細分化される調剤基本料~H28年(2016)調剤報酬改定①

平成28年2月10日、第328回中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催され、平成28年度診療報酬改定案が答申されました。
※さらに、平成28年3月4日に厚生労働省が平成28年度診療報酬改定についての説明会を行いましたので、それに合わせて修正を加えました。
前回の改定案で〇表記となっていた数値が記載された点数表が公開されています。

今回から、各項目について一つずつまとめていこうと思います。
解釈等は今後明らかになっていくと思いますが、現時点の内容でまとめます。
今回は調剤基本料についてまとめます。

H28調剤報酬改定についての過去記事はこちらです。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。
解釈に変更等があれば随時更新する予定です。
https://yakuzaishi.love/archive/category/%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A-%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%882016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9Ahttps://yakuzaishi.love

厚生労働省の2016診療報酬改定についての資料へのリンクはこちらです。

調剤基本料

今回の改定では調剤基本料が大きく変わり、細分化されます。
全て合わせると、12パターンになります。
これに加えて、基準調剤加算・後発医薬品調剤体制加算の組み合わせがあるわけですから、調剤基本料として算定する点数はかなり複雑です。

改定前

  • 調剤基本料:41点(未妥結:31点)
  • 調剤基本料の特例:25点(未妥結:19点)
    • ※調剤基本料の特例:受付回数4,000回/月超 かつ 集中率70%超、受付回数2,500回/月超 かつ 集中率90%超
    • ※調剤基本料の特例の除外:受付回数2,500回/月超 かつ 集中率90%超の場合でも24時間開局している場合

 

改定後

  • 調剤基本料1:41点(かかりつけ機能業務なし:21点)
  • 調剤基本料2:25点(かかりつけ機能業務なし:13点)
  • 調剤基本料3:20点(かかりつけ機能業務なし:10点)
  • 調剤基本料4:31点(かかりつけ機能業務なし:16点)
  • 調剤基本料5:19点(かかりつけ機能業務なし:10点)
  • 特別調剤基本料:15点(かかりつけ機能業務なし:8点)

算定要件等に変更があった部分を下線で示しています。

調剤基本料1

41点
最も高い点数で、基準調剤加算を算定できるのはこれに該当する薬局のみです。

集中率等の要件が調剤基本料2・3のものに該当せず、かつ妥結率が50%を超える場合です。
また、勤務薬剤師の半数以上がかかりつけ薬剤師に適合し、かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理指導料について相当の実績を有しており、さらに妥結率が50%以上の場合もこの点数を算定可能です。
(後で詳しくまとめています)
これが今までで言うところの特例除外に当てはまり、24時間開局を行うことによる特例の除外は削除となりました。

調剤基本料2

25点
今までの調剤基本料の特例に該当するものです。
いわゆる大型門前薬局を対象とした改定が含まれています。

調剤基本料3に該当しない薬局のうち、

  • 処方せんの受付回数が4,000回/月超 かつ 特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が70%超
  • 処方せんの受付回数が2,000回/月超 かつ 特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が90%超
  • 特定の保険医療機関に係る処方せんが4,000回/月超

のいずれかに該当し、かつ妥結率が50%を超える場合が該当します。

調剤基本料3

20点
規模の大きい薬局グループ、いわゆる大手チェーン薬局に対する点数と言われているものです。

同一法人グループ内の処方せん受付回数の合計が40,000回/月を超える法人グループに属する保険薬局のうち、

  • 特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が95%超
  • 特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局

のいずれかに該当する場合です。

前者は大手グループに所属する1対1の門前薬局、後者は医療ビルや医療モールを対象にしているのだと思います。

薬局グループの定義や処方せんの受付回数の算出方法についても公開されています。

  • 保険薬局の事業者等の最終親会社及び最終親会社等の子会社等、関連会社、フランチャイズ契約をしている者等の範囲の保険薬局
  • 親子関係等は、議決権の過半数の所有、資本金の過半数の出資、その他これらと同等以上の支配力を有するかどうかをもって判断する。最終親会社が連結財務諸表の提出会社である場合は、連結範囲の会社は同一グループとなる。
  • 同一グループにおける処方せん受付回数が月4万回を超えているかどうかの判断は、2月末時点で所属している保険薬局の1月の処方せん回数(※)の合計により行う。

※前年3月~当年2月までの処方せん受付回数を12(ヶ月)で除した値

子会社やフランチャイズもしっかり押さえられていますね。

調剤基本料4

31点
いわゆる未妥結分です。
調剤基本料1に該当するもののうち、妥結率が50%以下のものです。

調剤基本料5

19点
調剤基本料2に該当するもののうち、妥結率が50%以下のものです。

特別調剤基本料

15点
上記のいずれにも該当しない場合・・・つまり、調剤基本料3に該当するもののうち、妥結率が50%以下のものですね。

調剤基本料の特例除外

調剤基本料1の部分にも書きましたが、
これまでは特例の一部除外の要件だった24時間開局が削除され、新たな要件が加わりました。

  • 勤務薬剤師の半数以上がかかりつけ薬剤師の施設基準に適合
  • かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理指導料の相当の実績→薬剤師一人当たり100件/月以上算定(自己負担のない患者を除く)

もう一つの変更として、これまでは、24時間開局で特例から除外されるのは「受付回数2,500回/月超かつ集中率90%超」の場合だけだったのですが、今回改定では要件に該当すればどの場合でも(妥結率に関するものは除き)特例除外の対象となることです。

まとめると、特例除外の要件を満たすことで、

  • 調剤基本料2・調剤基本料3 → 調剤基本料1
  • 調剤基本料5・特別調剤基本料 → 調剤基本料4

となるということですね。

ただ、この特例除外の要件。
かかりつけ薬剤師関連の点数を「薬剤師一人当たり100件/月以上算定」(自己負担のない患者を除く)。
この薬剤師一人当たり・・・と言うのは、かかりつけ薬剤師一人当たりではなく、常勤換算の勤務薬剤師数一人
当たりという意味です。
つまり、勤務薬剤師が3人いる場合、

  • 勤務薬剤師の半数以上がかかりつけ薬剤師の施設基準に適合:2人がかかりつけ薬剤師
  • かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理指導料の相当の実績:薬局全体で自己負担のある患者に対してかかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理指導料を月300件以上算定

これはいくらなんでも、非現実的な数字・・・というか、絶対無理と言ってもいい条件なのではないでしょうか?
と思っていますが、大手チェーンなどはすでに契約の約束をするなどして順調に算定の準備を勧めているようです。
調剤基本料の特例に該当する場合、薬歴管理料は一律50点。
かかりつけ薬剤師指導料との点数差は20点です。
ということは、3割:60円、2割:40円、1割:20円なので、患者さんとの間に信頼関係が築けており、かかりつけ薬剤師として担当を決めるメリットを感じてもらえれば、契約の抵抗感もそれほどではないかもしれません。
さらに言えば、うまく説明すれば、よくわからない段階でも契約してもらうことは可能なのかもしれませんね。

特例の除外を目的に、後者のような契約方法を行う薬局が続々と現れることのないようにして欲しいな、と思います。

逆に、もし、これを早い段階で、自然な形で達成できる薬局があれば、是非、見学に行ってみたいです!
それくらいすごいことですよね。

ちなみに、自己負担のない患者を除く・・・というのは、契約しやすい人だけを狙って、大手チェーン等がシステム的にお金のかからない人を中心に算定しないように・・・ということでしょうか?
お金がかかってでも、自分のかかりつけ薬剤師になって欲しい!と思わせるような薬剤師が過半数を占める薬局を評価するってことですね。

かかりつけ薬局としての評価

かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を1年間に10回以上実施していない保険薬局は調剤基本料が1/2に減算されます。
かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務とは、

  • 時間外加算
  • 休日加算
  • 深夜加算
  • 夜間・休日等加算
  • かかりつけ薬剤師指導料
  • かかりつけ薬剤師包括管理料
  • 外来服薬支援料
  • 服薬情報等提供料
  • 麻薬管理指導加算
  • 重複投与・相互作用防止等加算
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料
  • 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
  • 在宅患者緊急時等共同指導料
  • 退院時共同指導料
  • 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
  • 介護予防居宅療養管理指導費
  • 居宅療養管理指導費

です。
ただし、処方せんの受付回数が600回/月以下の薬局は除きます。

具体的には以下のように減算されるというわけですね。

  • 調剤基本料1:41点 → 21点
  • 調剤基本料2:25点 → 13点
  • 調剤基本料3:20点 → 10点
  • 調剤基本料4:31点 → 16点
  • 調剤基本料5:19点 → 10点
  • 特別調剤基本料:15点 → 8点

なお、これについては、1年間の実績を見る必要があるため、経過措置として平成29年4月1日からの適用となっています。

在宅を行っておらず、かかりつけ薬剤師がいない薬局では、重複投与・相互作用防止等加算の算定が必須となりますね。
月に一回程度、時間外に関する対応を行うか、薬剤服用歴管理指導料・特定薬剤管理指導加算・乳幼児服薬指導加算以外の薬学管理料を算定していれば達成できる計算になります。
これについては、そこまで難しい要件ではないとは思いますが、中には引っかかってしまう薬局もあるかもしれませんね。

新調剤基本料のまとめ

まだ、こまかい解釈は公開されていませんが、現時点でのこれまでの情報を元に、調剤基本料をフローチャートにまとめてみました。

調剤基本料フローチャート(H28年調剤報酬改定)

かなりややこしい区分となっていますが、少しはわかりやすくなったでしょうか?
かかりつけ機能を発揮できない場合の減算で、調剤基本料が割り切れない場合はどちらの点数になるのかも少し気になります。
また、かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務のうち在宅患者訪問薬剤管理指導料では、介護保険による居宅療養管理指導費もみとめられるかどうかも気になるところですね。
調剤基本料1は、基本料としての点数自体が高いことに加えて、基準調剤加算を取得するための条件となっているので、どの薬局も算定を目指すところだと思いますが、除外のための要件の達成は無理と言ってもいいかもしれませんね。
大型門前は調剤基本料1はあきらめるしかないというのが現実かと思います。
考えても考えても、かかりつけ薬剤師に関する指導料を薬剤師一人あたり月100回以上算定というのは非現実的です。
これはちょっと厳しすぎる・・・。
でも、狙うところは狙ってきますね。
コツコツ真面目にやっているところに達成は難しく、逆に、システム的に契約数を増やす大手チェーン薬局ばかりが特例除外の対象になる気がします。
特例の除外は認めない・・・というのが本音だったのかもしれませんが、可能であるならば、算定したいところは算定してきますよね。
チェーン薬局の減算を狙った改定だったのに、チェーンは強引に算定を行い、むしろ、薬剤師・薬局パッシングがさらに酷くなる・・・ってことになりかねない気もします。

そのためにも、自身の薬局がどの調剤基本料に該当するか?
もし、調剤基本料1に該当しないのであれば、除外の対象となることは可能なのか?
そのためにはどんな努力をすればいいのか?
今からよく把握してきたいところですね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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