2019年6月13日付の官報で後発医薬品の薬価収載が告示、2019年6月14日付で正式に薬価基準収載されました。
今回薬価収載されるのは2019年2月15日に承認されていた後発医薬品がメインですが、薬価収載を見送ったものもあるようです。
注目されるのは、今回初めてジェネリック医薬品が登場するブロナンセリン(先発医薬品名:ロナセン)、トラチモ配合点眼液(トラボプロスト・チモロールマレイン酸塩、先発医薬品名:デュオトラバ) 、モメタゾン点鼻液(先発医薬品名:ナゾネックス)じゃないかと思います。
エベロリムスAF(先発医薬品名:アフィニトール)、エベロリムスCE(先発医薬品名:サーティカン)、オロパタジン点眼液(先発医薬品名:パタノール)、ブデホル吸入粉末剤(ブデゾニド・ホルメテロール、先発医薬品名:シムビコート)、テリパラチド皮下注用56.5μg「旭化成」(先発医薬品名:テリボン注)、ボルテゾミブ注射用3mg「DSEP」(先発医薬品名:ベルケイド)の薬価収載は見送られたようです。
今回薬価収載される医薬品の承認時(2019年2月15日)の記事はこちらです。
2019年6月13日付の官報へのリンクはこちら。
使用薬剤の薬価(薬価基準)等の一部を改正する告示(厚生労働三二)
初めて登場するジェネリック医薬品
今回薬価収載された新規ジェネリックは内服・外用・注射の全部合わせて5つだけです。
製造承認は受けているのに薬価収載が見送りになったものが多いですね。
- ブロナンセリン(先発医薬品名:ロナセン)
- トラチモ配合点眼液(トラボプロスト・チモロールマレイン酸塩、先発医薬品名:デュオトラバ)
- モメタゾン点鼻液(先発医薬品名:ナゾネックス)
- オキシコドン注射液(先発医薬品名:オキファスト注)
- ダルベポエチンアルファ注シリンジ(先発医薬品名:ネスプ注射液プラシリンジ)
これだけです。
ロナセンのジェネリック(ブロナンセリン)
まずはロナセンの後発医薬品です。
2019年2月15日に承認されていたブロナンセリン散2%、ブロナンセリン錠2mg、ブロナンセリン錠4mg、ブロナンセリン錠8mgが薬価収載されています。
錠剤は10社の参入なので、「10社超え」とはならず0.5掛けですが、ロナセンが新薬創出等加算の対象であるため、単純に薬価だけ見ると、約0.4掛けになっています。
「DSPB」(DS ファーマバイオメディカル)はAGです。
ブロナンセリン散2%
ブロナンセリン散2%は承認段階から2社のみで全て薬価収載されています。
ブロナンセリン散2%「DSPB」はAGです。」
- 医薬品名と薬価
- ブロナンセリン散2%:278.00円/g
- 先発医薬品名と薬価
- ロナセン散2%:678.90円/g(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「アメル」、「DSPB」(2社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.5掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の5割)
ブロナンセリン錠
ブロナンセリン錠は承認段階から12社でしたが、薬価収載されたのは10社のみです。
後発医薬品の薬価が0.4掛けになるのは10社を「超えた」場合なので、メーカー的にはぎりぎりセーフでしたね。
ブロナンセリン錠「DSPB」はAGです。
- 医薬品名と薬価
- ブロナンセリン錠2mg:30.50円/錠
- ブロナンセリン錠4mg:57.00円/錠
- ブロナンセリン錠8mg:106.50円/錠
- 先発医薬品名と薬価
- ロナセン錠2mg:75.00円/錠(新薬創出等加算の対象)
- ロナセン錠4mg:140.70円/錠(新薬創出等加算の対象)
- ロナセン錠8mg:262.90円/錠(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「アメル」、「KN」、「サワイ」、「タカタ」、「DSEP」、「DSPB」、「トーワ」、「日医工」、「ニプロ」、「YD」(10社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.5掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の5割)
デュオトラバ配合点眼液のジェネリック(トラチモ配合点眼液)
デュオトラバ配合点眼液のジェネリックは2019年2月15日に「ニットー」、2018年8月15日に「サンド」が承認されていますが、薬価収載されたのはトラチモ配合点眼液「ニットー」のみです。
- 医薬品名と薬価
- トラチモ配合点眼液:574.60円/mL
- 先発医薬品名と薬価
- デュオトラバ配合点眼液:1149.10円/mL
- 参入メーカー:「ニットー」(1社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.5掛け
ナゾネックス点鼻液のジェネリック(モメタゾン点鼻液)
ナゾネックス点鼻液のジェネリックは2019年2月15日に「MYL」、2017年8月15日に「杏林」が承認されており、今回2つ同時に薬価収載となりました。
モメタゾン点鼻液50μg「杏林」はAGです。
- 医薬品名と薬価
- モメタゾン点鼻液50μg56噴霧用:746.10円/瓶
- モメタゾン点鼻液50μg112噴霧用:1,492.20円/瓶
- 先発医薬品名と薬価
- ナゾネックス点鼻液50μg56噴霧用:1,791.60円/瓶(新薬創出等加算の対象)
- ナゾネックス点鼻液50μg112噴霧用:3,602.30円/瓶(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「MYL」、「杏林」(2社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.5掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の5割)
「杏林」はAGなので先発医薬品と全く同じと思っていい製剤です。
MRさん曰く、何もかも同じで、違うのは名前等を記載したシールだけだそうです。
「MYL」については粘稠性を持たせることで液だれを防いだ製剤のようですね。
この違いがメリットとなるかどうかですね。
オキファスト注のジェネリック(オキシコドン注射液「第一三共」)
2019年2月15日に承認されていたオキシコドン注射液10mg、オキシコドン注射液50mgが薬価収載されています。
オキファスト注のジェネリックになりますが、参入するのは「第一三共」のみです。
- 医薬品名と薬価
- オキシコドン注射液10mg:164.00円/管
- オキシコドン注射液50mg:747.00円/管
- 先発医薬品名と薬価
- オキファスト注10mg:348.00円/管(新薬創出等加算の対象)
- オキファスト注50mg:1,585.00円/管(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「第一三共」(1社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.5掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の5割)
初のバイオセイム ネスプ注射液のAG(ダルベポエチンアルファ注「KKF」)
ネスプ注射液プラシリンジのバイオセイム(オーソライズドバイオシミラー)ダルベポエチンアルファ注「KKF」が薬価収載されています。
日本初のバイオセイムになります。
有効成分、原薬、添加物、製法等が先発医薬品と同一のバイオ医薬品であるバイオセイムは先発医薬品の0.7掛けの薬価になります。
- 医薬品名と薬価
- ダルベポエチンアルファ注5μgシリンジ「KKF」:876.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注10μgシリンジ「KKF」:1,546.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注15μgシリンジ「KKF」:2,154.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注20μgシリンジ「KKF」:2,727.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注30μgシリンジ「KKF」:3,801.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注40μgシリンジ「KKF」:4,811.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注60μgシリンジ「KKF」:6,706.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注120μgシリンジ「KKF」:11,831.00円/筒
- ダルベポエチンアルファ注180μgシリンジ「KKF」:16,492.00円/筒
- 先発医薬品名と薬価
- ネスプ注射液5μgプラシリンジ:1,265.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液10μgプラシリンジ:2,307.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液15μgプラシリンジ:3,280.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液20μgプラシリンジ:4,162.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液30μgプラシリンジ:6,015.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液40μgプラシリンジ:7,393.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液60μgプラシリンジ:10,624.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液120μgプラシリンジ:18,744.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- ネスプ注射液180μgプラシリンジ:26,270.00円/筒(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「KKF」(バイオセイム)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.7掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の7割)
新規参入以外で注目のジェネリック
新規参入ではないんですが気になった品目についてまとめていきます。
ユリーフのジェネリックが一気に収載(シロドシン)
ユリーフのジェネリックについてはAGであるシロドシン錠「DSEP」とシロドシンOD錠「DSEP」のみが発売されている状態ですが、今回一気に13社が薬価収載されています。
10社を超えたため、薬価は0.4掛けとなり、今回収載されたものはすでに発売されているAGよりも安くなっています。
そもそもAGの発売は3月で、その時点で他社のシロドシンが0.4掛けになることがほぼわかっていたので、AGを採用せず、今回の収載を待っていた薬局も少なくないのではないでしょうか?
- 医薬品名と薬価
- シロドシンOD錠2mg:14.40円/錠
- シロドシンOD錠4mg:28.00円/錠
- シロドシン錠2mg:14.40円/錠
- シロドシン錠4mg:28.00円/錠
- 先発医薬品名と薬価
- ユリーフOD錠2mg:37.00円/錠(新薬創出等加算の対象)
- ユリーフOD錠4mg:72.10円/錠(新薬創出等加算の対象)
- ユリーフ錠2mg:37.00円/錠(新薬創出等加算の対象)
- ユリーフ錠4mg:72.10円/錠(新薬創出等加算の対象)
- 参入メーカー:「あすか」、「EE」、「Me」、「オーハラ」、「杏林」、「KN」、「KMP」、「ケミファ」、「サワイ」、「ツルハラ」、「日新」、「ニプロ」、「YD」(13社)
- 先発医薬品と比較した薬価の掛け率:0.4掛け(新薬創出等加算累積額の控除後の4割)
※すでに発売されているAGの薬価は以下の通り
- シロドシンOD錠2mg「DSEP」:18.00円/錠
- シロドシンOD錠4mg「DSEP」:35.00円/錠
- シロドシン錠2mg「DSEP」:18.00円/錠
- シロドシン錠4mg「DSEP」:35.00円/錠
新規オーソライズドジェネリックの登場
第一三共(エスファ)からは2つの抗がん剤のAGが薬価収載されています。
第一三共はAG戦略をどんどん進めていますね!
カソデックスのAG
カソデックスのAGが薬価収載されています。
- ビカルタミドOD錠80mg「DSEP」:294.70円/錠
- ビカルタミド錠80mg「DSEP」:294.70円/錠
です。
(先発医薬品のカソデックスの薬価は715.00円/錠)
アリミデックスのAG
アリミデックスのAGが薬価収載されています。
- アナストロゾール錠1mg「DSEP」:154.00円/錠
(先発医薬品のアリミデックス錠1mgの薬価は403.60円/錠)
タモキシフェンのAGは見送り?
- タモキシフェン錠10mg「DSEP」
- タモキシフェン錠20mg「DSEP」
の名前が見当たらないですね・・・。
今回は薬価収載見送りなのかな?
そのほか
そのほかちょっと気になるものについて触れておきます。
エクセグランのジェネリックはゾニサミドEX
今回、ゾニサミド錠100mgEX「KO」(薬価:16.50円/錠)という医薬品が収載されています。
EXってなんだろう・・・と思ったんですが、同じゾニサミドである「エクセグラン(EX)」(薬価:27.40円/錠)と「トレリーフ(?)」を区別するための名称のようですね。
ゾニサミド錠100mg「アメル」の名称もゾニサミド錠100mgEX「アメル」に変更されるのかな?
添加物にナロキソンを加えたオキシコドン
- オキシコドン徐放錠5mgNX「第一三共」
- オキシコドン徐放錠10mgNX「第一三共」
- オキシコドン徐放錠20mgNX「第一三共」
- オキシコドン徐放錠40mgNX「第一三共」
NXってなんだろうと思ったら添加物に「ナロキソン塩酸塩」が入っています。
オピオイド拮抗薬であるナロキソンを添加物レベルで微量加えることでどういう効果が期待されるんでしょうか?
これ、気になるなあ。
後発医薬品と一緒に薬価収載された先発医薬品
後発医薬品以外に先発医薬品の剤形違い・規格違いも収載されています。
- グルベス配合OD錠
- アラミスト点鼻液27.5μg120噴霧用
グルベスのOD錠にアラミストの120噴霧用。
アラミストはなぜこのタイミングで・・・。
まとめ
今回の薬価収載は控えめ?な印象です。
目玉はロナセンとナゾネックスになるのかな?
AGが複数登場
今回、薬価収載されるAGは以下の通りです。
- アナストロゾール錠1mg「DSEP」(先発医薬品名:アリミデックス錠)
- ダルベポエチンアルファ注シリンジ「KKF」(先発医薬品名:ネスプ注プラシリンジ)
- ビカルタミド錠80mg「DSEP」(先発医薬品名:カソデックス錠)
- ビカルタミドOD錠80mg「DSEP」(先発医薬品名:カソデックスOD錠)
- ブロナンセリン錠2mg「DSPB」(先発医薬品名:ロナセン錠2mg)
- ブロナンセリン錠4mg「DSPB」(先発医薬品名:ロナセン錠4mg)
- ブロナンセリン錠8mg「DSPB」(先発医薬品名:ロナセン錠8mg)
- ブロナンセリン散2%「DSPB」(先発医薬品名:ロナセン散)
- モメタゾン点鼻液50μg「杏林」56噴霧用(先発医薬品名:ナゾネックス点鼻液50μg56噴霧用)
- モメタゾン点鼻液50μg「杏林」112噴霧用(先発医薬品名:ナゾネックス点鼻液50μg112噴霧用)
AGがだんだん増えていっていますね。
今回は薬価収載見送りが多い!
2019年2月15日に製造承認を取得していたにも関わらず、今回は薬価収載されなかったものが多くあります。
っていうかこれだけたくさん薬価収載されないのは初めてじゃないですかね?
ジェネリック戦略の難しさが伺えます。
- エベロリムスAF「サンド」(先発医薬品名:アフィニトール)
- エベロリムスCE「サンド」(先発医薬品名:サーティカン)
- オロパタジン点眼液0.1%「サンド」(先発医薬品名:パタノール)
- ブデホル吸入粉末剤(ブデゾニド・ホルメテロール、先発医薬品名:シムビコート)
- ボルテゾミブ注射用3mg「DSEP」(先発医薬品名:ベルケイド)
- タモキシフェン錠10mg「DSEP」(先発医薬品名:ノルバデックス)
- タモキシフェン錠20mg「DSEP」(先発医薬品名:ノルバデックス)
サンドとDSEPのものはAGっぽいので戦略上の都合でしょうか?
ブデホルについては安定供給を行うため今回は見送りと報道されていますね。
どんなデバイスなのか楽しみにしていたんですが、年末までお預けになりそうですね。