アニュイティエリプタの特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【ICS】【4剤目のエリプタ製剤】

  • 2017年6月5日
  • 2021年1月17日
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今回は発売直前のアニュイティ®エリプタ®についてまとめてみようと思います。
タイトルにも書いてある通り、吸入デバイスにエリプタを用いる4番目の薬剤で、アニュイティは1日1回吸入のICS(吸入ステロイド薬:Inhaled CorticoSteroid)になります。
平成29年3月30日にの製造承認を取得、5月31日に薬価収載されました。
平成29年6月15日に販売開始される予定です。

アニュイティエリプタ

長くなるので、最初に全部まとめておきます。
発売日は2017年6月15日。
薬価は、アニュイティ100μgエリプタ30吸入用が1,979.80円、200μgエリプタ30吸入用が2,554.80円です。

主成分はフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)。
レルベアやアラミスト点鼻液と同じ成分です。

吸入デバイスはカバーを開けるだけで吸入可能なエリプタ。
1日1回吸入で効果を発揮薄る唯一のDPIになります。

比較試験の結果を見ると、レルベア100 1日1回=フルタイド250 1日2回。

4つ目のエリプタはICS

アニュイティエリプタは4番目に登場するエリプタ製剤となります。
アニュイティの登場で吸入デバイスにエリプタを用いた製剤は、

  • レルベアエリプタ(ICS/LABA:フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)
  • アノーロエリプタ(LAMA/LABA:ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)
  • エンクラッセエリプタ(LAMA:ウメクリジニウム臭化物)
  • アニュイティエリプタ(ICS:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

というラインナップになります。

当然といえば当然ですが、吸入デバイスにエリプタを採用した唯一のICSとなります。
他のエリプタ製剤と同様に1日1回というのも大きな特徴です。

レルベア−LABA=アニュイティ

レルベアとアニュイティの違いはLABA(ビランテロール)の有無です。
レルベアはフルチカゾンフランカルボン酸エステルの量によって規格が分けられているので、そのままアニュイティに対応させることができます。

  • レルベア100エリプタ→アニュイティ100μgエリプタ
  • レルベア200エリプタ→アニュイティ200μgエリプタ

同じ吸入デバイスであるため、レルベアからアニュイティ、アニュイティからレルベアといった切り替えが行いやすくなりますね。

吸入操作が容易なICS

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吸入治療の問題として、

  • 吸入操作を間違ってしまいきちんと吸入できていない
  • 吸入操作を煩雑に感じた結果コンプライアンスが低下してしまう

などが挙げられます。
ですが、エリプタはカバーを開けるだけで薬剤がセットされるという簡単な操作が特徴です。
このような、簡便な操作で使用できる吸入薬は大きな魅力です。

アニュイティの特徴

アニュイティの特徴についてまとめていきます。
アニュイティはレルベアにも使用されているフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)を主成分とするDPI(ドライパウダー定量噴霧器:Dry Powder Inhaler)によるICS(吸入ステロイド薬:Inhaled CorticoSteroid)です。
日本国内ではDPIを用いたICSとして、

  • フルタイド®︎ディスカス®︎/ロタディスク®︎
  • パルミコート®︎タービュヘイラー®︎
  • アズマネックス®︎ツイストヘラー®︎

の3つが販売されています。
ですので、アニュイティは4成分目のDPIを用いたICSになります。

アニュイティの作用機序

アニュイティの成分であるフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)はステロイドです。
アニュイティはステロイドを吸入することによって、肺や気管支等の気道細胞に局所的に作用します。
ステロイドの作用機序はみなさんご存知かと思いますがまとめておきます。

一般に、ステロイドは細胞質内のグルココルチコイド受容体に結合し、複合体を形成し活性化する。受容体複合体は核内へ移行し、DNA 上のグルココルチコイド応答性エレメントに結合し、標的となる遺伝子転写を促進又は抑制する。その結果、炎症に関与するケミカルメディエータやサイトカイン等の産生を遺伝子レベルで調節し、抗炎症作用を発揮する。*1*2
(引用元:アニュイティ®︎エリプタ®︎インタビューフォーム)

 

1日1回の吸入で効果が持続

アニュイティはDPIを用いたICSで初めての1日1回吸入となっています。

【用法・用量】
通常、成人にはアニュイティ100μgエリプタ1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg)を1日1回吸入投与する。なお、症状に応じてアニュイティ200μgエリプタ1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして200μg)を1日1回吸入投与する。
(引用元:アニュイティ®︎エリプタ®︎添付文書)

※ICS全体で考えれば、pMDI(定量加圧式噴霧器:pressureised Meterd Dose Inhaler)のオルベスコ®︎インヘラーが1日1回です。

2.薬理作用
(3)作用発現時間・持続時間(in vitro)
ヒトII型肺胞上皮細胞株をFF及びIL-1βとともに37°Cで4時間インキュベートし、細胞が産生するGM-CSFをELISAで測定したときに、FFはIL-1β誘発GM-CSF産生を強力に抑制し(IC50:0.009nM)、その作用は細胞を洗浄しFFを除去した12時間後においても持続した。
(引用元:アニュイティ®︎エリプタ®︎インタビューフォーム)

 

GRに対する高い親和性

アニュイティ100μg1日1回はフルタイド250(国内未発売の規格)1日2回と同等の強さとされています。

フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)はフルチカゾンプロピオン酸エステル(Fluticasone Propionate:FP)の改良型で、アニュイティについてはFPとの比較試験が行われています。
その結果、「アニュイティ100μg(FF) 1日1回」は「FP 250μg 1日2回」と同等の呼吸機能改善効果を発揮しています。(夜間のFEV1トラフ値のベースラインからの変化量)*3
※FPを単剤を成分とする吸入薬はフルタイドとなりますが、日本ではフルタイドの250μg製剤は販売されていません。
※FPを含有する製剤としてフルタイドの他に、アドエア、フルティフォーム、フルナーゼ点鼻液があります。

2.薬理作用
(1)グルココルチコイド受容体(GR)に対する親和性(in vitro)
ヒト肺組織のサイトゾル分画を用いて3H-フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)、3H-フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)又は 3H-デキサメタゾンの結合試験を行い、それぞれの解離定数を算出し、デキサメタゾンのグルココルチコイド受容体への親和性を100とした場合の相対的受容体親和性を求めた。その結果、FFはヒトGRに対して高い結合親和性を示し、その親和性はFPの約1.7倍、デキサメタゾンの約30倍であった。*4
(引用元:アニュイティ®︎エリプタ®︎インタビューフォーム)

 

アニュイティに対する期待

2007年にアドエアが発売、その後、シムビコート、フルティフォーム、レルベアが登場し、ICS/LABA製剤は広く使用されるようになりました。
ですが、最近、安易にICS/LABA製剤を使用しすぎじゃないかと思うこともあります。
ガイドラインを見てみればわかるように、軽症間欠型であるステップ1ではLABAの使用は推奨されていません。
軽症持続型のステップ2でLABAの併用が検討されます。
最近の処方を見ていると、ステップ1、もしくはステップ1〜2の境界型のような症状でもICS/LABA製剤が使用されているようなケースが見受けられます。
ステップ1であればICS単独で問題ないはずですし、ステップ1〜2の境界型であれば必ずしもICS/LABAではなくていい場合があるでしょうし、症状が改善すればICS単独にスッテプダウン(LABAのステップオフ)を検討すべきではないかと思ったりします。

そう思うのはLABAによる副作用等のリスクの問題もありますが、薬価によるところが大きいです。
ICS/LABA製剤は優れた薬剤だとは思いますが、やはり値段が高い。
せっかく喘息発作がコントロールしかけてきても値段がネックでリタイヤしてしまう患者さんが少なからず存在すると思うんです。
ICS/LABA製剤まで使用しなくても、ICSのみでコントロール可能であれば、ぜひ、そうして欲しいと思います。
また、そこに操作が簡便なエリプタを用いたアニュイティが加わることで、治療から脱落する患者さんが少なくなるんじゃないかと思います。

アニュイティと他の吸入薬の薬価

ということで、個人的に大きなメリットの一つと思っているアニュイティの薬価について詳しく見てみましょう。
アニュイティの薬価は以下のようになっています。

  • アニュイティ100μgエリプタ30吸入用:1,979.80
  • アニュイティ200μgエリプタ30吸入用:2,554.80

フルタイドと比較すると安いことがわかります。

  • フルタイド100ディスカス 100μg60ブリスター:1884.70
  • フルタイド200ディスカス 200μg60ブリスター:2459.70

アニュイティ100がフルタイド200相当ということなので、アニュイティの方がかなり安いことがわかると思います。

レルベアと比較すると・・・
  • レルベア100エリプタ30吸入用:5,987.20(アニュイティ100:1,979.80)
  • レルベア200エリプタ30吸入用:6,692.60(アニュイティ200:2,554.80)

当然ながらアニュイティが圧倒的に安いですね。
レルベアの4割弱になっています。

その他 気になること

アニュイティはICS/LABA製剤が主流となっている中、久しぶりに登場したICSになります。
これまではレルベアを使用してLABAが必要ない状態になった場合、フルタイドやオルベスコに切り替えるしかありませんでした。
フルタイドに切り替えた場合、吸入デバイスがエリプタからディスカスに変更となることと、用法が1日2回になるという問題があります。
オルベスコに切り替えた場合、吸入デバイスが変更となることに加え、DPIからpMDIに変わるため手技がさらに煩雑になります。
アニュイティエリプタの登場により、レルベア(ICS/LABA製剤)からLABAをステップオフするという選択が容易に行われるようになるのではないかと思います。
ただ、気になるのはアニュイティ100 1×でもフルタイド250 2×と同等という強さ。
この強さを考えるとアニュイティ100で治療やめるわけにはいかず、フルタイド100にステップダウンしないといけませんね。
結局、デバイスを変えなきゃいけないんですよね。

製造承認は、

  • アニュイティ100μgエリプタ14吸入用
  • アニュイティ100μgエリプタ30吸入用
  • アニュイティ200μgエリプタ14吸入用
  • アニュイティ200μgエリプタ30吸入用

の4種類を取得していましたが、14吸入は薬価収載されていませんね。
フルタイドディスカスも60ブリスターだけですし、おそらく、今後も30吸入用だけの販売になるのだと思います。

ちなみに、アニュイティの名前の由来はよくわかりませんが、スペルはarnuityとなっています。
なので、年金を意味するannuityとは異なりますね。(エリプタは楕円形を意味するellipseに由来しています。)

*1:稲垣直樹:Progress in Medicine.2007;27(6):1282-1288.

*2:稲垣直樹:アレルギー・免疫.2007;14(5):658-674.

*3:承認時評価資料(FFA112059 試験)、Lötvall J, et al.:Respir Med 2014;108(1),41-49

*4:Derendorf H, et al.:Allergy.2008;63(10):1292-1300.

 

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