エプクルーサ配合錠(ソホスブビル/ベルパタスビル)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【最後のC型肝炎治療薬?】

  • 2019年2月25日
  • 2021年1月17日
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今回はエプクルーサ配合錠についてまとめます。
エプクルーサ配合錠(成分名:ソホスブビル/ベルパタスビル)はギリアド・サイエンシズが承認申請を行なった新規C型肝炎治療薬です。
ソホスブビルは核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤でソバルディ(ハーボニー)の有効成分です。
そのソホスブビルと新規NS5A阻害剤ベルパタスビルを組み合わせたのがエプクルーサ配合錠です。
平成31年1月8日付で製造承認取得、平成31年2月25日付で薬価収載(60154.5円/錠)され、同日に発売しています。

エプクルーサ配合錠

エプクルーサ配合錠は国内初の、以下の2つの適応を取得している抗HCV薬になります。

  • 前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
  • C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

DAAsによるHCV治療 8番目の選択肢

C型肝炎ウイルス(HCV*1)に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAAs*2)を用いたインターフェロンフリー(IFN*3フリー)治療法としては8つめの選択肢になります。

  1. ダクルインザ錠(ダクラタスビル)/スンベプラカプセル(アスナプレビル)
  2. ソバルディ(ソホスブビル)
  3. ハーボニー配合錠(ソホスブビル/レジバスビル)
  4. ヴィキラックス配合錠(オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル)
  5. エレルサ錠(エルバスビル)+グラジナ錠(グラゾプレビル)
  6. ジメンシー配合錠(ダクラタスビル/アスナプレビル/ベクラブビル)
  7. マヴィレット配合錠(グレカプレビル/ピブレンタスビル)
  8. エプクルーサ配合錠(ソホスブビル/ベルパタスビル)

エプクルーサの作用機序

エプクルーサ配合錠は核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビル、NS5A阻害剤ベルパタスビルを組み合わせた薬です。
細胞内に侵入したC型肝炎ウイルス(HCV)は自身のRNAを放出します。
その後、HCV RNAは小胞体膜上にHCV複製複合体を形成してHCV RNAの複製を行います。

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エプクルーサ配合錠の作用機序

ソホスブビルはRANの複製を行う酵素 NS5Bポリメラーゼを阻害し、ベルパタスビルはHCV複製複合体を構成するNS5A複製複合体を阻害します。
これら二種類の薬剤の働きにより、エプクルーサ配合錠はHCVの増殖抑制効果を発揮します。

各DAAsの作用分類

復習としてエプクルーサを含むDAAsの作用機序をまとめておきます。

組み合わせNS3/4Aプロテアーゼ
阻害薬
NS5A複製複合体
阻害薬
NS5B
阻害薬
その他
ダクルインザ
/スンベプラ
アスナプレビル
(スンベプラ)
ダクラタスビル
(ダクルインザ)
ソバルディ
(/リバビリン)
ソホスブビルリバビリン
ハーボニーレジバスビルソホスブビル
ヴィキラックス
(/リバビリン)
パリタプレビルオムビタスビルリトナビル
(リバビリン)
エレルサ
/グラジナ
グラゾプレビル
(グラジナ)
エルバスビル
(エレルサ)
ジメンシーアスナプレビルダクラタスビルベクラブビル
マヴィレットグレカプレビルピブレンタスビル
エプクルーサベルパタスビルソホスブビル

 

エプクルーサの保険適応

エプクルーサはこれまでのDAAsにはない適応を取得しているのが特徴です。

C型非代償性肝硬変に対する適応をもつ初の薬剤!

エプクルーサ配合錠の一番の特徴は「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の適応を持つことです。
これまで承認されてきた抗HCV治療薬は「C型慢性肝炎」又は「C型代償性肝硬変」にしか使うことができませんでした。
その為、「C型非代償性肝硬変」の治療には生体肝移植という選択肢しかありませんでした。
ですが、移植後にはかなりの確率でHCVの再感染が起こるため、結局、移植後に従来の抗HCV治療薬を用いた治療を行う必要がありました。

C型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変については第一選択にはならない

エプクルーサ配合錠は「前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の適応も持っています。
「前治療を有する」と記載されているため、ファーストラインで使用することは不可能ということになりますね。
ですので、第一選択は他のDAAsということになりますが、やはりマヴィレットが第一候補になるんでしょうね。

このことは使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0225第9号 平成31年2月25日)にも記載されています。

(5)エプクルーサ配合錠
本製剤の効能・効果は「前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」及び「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」であることから、以下の患者には使用しないこと。

  1. 前治療歴のないC型慢性肝炎ウイルス感染者又はC型代償性肝硬変患者
  2. 慢性肝炎を発症していないC型肝炎ウイルス感染者

引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0225第9号 平成31年2月25日)

各DAAsの保険適応

各DAAsの保険適応について復習をかねてまとめておきます。

肝炎の種類慢性肝炎代償性
肝硬変
非代償性
肝硬変
ジェノタイプ123〜6123〜61〜6
組み合わせダクルインザ
+スンベプラ
ソバルディ
(+リバビリン)
(◯)(◯)
ハーボニー
ヴィキラックス
(+レベトール)
(◯)
エレルサ
+グラジナ
ジメンシー
マヴィレット
エプクルーサ

※△:前治療歴を有する場合に適応
エプクルーサもマヴィレットと同様に全てのジェノタイプに対して効果が期待できることがわかります。(パンジェノ型、パンジェノタイプ)
エプクルーサもマヴィレットの2剤で全てのケースに対応できます。
C型肝炎治療もついにここまで来たかと少し感動しますね。

使用方法や注意点など

添付文書等を参考に薬剤の特徴をもう少し掘り下げてみます。

重度の腎機能障害と併用薬には注意が必要

禁忌
(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者(【薬物動態】の項参照)
  3. 次の薬剤を投与中の患者:カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品(「相互作用」の項参照)

ソホスブビル・ベルパタスビルは以下のトランスポーターの基質です。

  • P-gp
  • BCRP

また、ベルパタスビルは以下の分子種により弱い代謝を受けます。

  • CYP2B6
  • CYP2C8
  • CYP3A4

カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品はいずれも、P-gpならびにCYP3A4を誘導するため、ソホスブビル・ベルパタスビルの血中濃度を低下させてしまう可能性が高いと言うことですね。

また、禁忌ではありませんが、アミオダロンの併用については強く注意すべき内容となっています。

重要な基本的注意
2.本剤及びアミオダロンの併用投与により、徐脈等の不整脈があらわれるおそれがあり、海外の市販後においてソホスブビル含有製剤とアミオダロンの併用により死亡例も報告されていることから、本剤とアミオダロンの併用は可能な限り避けること。ただし、やむを得ず併用する場合には、患者又はその家族に対して併用投与により徐脈等の重篤な不整脈が発現するリスクがあること等を十分説明するとともに、不整脈の徴候又は症状(失神寸前の状態又は失神、浮動性めまい、ふらつき、倦怠感、脱力、極度の疲労感、息切れ、胸痛、錯乱、記憶障害等)が認められた場合には、速やかに担当医師に連絡するよう指導すること。また、併用投与開始から少なくとも3日間は入院下で適切に心電図モニタリングを実施し、退院後少なくとも2週間は患者又はその家族等が心拍数を連日確認し、不整脈の徴候の発現等に注意して十分に観察し、異常が認められた場合には適切な対応を行うこと。
なお、アミオダロンを長期間投与した際の血漿からの消失半減期は19~53日と極めて長いため、本剤の投与開始前にアミオダロンの投与を中止した患者に対しても、上記の対応を実施すること。

併用注意(併用に注意すること)

  • 薬剤名等:アミオダロン
  • 臨床症状・措置方法:

徐脈等の不整脈があらわれるおそれがあることから、やむを得ず本剤とアミオダロンを併用する場合は、不整脈の徴候の発現等に注意して十分に観察し、異常が認められた場合には適切な対応を行うこと。

  • 機序・危険因子:機序は不明である。

これ、どうして禁忌じゃないんだろう・・・。

B型肝炎ウイルスに感染している場合は注意が必要

C型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスの両方に感染している場合、慎重に治療を行う必要があります。

慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
B型肝炎ウイルス感染の患者又は既往感染者〔再活性化するおそれがある。〕

重要な基本的注意
3.B型肝炎ウイルス感染の患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)において、C型肝炎直接型抗ウイルス薬を投与開始後、C型肝炎ウイルス量が低下する一方B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。B型肝炎ウイルス感染の患者又は既往感染者に本剤を投与する場合は、HBV DNA量等のB型肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。
引用元:エプクルーサ配合錠 添付文書

C型肝炎の治療を行うことでなぜB型肝炎の再活性化が起こるのかはまだはっきりと解明されていません。

  • 免疫状態に変化が起こることが影響しているのか?
  • ウイルスの相互干渉が外れてしまうためなのか?

この辺りが関与しているのではないかと思われます。

過去にDAAs治療に失敗している場合はレベトールを併用

用法・用量は以下の通りです。

用法及び用量

  1. 前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
    リバビリンとの併用において、通常、成人には、1日1回1錠(ソホスブビルとして400mg及びベルパタスビルとして100mg)を24週間経口投与する。
  2. C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
    通常、成人には、1日1回1錠(ソホスブビルとして400mg及びベルパタスビルとして100mg)を12週間経口投与する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

  1. 肝予備能、臨床症状等を観察し、適切な用法・用量を選択すること(【臨床成績】の項参照)。
  2. 本剤と併用するリバビリンの投与量は、リバビリンの添付文書に定められた用法・用量に従うこと。併用にあたっては、投与開始前にヘモグロビン量が12g/dL以上であることを確認すること。また、投与中にリバビリンの用量調節や投与中止を必要とする副作用が発現した場合には、リバビリンの添付文書を参照すること。
  3. 本剤は、有効成分としてソホスブビル及びベルパタスビルを含有した配合錠である。本剤の有効成分であるソホスブビルを含む製剤と併用しないこと。

全治療不成功の場合、レベトールを併用して24週間。
非代償性肝硬変の場合、エプクルーサ単独で12週間。
ということですね。

レベトールカプセルの適応追加

エプクルーサの承認に伴い、レベトールカプセルに適応が追加されています。

効能又は効果
5.ソホスブビル・ベルパタスビル配合剤との併用による、前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

ヴィキラックスのセログループ2に対する適応と同様に、コペガスには適応は追加されていないので注意です。

日本人患者に対する第3相臨床試験

非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症の日本人患者における第3相臨床試験(試験GS-US-342-4019)のデータに基づいており、この試験では、エプクルーサを12週間投与した結果、92%(47/51例)の 患者がSVR12(治療終了後12週時点のウイルス量が定量下限値未満)を達成しました。SVR12を達成した患者はC型肝炎ウイルス感染症が治癒したとみなされます。また、DAAによる前治療不成功のジェノタイプ1型又は2型のC型肝炎ウイルス感染者を対象とした別の国内第III相試験(GS-US-342-3921試験)においては、エ プクルーサとリバビリンを24週間併用投与した結果、97%(58/60例)の患者がSVR12を達成しました。両試験においてエプクルーサは良好な忍容性を示しました。GS-US-342-4019試験で12週間エプクルーサを投与された患者に発現した最も頻度の高かった有害事象は鼻咽頭炎であり、有害事象のためにエプクルーサによる治療を中断した患者はいませんでした。また、GS-US-342-3921試験でエプクルーサとリバビリンを24週間投与された患者に発現した最も頻度の高かった有害事象はウイルス性上気道感染症および貧血症であり、患者の3.3%が有害事象のために投与を中止しました。
引用元:ギリアド・サイエンシズ 「エプクルーサ®配合錠」(ソホスブビル/ベルパタスビル)の日本での製造販売承認を取得

  • 試験GS-US-342-4019:「ジェノタイプ1〜6の未治療又は既治療のC型非代償性肝硬変患者(日本人)」を対象とした試験
  • GS-US-342-3921試験:ジェノタイプ1又は2のDAAによる前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変患者(日本人)

「非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症」に対して使用した場合のSVR12が92%(治療中断なし)、「DAAによる前治療不成功のジェノタイプ1型又は2型のC型肝炎ウイルス感染者」に対して使用した場合のSVR12が97%(治療中断3.3%)です。
どちらもSVR12は90%を越していますし、有害事象も少ないことがわかります。

C型非代償性肝硬変に使用する際の注意

エプクルーサ配合錠の販売開始にあたり、ギリアド・サイエンシズからは以下の案内が出されています。
C型非代償性肝硬変の治療に対する「エプクルーサ®配合錠」 適正使用へのご協力のお願い

一方、本邦におきましては、C型非代償性肝硬変のDAAによる治療実績はなく、また本剤の国内第3相臨床試験ではChild-Pugh分類で13点以上の患者は除外されております。従って、本剤による重篤なC型非代償性肝硬変の治療は、診療実績のある肝臓専門医によって注意深く行われることが重要だと考えております。
引用元:C型非代償性肝硬変の治療に対する「エプクルーサ® 配合錠」 適正使用へのご協力のお願い

「国内第3相臨床試験ではChild-Pugh分類で13点以上の患者は除外」とのことなので、非代償性肝硬変に使用できると言っても全ての患者に対しての効果が明らかになっているわけではないようですね。
最後のC型肝炎治療薬・・・ではなく、まだこの次があるのかもしれません。

まとめ

マヴィレット配合錠が出た時にC型肝炎治療薬もここまで来たか!と感動しましたが、まさかC型非代償性肝硬変でも治療を可能とする薬剤まで登場するとは思っていませんでした。
おそらく、エプクルーサ配合錠の登場で抗HCV薬は打ち止めになるんじゃないかなあと思っています。
ファーストラインはマヴィレット配合錠、全治療失敗例やC型非代償性肝硬変の場合はエプクルーサ配合錠です。

肝疾患領域の新薬開発は次のステップに向かっています。
今後は、線維化改善剤や、非アルコール性脂肪肝炎(NASH*4)が登場すると言われています。

ペグイントロンとレベトールの併用が2004年に承認され、そこから15年、C型肝炎は治る病気になってしまいました。
こう考えると医療の発展というのは凄まじいものがあるなあと感慨深くなってしまいますね。

*1:Hepatitis C Virus

*2:Direct Acting Antivirals

*3:InterFeron

*4:Non-alcoholic Steatohepatitis

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