潰瘍性大腸炎薬エンタイビオ、抗PD-L1抗体イミフィンジ、トレリーフの適応追加など平成30年7月2日の承認内容

  • 2018年7月4日
  • 2021年1月10日
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平成30年7月2日、新医薬品等の製造販売が承認されました。
今回承認されたのは、平成29年4月〜6月に薬食審で承認を了承されていた医薬品です。
新薬7成分、バイオシミラー1成分、適応追加などが8品目です。
部会の開催日ごとに分けて簡単にまとめます。

目次

平成30年4月25日 薬食審医薬品第二部会

イミフィンジ点滴静注

イミフィンジ点滴静注 添付文書
イミフィンジ点滴静注 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • イミフィンジ点滴静注120mg
    • イミフィンジ点滴静注500mg
  • 成分名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:アストラゼネカ
  • 効能・効果:切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法
  • 用法・用量:通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。ただし、投与期間は12カ月間までとする。

新規抗PD-L1抗体デュルバルマブ

イミフィンジ(成分名:デュルバルマブ)はがん免疫療法や免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる、抗PD-L1抗体(抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体)です。
日本では3番目の抗PD-L1抗体です。

抗PD-L1抗体の作用機序

抗PD-L1抗体の作用機序について復習しておきます。
活性化された免疫細胞(T細胞やB細胞)の表面には、PD-1*1と呼ばれる、免疫細胞のアポトーシス(細胞自己死)に拘わる分子が存在しています。
PD-1は免疫のブレーキ役(免疫チェックポイント)として免疫応答を調節しています。
また、PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)とて発見されたのがPD-L1*2とPD-L2*3です。
PD-1にPD-L1が結合すると、免疫細胞としての反応が抑制されてしまいます。
がん細胞は自身の表面にPD-L1を発現させることで、免疫反応による攻撃を回避します。

イミフィンジの有効成分であるデュルバルマブは抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体です。
デュルバルマブはPD-L1に結合することで、PD-1とPD-L1の結合を阻害します。
その結果、免疫反応にかかっていたブレーキが解除され、がんを抗原とする抗原抗体反応を増強、悪性腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

ステージⅢの非小細胞肺がんに対して使用できる初の免疫チェックポイント阻害薬

イミフィンジは非小細胞肺がんに対する適応を持つ4剤目の免疫チェックポイント阻害になります。
ですが、「ステージⅢの非小細胞肺がん」に対して使用可能な免疫チェックポイント阻害はイミフィンジが初めてです。

医薬品名成分名分類効能・効果
オプジーボ点滴静注ニボルマブ抗PD-1抗体切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
キイトルーダ点滴静注ペムブロリズマブ抗PD-1抗体PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
テセントリク点滴静注アテゾリズマブ抗PD-L1抗体切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
イミフィンジ点滴静注デュルバルマブ抗PD-L1抗体切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法

イミフィンジの効能・効果に記載されている「切除不能な局所進行の非小細胞肺がん」は「ステージⅢの非小細胞肺がん」に該当します。
ステージⅢの非小細胞肺がんに対しては化学療法(プラチナ製剤)と放射線療法を組み合わせた「化学放射線療法」を行うのが標準治療となっています。
これまでは化学放射線療法後に行える治療が存在しなかったため、転移や再発を起こしてしまうケースが多かったのですが、今回、イミフィンジが承認されることで、化学放射線療法後にも積極的な治療を継続することが可能になります。

保険外併用療法費制度の対象薬剤

アストラゼネカはイミフィンジの対象患者の治療法が極めて限られているということで、厚労省の「保険外併用療法制度」のもとで薬価収載までの間、同剤を無償提供します。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/20170925.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/20170925.pdf

インフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」

インフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」 添付文書

  • 医薬品名:インフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」
  • 成分名:インフリキシマブ(遺伝子組換え)
  • 一般名:インフリキシマブ後続3
  • 申請者:ファイザー
  • 効能・効果:
    • 既存治療で不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止含む)
    • 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
    • 中等度から重度の活動期にあるクローン病、外瘻を有するクローン病の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
    • 中等症から重度の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)
  • 用法・用量:(省略)

3成分目のレミケードBS注

インフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」はレミケードのバイオ後続品としては3成分目になります。

  • インフリキシマブ後続1:
    • インフリキシマブBS点滴静注用100mg「CTH」
    • インフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」
  • インフリキシマブ後続2:
    • インフリキシマブBS点滴静注用100mg「あゆみ」
    • インフリキシマブBS点滴静注用100mg「日医工」
  • インフリキシマブ後続3:インフリキシマブBS点滴静注用100mg「ファイザー」

レミケードとの適応の違い

先行品のレミケードとは適応が異なるので注意が必要です。
レミケードにはあって、インフリキシマブBSが取得していない適応は以下の通りです。

  • ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎
  • 強直性脊椎炎
  • 腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病
  • 川崎病の急性期

 

平成30年5月23日 薬食審医薬品第二部会

レフィキシア静注用

レフィキシア静注用 添付文書
レフィキシア静注用 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • レフィキシア静注用500
    • レフィキシア静注用1000
    • レフィキシア静注用2000
  • 成分名:ノナコグ ベータペゴル(遺伝子組換え)
  • 申請者:ノボ ノルディスクファーマ
  • 効能・効果:血液凝固第IX因子欠乏患者における出血傾向の抑制
  • 用法・用量:(省略)
    • 定期的な投与:40IU/kgを週1回投与する。

半減期延長型の血液凝固第IX因子製剤としては国内3剤目

血液凝固第IX因子をPEG化することで半減期を延長した製剤です。
半減期延長型の血液凝固第IX因子製剤としては3製品目になります。

  • オルプロリクス静注用(成分名:エフトレノナコグ アルファ(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子をIgG1のFc 領域に共有結合させることで半減期延長
  • イデルビオン静注用(成分名:アルブトレペノナコグ アルファ(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子とアルブミンを遺伝子レベルで結合させることで半減期延長
  • レフィキシア静注用(成分名:ノナコグ ベータペゴル(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子にPEG*4を結合させることで半減期延長

 

ダフクリア錠

ダフクリア錠 添付文書

  • 医薬品名:ダフクリア錠200mg
  • 成分名:フィダキソマイシン
  • 申請者:アステラス製薬
  • 効能・効果:感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
  • 用法・用量:通常、成人にはフィダキソマイシンとして1回200mgを1日2回経口投与する。

クロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎の新たな選択肢

ダフクリア錠の有効成分であるフィダキソマイシンはRNAポリメラーゼ阻害剤に分類される抗菌薬です。
適応菌種はクロストリジウム・ディフィシル(CD*5)です。
選択的な抗菌スペクトルを持つのが特徴で、クロストリジウム・ディフィシルに対して選択的・殺菌的に作用することが可能です。
そのため、他の腸内細菌に対する影響が少ないと言われています。

偽膜性大腸炎を含むクロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎に対して使用されます。
日本国内でクロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎に対して使用されている治療薬にはメトロニダゾールとバンコマイシンがありますが、感受性の低下や再発等の問題が生じており、ダフクリア錠が新たな選択肢に加わることが期待されています。

スピラマイシン錠「サノフィ」

  • 医薬品名:スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」
  • 成分名:スピラマイシン
  • 申請者:サノフィ
  • 効能・効果:先天性トキソプラズマ症の発症抑制
  • 用法・用量:通常、妊婦には1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口投与する。

先天性トキソプラズマ症の発症抑制

妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合、トキソプラズマが胎盤を介して胎児に感染してしまう可能性があります。
その場合、胎児に「先天性トキソプラズマ症」が発症し、流産や死産、水頭症などの原因となる場合があります。
現在は適応外でアセチルスピラマイシン錠(成分名:スピラマイシン酢酸エステル)が使用されていますが、日本産婦人科学会からの要望に基づいて開発された薬剤です。

ガザイバ点滴静注

  • 医薬品名:ガザイバ点滴静注1000mg
  • 成分名:オビヌツズマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:中外製薬
  • 効能・効果:CD20陽性の濾胞性リンパ腫
  • 用法・用量:(省略)

糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体

現在、CD20陽性のB細胞性濾胞性リンパ腫に対する標準治療は「リツキシマブと化学療法の併用」です。
今回審議されたガザイバ(オビヌツズマブ)は「濾胞性リンパ腫」の治療でリツキシマブを上回る有用性が確認されています。
リツキシマブ(製品名:リツキサン)もオビヌツズマブも腫瘍細胞のCD20に対する抗体ということでは同じですが、オビヌツズマブはより抗体依存性細胞傷害(ADCC*6)活性を高めた医薬品になります。
臨床試験ではリツキサンに対して有意に無増悪生存期間を延長しています。

リムパーザ錠の適応追加

リムパーザ錠 添付文書
リムパーザ錠 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • リムパーザ錠100mg
    • リムパーザ錠150mg
  • 成分名:オラパリブ
  • 申請者:アストラゼネカ
  • 効能・効果:がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん
  • 用法・用量:(省略)

日本初のPARP阻害薬リムパーザ

今年の4月18日に薬価収載・発売されたばかりのリムパーザ錠に新たな適応が追加されることになりそうです。
リムパーザ錠(オラパリブ)は日本初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP*7)阻害薬です。
もともと承認されていた適応は「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」のみでした。
詳しい作用機序等は過去記事を参照してください。
平成30年4月18日に薬価収載された医薬品一覧 – 薬剤師の脳みそ

適応に「BRCA遺伝子変異」の有無が記載される初めての薬剤

正式に承認されれば「BRCA遺伝子変異」を判定した上で使用する初めての薬剤になります。

ちなみに、現在承認されている「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」においては「BRCA遺伝子変異」の有無は問われません。
これはBRCA遺伝子変異を持つ卵巣がん」が高率で「白金系抗悪性腫瘍剤感受性」であるためです。

海外での承認状況を見てみると、米国で「BRCA遺伝子変異(病的変異または病的変異疑い)陽性の乳がん」の適応で承認されています。(2018年2月時点)
日本での承認はそれよりも厳しく「HER2陰性の手術不能または再発乳がん」という縛りが加わるようです。

イラリス皮下注の適応追加

イラリス皮下注 添付文書
イラリス皮下注 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • イラリス皮下注用150mg
    • イラリス皮下注射液150mg
  • 成分名:カナキヌマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:
  • 追加された効能・効果:既存治療で効果不十分な全身型若年性特発性関節炎
  • 用法・用量:
  • 1日薬価:円

ヒト型抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体

イラリス(成分名:カナキヌマブ(遺伝子組換え))はヒトインターロイキン*8-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1モノクローナル抗体で、炎症性サイトカインであるIL-1βに特異的に結合し、活性を抑制することで様々な炎症反応を改善します。
現在、イラリスは下記の適応を有しています。

  1. 以下のクリオピリン関連周期性症候群
    • 家族性寒冷自己炎症症候群
    • マックル・ウェルズ症候群
    • 新生児期発症多臓器系炎症性疾患
  2. 既存治療で効果不十分な家族性地中海熱
  3. TNF受容体関連周期性症候群
  4. 高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
  • 2011年9月:新薬として製造承認取得
    • クリオピリン関連周期熱症候群*9
  • 2016年12月:適応追加
    • 既存治療で効果不十分な家族性地中海熱*10
    • TNF受容体関連周期性症候群*11
    • 高IgD症候群*12(メバロン酸キナーゼ欠損症*13

全身型若年性特発性関節炎の新たな治療選択肢

16歳未満に発症した関節炎のうち、原因不明(特発性)で、症状が6週間以上続くものが若年性特発性関節炎*14とされています。
今回追加されるのは、そのうち「全身型」に分類(全身型若年性特発性関節炎*15)されるものに対する適応になります。
現在は、ステロイドによる治療が中心となっていますが、それでも効果不十分の場合に使用されることになります。

トレアキシン点滴静注・ガザイバ点滴静注の併用療法

トレアキシン点滴静注 添付文書
トレアキシン点滴静注 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • トレアキシン点滴静注用25mg
    • トレアキシン点滴静注用100mg
  • 成分名:ベンダムスチン塩酸塩
  • 申請者:シンバイオ製薬
  • 追加された効能・効果:既存の効能・効果である「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」においてガザイバ点滴静注との併用療法を追加

ガザイバ点滴静注が適応とする「CD20陽性の濾胞性リンパ腫」はトレアキシン点滴静注の適応である「CD20陽性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」の組織型の一つです。

タフィンラーカプセル・メキニスト錠 併用療法の適応拡大

タフィンラーカプセル 添付文書
タフィンラーカプセル インタビューフォーム
メキニスト錠 添付文書
メキニスト錠 インタビューフォーム

  • 医薬品名①:
    • タフィンラーカプセル50mg
    • タフィンラーカプセル75mg
  • 申請者:ノバルティスファーマ
  • 成分名①:ダブラフェニブメシル酸塩
  • 追加された用法・用量①:悪性黒色腫の場合
    • 通常、成人にはダブラフェニブとして1回150mgを1日2回、空腹時に経口投与する。ただし、術後補助療法の場合には、トラメチニブと併用し、投与期間は12ヵ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。
  • 医薬品名②:
    • メキニスト錠0.5mg
    • メキニスト錠2mg
  • 成分名②:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物
  • 追加された用法・用量②ダブラフェニブとの併用において、通常、成人にはトラメチニブとして2mgを1日1回、空腹時に経口投与する。ただし、術後補助療法の場合には、投与期間は12ヵ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。

本年3月23日に「BRAF遺伝子変異を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する適応を追加取得したばかりでしたが、既存の「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」に加えて、その「術後維持療法」での適応も追加されます。

イムブルビカカプセルの適応追加

イムブルビカカプセル 添付文書
イムブルビカカプセル インタビューフォーム

  • 医薬品名:イムブルビカカプセル140mg
  • 成分名:イブルチニブ
  • 申請者:ヤンセンファーマ
  • 追加される効能・効果:未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)

既存の適応は「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」と「再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」ですが、慢性リンパ性白血病については未治療でも使用可能になる予定です。

平成30年6月8日 薬食審医薬品第一部会

エンタイビオ点滴静注用

エンタイビオ点滴静注用 添付文書

  • 医薬品名:エンタイビオ点滴静注用300mg
  • 成分名:ベドリズマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:武田薬品
  • 効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
  • 用法・用量:通常、成人にはベドリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注する。

新しい潰瘍性大腸炎治療薬

潰瘍性大腸炎は免疫系の異常による疾患です。
免疫系が大腸粘膜を異物と認識した結果、血管内から腸管組織にTリンパ球が移動し、大腸粘膜を攻撃し、大腸粘膜の炎症を引き起こします。
症状の程度は様々ですが、エンタイビオの適応となるのは「中等症から重症の潰瘍性大腸」で「既存治療で効果不十分な場合」です。

Tリンパ球の遊走

血管内に存在する白血球の一種であるTリンパ球が標的部位に移動することを、「Tリンパ球の遊走」と言います。
活性化されたTリンパ球の表面には「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が発現しています。
この「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が、血管内皮細胞に発現している「MAdCAM-1*16」に結合することで、活性化Tリンパ球が血管内皮に接着し、そこから組織内に移行していきます。

ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体の働き

エンタイビオの有効成分であるベドリズマブは「ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体」と呼ばれています。
ベドリズマブは「α4β7インテグリン」に特異的に結合することで、「α4β7インテグリン」と「MAdCAM-1」の結合を阻害し、「Tリンパ球の遊走」を抑制、炎症を軽減します。

日本でも大型新薬となるか?

エンタイビオはすでに海外で発売(Entyvio)され、2016年度は全世界で1432億円を売り上げるブロックバスター*17です。
抗TNFα抗体による治療に対し効果不十分な場合でも効果が期待できることから、日本での承認が期待されています。
これまでエンティビオと呼ばれていましたが、日本国内での正式名称はエンタイビオになったみたいですね。
気になるのは薬価ですが、かなり高くなりそうですね。

ジェミーナ配合錠

ジェミーナ配合錠 添付文書

  • 医薬品名:ジェミーナ配合錠
  • 成分名:レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール
  • 申請者:ノーベルファーマ
  • 効能・効果:月経困難症
  • 用法・用量:下記のいずれかを選択する。
    • 1日1錠を毎日一定の時刻に21日間連続経口投与し、その後7日間休薬する。以上28日間を1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。
    • 1日1錠を毎日一定の時刻に77日間連続経口投与し、その後7日間休薬する。以上84日間を1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、85日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。

初のレボノルゲストレル配合月経困難症薬

レボノルゲストレル0.09mg、エチニルエストラジオール0.02mgの配合剤です。
28日間を1周期とするか、84日間を1周期とするか、患者ごとに用法を選択できます。
配合されるレボノルゲストレル/エチニルエストラジオールの量は異なりますが、成分としてはアンジュ、トリキュラー、ラベルフィーユと同じですね。
レボノルゲストレルを有効成分とする月経困難症治療薬としては子宮内黄体ホルモン放出システムであるミレーナがありますが、レボノルゲストレルを配合した薬剤で月経困難症薬に対する適応を有する薬剤は初めてです。

トレリーフにレビィ小体型認知症に関する適応追加

トレリーフ錠25mg 添付文書
トレリーフ錠25mg インタビューフォーム
トレリーフOD錠 添付文書
トレリーフOD錠 インタビューフォーム

  • 医薬品名:
    • トレリーフ錠25mg
    • トレリーフOD錠25mg
  • 成分名:ゾニサミド
  • 申請者:大日本住友製
  • 追加された効能・効果:レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)
  • 追加された用法・用量:本剤は、レボドパ含有製剤と併用する。
    • レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム:通常、成人にゾニサミドとして、1日1回25mgを経口投与する。

レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムに対する適応を有する初の医薬品

現在は「パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)」の適応しかありませんが、「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)」が追加になります。
承認されれば「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム」を適応に持つ薬剤は初めてです。
(アリセプトが適応とするのは「レビー小体型認知症」)

フェントステープ0.5mgの追加

フェントステープ 添付文書

  • 医薬品名:
    • フェントステープ0.5mg(新規格追加)
    • フェントステープ1mg
    • フェントステープ2mg
    • フェントステープ4mg
    • フェントステープ6mg
    • フェントステープ8mg
  • 成分名:フェンタニルクエン酸塩
  • 申請者:久光製薬
  • 用法・用量:本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。
    通常、成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。
    初回貼付用量は本剤貼付前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択する。その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。

0.5mgの追加と0.5mg単位の用量調節

新たな規格であるフェントステープ0.5mgが追加されました。
それに伴い、開始用量が0.5mgから選択できるようになり、0.5mg単位での用量調節も可能になっています。

ジアグノグリーン注射用の適応追加

ジアグノグリーン注射用 添付文書
ジアグノグリーン注射用 インタビューフォーム

  • 医薬品名:ジアグノグリーン注射用25mg
  • 成分名:インドシアニングリーン
  • 申請者:第一三共
  • 追加される効能・効果:血管及び組織の血流評価
  • 用法・用量:インドシアニングリーンとして25mgを5~10mLの注射用水で溶解し、使用目的に応じて、通常0.04~0.3mg/kgを静脈内投与する。なお、脳神経外科手術時における脳血管の造影の場合には、インドシアニングリーンとして25mgを5mLの注射用水で溶解し、通常0.1~0.3mg/kgを静脈内投与する。

すでに公知申請が認められている適応

適応追加になる「血管及び組織の血流評価」の適応は公知申請が認められていたため、実際にはすでに保険使用可能となっていました。
今回の承認されれば正式な適応として追加されています。

*1:Programmed cell death-1

*2:Programmed Death-Ligand 1

*3:Programmed Death-Ligand 2

*4:ポリエチレングリコール

*5:Clostridium difficile

*6:Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity

*7:poly[ADP]- ribosepolymerase

*8:IL:InterLeukin

*9:CAPS:Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome

*10:FMF:Familial Mediterranean fever

*11:TRAPS:TNF Receptor-Associated Periodic Syndrome

*12:HIDS:Hyper IgD Syndrome

*13:MKD:Mevalonate Kinase Deficiency

*14:JIA:Juvenile Idiopathic Arthritis

*15:SJIA:Systemic Juvenile Idiopathic Arthritis

*16:Mucosal Addressin Cell Adhesion Molecule-1

*17:画期的な新薬かつ、その領域で圧倒的な売り上げの製品

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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