医薬品 改悪&改良 オブ・ザ・イヤー2020

  • 2021年2月15日
  • 2021年3月5日
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2021年ももう1ヶ月半が過ぎようとしていますが、昨年からどうしてもやりたかった企画がありました。
名付けて「医薬品 改悪 オブ・ザ・イヤー2020」です!

開催の主旨

唐突にTwitterのアンケートを利用して行ったこの規格、実は昨年からずっと計画していたものでした。

医薬品の製剤・包装・表示等の変更

医薬品は定期的に様々な変更が行われます。
変更の理由には様々なものがありますが、いずれも最終的な医薬品の品質向上を目指したものです。

  • 規格追加・変更:例)メルカゾール錠2.5mgの追加
  • 剤形追加・変更:例)テネリアOD錠の追加
  • 名称変更:例)カリーユニ点眼液0.005%→ピレノキシン懸濁性点眼液0.005%「参天」
  • 添付文書の改訂:適応追加・変更、使用上の注意改訂など
  • 製剤変更
    • 刻印変更:例)パルモディア錠 kowa217→パルモディア0.1に
    • 製剤変更:例)メルカゾール錠5mg 糖衣錠からフィルムコーティング錠への変更
  • 包装変更
    • シート変更:SP包装からPTP包装への変更など
    • シート印字変更:GS-1コードの追加など
    • その他のシート変更:サイズ変更、錠数変更など
    • アルミピローの変更:アルミピローの表示変更、包装数変更、バンドの廃止、乾燥剤の廃止など
    • 個装箱変更:表示変更、サイズ変更、デザイン変更など

品質向上と言っても様々な理由があり、直接患者さんのメリットになるものもあれば、一見するとデメリットに見えるものもあります。

中には薬局で調剤を行う上で、とても不便になってしまうなんてケースも・・・。

わかってはいるけど・・・面倒くさい!

毎年、多くの医薬品に対して販売後の変更が行われますが、2020年は特に目立つ変更が多かった気がします。
目立つというのは、調剤を行う上で大きな変更という意味ですね。
2020年はうちの薬局では「なんでこんな変更したの!?」って声があちらこちらからぶつぶつと聞こえてくる機会が多かったんです(笑)

それは他の薬局でも同様だったようで、TwitterなどのSNS上での声も多くみました。
もちろん、自分も同じです。調剤中に「めんどくさい・・・」ってつぶやいてしまうことも多々。そんな中、思いついたのがこの規格「医薬品 改悪 オブ・ザ・イヤー2020」というわけです。

ノミネートを選ぶにあたって

今回、「医薬品 改悪 オブ・ザ・イヤー2020」にノミネートされたのは以下の4つでした。

  1. イノラス・ラコールの横詰め
  2. ミヤBMの12錠シート
  3. ラミクタールの乳幼児誤飲防止シート
  4. プロペトの箱包装

他にも後発医薬品の名称変更、ツムラ漢方の期限短縮、クラシエ漢方の包装変更、ニトロダームTTSのバンド廃止など様々な候補がありましたが、Twitterのアンケート機能で候補にあげられるのが4つまでということで絞らせてもらいました。
候補からはずした薬ついても別にまとめたいと思います。

医薬品 改悪オブ・ザ・イヤー

それでは、まずは改悪オブ・ザ・イヤー2020について結果を発表していきたいと思います。

はじめに

最初に大切なことを書いておきたいと思います。

「改悪」なんて言ってますが、医薬品の変更については法令的に行わざるを得ないものだったり、品質の保持や安全管理等、患者さんの利益を考えた結果として行われるものがほとんどです。もちろん、医療従事者のメリットが患者さんのメリットにつながったり、逆に医療従事者のデメリットが患者さんの不利益につながることもあるのですが・・・。

今回の「医薬品改悪オブ・ザ・イヤー2020」はあくまでも、薬剤師を中心とした医療関係者が調剤・管理上に感じるデメリットのみに注目して専攻したおふざけ企画です。医薬品の変更には多大なコストと様々な方々の配慮や苦労の上で行われていることが大前提です。

関係者の方々には、それをわかっていても現場ではこんな愚痴が出てるんだな〜と寛大な心で読んで頂ければ幸いです。

結果発表!

ということで、医薬品 改悪 オブ・ザ・イヤー2020の結果について発表したいと思います。

なんと合計1,517票もの投票をいただきました!

1位:ミヤBMの12錠シート

1位は圧倒的・・・55.6%なので約843票を獲得していますね。

ミヤBMの12錠シートが1位となりました!

ミヤBMについては長年 半透明フィルムSP包装(ストリップ包装)の10錠シートで発売されていました。SP包装の場合、一包化等で錠剤をバラそうとするとハサミでシートの端を切る必要があります。(もちろん手で割いてもいいですが)

PTP包装に変更になるという情報が出た際、みんな喜んだのですが、
蓋を開けてみると12錠シート・・・。

子ぺんぎん(ジェンツー)
なんでや〜!!

と多くの薬剤師が叫んだことでしょう・・・。

バラ錠も販売しているので一包化が多い店舗ではそちらを使えばいいですからね・・・。それと引き換えに計数調剤がややこしくなるというデメリットは受け入れがたいかな。12錠シートの計算表を貼っておけば済むのかもしれませんが、面倒くさいのには変わりないですし、ミスのリスクはありますからね・・・。

12錠シートとした理由については諸説あるらしいですが、自分は1日3〜6錠ということを浸透させるために3と6の倍数である12錠シートにしたと聞いています。

近日中に10錠シート発売

よほど多くの意見が寄せられたのか、2021年5月に10錠シートが発売になります。
http://www.miyarisan.com/images/BT_info202102.pdf

ぺんぎん薬剤師
10錠シートは2錠ごとにGS-1コードがついてます!

何故かPTP包装も箱もピンクになってますね・・・。

2位:イノラス・ラコールの横詰め

2位は23.5%なので約356票を獲得したイノラス・ラコールの横詰め梱包です。

イノラス・ラコールについては、梱包ケースの変更に伴って梱包方法が変更になっています。
環境に配慮するため梱包ケースの縮小、仕切板の廃止、封緘テープの廃止が実施されています。それに伴って、梱包ケースのデザインが変更され、製剤の詰め方が縦から横に変更されています。

変更前は上から数を数えることができたのですが、変更後は中身を出さないと正確に数えることができなくなっています。梱包ケースの内側に残数目安が記載されていますが、目安ですからね・・・。

子ぺんぎん(ジェンツー)
1袋違えば計数ミスだからな!

おそらく多くの薬局で、
薬剤師「数えにくくなった!」→MR「内側に目安が記載されています!(ドヤ顔)」→薬剤師「目安じゃ駄目なんだよ!(怒)」→MR(涙目)
のようなやりとりが交わされたのではないでしょうか・・・。

ぺんぎん薬剤師
在宅が多い薬局だとイノラスやラコールを調剤する機会も多いですし、フレーバーを混ぜて準備することも多いので数える手間が辛い・・・。

環境への配慮は素晴らしい取り組みなんですが、計数の点も配慮してもらえると嬉しかったなあ・・・。元々数えにくかったら気にならなかったんですけどね。

近日中に開封方法変更!

イノラス・ラコールの開封方法が変更となり、上から数えることが可能になるようです。
https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/pdf_viewer/?file=/med_nutrition/news/upload/UA0702.pdf%3f

  • ラコールNF(ミルク・コーヒーフレーバー):3月下旬出荷開始
  • ラコールNF(バナナフレーバー)、イノラス(りんごフレーバー):4月中旬出荷開始
  • イノラス(ヨーグルト・コーヒー・いちごフレーバー):4月下旬出荷開始
  • ラコールNF(コーン・抹茶フレーバー):5月上旬出荷開始

3位:ラミクタールの乳幼児誤飲防止シート

3位は12.2%、185票を獲得したラミクタール錠の包装変更です。

ラミクタールは元々は通常の、上から押し出すタイプのPTP包装でした。乳幼児には開けにくく、高齢者は開けることのできる包装として、ピールプッシュタイプ(シールを剥がしてから押し出す)のシートが採用されています。

グラクソ・スミスクライン社の乳幼児誤飲防止包装に関する取り組みについては以下のサイトを御覧ください。
http://glaxosmithkline.co.jp/crsf/healthcare/index.html
とても素晴らしい取り組みだと思います。

ただ・・・、ラミクタールはてんかんと双極性障害を適応に持つ薬剤であるため一包化の機会が非常に多くなっています。また、使用量も幅広く、最大で400mgまで使用します。
そのため、大量にバラす機会があり、その場合、かなりの労力が必要になってしまいます。
Twitterを通じての情報では、粉砕調剤で1ヶ月分で約1,500錠を調剤しているケースもあるようです。

子ぺんぎん(ジェンツー)
そこまでいくと・・・恐怖だ・・・

取り組み自体は非常に素晴らしいのですが、一包化調剤の手間、双極性障害の方の服薬の抵抗感を考えると難しい部分がありますね。

4位:プロペトの箱包装

4位は8.8%、133票を獲得したプロペトの箱追加です。

以前は箱はなくチューブをビニールで覆った形で納品されていたプロペトですが、GS-1可変情報を表示するために個別の箱包装に変更されました。

箱入りになったことで少し大きくなり、在庫スペースが必要となってしまった。
調剤の際に箱から出す手間が増えた。
ということで不評のようです。

GS-1可変情報はチューブに直接表示できなかったのかな・・・?

最終的にノミネートされなかったもの

候補には上がりましたが最終的にノミネートされなかったものも紹介します。

ツムラ漢方薬の使用期限短縮

ツムラの医療用漢方エキス製剤の使用期限はツムラ大建中湯エキス顆粒(TJ100)の3年を除いて、全て5年でした。
ですが、日本が2014年7月にPIC/S(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme:医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム)に加盟したことに伴い、PIC/Sが求める基準(25±2℃・60±5%RH)での安定性に対応するために使用期限を3年に変更しています。

そのため、一時的にあとから納品したもののほうが期限が短いという現象が起こり、どちらを先に使えばいいか迷うことがありました。

在庫管理という点だけを見れば改悪に見えないこともないのですが、品質保証の観点で見れば改良といえると思います。

クラシエ漢方薬の包装変更

クラシエの漢方エキス製剤の個装箱が変更となり、開封方法が変更となっています。

改ざん防止のためのへんこうなのですが、結果として縦置きしかできなくなってしまい、在庫スペースを変更せざるをえない薬局もあるようです。

ニトロダームTTSの透明バンド廃止

個人的には裏MVP(?)なのがこの変更です。

従来品では7枚ずつ透明バンドでまとめてあったニトロダームですが、変更後は透明バンドがなくなりバラバラになっています。そのため、調剤時には1枚ずつ数えないといけないのですが、30枚とか数えるのが地味に面倒くさいんです・・・。

ジェネリック医薬品の有名ブランドネームが相次いで廃止

2020年には有名なジェネリック医薬品ブランドネームの廃止が相次ぎました。

  • アーガメイトゼリー20% 25g→ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20%分包5g「三和」
  • アフタシール25μg→トリアムシノロンアセトニド口腔用貼付剤25μg「大正」
  • カリーユニ点眼液0.005%→ピレノキシン点眼液0.005%「参天」
  • スミルスチック3%→フェルビナクスチック軟膏3%「三和」
  • ティアバランス点眼液0.1%/0.3%→ヒアルロン酸Na点眼液0.1%/0.3%「センジュ」
  • デキサルチン口腔用軟膏1mg/g→デキサメタゾン口腔用軟膏0.1%「NK」
  • ビーソフテンクリーム/ローション0.3%→ヘパリン類似物質クリーム/ローション0.3%「日医工」

ジェネリック医薬品の名称変更については以下の通り命名法が取り決められています。

1.一般的名称を基本とした販売名を命名する際の取扱い
製造販売承認のための承認申請書の名称欄の記載に関し、以下に留意の上、製造販売会社名が明確に判別できるようにした上で、原則として、含有する有効成分に係る一般的名称を基本とした記載とすること。なお、本取扱いは、原則として、単一の有効成分からなる品目に適用されるものであること。
医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について(薬食審査発第0922001号)

そのため発売中のものについても順次、一般的名称を基本とした製品名に変更されていっているので仕方がないことではあるのですが、市場への普及が一定の割合を超えているものについては名称変更しないというルールがあってもよかったんじゃないかなあ・・・と思ったりします。

特に、カリーユニ、ティアバランス、ビーソフテンなどについては2020年12月に発表されて経過措置が2021年3月末(おそらく9月まで延長されますが)という経過措置期間の短さも問題だと思います。

ザイザルOD錠の発売

ザイザルにOD錠が追加されたのですが、不満が出たのは薬価収載のタイミング。
ジェネリック医薬品(レボセチリジン錠)の薬価収載と同時だったんです。
ジェネリックにもOD錠が存在するとは言え、ジェネリック対策で規格追加を行ったんじゃないかと疑われるタイミングでしたね・・・。

医薬品 改良 オブ・ザ・イヤー2020!

改悪オブ・ザ・イヤーで不満ばかり言ってしまったので、改良オブ・ザ・イヤーもしないといけませんよね?アンケートまではとっていませんが、この改良は嬉しかった!というものについてまとめたいと思います。

1位:メルカゾール錠の製剤変更と2.5mg錠追加

アンケートを取るまでもなく医薬品 改良 オブ・ザ・イヤー2020はメルカゾールで間違いないでしょう!

メルカゾール錠5mg 0.5錠・・・。何度も、何度も、何度も!何度もこの処方に泣かされました。全国の医療機関でいったいどれだけのメルカゾール錠が砕けていったか・・・。何人の薬剤師の心を砕いてくれたか・・・。

ぺんぎん薬剤師
一人薬剤師勤務の時、待合室に患者さんが6人いる状態で
メルカゾール錠5mg 0.5錠 90日分
の処方を目にした瞬間の絶望感は半端なかったな・・・。

2.5mgの発売開始は2021年になってしまいましたが、それに先駆けて5mg錠が糖衣錠からフィルムコーティング錠に変更となりました。糖衣錠じゃなくなっただけで十分割りやすい(涙)

2.5mg錠と5mg錠は薬価が同じ(どちらも最低薬価の9.80円/錠)なので5mg 0.5錠より2.5mg 1錠の方が薬剤料が高くなってしまう点が少しだけ悩みどころです。

でも、最低薬価で利益がそこまで出ないだろうに製剤変更、新規格を追加してくれたあすか製薬さんに感謝です。

2位:リンゼス錠の錠剤小型化と包装小型化

リンゼス錠0.25mgはかなり大きめのSP包装だったため、箱自体も大きく、在庫に困る存在でした。

ご覧の通り、錠剤が小さくなるだけでなく、個装ケースが大幅に小さくなってくれたので他の医薬品のように薬品棚にしまうことが可能となりました。(従来品は棚に収まりませんでした)

子ぺんぎん(ジェンツー)
この変更も薬局としてはかなり助かりました!

まとめ

医薬品 改悪&改良 オブ・ザ・イヤー2020、いかがでしたでしょうか?

ちょっと悪ノリ企画だったため、不愉快な思いをしてしまった方がいたら申し訳ありません。

改悪について、包装変更等には様々な理由があり、メーカーの方も努力してくださっていることは十分承知しています。ただ、少しだけ愚痴りたいな〜ということでこの企画を実施させていただきました。結果としてはミヤBMがダントツでしたが、それだけ使用頻度の多い薬剤だからこそと言うのもありますし、せっかくPTPに改良されたのに何で数を変えたの?って突っ込みもありますよね。ミヤBMは対策できますが、ラミクタールの一包化はより深刻かもしれません。

改良についてはもっと他にもあったと思います。もし、「こんなのもあったよ!」と意見がありましたら、コメント欄でもSNSでもいいので教えていただければ幸いです。

 

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