サイスタダン原末(一般名:ベタイン/レクメド)
日本で初めてのホモシスチン尿症治療薬です。
ホモシスチン尿症は知能障害、骨格異常、視力低下などを引き起こす先天性疾患で、先天性代謝異常等検査(新生児スクリーニング)の対象疾患の一つです。
患者は日本では20万人に1人程度とされ、1977年~2010年までの累積では200人程度の希少疾患です。
必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝経路において、中間生成物ホモシスチンの代謝酵素シスタチオニン-β合成酵素(シスタチオニン-β-シンターゼ)の先天的欠損によりホモシスチンがシスチンに変換されず、体内に多量に蓄積されてしまいます。
その結果、正常な人にはない尿中へのホモシスチンの排出が特徴として現れます。
また、メチオニン代謝経路において、代謝不良によるメチオニン蓄積とあわせて、中間生成物ホモシスチンの一部がメチオニン合成酵素(メチオニンシンターゼ)によってメチオニンに還元されることから、血中メチオニン濃度の上昇も見られます。
血中メチオニン濃度の上昇を調整できない場合、血栓症などで死亡するリスクが高まるケースもあります。
ホモシスチン尿症では、血中ホモシスチン濃度を下げるためにメチオニンを制限または除去した食事療法を一生継続して行う必要があります。
また、同時にメチオニンからの最終生成物であるシスチンが不足してしまうため、シスチンを添加した食事療法も必要です。
これまでは、ホモシスチンを体内でメチオニンに還元させる際に使われる葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6などを服用するビタミン療法が行われてきました。
今回のベタイン(トリメチルグリシン)は、ホモシスチンにメチル基を与えることでホモシスチンを無害化させます。
既にフランスのOrphan Europe SARL等により世界では販売されている薬剤です。
国内初の適応ということでホモシスチン尿症で苦しむ患者さんにとって朗報となるのではないでしょうか?