DPP-4阻害薬の適応について復習~グラクティブ・ジャヌビア・ネシーナの適応拡大

平成26年4月25日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会でDPP4阻害薬3剤(2成分)の適応拡大が了承されました。
ジャヌビア・グラクティブ、ネシーナの適応が拡大され、2型糖尿病の適応を取得予定です。
これで、他の糖尿病薬との併用に関する制限がなくなります。
(2014年5月23日正式に承認され、ジャヌビア・グラクティブ、ネシーナの適応は「2型糖尿病」となりました。)

エクアとトラゼンタの適応拡大については過去に記事に書きました。
DPP4阻害薬(エクアとトラゼンタ)の適応拡大 – 薬剤師の脳みそ

DPP4阻害剤

選択的SGLT2阻害薬が話題になっていますが、DPP-4阻害剤について少し復習。
DPP-4阻害薬とはジペプチジルペプチターゼ-4(DiPeptidyl Peptidase-4)を阻害することでインクレチンの分解を抑制し、インスリンの効果を高め、血糖値の上昇を抑制する薬剤です。
T細胞などの免疫系細胞表面においてはCD26というタンパク質として発現します。

インクレチン

インクレチンとしての機能が確認されているものとして、グルコース依存性インスリン分泌刺激ホルモン Glucose-dependent Insulinotropic Polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド 1(Glucagon-Like Peptide-1:GLP-1)があります。

現在開発中のDPP4阻害剤

現在、発売されているDPP4阻害剤は7成分、9商品(配合剤を含む)です。
さらに、2014年3月7日、武田薬品が週1回投与のDPP-4阻害薬 トレラグリプチンコハク酸塩(開発コード:SYR-472)の承認申請を行っています。

2型糖尿病の適応を持たないDPP4阻害剤

これで、正式にグラクティブ・ジャヌビア・ネシーナの適応が拡大されれば(2014年5月23日に適応拡大が承認されました)、2型糖尿病の適応を取得していないのはスイニーとリオベル配合錠だけになりますね。

スイニーはスーグラと併用できる?

SGLT2阻害薬は最初から「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に従って開発されているので、2型糖尿病の適応を取得していますが、スイニーとスーグラの併用は可能なんでしょうか?
スーグラから見ると問題ないけど、スイニー的には×?
でも、スイニー発売時にSGLT2阻害剤は発売されてなかったことを踏まえると、スーグラ側でパスしているということで、スイニーとスーグラの併用は問題なしでしょうね。

リオベル配合錠の適応

リオベル配合錠(一般名:アログリプチン安息香酸塩 ALO/ピオグリタゾン PIO)が発売されています。
これに関しては、保険上、単独での使用しか認められていません。

重要な基本的注意
12.本剤と他の糖尿病用薬の併用における安全性は確立していない(使用経験がない)。

この一文が根拠のようですが、ネシーナの適応が拡大された時点でリオベルの適応も拡大!とはならないんですね・・・。

DPP-4阻害剤と適応拡大の流れ

これまでのDPP-4阻害薬の適応の変遷をまとめてみました。

  • 2009年10月16日 グラクティブ・ジャヌビア(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物 SIT)承認:単独、SU(スルホニルウレア剤)併用、TZD(チアゾリジン系)併用、BG(ビグアナイド系)併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT

 

  • 2010年1月20日 エクア(一般名:ビルダグリプチン VIL)承認:単独、SU併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL

 

  • 2010年4月16日 ネシーナ(一般名:アログリプチン安息香酸塩 ALO)承認:単独、α-GI(αグルコシダーゼ阻害剤)併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO

 

  • 2010年8月10日 ネシーナ(一般名:アログリプチン安息香酸塩 ALO)適応追加:TZD併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO

 

  • 2011年2月23日 ネシーナ(一般名:アログリプチン安息香酸塩 ALO)適応追加:SU併用、BG併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO

 

  • 2011年5月20日 グラクティブ・ジャヌビア(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物 SIT)適応追加:α-GI併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO

 

  • 2011年7月11日 トラゼンタ(一般名:リナグリプチン LIN)承認:単独のみ
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN

 

  • 2011年9月16日 グラクティブ・ジャヌビア(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物 SIT)適応追加:INS(インスリン)併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN

 

  • 2012年6月29日 テネリア(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物 TEN)承認:単独、SU併用、TZD併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN

 

  • 2012年9月28日 スイニー(一般名:アナグリプチン ANA)承認:単独、SU併用、TZD併用、BG併用、α-GI併用
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA

 

  • 2013年2月28日 エクア(一般名:ビルダグリプチン VIL)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA

 

  • 2013年3月25日 トラゼンタ(一般名:リナグリプチン LIN)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA

 

  • 2013年3月25日 オングリザ(一般名:サキサグリプチン水和物 SAX)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA
SAX

 

  • 2013年12月20日 テネリア(一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物 TEN)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA
SAX

 

  • 2014年5月23日 2014年4月25日了承 グラクティブ・ジャヌビア(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物 SIT)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
  • 2014年5月23日 2014年4月25日了承 ネシーナ(一般名:アログリプチン安息香酸塩 ALO)適応拡大:DM(2型糖尿病 併用薬剤の制限なし)
単独SUTZDBGα-GIINS
SIT
VIL
ALO
LIN
TEN
ANA
SAX

 

さあ、スイニーの適応拡大はいつになるのか?
・・・・・・そもそも予定されているのでしょうか?

※スイニーは2015年12月21日に「2型糖尿病」の適応が承認されました。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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