ソバルディの承認了承~HCV IFNフリー治療の大本命登場

平成27年3月5日、厚生労働省の薬食審医薬品第二部会で新薬の承認が了承されました。
その中で、特に注目なのが、ソバルディ錠400mg(一般名:ソホスブビル)とコペガス錠200mg(一般名:リバビリン)の新効能追加です。
ソホスブビルは海外で驚異的な売り上げを誇るC型肝炎治療薬です。
今回承認されたソバルディはコペガスとの併用することで、ジェノタイプ2型に対する国内初のIFNフリー療法を可能にする薬剤です。

先日、ダクルインザ錠(一般名:ダクラタスビル/DCV)とスンベプラカプセル(一般名:アスナプレビル/ASV)の適応からIFN治療不適格・不耐用の条件が削除されたことを紹介したばかりです。

今回、新たなDAAs(Direct Acting Antivirals/直接作用型抗ウイルス薬)が承認されます。
すでに海外では発売(2014年12月時点で米国、EUなど38か国で承認)されており、新薬としての初年度最高益を記録しています。
日本ではすでにダクルインザとスンベプラが発売されていますが、世界初のIFNフリーのC型肝炎治療薬はソバルディです。

国内では、genotypeⅠ型のC型肝炎に対してDCV/ASV2剤併用のIFNフリー治療が承認されていますが、今回承認されるソバルディ錠はリバビリンと併用することでgenotypeⅡ型に対するIFNフリー治療を可能とします。

日本初進出のギリアド・サイエンシズ

今回、日本でソバルディ錠の製造承認を取得するのはギリアド・サイエンシズ(GILD)というアメリカの世界第二位のバイオ医薬品会社です。
日本にはソバルディ錠で初めての進出となります。
他社に勤めていたMRさんなどがギリアドに転職したという情報を耳にしていますので、日本国内のMR経験者とソホスブビルという強力な薬剤をもって一気に日本国内でのシェアを拡大しそうです。
ちなみに、インフルエンザ治療薬の代表であるタミフル(一般名:オセルタミビル)を開発した会社というと、その研究・開発力の高さがわかりやすいかと思います。
(ロシュ社にライセンス提供)

NS5Bポリメラーゼ阻害薬ソホスブビル

ソホスブビル(SOF)は、RNA依存性RNAポリメラーゼとしての活性をもつNS5Bを阻害することでC型肝炎ウイルス(HCV)の増殖を抑制します。
これまで発売されているDAAsは、NS3/4Aセリンプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体阻害剤で、NS5Bポリメラーゼ阻害剤はソフォスビルが唯一の薬剤となります。
参考までに、これまで発売されているDAAsをまとめておきます。

NS3/4Aセリンプロテアーゼ阻害剤

  • テラビック錠(一般名:テラプレビル/TVR)→ペグイントロン(一般名:PEG-IFN2b)+レベトールカプセル(一般名:リバビリン)との3剤併用
  • ソブリアードカプセル(一般名:シメプレビル/SMV)→ペグイントロン(一般名:PEG-IFN2b)+レベトールカプセル(一般名:リバビリン)もしくはペガシス(一般名:PEG-IFN2a)+コペガス錠(一般名:リバビリン)との3剤併用療法
  • スンベプラカプセル(一般名:アスナプレビル/ASV)→ダクルインザ錠(一般名:ダクラタスビル)とのIFNフリー2剤併用療法
  • バニヘップカプセル(一般名:バニプレビル/VPV)→ペグイントロン(一般名:PEG-IFN2b)+レベトールカプセル(一般名:リバビリン)との3剤併用

NS5A複製複合体阻害剤

  • ダクルインザ錠(一般名:ダクラタスビル/DCV)→スンベプラカプセル(一般名:アスナプレビル)とのIFNフリー2剤併用療法

NS5Bポリメラーゼ阻害剤

  • ソバルディ錠(一般名:ソホスブビル/SOF)

 

ソバルディ錠の承認内容

今回、HCV治療薬で初めてのヌクレオチドポリメラーゼ阻害剤として承認されるソバルディ錠ですが、その承認内容について確認しておきます。

  • 効能・効果:「セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」
  • 用法・用量:「通常、成人にはソホスブビルとして400mgを1日1回、12週間経口投与する。リバビリンと併用して使う。」

コペガス錠の効能追加

ソバルディ錠の承認に伴い、コペガス錠の適応追加も承認されます。

  • 効能・効果:「ソホスブビルとの併用によるセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」

ということで、ソバルディ錠は当面はコペガス錠との併用のみでレベトールカプセルとは併用不可となりそうですね。

ジェノタイプ2型の治療はどう変わる?

現在、ジェノタイプ2型の治療は、

初回(高ウイルス量)

  • Peg-IFNα2b+RBV(24週間)
  • IFNβ+RBV(24週間)

初回(低ウイルス量)

  • IFN(8~24週間)
  • Peg-IFNα2a(24~48週間)

IFN単独またはPeg-IFN+RBV再燃

  • Peg-IFNα2b+RBV(36週間)
  • Peg-IFNα2a+RBV(36週間)
  • IFNβ+RBV(36週間)

となっています。
今回、ここにソホスブビルを用いたIFNフリー療法が加わります。
DCV/ASV療法は先日まで「IFN治療不適格・不耐用」の場合のみの適用(現在は削除)でしたが、ソバルディにはその文言はないため、初回治療から使用可能となります。
治療期間も12週間と従来の治療のほとんどより治療期間が短縮されますし、IFN特有の副作用が回避できることから、治療しやすいジェノタイプ2型とはいえC型肝炎治療を行うかどうか迷っていた人も治療を受けやすくなるのではないかと思います。

ソバルディ錠に対する期待

今回承認されるソバルディ錠はゲノタイプⅡ型に対してのみの適応となりますが、近い将来にはゲノタイプⅠ型に対してもソホスブビルを使用することが可能になるはずです。
というのも、ギリアド・サイエンシズはソホスブビルをNS5A複合体阻害薬レディパスビルとあわせたソホスブビル/レディパスビル配合剤(SOF/LDV、商品名:ハーボニー?)を国内申請中です。
この薬剤、海外ではすでに承認されており、ジェノタイプ1型に対してほぼ100%に近いSVRを達成していることから大きく期待されていました。
その国内第Ⅲ相臨床試験の結果ですが、SOF/LDV配合剤12週の投与でSVR12は100%!というとんでもない結果が出ています。
スンベプラとダクルインザのDCV/ASV併用療法は24週で87.4%ですから、期間・SVRともに大きく改善されています。
IFNフリー治療のメリットである副作用の少なさもそのままです。

海外では、NS5A阻害剤としてはより効果的であると言われるダクラタスビル(国内商品名:ダクルインザ)との配合剤も承認されているようですし、さらにはNS3/4Aセリンプロテアーゼ阻害剤を加えた3剤併用療法を行うことで6週間での治療を目指す試験も行われているようです。

ソバルディ錠の発売は?薬価は?

今回、第二部会で承認が了承されたので、ソバルディ錠は早ければ5月には薬価収載される可能性があります。
ですが、そこで問題となるのが薬価の高さ。
アメリカ等ではC型肝炎治療の第一選択薬として使用されているソバルディ錠ですが、米国での販売価格は100,000円/錠!
12週間の内服で840万円となります。
おそらく、ジェノタイプ2型に対してのみの治療ということもあり、日本での薬価は半額以下になるのではないかと予想されますが、それでも高い!
将来発売されるであろうハーボニーは間違いなく、ソバルディ以上の薬価になると予想されます。
承認後の中医協での審議次第ですが、薬価が低すぎてギリアドがそれを受け入れない場合、薬価収載見送りとなり販売開始が遅れてしまう可能性もあります。
そのあたりどうなるのか、見守っていきたいと思います。

ソバルディ錠はバラ28錠で販売されるようです。
12週間なので、3本/1人という形です。
でも、初回のみ専門医のいる病院で処方、二回目からはかかりつけ医ってパターンだと14錠余っちゃいますね。
それは困るよなあ・・・いや、本当に。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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