラトリーキノロン
  • 呼吸器・耳鼻咽喉科領域で優れた抗菌力と組織移行性
  • 腎機能障害時でも用量変更の必要なし

肺組織への高い移行性と低い濃度で効果を発揮する安全性の確保を目標に開発された新規レスピラトリーキノロンです。

基本情報

医薬品名ラスビック錠75mg
開発コードKRP-AM1977(ラスクフロキサシン)
AM-2013(ラスクフロキサシン塩酸塩)
KRP-AM1977X(ラスクフロキサシン塩酸塩錠)
成分名ラスクフロキサシン塩酸塩
英語名Lasvic Tablets(Lascufloxacin Hydrochloride)
製造販売元杏林製薬
命名の由来Lascufloxacin、visionary and conceptual quinolone」から命名
新しいビジョン(visionary)とコンセプト(conceptual)で開発されたキノロン系抗菌剤のラスクフロキサシン
効能・効果<適応菌種>
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
<適応症>
咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
用法・用量通常、成人には、ラスクフロキサシンとして1回75mgを1日1回経口投与する。
指定等なし
審議2019年8月23日 薬食審第二部会
承認日2019年9月20日
薬価収載
収載時薬価
2019年11月19日
361.40円/錠
薬価算定方式類似薬効比較方式(II)
クラビット錠500mgの一日薬価(=薬価 361.40円)を元に算出
販売開始2020年1月8日
新医薬品の処方日数制限解除済(2020年11月末日)

(審議・承認日・薬価収載のリンクは当ブログの記事です)

メーカー(杏林製薬)からの案内をまとめておきます。

クラビット錠500mgと同じ薬価

ラスビック錠75mgの薬価はクラビット錠500mgと同じ!

ラスビック錠75mgの薬価は1錠当たり361.40円でクラビット錠500mgと同じです。
1日薬価も同様の361.40円です。

類似するフルオロキノロン系抗菌薬の薬価一覧

  • ラスビック錠75mg:361.40円/錠(361.40円/日)
  • グレースビット錠50mg:162.00円/錠(1日薬価:324.00円)
  • ジェニナック錠200mg:216.90円/錠(1日薬価:433.80円)
  • アベロックス錠400mg:444.20円/錠(1日薬価:444.20円)
  • クラビット錠500mg:361.40円/錠(361.40円/日)

※薬価は2019年11月19日のものです。

新医薬品としての処方日数制限あり

ラスビックは新医薬品として投与日数制限の対象となる予定です。
ですが、薬剤の性質上、そんなに長く投与されることはないと思いますが。

点滴静注も発売

2020年11月27日、ラスビック点滴静注キット150mgが承認されており、ラスビックは錠剤と静注の2剤形となっています。
ラスビック点滴静注キット150mgは2月18日に薬価収載(収載時薬価:4,034円/キット)されています。

用法・用量は当然ながら、適応菌種と適応症に違いがあるのでまとめておきます。
適応菌種は「本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ペプトストレプトコッカス属、ベイヨネラ属、バクテロイデス属、プレボテラ属、ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)」マーカーをつけているものは錠剤には適応がありません。

適応症は「肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染」となっており、マーカーをつけている肺膿瘍が追加されていますが、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、慢性呼吸器病変の二 次感染、中耳炎、副鼻腔炎の適応はありません。

ちなみに用法・用量は「通常、成人にはラスクフロキサシンとして、投与初日に300mgを、投与2日目以降は150mgを1日1回点滴静注する。」になっています。

有効成分と作用機序

ぺんぎん薬剤師
ニューキノロンの元祖を作ったのは杏林製薬って知ってた?
子ぺんぎん(ジェンツー)
ノルフロキサシン(バクシダール)が世界で最初のニューキノロンだったんだね!

有効成分であるラスクフロキサシンは杏林製薬が創製した新しいキノロン系抗菌薬です。
低い血中濃度で高い治療効果を示すことを目標に作られた抗菌薬です。

キノロン系抗菌薬の分類

キノロン系抗菌剤は4-キノロン骨格を持ち、DNAジャイレースを阻害することで細菌の増殖を妨げる抗菌薬の総称です。
第一世代をオールドキノロン、第二世代をニューキノロン(フルオロキノロン)と呼びます。
キノロン系の改良を重ねる中で生まれたニューキノロン系抗菌薬ですが、キノロン環にフッ素とピペラジニル基を導入することで抗菌作用を強くしたノルフロキサシン(先発品名:バクシダール)以降のものを指します。
ノルフロキサシンも杏林製薬が創製した薬剤ですね。
そう考えると、今回のラスクフロキサシンの登場にもストーリーを感じてしまいます。

レスピラトリーキノロン

オールドキノロンは主に尿路感染症にしか使用できませんでしたが、改良を重ねられたニューキノロンは適応菌種や組織移行性を増やしていき、肺などの呼吸器感染症に対しても使用できるようになりました。
その結果、肺呼吸器系への移行性が高く、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP*3)を含む主要な呼吸器感染症起炎菌に対する抗菌活性を強めたレスピラトリーキノロン薬が開発されるようになりました。
ラスクフロキサシン(ラスビック錠)もレスピラトリーキノロンに分類されます。

ニューキノロン系抗菌薬の作用機序

オールドキノロンの時代は作用機序が明らかになっていなかったキノロン系抗菌薬ですが、ノルフロキサシンの登場でDNAジャイレースを阻害することがわかりました。
その後、DNAジャイレースのみでなく、トポイソメラーゼⅣ(トポイソメレースⅣ)もニューキノロンの標的であることが明らかになりました。
DNAは超らせん構造と呼ばれる2本のDNAの鎖が複雑に絡まり合った構造をしていますが、DNA複製の際にはその「からまり」が邪魔になります。
DNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣはその「からまり」を解く役割を持つため、細菌DNAの複製過程で必須の酵素です。
これら2つの酵素は非常に類似した構造を持ちⅡ型トポイソメラーゼと呼ばれています。
Ⅱ型トポイソメラーゼが阻害されるとDNAの二重螺旋構造を解くことができず、DNAを複製することができません。
その結果、細菌に対して殺菌的に作用すると考えられています。

DNAジャイレースはDNA複製開始前の段階で働きます。
細菌のDNA複製では、まず、DNAジャイレースにより2本鎖DNAの結合が切断され、ねじれを解消した後に再び結合されます。
キノロン系抗菌薬は、DNAジャイレースにより2本鎖DNAが切断された段階でその切断面に入り込み、DNA-DNAジャイレース-キノロン薬によるCleavable Complexを形成し、DNAの再結合を阻害することで、DNAの複製を阻害します。

トポイソメラーゼⅣはDNA複製の最終段階で働きます。
菌種、キノロン薬によって、DNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣ、どちらの酵素を主たる標的とするかは異なります。

デュアルインヒビター

ラスビック錠の作用機序(ラスビック錠 製品概要より)
初期のニューキノロン系抗菌薬はDNAジャイレースの阻害が作用の中心でしたが、レスピラトリーキノロンではトポイソメラーゼⅣに対する阻害活性が強くなっています。
そのなかでも、特にDNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣの両酵素に対して同レベルで阻害作用を示すものはデュアルインヒビターと呼ばれています。
デュアルインヒビターは殺菌作用の強さに加え、耐性変異を起こしにくさを併せ持つと言われています。
どちらか一方の作用に特化していると生き残ってしまう菌があらわれて耐性を獲得してしまいますが、両方の作用が同程度あれば片方に対して耐性を獲得してももう片方が効果を発揮し、耐性菌が生き残ってしまうことを防ぐからです。
レスピラトリーキノロンの多くはデュアルインヒビターですが、ラスクフロキサシン(ラスビック錠)も同じくデュアルインヒビターと言える性質を持っています。

肺組織への優れた移行性

ラスビックの肺組織移行性
ラスクフロキサシンは他のキノロンと比較してホスファチジルセリン(PhS*4)と結合しやすい構造となっています。
肺胞上皮被覆液(RLF*5)は他の組織よりもPhSが多くなっており、その結果、ラスクフロキサシンは優れた肺組織移行性を持つことができます。

DI

ここからはラスビック錠の添付文書・インタビューフォームについて詳しく見ていきたいと思います。

禁忌

安全性を目標に創製されたというだけあって、禁忌はニューキノロンとして最低限のものだけになっています。

禁忌

  1. 本剤の成分又は他のキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
  3. 小児等

引用元:ラスビック錠75mg 添付文書

効能・効果

抗菌薬の適応なので、適応菌種と適応症に分かれているので、それぞれをまとめます。
結論から言うとラスビックは近年登場したニューキノロンと比較して適応菌種・適応症ともに少なくなっており、呼吸器と耳鼻科領域だけに絞られていることがわかります。
杏林製薬によると領域を絞ることで濫用を防ぎ、耐性化を防ぐと言うことです。

子ぺんぎん(ジェンツー)
なるほど!
・・・ってそれで本当に濫用を防ぐことできるの?
ぺんぎん薬剤師
ん〜・・・。呼吸器領域ってキノロンが一番濫用されそうな部分だしね・・・。どうだろうね?まあ、杏林製薬の狙いはそういうことだということで・・・。

適応菌種

ラスクフロキサシンの抗菌スペクトル

ラスビック錠の適応菌種は以下のとおりです。

  • ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌:グラム陽性菌
  • モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌:グラム陰性菌
  • プレボテラ属:嫌気性菌
  • レジオネラ・ニューモフィラ、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ):非定型菌

他のレスピラトリーキノロンと比較してみると・・・。

適応菌種

  • ラスビック錠ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
  • グレースビット錠ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属プロテウス属モルガネラ・モルガニー、インフルエンザ菌、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ペプトストレプトコッカス属プレボテラ属ポルフィロモナス属、フソバクテリウム属、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
  • ジェニナック錠ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌(ペニシリン耐性肺炎球菌を含む)、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
  • アベロックス錠ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、アクネ菌肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)

青字:ラスビックにはない適応菌種
赤字:ジェニナック・アベロックスにはない適応菌種

ということでラスビック錠の適応菌種は呼吸器・耳鼻咽喉科に特化しており、他のレスピラトリーキノロンと比較して絞られていることがわかります。

適応症

ラスビック錠の適応症は「咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、 急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、 副鼻腔炎」です。
これも他のレスピラトリーキノロンと比較してみると・・・

適応症

  • ラスビック錠頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、 急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、 副鼻腔炎
  • グレースビット錠咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎腎盂腎炎尿道炎子宮頸管炎中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎歯冠周囲炎顎炎
  • ジェニナック錠咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
  • アベロックス錠 表在性皮膚感染症深在性皮膚感染症外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、咽頭・喉頭炎、扁桃炎。急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、副鼻腔炎

青字:ラスビックにはない適応症
赤字:アベロックスにはない適応症

ラスビックの適応症はジェニナックと同様に呼吸器・耳鼻咽喉科に特化していることがわかります。

AMR対策

他の抗菌薬と同様ですがAMR対策について記載されています。

効能又は効果に関連する使用上の注意
咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、副鼻腔炎への使用にあたっては、「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で、本剤の投与が適切と判断される場合に投与すること。
引用元:ラスビック錠75mg 添付文書

参考までにリンクを貼っておきます。
抗微生物薬適正使用の手引き 第二版 – 厚生労働省

薬価基準収載に伴う留意事項

令和元年11月18日付で、令和元年11月19日の薬価収載と同時に適用される注意事項について通知が出されています。
ここでもAMR対策について注意喚起されています。

3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(3)ラスビック錠75mg
本製剤の用法・用量に関連する使用上の注意において、「本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」と記載されているので、使用に当たっては十分留意すること。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1118第1号 令和元年11月18日)

用法・用量

ラスビック錠の用法・用量は「通常、成人には、ラスクフロキサシンとして1回75mgを1日1回経口投与する。」です。
1日1回1錠のシンプルな投与方法。
腎機能等による用量の調節もありません。
これが一番の売りじゃないかと個人的には思っています。
詳しいデータは添付文書の薬物動態の項に記載されていますが、腎機能障害があっても動態に大きな変化がない(症例数は少ないです・・・)のがラスビック錠の特徴です。
インタビューフォームの排泄のデータを見ても、尿中排泄率が高くないことがわかります。

VII.薬物動態に関する項目
7.排泄
健康成人男性6例にラスクフロキサシン(錠)75mg を単回経口投与したとき、投与後144時間までの未変化体の排泄率は、尿中に8.38%、糞中に16.0%であった。未変化体と脱シクロプロピル体の排泄率の合計は、尿中に39.9%、糞中に24.9%であった。
引用元:ラスビック錠75mg IF

やはりAMR対策

ここでも他の抗菌薬と同様にAMR対策について記載されています。

用法・用量に関連する使用上の注意
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
引用元:ラスビック錠75mg 添付文書

相互作用

併用禁忌はないので、現時点で特別注意するものがあるわけではないのですが、少し気になるのが相互作用です。

使用上の注意
3.相互作用
ラスクフロキサシンはCYP3A4の基質であり、CYP2C8及びCYP3A4に対し阻害作用を示す。
引用元:ラスビック錠75mg 添付文書

VII.薬物動態に関する項目
6.代謝
(2)代謝に関与する酵素(CYP等)の分子種、寄与率
ラスクフロキサシンは主としてCYP3A4で代謝され、CYP2C8及びCYP3A4に対し時間依存的な阻害作用を示す。なお、ラスクフロキサシンは、CYP3A4の基質である。
1)CYP阻害作用(in vitro)
ヒト肝ミクロソームを用いてCYP分子種の代謝活性に対するラスクフロキサシンの阻害効果を検討したところ、ラスクフロキサシンはCYP3A4及びCYP2C8を時間依存的に阻害した。
2)CYP 誘導作用(in vitro)
ヒト凍結肝細胞を用いて3種のCYP分子種(CYP1A2、CYP2B6及びCYP3A4)に対するラスクフロキサシンのCYP誘導能を評価したところ、ラスクフロキサシンはCYP1A2及びCYP3A4に対して誘導能を有していることが示唆された。
引用元:ラスビック錠75mg IF

VII.薬物動態に関する項目
8.トランスポーターに関する情報
各種トランスポータ発現細胞を用いてラスクフロキサシンの基質性を検討したところ、ラスクフロキサシンは、P-糖タンパクの基質であり、BCRPの弱い基質である一方で、OATP1B1及びOATP1B3の基質とはならないことが示唆された。
また、ラスクフロキサシンの各種トランスポータに対する阻害効果を検討したところ、MATE1及びMATE2-Kに対して、ラスクフロキサシンは臨床血中濃度付近で阻害(IC50:1.34及び2.27μmol/L)を、OCT2に対して弱い阻害(IC50:90.8μmol/L)をそれぞれ示した。MATE1及びMATE2-Kに対しては、脱シクロプロピル体も同様に阻害(IC50:0.668及び5.91μmol/L)を示した。
引用元:ラスビック錠75mg IF

CYPの阻害作用、特にCYP3A4阻害作用があること、P-糖タンパクの基質であることは頭に入れておきましょう。

併用注意

併用注意をまとめておきます。
アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛を含有する製剤
ラスクフロキサシンと難溶性のキレートを形成してしまい、ラスクフロキサシンの吸収が低下します。

フェニル酢酸系、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤
中枢神経におけるGABAA受容体への結合阻害が増強され、痙攣を起こすおそれがあります。
フェニル酢酸系といえばジクロフェナク(ボルタレン)、プロピオン酸系といえばロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン(ブルフェン)ですが、特に注意すべきはプロピオン酸系のエスフルルビプロフェン(ロコアテープ )じゃないかなと思っています。

リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン
CYP3A4を誘導する薬物と併用することでラスクフロキサシンの血中濃度が低下する可能性があります。

テオフィリン、アミノフィリン水和物
機序は不明ですが、併用によりテオフィリンの血中濃度が上昇したというデータがあります。

クラスIA抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド等)、クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール等)
ラスクフロキサシンの副作用にも記載されていますが、併用によりQT延長作用が相加的に増加してしまう可能性があります。

副腎皮質ホルモン剤(経口剤及び注射剤)
機序は不明ですが、併用により障害のリスクが増大するという報告があります。

RMPに記載されている内容について

RMPに記載されているリスクは以下の通りです。

  • 重要な特定されたリスク
    • 白血球減少症
    • 間質性肺炎、器質化肺炎
    • QTc間隔延長(Torsades de pointesを含む)
    • 低血糖
    • 抗菌薬投与に関連した下痢(偽膜性大腸炎を含む)
    • 腱障害
    • 過敏症
    • 肝毒性
    • 横紋筋融解症
    • 中枢神経系への影響(痙攣、精神症状
    • 重症筋無力症の悪化
    • 大動脈瘤、大動脈解離
  • 重要な潜在的リスク
    • 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
    • 急性腎障害
  • 重要な不足情報:中等度以上の肝機能障害のある患者への投与時の安全性

※:重大な副作用として記載

リスク多いな・・・と思うかもしれませんが、ほとんどはフルオロキノロンであることに由来するものです。

白血球減少症

臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、白血球減少症が倍量(150mg投与 ※承認外)投与で1例(0.2%)報告されているようです。
そのため、重大な副作用に記載され、販売も情報収集が継続されます。

間質性肺炎・器質化肺炎

これも同じく、臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、器質化肺炎が1例(0.2%)報告されているようです。
そのため、重大な副作用に記載され、販売も情報収集が継続されます。

抗菌薬投与に関連した下痢(偽膜性大腸炎を含む)

抗菌薬関連下痢症は、抗菌薬全般において発言頻度の高い有害事象です。
抗菌薬により腸内細菌叢が変化し、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)が増殖してしまいます。
C.difficileのによる下痢症は軽症のものから致死的な偽膜性大腸炎まで広い範囲に及びます。
実際に、ラスビック錠の第I相試験において、腸内細菌数の減少が認められており、C.difficileが検出されC difficileToxin陽性の症例が認められています。
そのため、重大な副作用に記載され、販売も情報収集が継続されます。

中等度以上の肝機能障害のある患者への投与時の安全性

国内臨床試験において、中等度以上の肝機能障害を有する患者への投与症例は限られています。
また、ラスクフロキサシンは薬物代謝酵素による代謝を受けるため、肝機能障害を有する場合、代謝が遅延し、血中濃度が上昇してしまう可能性があります。
そのため、添付文書の慎重投与の項で「中等度以上の肝機 能障害を有する患者」に対する注意が記載されています。

フルオロキノロン由来のリスク

残り(以下)は全てフルオロキノロン全般に対しての注意になります。

  • 重要な特定されたリスク
    • QTc間隔延長(Torsades de pointesを含む)
    • 低血糖
    • 腱障害
    • 過敏症
    • 肝毒性
    • 横紋筋融解症
    • 中枢神経系への影響(痙攣、精神症状)
    • 重症筋無力症の悪化
    • 大動脈瘤、大動脈解離
  • 重要な潜在的リスク
    • 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
    • 急性腎障害

気になるものだけRMPの記載を抜粋します。

QTc間隔延長(Torsades de pointesを含む)

健康成人におけるQT/QTc評価試験において、承認用量(75mg/日)の3倍用量の225mg投与群ではQTcFの延長は陰性と判定された。一方、450mg投与群、750mg投与群では陽性と判定された。感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、QTcF間隔の絶対値が500msを超えた症例又はQTcF間隔の変化が60msを超えた症例が一定数認められている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

低血糖

感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、非重篤な副作用として血中ブドウ糖増加1例(0.2%)、血中インスリン増加2例(0.4%)、インスリンCペプチド増加1例(0.2%)が報告されている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

腱障害

フルオロキノロン系抗菌薬投与時の腱障害のリスク因子に関する系統的文献レビュー(Stephenson AL, et al. Drug Saf. 2013; 36: 709–721)において、高齢者群及びコルチコステロイド併用群では、対照群よりも腱障害のリスクが増大することが示唆されている。
感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、非重篤な副作用として頚部痛1例(0.2%)、四肢痛1例(0.2%)、腱痛1例(0.2%)が報告されている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

肝毒性

感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、非重篤な副作用としてアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加2例(0.4%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加5例(0.9%)、肝機能検査異常1例(0.2%)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加3例(0.6%)が報告されてい る。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

横紋筋融解症

感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、非重篤な副作用として頚部痛1例(0.2%)、四肢痛1例(0.2%)、腱痛1例(0.2%)が報告されている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

中枢神経系への影響((痙攣、精神症状)

フルオロキノロン系抗菌薬は、前臨床試験において、GABA神経系の抑制、あるいはNMDA神経系の刺激により、神経興奮を促進することが報告されている。フルオロキノロン系抗菌薬により、痙攣、錯乱、せん妄などの中枢神経系副作用が惹起されることが知られている。
感染症被験者を対象とした本剤の臨床試験(75又は150mg反復経口投与)の安全性評価対象例531例において、関連する副作用はなかった。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

重症筋無力症の悪化

フルオロキノロン系抗菌薬は、重症筋無力症を悪化させる可能性が報告されている。
2010年に米国FDAは、すべてのフルオロキノロン系抗菌薬に対し、添付文書の重症筋無力症の悪化に関する記載の変更を求めている。また、米FDA、EMA・PRAC、ANSM等の外国規制当局は、他の治療オプションがある副鼻腔炎、気管支炎、単純性尿路感染の患者において、キノロン系抗菌薬に関連した重篤な副作用はベネフィットを上回ることについて通知している。その副作用には、重症筋無力症の悪化が含まれている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

大動脈瘤、大動脈解離

フルオロキノロン系抗菌薬投与後に大動脈瘤及び大動脈解離の発現リスクが上昇することを示す疫学研究(Lee CC et al. JAMA Intern Med. 2015, Daneman N et al. BMJ Open 2015, Pasternak B et al. BMJ 2018, Lee CC et al.J Am Coll Cardiol. 2018)及び非臨床試験(LeMaire SA et al. JAMA Surg. 2018)の文献が報告されている。
引用元:ラスビック錠75mgに係る医薬品リスク管理計画書

 

まとめ・雑感

10年ぶりに登場した新規ニューキノロン ラスビック錠(ラスクフロキサシン)ですが、杏林製薬が開発し、呼吸器・耳鼻科領域に特化した効果、低用量で効果を発揮する安全性の高さを特徴とするレスピラトリーキノロンです。
腎機能に関わらず1日1回1錠の投与というのがとても使いやすいと思うのですが、その反面、気楽に使えすぎてしまい、AMR対策に懸念を感じてしまいます。
今の時代、使いやすいことはメリットばかりとは言えないと思うんですよね。
デュアルエフェクトがあるとは言え、濫用されてしまえば耐性菌は増えてしまうので、発売に際して何らかの対策が必要なんじゃないかなと感じてしまいます。
申請から承認までかなり時間がかかったようなのですが、その辺りの懸念もあったのではないかと思います。
また、安全性の高さを目指して開発された薬剤と言いつつも、リスク因子がかなり多くなっているため、慎重に使用を進めて安全性を確実にしていきたいところですね。

参考にしたページや資料

*1:AntiMicrobial Resistance

*2:LaScuFloXacin

*3:Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae

*4:PhosphatidylSerine

*5:Rpithelial Lining Fluid

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