医療情報・システム基盤整備体制充実加算(旧 電子的保健医療情報活用加算)

2022年診療報酬改定で追加された電子的保健医療情報活用加算(調剤管理料)ですが、存在したのは2022年4月〜9月末のわずか半年でした。
2022年9月末をもって電子的保健医療情報活用加算は廃止、2022年10月からは医療情報・システム基盤整備体制充実加算が新設されました。
さらに2023年4月からは医療情報・システム基盤整備体制充実加算に対して特例措置(2023年4月〜12月)が行われます。

この記事では医療情報・システム基盤整備体制充実加算(調剤管理料)についての解説に加えて、電子的保健医療情報活用加算との違いや考え方について詳しくまとめたいと思います。

医療情報・システム基盤整備体制充実加算のまとめ(特例措置含)

最初に医療情報・システム基盤整備体制充実加算について特例措置も含めて簡単にまとめます。

  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(調剤管理料):3点(6月に1回) ※4点(2023.4〜12)
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算2(調剤管理料):1点(6月に1回)

算定要件

  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1:施設基準を満たす場合
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算2:1に加えてオンライン資格確認等により情報を取得等した場合(マイナ保険証を利用した場合)

施設基準

  • レセプトのオンライン請求を行なっている ※令和5年12月31日までにこれを開始する旨について、地方厚生(支)局長に届け出た場合は満たしているものとみなす
  • オンライン資格確認を行う体制を有している(医療機関等向けポータルサイトで運用開始日の登録を実施)
  • 保険薬局の見やすい場所及びホームページ等に以下の内容を掲示
    • ・オンライン資格確認を行う体制を有していること
    • ・処方箋を提出した患者に対し、薬剤情報、特定健診情報その他必要な調剤に関する情報を取得・活用して、調剤を行うこと

※は2023年4月から12月まで限定的に実施される特例措置

医療情報・システム基盤整備体制充実加算の新設と電子的保健医療情報活用加算の廃止

2022年度診療報酬改定で新設された「電子的保健医療情報活用加算」ですが、2022年9月末をもってあっさりと廃止されてしまいました。
入れ替わる形で新設されたのが「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」です。

オンライン資格確認の加算が見直された背景

個別改定項目には以下のように記載されています。

② オンライン資格確認等システムを通じた患者情報等の活用に係る評価の見直し

第1 基本的な考え方
令和5年4月より、保険医療機関・保険薬局に、オンライン資格確認等システムの導入が原則として義務付けられること等を踏まえ、オンライン資格確認等システムを通じた患者情報等の活用に係る現行の評価を廃止し、初診時等に患者の薬剤情報や特定健診情報等の診療情報を活用して診療等を実施し質の高い医療を提供する体制及び健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認等による患者情報の取得の効率化を考慮した評価体系とし、令和4年10月から適用する。

第2 具体的な内容
2.保険薬局において、患者の薬剤情報や特定健診情報等を活用して質の高い調剤等を実施する体制について、新たに評価を行うとともに、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を利用した場合は、患者情報の取得等が効率化されることを踏まえ、別の評価とする。なお、電子的保健医療情報活用加算は廃止する。

中医協での審議を踏まえると、オンライン資格確認に関する加算が見直された理由としては以下の3つが考えられます。

  1. マイナ保険証を利用した場合の方が患者の負担が増えることに対する批判
  2. オンライン資格確認の導入が遅れていること
  3. オンライン資格確認導入の原則義務化

マイナ保険証を利用した場合の方が患者の負担が増えることに対する批判

2022年8月10日に開催された中医協(第527回)の中で、オンライン資格確認等システムを導入した医療機関・薬局の意見に関する資料が公開されています。

オンライン資格確認等システム導入医療機関・薬局の意見
医療DX対応について(中医協 総-8-4 4.8.10)より

「【4】オンライン資格確認等システム導入に対する患者の声」の「医科」の部分(左下)にも記載されているように、マイナ保険証を持参していても「点数が高くなるなら同意したくない」「点数に見合うメリットを感じられない」といった理由でオンライン資格確認を利用しないケースが想定されていました。

この議論の結果、「電子的保健医療情報活用加算」は廃止に向かうことになります。

オンライン資格確認の導入が遅れていること

2022年8月10日に開催された中医協(第527回)の中で、オンライン資格確認の導入状況に関する資料が公開されています。

医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入状況
医療DX対応について(中医協 総-8-4 4.8.10)より
オンライン資格確認の「中間到達目標」
医療DX対応について(中医協 総-8-4 4.8.10)より

資料を見るとわかるように、すべての医療機関・保険薬局が2023年4月までオンライン資格確認を導入するにはかなり無理があります。

オンライン資格確認導入については補助金の見直しが行われますが、診療報酬(調剤報酬)による推進も必要と考えられました。

オンライン資格確認導入の原則義務化

オンライン資格確認の原則義務化については、2022年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2022 について」(骨太の方針2022)の中で以下のように記載されています。

オンライン資格確認について、保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付けるとともに、導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する支援等の措置を見直す141。2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止142を目指す。

141 診療報酬上の加算の取扱いについては、中央社会保険医療協議会において検討。
142 加入者から申請があれば保険証は交付される。

これを受けて「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療養担当規則)ならびに「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」(薬担規則)の改正が行われ、令和5年4月から保険保険医療機関・保険薬局のオンライン資格確認導入が原則義務化されることになりました。

原則義務化に伴いオンライン資格確認の評価自体を見直すことになり、新たに設定されたのが「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」です。

2022年10月から変わったのは加算の名前だけ?

2022年9月末に電子的保健医療情報活用加算は廃止され、2022年10月からは医療情報・システム基盤整備体制充実加算が新設されます。
実質、電子的保健医療情報活用加算が医療情報・システム基盤整備体制充実加算に変更される形ですが、変更されるのは名前だけではありません。

それぞれの点数・算定要件・施設基準を比較してみます。

オンライン資格確認
による薬剤情報等の取得
電子的保健医療情報活用加算医療情報・システム基盤整備体制充実加算
ア:3点(月1回)2:1点(6月に1回まで)
×イ:1点(3月に1回)1:3点(6月に1回まで)
施設基準(1)電子情報処理組織の使用による請求を行っている電子情報処理組織の使用による請求を行っている
施設基準(2)電子資格確認(オンライン資格確認)を行う体制を有しているオンライン資格確認を行う体制を有している
医療機関等向けポータルサイトにおいて運用開始日の登録を行う
施設基準(3)(2)の体制に関する事項について、当該保険薬局の見やすい場所に掲示次に掲げる事項について、当該保険薬局の見やすい場所及びホームページ等に掲示
ア オンライン資格確認を行う体制を有していること。
イ 当該保険薬局に処方箋を提出した患者に対し、
薬剤情報、特定健診情報その他必要な調剤に関する情報を取得・活用して、調剤を行うこと。

違いを簡単にまとめてみます。

  1. 変更後は薬剤情報を取得した場合の方が点数が低くなる
  2. 変更後は算定できる頻度が減るため実質引き下げ
  3. 変更後は運用開始日の登録が施設基準に明記(変更前は疑義解釈に記載)
  4. 変更後は掲示事項に「薬剤情報、特定健診情報その他必要な調剤に関する情報を取得・活用して、調剤を行うこと」が追加

ポイントは1と2ですね。
すでに電子的保健医療情報活用加算を算定していた場合は、掲示物の修正も忘れないようにしましょう。

参考:医科・歯科の変更(電子的保健医療情報活用加算→医療情報・システム基盤整備体制充実加算)

電子的保健医療情報活用加算(廃止)

  • マイナ保険証を利用する場合:7点(初診)、4点(再診)
  • 利用しない場合:3点(初診)

医療情報・システム基盤整備体制充実加算(新設)

  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合):4点
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算2(1であってオンライン資格確認等により情報を取得等した場合):2点

2023年4月〜12月の特例措置

マイナンバーカード、オンライン資格確認の導入を後押しすることを目的に、マイナ保険証を使わない場合(従来型の保険証を利用した場合)の医療情報・システム基盤整備体制充実加算の点数を引き上げ、電子情報処理組織の使用による請求(レセプトのオンライン請求)に関する施設基準の緩和が実施されます。

今回の特例措置は2023年4月〜2023年12月の時限的なものです。

  • 特例措置が実施される期間:2023年4月〜12月(令和5年4月〜12月)
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(マイナンバーカードを利用しない場合):3点(6月に1回)→4点(6月に1回)
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算2(マイナンバーカードを利用する場合):変更なし 1点(6月に1回)
  • 施設基準の緩和:電子情報処理組織の使用による請求(レセプトのオンライン請求)について、2023年12月31日(令和5年12月31日)までに開始する旨を届出ている場合も対象

医科についても同様の特例措置が実施されますが、これまで存在しなかった医療情報・システム基盤整備体制充実加算3(再診時にマイナンバーカードを利用しない場合)が時限的に新設されます。

特例措置が実施される背景

個別改定項目には以下のように記載されています。

2 医療DXの推進のためのオンライン資格確認の 導入・普及に関する加算の特例措置

第1 基本的な考え方
医療DXの推進のためのオンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点から、保険医療機関における初診時及び再診時並びに保険薬局における調剤時について、医療情報・システム基盤整備体制充実加算1の評価を見直すとともに、再診時に診療情報を活用して診療等を実施することについて、新たな評価を行う特例措置を講ずることとする。
また、あわせて療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和51年厚生省令第36号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求(以下「オンライン請求」という。)を更に普及する観点から、当該加算の算定要件を見直す特例措置を講ずることとする。
上記特例措置については、令和5年4月から12月まで(9か月間)時限的に適用する。

第2 具体的な内容
4.医療情報・システム基盤整備体制充実加算の施設基準を満たした保険薬局において調剤を行った場合における評価を見直す。また、オンライン資格確認等システムを導入した保険薬局が、オンライン請求を行っていない場合において、オンライン請求を令和5年12月31日までに開始する旨を地方厚生局長等に届け出た場合には、本加算を算定可能とする。

  • オンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点
  • 電子情報処理組織の使用による請求(オンラインレセプト請求)を更に普及する観点

とありますね。

施設基準の特例措置

医療情報・システム基盤整備体制充実加算における「令和5年12月31日までに電子情報処理組織を使用した診療報酬請求を開始する旨の届出」の取扱いについて

1.届出方法について
届出に当たっては、保険医療機関の場合は、基本通知別添7の様式2の5、保険薬局の場合は特掲通知別添2の様式86を記入の上、原則電子ファイルにてonline-seikyu@mhlw.go.jpに送付すること。やむを得ず、紙媒体にて届出を行う場合は、保険医療機関・薬局の所在地を所管する地方厚生(支)局に郵送により送付すること。 なお、様式については、下記のURLよりダウンロードして使用すること。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00044.html

2.届出期間について
当該届出については、令和5年3月1日より届出可能とする。令和5年4月から医療情報・システム基盤整備体制充実加算を算定する場合、届出期限は令和5年4月10日とされているが、地方厚生(支)局等の窓口は4月1日以降に届出が集中し、混雑が予想されることから、原則令和5年3月31日までに届出を提出すること。
また、当該届出に基づき、医療情報・システム基盤整備体制充実加算を算定する場合、令和5年4月届出分を除き、届出の翌月からの算定となることから、当該届出の最終期限は令和5年12月1日となるため、留意すること。

3.その他
本事務連絡に記載のない事項については、別途疑義解釈等でお示しする。

様式等は 厚生労働省 – 医療情報・システム基盤整備体制充実加算のオンライン請求要件に係る特例措置について で公開されています。

2023年4月1日からオンライン請求要件に関する特例措置の対象となるためには、2023年4月10日までに届出を提出する必要がありますが、原則3月31日までに届出を提出するよう求められています。
それ以降は前月に届出を提出すれば翌月から算定可能となる形です。

届出の提出先は厚生局ではなく、厚生労働省の専用窓口(メール)となっていることにも注意が必要ですね。

疑義解釈

令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置に関する疑義解釈資料の送付について(事務連絡 令和5年1月31日)が出されています。

問1 「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和5年厚生労働省告示第18号)による改正後の「特掲診療料の施設基準等」(平成20年厚生労 働省告示第63号)において、「令和5年12月31日までに療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を開始する旨の届出を行っている保険薬局については、同日までの間に限り、第15の9の5の(1)に該当するものとみなす。」とされたが、当該届出を行った保険薬局において、令和5年12月31日までに、電子情報処理組織の使用による請求が開始されていない場合について、どのように考えればよいか。

(答) 令和5年12月31日時点で電子情報処理組織の使用による請求が開始されていない場合については、届出時点で医療情報・システム基盤整備体制充実加算の要件を満たさなかったものとして取り扱う

この解釈なんですが、「令和5年12月31日時点で電子情報処理組織の使用による請求が開始されていない場合」は「電子情報処理組織の使用による請求を開始する旨の届出」の時点に遡って、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の要件を満たせないものとして、加算分の返金を求められるということであってますかね?

要は「ズルはダメだよ」ってことなのかな?

問2 問1について、「電子情報処理組織の使用による請求を開始」とは、どのような状況を指すのか。

(答) 「保険医療機関又は保険薬局に係る光ディスク等を用いた費用の請求等に関する取扱いについて」(平成18年4月10日 保総発第0410第1号(最終改正 ; 令和3年12月3日 保連発1203第1号) 別添 電子情報処理組織等を用いた費用の請求に関する取扱要領の 別添1 電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出 を審査支払機関に提出していればよい。

下線部の届出は診療情報提供サービスのサイト内で公開されています。

診療報酬情報提供サービス – レセ電システムに関する情報 > 2 取扱要領 > (別添1) 電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出

参考:医科・歯科の特例措置(医療情報・システム基盤整備体制充実加算)

医療情報・システム基盤整備体制充実加算(特例措置)

  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算1(マイナンバーカードの利用なし):4点(初診)→6点(初診)↑
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算2(マイナンバーカードの利用する):2点(初診)(変更なし)
  • 医療情報・システム基盤整備体制充実加算3(マイナンバーカードの利用なし):2点(1月に1回)(再診)新設

参考資料

厚生労働省 – 令和4年度診療報酬改定について(10月改定分)

厚生労働省 – 中央社会保険医療協議会 総会(第534回)議事次第

厚生労働省 – 中央社会保険医療協議会 総会(第527回)議事次第

厚生労働省 – 中央社会保険医療協議会 総会(第526回)議事次第

厚生労働省 – 令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について

医療DX の基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付けに係る経過措置、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱い及び医薬品の安定供給に係る取組の推進に向けた診療報酬上の加算の取扱いについて(諮問)

診療情報提供サービス – レセ電システムに関する情報

内閣府 – 経済財政運営と改革の基本方針2022

保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部を改正する省令(令和4年 厚生労働省令第124号)

オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関等向けポータルサイト

オンライン資格確認の原則義務化に関する特設ページ

アスヤクLABO – 医療情報・システム基盤整備体制充実加算の新設とオンライン資格確認の原則義務化(ぺんぎん薬剤師の薬系トレンド徹底解説!)

m3.com – 医療情報・システム基盤整備体制充実加算って何!?(ぺんぎん薬剤師とはじめる!薬剤師のための中医協講座)

 

 

 

 

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