平成27年1月21日、厚生労働省の薬食審医薬品第二部会が開催されました。
その中で承認が了承されたものの一つにエクリラ400μgジェヌエア30吸入用、エクリラ400μgジェヌエア60吸入用(一般名:アクリジニウム臭化物)がありました。
杏林製薬が申請していた新規LAMA吸入薬(LAMA:Long-Acting Muscarinic Antagonist/長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)で、海外でも慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬としてすでに承認済です。
元々スペインのアルミラール社が創製したものですが、杏林製薬が日本における独占的な開発・販売権を取得していたものです。
LAMA吸入用製剤としては、スピリーバ(一般名:チオトロピウム)、シーブリ(一般名:グリコピロニウム)に次ぐ3剤目です。
エクリラ(一般名:アクリジニウム)の作用機序
慢性閉塞性肺疾患(COPD)には慢性気管支炎と肺気腫が含まれます。
COPDでは慢性的な気道閉塞障害により咳や痰が多くなります。
アクリジニウムは節後線維と気管支平滑筋の間の平滑筋に存在するムスカリンM3受容体に働き、アセチルコリンの作用を阻害することで、気管支平滑筋を弛緩させ、気管支を拡張させます。
新規ドライパウダー吸入器ジェヌエア(Genuair)
参考資料を見てみると、ジェヌエアには以下のような特徴があるようです。
- 視覚(色つき制御ウインドゥ)と聴覚(カチという音)により吸入完了を知らせる
- カウンターにより吸入可能回数が確認できる
- 制御機能により重複吸入および空吸入器の使用を防止できる
ドライパウダータイプですし、メプチンスイングヘラーのような感じでしょうか?
メプチンの新剤形スイングヘラー 承認 – 薬剤師の脳みそ
スピリーバでは、ハンディヘラー(ドライパウダー型)に比べてレスピマット(エアゾール型)の方がチオトロピウムが血中に移行しやすいという報告もありました。
TIOSPIR試験で否定はされていますが、心血管リスクが高い場合については注意が必要です。
スピリーバレスピマットが喘息の適応を追加申請 – 薬剤師の脳みそ
なので、エクリラがドライパウダー型なのは安心感があります。
スピリーバ(ハンディヘラー)やシーブリ(ブリーズヘラー)と異なり、カプセルをセットして吸入を行うのではなく、吸入器単独で使用できるようなので、操作性の面でも安心です。
エクリラと従来のLAMA吸入薬との違い
これも参考資料からの抜粋ですが、
- 全身性の副作用が少ない
- 最大効果発現までの時間が短い
- 1日2回投与により一日を通じて症状と呼吸機能を改善する
というのがエクリラ ジェヌエアの特徴のようです。
ムスカリンM3受容体に対する選択性
エクリラの成分であるアクリジニウムはムスカリンM3受容体を選択的に阻害します。
現在、発売されている抗コリン吸入薬と比較してみると
M3選択性:イプラトロピウム(選択性なし) << チオトロピウム(M1・M3選択性) < グリコピロニウム(M1
ムスカリン受容体への作用時間
エクリラの用法は1日2回になっています。
作用時間:イプラトロピウム(1日4回) < アクリジニウム ※エクリラ(1日2回) < チオトロピウム・グリコピロニウム(1日1回)
といったところでしょうか?
※イプラトロピウムはLAMAではないので当然作用時間は短いです
エクリラジェヌエアへの期待
エクリラジェヌエアの一番の特徴はその使いやすさですね。
メーカーページから指導用の文書が閲覧できます。
全身性への副作用が少ない
アクリジニウムの特徴として全身性の副作用が少ないことが挙げられています。
また、ドライパウダー型であることも全身への移行を減らしてくれる気がします。
COPDへの適応をもつ薬剤であるため、高齢者への使用頻度が多くなりますが、加齢とともにアセチルコリンの産生は弱まるため、高齢者では抗コリン作用による副作用が発生しやすい傾向があります。
特に、頻脈などを通じて心血管イベントを上昇させるリスクが心配になります。
なので、アクリジニウムの全身性の副作用が少ないという特徴は大きなメリットになります。
最大効果発現までの時間が短い
1日2回使用という欠点があるエクリラですが、逆に言えば効果の変化が短く、効果を実感しやすいのかもしれません。
最大効果発現までの時間が短いのであれば、より効果を実感しやすく、服薬アドヒアランスの維持が期待できるかもしれません。
将来は合剤も?
海外ではホルモテロールとの合剤も開発中?のようです。
杏林といえば、フルティフォーム(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル/ホルモテロールフマル酸塩水和物)があるので、ホルモテロールとの合剤の開発は創造できるところです。
日本でも近い将来発売されるかもしれませんね。