ナウゼリン(ドンペリドン)の飲み薬(内服薬:錠剤・細粒・ドライシロップ)と坐剤で用量が異なる理由は?

  • 2018年6月10日
  • 2021年3月9日
  • 消化器
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吐き気止めとして小児から大人まで幅広く使用されているナウゼリン(成分名:ドンペリドン)ですが、錠剤・細粒・ドライシロップなど飲み薬の用量と坐薬の用量を比較してみると坐薬の方が圧倒的に用量が多くなっています。
以前、兄弟で胃腸炎になってしまったお子さんの薬を説明しているときに、お母さんから「上の子の錠剤の方がmg数が少ないんですね」と鋭い指摘を受けたことがあります。
皆さん、どのように説明していますか?

ドンペリドン製剤の一覧と用量

まずは基本情報を簡単に整理します。

販売中の医療用製剤一覧

先発品であるナウゼリンを初めとするドンペリドン製剤には以下の医療用医薬品が存在します。

  • 内服薬
    • 錠剤(口腔内崩壊錠)
      • ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10
      • ナウゼリンOD錠5/ナウゼリンOD錠10
      • ドンペリドン錠5mg/ドンペリドン錠10mg
      • ナシロビン錠5/ナシロビン錠10)販売中止
      • ハドドリン錠「5」/ハドドリン錠「10」)販売中止
    • 散剤
      • ナウゼリン細粒1%
      • ナウゼリンドライシロップ1%
      • ドンペリドンドライシロップ小児用1%「日医工」
      • ドンペリドンDS小児用1%「サワイ」
  • 外用薬(坐剤)
    • ナウゼリン坐剤10/ナウゼリン坐剤30/ナウゼリン坐剤60
    • ドンペリドン坐剤10mg「タカタ」/ドンペリドン坐剤30mg「タカタ」(アースレナン坐剤10/アースレナン坐剤30
    • ドンペリドン坐剤10mg/ドンペリドン坐剤30mg

内服薬と外用薬の用量の違い

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内服・外用それぞれの用量は以下のようになっています。

用法及び用量(内服)

  • 成人:通常、ドンペリドンとして1回10mgを1日3回食前に経口投与する。ただし、レボドパ製剤投与時にはドンペリドンとして1回5~10mgを1日3回食前に経口投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。
  • 小児:通常、ドンペリドンとして1日1.0~2.0mg/kgを(用時水で懸濁し、)1日3回食前に分けて経口投与する。なお、年令、体重、症状により適宜増減する。ただし、1日投与量はドンペリドンとして30mgを超えないこと。また、6才以上の場合はドンペリドンとして1日最高用量は1.0mg/kgを限度とすること。
    ※()はドライシロップのみ

引用元:ナウゼリン錠/ナウゼリンドライシロップ1% 添付文書 協和キリン株式会社

用法及び用量(外用)

  • ナウゼリン坐剤60
    成人:通常、ドンペリドンとして1回60mgを1日2回直腸内に投与する。なお、年令、症状により適宜増減する。
    ※ただし、ナウゼリン坐剤60は「胃・十二指腸手術後」、「抗悪性腫瘍剤投与時」の嘔吐に対する適応のみ
  • ナウゼリン坐剤10 ナウゼリン坐剤30
    小児:3才未満の場合、通常ドンペリドンとして1回10mgを1日2~3回直腸内に投与する。
    3才以上の場合、通常ドンペリドンとして1回30mgを1日2~3回直腸内に投与する。
    なお、年令、体重、症状により適宜増減する。

引用元:ナウゼリン坐剤 添付文書 協和キリン株式会社

表にまとめます。

ドンペリドン製剤の用量の比較
年齢ドンペリドン用量
内服薬坐剤
成人1日30mg 分31回60mg 1日2回
小児6歳以上1日1.0mg/kg 分31回30mg 1日2~3回
3才以上6歳未満1日1.0~2.0mg/kg 分3
3歳未満1回10mg 1日2~3回

成人の内服1日量が30mgなのですが、坐剤を見てみると3歳の時点ですでに1回30mgを使用するようになっています。
ということで、改めて用量が「坐剤>内服」となっていることが確認できたと思います。

内服と坐薬で用量が異なる理由

結論から書いてしまうと、ナウゼリンの用量が坐剤と内服で異なるのは、内服の方がより少ない量で効果を発揮することができるためで、このことは臨床試験でも確認されています。
内服の方が効果を発揮しやすいことについて詳しく説明していきます。

ドンペリドンの作用機序

ナウゼリンの有効成分であるドンペリドンの作用機序について復習しておきましょう。
添付文書には以下のように記載されています。

薬効薬理
上部消化管並びにCTZに作用し、抗ドパミン作用により薬効を発現する。なお、生化学的実験等により血液-脳関門を通過しにくいことが確かめられている。

引用元:ナウゼリン錠 添付文書 協和キリン株式会社

ドンペリドンはドパミンD2受容体を遮断することにより制吐作用を発揮します。
制吐作用においてターゲットとなるドパミンD2受容体は大きく2ヶ所に存在します。

  • 抹消ドパミン受容体:上部消化管
  • 中枢ドパミン受容体:CTZ*1

つまり、ドンペリドンは末梢性・中枢性の2つのドパミン受容体に対してドパミンブロッカーとして働くことで制吐効果を発揮します。
ただし、添付文書にも記載されているように、ドンペリドンは血液-脳関門(BBB*2)を通過しにくいため、メインとなるのは末梢性(上部消化管)のドパミンD2受容体をブロックする作用になります。

ドンペリドンは胃壁で直接効果を発揮

経口投与されたドンペリドンは胃の中で溶解し、小腸から吸収され、血液を介して、上部消化管やCTZに作用するのですが、吸収される前にも効果を発揮することが知られています。
実は胃壁にもドパミンD2受容体は存在しており、溶解したドンペリドンはそこに直接作用し効果を発揮することが知られています。
当然ですが、直腸から吸収される坐剤は胃壁への直接作用を発揮することは不可能で、血中からの作用のみになります。
「内服は消化管内で吸収される前にも効果を発揮することができる」
これがドンペリドンの内服薬が坐剤と比較して少ない用量で効果を発揮することができる理由になります。

食前服用することで十分な効果を発揮

ドンペリドンの用法は食前となっています。
これは空腹時の方がドンペリドンが胃壁に接しやすくなり上部消化管への直接作用を発揮しやすくなるためです。
ドンペリドンを内服した場合のTmax=0.5hr(30分)となっています。
食前(食事の30分前)に服用することで食事を開始する際に血中濃度が最大となり、効果を実感できます。

実は坐剤の方が吸収速度が遅い

直腸から吸収される坐剤の方が一般的に吸収速度が速いと言われていますが、それは全ての薬剤に当てはまる訳ではありません。
ドンペリドンの場合も当てはまりません。
添付文書に記載されているTmaxを比較してみると・・・。

  • ドンペリドン(内服):Tmax=0.5hr
  • ドンペリドン(坐剤):Tmax=2.0

坐剤の方が4倍長くなっています。
実際に、ドンペリドンを内服した場合に効果を感じる目安は30分とされていますが、坐剤の場合は1時間前後です。
効果発現を早めるためにドンペリドン坐剤の用量は多めに設定されているのではないかと思います。

ちなみにアセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ等)の吸収速度についても内服より坐剤の方が遅いことが知られています。

まとめ

冒頭に書いたお母さんに対する返事ですが、以下のように答えたと思います。

今回出ている吐き気止めのお薬は体に吸収される前に胃の中で直接作用することでも効果を発揮します。
そのため、坐薬に比べて飲み薬の方が少ない量で素早い効果が期待できます。
ですが、水を飲んでも吐いてしまうような場合、飲み薬を服用するのが難しいので座薬を使って吐き気を鎮める必要があります。
お兄ちゃんの方が症状が軽く、水分程度なら摂取できているようなので少ない量で効果を発揮する飲み薬になっています。飲んで30分くらい経てば効果が出ると思います。
弟くんの方は水分を摂るのもしんどそうなので、坐薬を使って一時間程度待ってあげて、少しずつ水分を摂らせてあげて様子をみてくださいね。

改めてドンペリドンの内服と坐剤について比較してみる

内服と比較して効果の発揮に多くの量が必要になる坐剤。
直腸投与にも関わらず吸収が遅いため、効果発現が遅れるのも残念なのですが、直腸投与は初回通過効果を受けないために全身への暴露量も内服に比べてかなり多くなってしまいます。

ドンペリドン製剤各種のAUC比較
ドンペリドン内服坐剤
効果発揮の目安30分程度Tmax=0.5hr1時間程度Tmax=2.0hr
使用量低用量でOK10mg/回高用量必要30mg/回
暴露量少ないAUC=35.5±7.9ng・hr/mL多いAUC=225.5ng・hr/mL

(※データは健康成人に使用した場合)

ドンペリドンはBBBを通過しにくいとは言っても一部は通過します。
そのため、錐体外路症状の副作用が知られています。
暴露量が増えることでその頻度が増えるのではないかとも思いましたが、内服・坐剤ともに0.03%で添付文書を見る限り大きな差はなさそうです。
ただし、その他の副作用の肝臓の項目(肝機能異常〔AST(GOT),ALT(GPT),γ-GTP, ビリルビン, Al-P, LDH上昇等〕)の頻度が内服(0.1%未満)に比較して、坐剤(0.1~5%未満)が高くなっています。
ですので、内服で問題ないのであれば内服で対応した方が無難かなと言った感じですね。
(添付文書の副作用の頻度を比較するのもアレですが・・・)

小児の嘔吐に対する制吐剤の効果は?

少し余談になりますが、実は小児の急性胃腸炎に対するドンペリドンの効果を証明している論文は存在しません
ですので、どの程度の症状で使用すべきなのかというのは判断が難しいところもあるかもしれませんね。

吐き気を実感して我慢できる成人と、吐き気自体を理解できないし伝えることもできない、食道が未発達で我慢することも難しい小児では制吐剤に求められる役割自体が異なる気もします。
お子さんが吐いているのを見るのは辛いし、急に吐いてしまうと清掃等大変なので制吐剤を使いたくなるのもわかります。
ただ、それと実際の効果は別物ですし、副作用のリスクがあることも頭には置いてかないといけませんね。

*1:Chemoreceptor Trigger Zone:化学受容器引き金帯、第四脳室に存在し、嘔吐中枢への刺激の引き金となる

*2:Blood-Brain Barrier

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