FDAによるフルオロキノロン系抗菌薬への警告

平成28年7月26日、米食品医薬品局(FDA)はフルオロキノロン系抗菌薬、いわゆるニューキノロン系抗菌薬への警告を強化するため、ラベル改定を了承したそうです。
対象となるのは全身用フルオロキノロンということで、内服薬と注射薬が対象で、点眼薬や点耳薬等の外用薬は対象外です。
過去にも何度か話題に上がった内容ですが、簡単にまとめておこうと思います。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

フルオロキノロン系抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)

まずは復習です。
キノロン系抗菌薬は、細菌のDNAの合成に関わる酵素であるトポイソメラーゼ(DNAジャイレース)を阻害することで、細菌の増殖を抑え、殺菌性の抗菌力を発揮します。
キノロン系抗菌薬の中でも、複素環にフッ素を含むものを、フルオロキノロン系抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬)と呼んでいます。

日本国内で販売されているニューキノロン系抗菌薬は、

  • シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン)
  • ノルフロキサシン(商品名:バクシダール)
  • ロメフロキサシン(商品名:バレオン、ロメバクト)
  • オフロキサシン(商品名:タリビッド)
  • トスフロキサシン(商品名:オゼックス)
  • レボフロキサシン(商品名:クラビット)
  • プルリフロキサシン(商品名:スオード)
  • モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)
  • ガレノキサシン(商品名:ジェニナック)※
  • シタフロキサシン(商品名:グレースビット)

などです。(※ガレノキサシンは広義で含まれる)
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FDAによる警告の内容

今回のラベル改定について、元になった警告は2016年5月12日にアナウンスされています。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly14/11160602.pdf

FDAは、副鼻腔炎、気管支炎、あるいは単純性尿路感染症の患者で、フルオロキノロン系抗菌薬以外の治療選択肢がある場合、一般に、フルオロキノロン系抗菌薬の使用に関連した重篤な副作用のリスクがベネフィットを上回っていることを通知する。このような疾患の患者については、フルオロキノロン系薬の使用は他の治療選択肢のない場合のみとすべきである。
FDAの安全性レビューで、全身用フルオロキノロン系薬(錠剤、カプセル、注射剤)は、活動・動作障害を引き起こす(disabling)重篤な副作用や、永続性となり得る重篤な副作用に関連し、これらが同時に発現する可能性もあることが示された。これらの副作用は、腱、筋肉、関節、神経、中枢神経系に生じ得る。
その結果、FDAは、この新たな安全性情報を反映させるため、すべてのフルオロキノロン系抗菌薬の製品表示とMedication Guide(患者向け医薬品ガイド)を改訂するよう求めている。FDAは引き続きフルオロキノロン系薬に関する安全性問題の調査を行い、追加情報が得られれば公表する。

要するに、副鼻腔炎、気管支炎、単純性尿路感染症においては、副作用のリスクを考えると、フルオロキノロン系抗菌薬を第一選択にするべきではないということですね。
活動・動作障害の副作用が永続性となりうるということが理由のようです。

過去にも安全性情報が出されていたフルオロキノロン系抗菌剤

2008年7月、2013年8月、2015年11月にも、FDAは全身用フルオロキノロン系抗菌薬に関連した安全性情報についてアナウンスを行っています。
2015年11月には、FDA諮問委員会は、それまでの副作用情報に基づいて、急性細菌性副鼻腔炎、慢性気管支炎の急性増悪および単純性尿路感染症の患者について、副作用のリスクについて警告しています。

警告の対象となっているニューキノロン

今回、FDAの警告の中に挙げられているニューキノロンは、

  • レボフロキサシン(商品名:クラビット)
  • シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン)
  • シプロフロキサシン徐放製剤(日本国内販売なし)
  • モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)
  • オフロキサシン(商品名:タリビッド)
  • gemifloxacin(日本国内販売なし)

となっています。
この中で、日本国内で最も使用頻度が高いのは、間違いなくクラビットとそのジェネリック医薬品でしょうね。

ニューキノロン系抗菌薬による活動・動作障害

ニューキノロン系抗菌薬の副作用として生じる腱、筋肉、関節、神経、中枢神経系の活動・動作障害。
これだけ聞くとパッと思いつかない方が多いのではないでしょうか?
そこで、日本国内で代表的な(であろう)フルオロキサシンのクラビットの添付文書を見てみます。

重大な副作用

  • 12. アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害(頻度不明):アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。60歳以上の患者、コルチコステロイド剤を併用している患者、臓器移植の既往のある患者であらわれやすい。

その他の副作用

  • 4. 精神神経系(0.1%未満):しびれ感
  • 5. 精神神経系(頻度不明):末梢神経障害、錐体外路障害
  • 14. 感覚器(0.1%未満):耳鳴、味覚異常、味覚消失、視覚異常
  • 15. 感覚器(頻度不明):無嗅覚、嗅覚錯誤

アキレス腱炎は結構有名なので、イメージを持っている方も多いのではないかと思います。
ですが、自分は錐体外路障害や視覚異常等についてはあまりイメージを持っていませんでした。

フルオロキノロン系抗菌薬に変わる選択肢

フルオロキノロン系が使えないとなると・・・どのような選択肢が考えられるでしょうか?

副鼻腔炎

ニューキノロン系を除外するとβラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)が第一選択となりますね。
インフルエンザ菌等の耐性菌の問題があればアジスロマイシンもあるとは思います。

気管支炎

気管支炎の場合、そもそも抗生物質や抗菌剤が必要なケースがどの程度存在するかということになるかもしれません。
百日咳やマイコプラズマ等であれば、やはり、マクロライド系が第一選択となるのではないでしょうか?

尿路感染症

セフェム系が第一選択となりますね。
元々、高齢女性の単純性膀胱炎においても、キノロン系の耐性率の高さからセフェム系が第一選択とされています。

まとめ

現在の診療において、ニューキノロン系抗菌薬の使用頻度はかなり高く、安易に使用されている部分があると言うのが正直なところです。
たしかに、ニューキノロンは抗菌スペクトルが広く、使用しやすい薬剤ではあります。
ですが、クラビット等において高用量単回投与が一般化されており、副作用のリスクは上昇しているのかもしれません。
もちろん、旧来のような低用量複数回投与は耐性化等の問題があるのですが、ニューキノロン系抗菌薬を使用すべき症例、重症度と言うのを見つめ直さないといけないのかもしれませんね。
そもそも、抗生物質が必要かどうか・・・という根本的な判断の問題というケースもありますよね。

今回の件で日本でもすぐにフルオロキノロン系の使用を見直さないといけないということにはならないかもしれません。
日本と米国ではニューキノロンの用量も異なるものもあります。
ですが、頭の片隅に置いておく必要がありますし、今後の動向を見守っていく必要ががありますね。

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