昨年の2月に承認を取得していた、フェキソフェナジン塩酸塩30mg「SANIK」と同60mgが6月に発売されることに決まりました。
これが日本初のオーソライズドジェネリック(Authorised Generic=AG)ということで話題を集めていますね。
オーソライズド=Authorisedを辞書で調べると
1、権威を授けられた
2、確立した当局によって認可された
ということでオーソライズドジェネリックは「認可されたジェネリック医薬品」と言った具合になりそうです。
本来、ジェネリック医薬品(後発医薬品、GE)は先発医薬品を製造するメーカーが持っている特許が切れた後に、他のメーカーが製造を行いますが、医薬品の特許は有効成分だけでなく、製法や使用方法など多岐に渡るため、成分は一緒でも添加物や製法が異なることは少なくないし、効能・効果や用法・用量が異なる場合もあります。
AGの場合は、GEを製造するメーカーが先発医薬品を製造するメーカーから特許の許諾を受けて製造を行うため、すべての効能・効果を取得した状態で発売可能なだけでなく、原薬、添加物、製法まで先発品と同一にできるのが特徴です。
実際、フェキソフェナジン塩酸塩「SANIK」は原薬も先発医薬品であるアレグラと同じです。
AGであれば特許が切れる前に独占販売を行うことが可能ですし、ライバル各社が販売を開始しても、先発医薬品と同等ということで優位に販売を行うことができます。
先発医薬品メーカーは自身の薬剤の後発医薬品が販売されシェアを失う前に、自分の子会社にAGを販売させたり、他社とAGの販売契約を結ぶことで利益を確保するというわけです。
今回の場合、先発医薬品であるアレグラを販売しているサノフィ・アベンティスが子会社である日医工サノフィ・アベンティスに特許を許諾し、他者に先駆けて2012年2月に製造承認を取得、2013年6月に日医工が販売することになりました。
ただし、フェキソフェナジンのGEに関しては、エルメッドエーザイ(「EE」)と小林化工(「KN」)のものがすでに発売されています。
これではAGの最大のメリットである独占販売じゃなくなってしまうのですが、これについては現在裁判中のようです。
サノフィは2012年10月、アレグラGEの承認を同年8月に取得したエルメッドエーザイ、小林化工、大正薬品工業の3社に対し、特許侵害訴訟を東京地裁に提起しています。
大正薬品がまだ販売を行っていないのはこの訴訟の関係かもしれませんね。
訴訟の内容は、用途特許が侵害されているというもので、サノフィは、「アレルギー性鼻炎」と「じんましん」は2014年3月まで、「皮膚疾患に伴う掻痒」は2015年9月まで有効と主張しているようです。
過去に販売後に裁判で敗訴し、販売が中止されたジェネリック医薬品もあるので、フェキソフェナジンのGEに関しては採用を見送っている病院や薬局も少なくないかもしれません。
また、サノフィが裁判に勝訴した場合、「SANIK」に切り替える医療機関が多いのではないでしょうか?
日医工のコメントとして「フェキソフェナジン塩酸塩「SANIK」は特許侵害訴訟を起こされるリスクがなく、市場から消えるということはない。安心して使っていただける」ということです。
AGは米国ではすでに普及している販売システムのようですが、日本では初めてとなります。
日本では薬価が公定価格であったり、長期収載品となってオリジナルの先発薬の薬価が下げられるなどのリスクがあるのでAGで利益を確保できるかどうか不明だったのだと思います。
今回のフェキソフェナジン塩酸塩「SANIK」の販売が日本市場においてAGが有効な戦略となるかどうかを判断する試金石になるのは間違いないですね。
個人的にはAGは患者さんにも医療機関にも提案を行いやすいので大歓迎です。
(先発医薬品メーカーの独占が強まるという意味では何とも言い難いですが…)
AGを選ぶか、製剤的に改良が加えられたユースフルジェネリックを選ぶか。
ジェネリック医薬品の選抜が次のステップに入っていくのではないかと思います。
- 作者: 増原慶壮,北村正樹,「今日の治療薬」編集室
- 出版社/メーカー: 南江堂
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