スギ花粉症に対する免疫療法薬 シダキュア舌下錠の特徴とシダトレン舌下液との違いについて

2018年6月29日、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法薬 シダキュア舌下錠が発売されました。
すでに発売されているシダトレンスギ花粉舌下液の剤型違いと言うだけでなく、力価の近い、小児へての適応が認められた新薬扱いになっています。
(シダトレンスギ花粉舌下液は2020年3月末で製造中止、2020年4月から経過措置品目に移行、2021年3月31日で経過措置期間満了・薬価削除となる予定)
(2019年5月から新薬の投与日数制限は解除されています。https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/notice/cdc1905_02.pdf
発売直前ということで、シダキュアスギ花粉舌下錠の特徴、シダトレンスギ花粉舌下液についての復習、シダキュア・シダトレンの違いについてまとめてみようと思います。
色々まとめていると長くなってしまったので、シダキュアとシダトレンの違いだけ知りたい方は目次から「シダキュアとシダトレン 違いのまとめ(比較表)」をクリックしてもらえば表に飛びます。

舌下免疫療法とは?

定期的に少量のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を体内に取り込むことで、少しずつそのアレルゲンに対する過敏反応を減少させていく治療方法をアレルゲン免疫療法(減感作療法)といいます。
抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモンを服用する治療とは異なりアレルゲン免疫療法ではアレルギーの根本治療が期待できます。

アレルゲンを皮下注射により取り込む皮下免疫療法が主流でしたが、近年、舌下投与によりアレルゲンを取り込む舌下免疫療法が登場しました。
皮下免疫療法は病院でしかアレルゲン投与が行えないため頻回の通院が必要でしたが、舌下免疫療法はその治療薬が承認されたことにより自宅での服用が可能になり、通院回数を減らすことができています。
また、舌下免疫療法は注射を必要としないので患者の痛みを回避できますし、重大なアレルギー反応が起こりにくいというメリットもあります。
今回発売されるシダキュアスギ花粉舌下錠はシダトレンスギ花粉舌下液と同じく舌下免疫療法に使用される医薬品です。

シダキュアとシダトレンの違い

シダキュアスギ花粉舌下錠とシダトレンスギ花粉舌下液の違いについて見ていきます。

それぞれの製品情報

それぞれの医薬品について、承認情報や薬価、添付文書情報から主要な部分をまとめてみます。

シダキュアスギ花粉舌下錠

まずはシダキュアについてです。
シダキュアスギ花粉舌下錠 添付文書
シダキュアスギ花粉舌下錠 インタビューフォーム

  • 審議:平成29年9月8日(薬食審・医薬品第二部会)
  • 製造承認:平成29年9月27日
  • 薬価収載:平成30年4月18日
  • 発売日:平成30年6月29日
  • 医薬品名と薬価
    • シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU:57.70円/錠
    • シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAU:144.10円/錠
  • 成分名:スギ花粉エキス原末
  • 申請者:鳥居薬品
  • 効能・効果:スギ花粉症(減感作療法)
  • 用法・用量:通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。
  • 貯法:気密容器、室温保存
  • 1日薬価:144.10円

シダトレンスギ花粉舌下液

続いてシダトレン。
シダトレンスギ花粉舌下液 添付文書
シダトレンスギ花粉舌下液 インタビューフォーム

  • 審議:平成25年11月18日(薬食審・医薬品第二部会)
  • 製造承認:平成26年1月17日
  • 薬価収載:平成26年9月2日
  • 発売日:平成26年10月8日
  • 医薬品名と薬価
    • シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル 10mL:547.40円/瓶
    • シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル 10mL:1308.60円/瓶
    • シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック 1mL:131.00円/包
  • 成分名:スギ花粉エキス原末
  • 申請者:鳥居薬品
  • 効能・効果:スギ花粉症(減感作療法)
  • 用法・用量:
    1. 増量期(1~2週目)
      通常、成人及び12歳以上の小児には、増量期として投与開始後2週間、以下の用量を1日1回、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。 その後5分間は、うがい・飲食を控える。

      • 【1週目増量期 シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル】
        1日目 0.2mL、2日目 0.2mL、3日目 0.4mL、4日目 0.4mL
        5日目 0.6mL、6日目 0.8mL、7日目 1mL
      • 【2週目増量期 シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル】
        1日目 0.2mL、2日目 0.2mL、3日目 0.4mL、4日目 0.4mL
        5日目 0.6mL、6日目 0.8mL、7日目 1mL
    2. 維持期(3週目以降)
      増量期終了後、維持期として、シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパックの全量(1mL)を1日1回、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。
  • 貯法:2~8℃保存、気密容器
  • 1日薬価:131.00円

 

舌下液と舌下錠の違い

シダトレンスギ花粉舌下液と比較してシダキュアスギ花粉舌下錠の何が異なるかを見ていきます。

剤型

名前の通り、説明するまでもないですね。

  • シダトレンスギ花粉舌下液:液剤
  • シダキュアスギ花粉舌下錠:錠剤

錠剤の方が舌下での保持を行いやすいのではないかと思います。

貯法

舌下液のシダトレンは2~8℃保存なのに対して、舌下錠のシダキュアは室温保存になっています。
基本冷蔵庫で保管しなければいけなかったシダトレンに比較して、室温で保管できるシダキュアは楽ですね。

ちなみに、シダトレンの室温保存ですが、インタビューフォームに掲載されている加速試験(25±2°C/ 60±5%RH、暗所)の結果から下記の範囲では可能と思われます。

  • シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル:3ヵ月まで変化なし
  • シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル:7日まで変化なし
  • シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック:7日まで変化な し

増量方法の違い

シダキュアスギ花粉舌下錠

  • 投与開始後1週間:シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠
  • 投与2週目以降:シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUを1日1回1錠

シダトレンスギ花粉舌下液

  • 増量期(1〜2周目)
    1. 1週目:シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル
      • 1日目 0.2mL(40JAU)
      • 2日目 0.2mL(40JAU)
      • 3日目 0.4mL(80JAU)
      • 4日目 0.4mL(80JAU)
      • 5日目 0.6mL(120JAU)
      • 6日目 0.8mL(160JAU)
      • 7日目 1mL(200JAU)
    2. 2週目:シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLボトル
      • 1日目 0.2mL(400JAU)
      • 2日目 0.2mL(400JAU)
      • 3日目 0.4mL(800JAU)
      • 4日目 0.4mL(800JAU)
      • 5日目 0.6mL(1,200JAU)
      • 6日目 0.8mL(1,600JAU)
      • 7日目 1mL(2,000JAU)
  • 維持期(3週目以降):シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパックの全量(1mL)を1日1回

シダトレンスギ花粉舌下液が2週間に渡りほぼ毎日少しずつ増量させてから維持期に移行しなければならないのに対して、
シダキュアスギ花粉舌下錠は維持期は1週間だけ、細かい増量は必要なく1段階のみになっており、非常に簡便になっています。

用量の違い

上に記載した増量期のアレルゲン活性単位(JAU*1)を比較してみればわかりますが、シダトレンの維持期とシダキュアの増量期のJAUの値が同じになっています。

  • シダトレン舌下液
    • 増量期:40〜2,000JAU
    • 維持期:2,000JAU
  • シダキュア舌下錠
    • 増量期:2,000JAU
    • 維持期:5,000JAU

シダキュア舌下錠ではシダトレン舌下液と比較して、より高力価での治療が可能になっています。

ちなみに、シダトレン舌下液の用量設定の根拠は以下の通りです。

  • 増量期用量
    • 標準化スギ花粉エキス製剤を用いたSLIT*2の臨床研究*3を参考とした上で安全性を考慮
  • 維持用量
    • 当時の製法で製剤化し得る最も高濃度
    • 参考としたスギ花粉症患者を対象としたSLITの臨床研究*4の用量を参考

これに対し、シダキュアスギ花粉舌下錠では凍結乾燥技術を導入することで高力価の製剤化が可能になっています。
その上で、2,000JAU、5,000JAU、10,000JAUを作成、比較試験を行った結果、5,000JAUを至適用量としています。

舌下投与方法の違い

用法を比較してみましょう。

シダキュア舌下錠
舌下にて1分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。

シダトレン舌下液
舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。

舌下での保持時間が異なります。
シダトレンは2分間でしたが、シダキュアは1分間の保持でいいです。

小児適応の拡大

シダトレンスギ花粉舌下液は「成人及び12歳以上の小児」に対する適応しか取得できていません。
これに対して、シダキュアスギ花粉舌下錠は年齢の縛りがありません。

シダキュアスギ花粉舌下錠はもともと小児への適応取得を前提に開発された薬剤であるため、5歳以上の小児についての臨床試験が実施され、安全性の検証がされています。
じゃあ、5歳未満は本当に大丈夫なのか?という疑問が出るとは思いますが、インタビューフォームには以下のように記載されています。

海外の報告において、アレルゲン免疫療法は、5歳未満の小児に対しても有効性を示し、 安全性プロファイルも5歳未満と5歳以上の小児では差がないことが示されている*5

これらを踏まえて、舌下投与が可能であれば年齢に関わらずシダキュアによるスギ花粉減感作療法が可能になっています。

シダキュアは新薬扱い

シダトレンとシダキュアはどちらもスギ花粉による舌下免疫療法を行うための薬剤ですが、上にも書いたように、

  • 舌下免疫療法のプロトコルが異なる(増量方法、力価など)
  • 投与可能な年齢区分が異なる
  • そもそも薬品名から異なる

ため、新薬扱いとなっています。

投与日数制限

シダトレンスギ花粉舌下液については投与日数制限はありませんが、シダキュアスギ花粉舌下錠は新薬扱いになるため、14日間の処方日数制限があるので注意が必要です。
薬価収載が

長期投与医薬品に関する情報
本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第97号(平成20年3月19日付、平成18年厚生労働省告示第107号一部改正)に基づき、平成31年4月末日までは、投薬(あるいは投与)は1回14日分を限度とされています。

薬価収載から1年間、つまり平成31年4月までは14日間しか処方できません。
長期投与の解禁は平成31年5月以降になります。

シダトレンからの切り替えでも再度増量期から開始

シダトレンで治療していた人が保管上の利便性やより高力価での治療を求めて切り替えるケースが多く考えられます。
ですが、同じスギ花粉舌下免疫療法治療薬と言っても、切り替えの際には再度増量期からの開始になります。
シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック→シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUとはならないので注意してください。
シダトレンスギ花粉舌下液2,000JAU/mLパック→シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAU(1週間)→シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUとする必要があります。

シダキュアとシダトレン 違いのまとめ(比較表)

以上をまとめて表にしてみます

シダトレン舌下液シダキュア舌下錠
剤型液剤錠剤
保管2~8℃室温
増量期1週目:200JAU/mLボトル
2週目:2,000JAU/mLボトル
※滴下量が変化
1週目:2,000JAU錠
※連日1錠ずつ
維持量3週目以降:2,000JAU/mLパック2週目以降:5,000JAU錠
高力価
舌下保持時間2分間1分間
年齢成人及び12歳以上の小児年齢による投与制限なし
(舌下投与可能であること)
投与日数制限なし14日間
(平成31年4月末まで)

※シダトレンからの切り替えでもシダキュアは増量期から開始する

シダトレン・シダキュアを調剤する上での注意

ここからはシダトレンやシダキュア(一部ミティキュア)を調剤する上での注意点について復習しておきます。

承認条件:処方医の登録・調剤前の確認

シダキュア・シダトレン・ミティキュアの舌下免疫療法薬は、

  • 処方できる医師の制限
  • 調剤する薬局は処方医が条件に該当しているかを確認する

ことを条件に承認されています。

シダトレンスギ花粉舌下液
舌下投与による減感作療法に関する十分な知識・経験を持つ医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師・医療機関のもとでのみ用いられ、薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。

シダキュアスギ花粉舌下錠

  1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  2. 舌下投与による減感作療法に関する十分な知識・経験をもつ医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師・医療機関のもとでのみ用いられ、薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。

そこで、処方する際、調剤する際に必要な確認についてまとめておきたいと思います。

処方する際の留意点

鳥居薬品舌下免疫療法薬 処方いただくための留意点(処方予定の先生方へ)

鳥居薬品舌下免疫療法薬は、舌下免疫療法(減感作療法)に関する十分な知識・経験と舌下免疫療法薬に関する十分な知識を持つ「受講修了医師」のみが処方可能です。したがいまして、医師は、事前に「減感作療法に関する講習」及び「鳥居薬品舌下免疫療法薬適正使用eラーニング」を受講修了後、「鳥居薬品舌下免疫療法薬適正使用eテスト」に合格することで「受講修了医師」として登録される必要があり、また、当該事項は薬局において調剤前に確認する必要があります

詳しくは上記のpdfファイルに記載されていますが、

  1. medパス会員登録
  2. 「関連学会等主催 舌下免疫療法(減感作療法)講習会受講(受講番号が必要)」or「アレルゲン免疫療法(減感作療法)eラーニング受講+eテスト合格」
  3. 「鳥居薬品舌下免疫療法薬 適正使用eラーニング受講」(鳥居薬品舌下免疫療法薬 適正使用PDF)
  4. 「鳥居薬品舌下免疫療法薬 適正使用eテスト合格」
  5. 「鳥居薬品舌下免疫療法薬 受講修了登録」

のステップで受講終了医師として登録されないと処方することができません。
その際に、医師名のみでなく医療機関名の登録が必要なので注意が必要です。(登録医療機関が異なると処方できない)

以前は、シダトレン、ミティキュアと各製剤ごとに登録が必要でしたが、現在は「鳥居薬品舌下免疫療法薬 受講修了医師」として、「鳥居薬品舌下免疫療法薬(3製品)を全て処方することが可能」となっています。
(シダトレン、ミティキュアの登録医師となっている場合は「鳥居薬品舌下免疫療法薬 適正使用eラーニング受講」の代わりに「鳥居薬品舌下免疫療法薬 適正使用PDF」での学習になります)

調剤する際の留意点

鳥居薬品舌下免疫療法薬 安全対策に関するご協力のお願い(薬剤師の先生方へ)

鳥居薬品舌下免疫療法薬の調剤に関しましては、承認条件に基づき処方元医師が所定の講習会・eラーニングの受講修了医師であることを調剤前にご確認(①医師名または鳥居薬品舌下免疫療法薬 受講修了医師番号、②医療機関名)いただく必要があります。
また、安全対策の一環として鳥居薬品舌下免疫療法薬の服用患者に対し、アナフィラキシーで早期にみられる 症状発現時に速やかな対応を補助する『患者携帯カード』の携帯及び記載内容の確認、患者の治療に関する理解度をご確認の上、服薬指導をお願い申し上げます。

詳しくは上記のpdfに記載されていますが、以下のような流れになります。

  1. 舌下免疫療法薬(シダキュア・シダトレン・ミティキュア)の処方箋を応需
  2. 処方元医師が「受講修了医師」であることを確認
  3. 「患者携帯カード」の確認
    • 未発行の場合→処方医に発行してもらうよう促す
    • 未記入の場合→処方医に記入してもらうよう促す
    • 未携帯の場合→携帯を促す

処方医が「受講修了医師」として確認できない場合は調剤を行うことができないため、疑義照会を行い、直接医師であるかどうかを確認する必要があります。
舌下投与用スギ花粉エキス原末錠の使用に当たっての留意事項について(薬生薬審発0927第7号 平成29年9月27日)

2.本剤の流通管理に関する周知事項について
(3)薬剤師は本剤の調剤前に、処方医が上記1(4)①の講習を修了した医師であることを確認すること。また、その確認ができない場合には、調剤することを拒むこと。

「患者携帯カード」については、不備があった場合でも調剤を行うことは可能ですが、治療中にアナフィラキシー等が起こった場合に速やかに対処するために必要なものなので、速やかに携帯できるよう患者に指導を行う必要があります。
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服薬指導の注意点

服薬指導を行う上で特に注意したい内容についてまとめてみます。
新規投与時期以外はシダキュア・シダトレン・ミティキュア共通です。

スギ花粉飛散時期は新規投与できない

用法及び用量に関連する使用上の注意
1.スギ花粉飛散時期は新たに投与を開始しないこと。〔スギ花粉飛散時期はスギ花粉アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている場合が多い。〕

シダキュア(シダトレン)による舌下免疫療法はスギ花粉症の患者に対してあえてそのアレルゲンを投与します。
スギ花粉が飛散している時期は、患者のスギ花粉に対するアレルギー反応が過敏になっている可能性が高く、その場合、花粉症症状の悪化やアナフィラキシー等のリスクを高めてしまいます。
スギ花粉飛散時期というのはその年によって変化すると思いますが、1月〜5月くらいを目安に治療開始を回避している医療機関が多い印象があります。

でも、シダトレンからシダキュアへの切り替えの場合は関係なさそうですね。
シダトレン維持期とシダキュア増量期の力価は同じですし。

初回投与時の注意

用法及び用量に関連する使用上の注意
2.初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は患者を安静な状態に保たせ、十分な観察を行うこと。また、ショック、アナフィラキシー等の発現時に救急処置のとれる準備をしておくこと。〔本剤はスギ花粉由来のアレルゲンを含む製剤であるため、アナフィラキシー等の発現のおそれがある。〕

初回投与時が最もショックやアナフィラキシーを起こす可能性が高いため、薬局での服薬指導終了後、シダキュア(シダトレン・ミティキュア)を持って病院に戻り、初回投与を行うようにしている医療機関がほとんどだと思います。
病院によっては初回投与は院内処方というところもありそうですね。

服用のタイミングについて

シダキュアの用法は添付文書に記載されている通りで、服用時点に関して特に保険上の縛りはありません。

用法及び用量
1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがいや飲食を控える。

ですが、下記の理由から朝に服用するケースが多くなっていると思います。

重要な基本的注意
2.本剤の投与にあたっては、事前に患者等に対して次の点を十分に説明、指導すること。

  • (2)本剤を服用する前後2時間程度は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避ける。〔循環動態の亢進により、本剤の吸収が促進され、副作用が発現するおそれがある。〕
  • (3)アナフィラキシー等が発現した場合の対処等を考慮し、家族のいる場所や日中の服用が望ましい。

アルコール摂取や入浴を避ける必要があり、アナフィラキシー等の対策として周りに人がいる時間帯となるとどうしても朝や昼になりますね。

副作用に対する注意

シダトレンやミティキュアで大きな副作用(アレルギー反応)に出会ったことはありませんが、投与初期に口腔内の違和感を感じている人はいます。

重要な基本的注意
3.本剤の投与開始初期(およそ1ヵ月)に副作用の発現(主に口腔内の症状)が多いので、症状の発現に注意すること。

その他の副作用

  1. 口腔内
    • 5%以上:口腔腫脹・浮腫、口腔そう痒症、口腔内不快感
  2. 口腔内
    • 1~5%未満:口内炎、口腔粘膜紅斑、口の感覚鈍麻
  3. 口腔内
    • 1%未満:口腔内痛、舌そう痒症、舌炎、口の錯感覚

こういった副作用を防ぐために、投与初期に予防的に抗ヒスタミン薬を併用するケースもあるとMRさんから聞きましたが、そういう処方に出会ったことはありません。
そもそも、保険的にどうなんだろ?

ちなみに、ステロイド剤の併用については治療効果の意味から注意が必要です。

重要な基本的注意
10.全身性ステロイド薬投与の患者への注意
全身性ステロイド薬の投与により、免疫系が抑制され本剤の効果が得られない可能性がある。

免疫反応自体を抑えてしまっては舌下免疫療法の意味がないですよね。

治療期間

重要な基本的注意
5.症状の改善を認めても、直ちに本剤による治療を中止すると症状が再発する可能性があるので、本療法の中止にあたっては症状の経緯を十分に観察し慎重に行うこと。

多くの場合、3~5年間投与を継続(3年以上が推奨)することが基本とされています。
改善が続いた時点で治療を中止することは可能ですが、投与中止後、一定期間経過すると症状が元に戻ってしまうケースもあるようです。

まとめ

シダキュアとシダトレンの違いについてまとめるつもりでかきはじめましたが、気がつけば舌下免疫療法全般(塩野義のアシテアダニ舌下錠は除く)について書いてしまいました。
シダキュアについては一年間は14日間の新薬投与制限がありますが、それ以降は現在シダトレンを服用している人のほとんどが切り替わるのではないかと思います。
現在、シダトレンによる治療を受けていない場合で新規に治療する場合も保管が簡便で高力価のシダキュアを選ぶ方は少なくないでしょうし、何より小児適応を取得しているので小児への処方が少しずつ増えていきそうです。

シダトレンは製造中止に

シダキュア発売後も鳥居薬品はシダトレンの発売を継続すると言っていましたが、シダトレンの発売が中止されることが決定しました。

  • 2020年3月末:シダトレンスギ花粉舌下液 製造中止
  • 2020年4月から:シダトレンスギ花粉舌下液 経過措置品目に移行
  • 2021年3月31日:シダトレンスギ花粉舌下液 経過措置期間満了・薬価削除

当然といえば当然のことにも思えますが、当初の予定よりも早い決定だったそうで、その背景には親会社であるJTとギリアドの契約が終了し、抗HIV薬から撤退することによることの影響があるようです。
鳥居薬品としてはなかなか厳しい状態にあり、コスト削減のためにも薬剤の整理を進める必要があるようです。

*1:Japanese Allergy Units(アレルギー患者の皮膚試験に基づき一般社団法人日本アレルギー学会により設定された国内独自のアレルゲン活性単位)

*2:SubLingual ImmunoTherapy:舌下免疫療法

*3:スギ花粉症およびダニアレルギーに対する新しい免疫療法の開発,舌下免疫療法における臨床試験および作用機序の解析に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)総合研究報告書 2009年3月; 54-64. など

*4:スギ花粉症に対する舌下免疫療法の有効性,効果予測法の確立研究,スギ花粉エキスによる舌下免疫療法の有効性とバイオマーカーの検討. 厚生労働科学研究費補助金(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)分担研究報告書 2011年3月; 9-11 など

*5:Efficacy of sublingual immunotherapy in the treatment of allergic
rhinitis in pediatric patients 3 to 18 years of age: a meta-analysis of randomized, placebo-controlled, double-blind trials. Ann Allergy Asthma Immunol. 97 (2) 141-148, 2006 など

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