平成30年8月2日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回はセフトリアキソンナトリウム水和物とアプレミスラストに対して改訂指示が出されています。
使用上の注意の改訂指示(平成30年8月2日)
PMDAへのリンクを貼っておきます。
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/revision-of-precautions/0332.html
アプレミラスト(オテズラ)による重度の下痢
オテズラ錠 添付文書オテズラ錠 インタビューフォームアプレミラストの「使用上の注意」の改訂について
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。
- オテズラ錠10mg
- オテズラ錠20mg
- オテズラ錠30mg
アプレミラストはセルジーン社によって開発されたPDE4阻害剤で「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬」と「関節症性乾癬」に対する適応を有しています。
PDE4は免疫細胞内でcAMP(活性型)をAMP(不活型)に分解する酵素で、アプレミラストはPDE4の働きを抑える事により免疫細胞内のcAMPの量を増やします。
その結果、cAMPが免疫細胞が過剰に活性化することを防ぎ、免疫反応に関するシグナルを抑制方向に向かわせます。
添付文書改訂内容
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に下記の内容が追記されます。
重度の下痢:重度の下痢があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
症例報告はないが改訂に至った経緯
今回の改訂内容(重度の下痢)に関して、国内での症例の報告はありません。
ですが、海外での症例報告が存在し、また米国と欧州添付文書にも副作用として記載されていることを考慮し、改訂することが望ましいと判断されたようです。
セフトリアキソンナトリウム水和物(ロセフィン、リアソフィン、セフキソンなど)による精神神経症状
ロセフィン静注用 添付文書ロセフィン静注用 インタビューフォームリアソフィン静注用 添付文書リアソフィン静注用 インタビューフォームセフキソン静注用 添付文書セフキソン静注用 インタビューフォームセフトリアキソンナトリウム水和物の「使用上の注意」の改訂について
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。
- ロセフィン静注用0.5g
- ロセフィン静注用1g
- ロセフィン静注用1gバッグ
- セフキソン静注用0.5g
- セフキソン静注用1g
- リアソフィン静注用0.5g
- リアソフィン静注用1g
- セフトリアキソンNa静注用0.5g「各社」
- セフトリアキソンNa静注用1g「各社」
- セフトリアキソンナトリウム静注用0.5g「各社」
- セフトリアキソンナトリウム静注用1g「各社」
- セフトリアキソンナトリウム静注用1gバッグ「各社」
セフトリアキソンは第三世代セファロスポリンの一つで細胞壁合成を阻害することで細菌に対して殺菌的に作用します。
添付文書改訂内容
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項の「意識障害」に関する記載を「精神神経症状」に改めた上で、下線部が追記、内容が変更されます。
精神神経症状:意識障害(意識消失、意識レベルの低下等)、痙攣、不随意運動(舞踏病アテトーゼ、ミオクローヌス等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。これらの症状は、高度腎障害患者での発現が多数報告されている。
症例報告
今回の改訂内容(精神神経症状関連症例)に関して、国内過去3年間での症例報告は19 例です。
そのうち、因果関係が否定できないものが11 例、死亡例が1例です。
(死亡例に関しては因果関係が否定できないものではありませんでした)
平成30年8月2日 添付文書改訂内容についてまとめ
今回の改訂内容は元々記載されていた副作用の範囲を広げるような内容でした。
まずはオテズラについて。
下痢の副作用は知られていましたが、今回、重度の下痢に関する海外での報告が集積されているため、日本国内での添付文書にもそのことを記載することで、注意喚起が行われる事になります。
下痢の頻度は高いのですでに意識して服薬指導を行っているところではありますが、重症化する可能性を考慮して指導を行っていく必要があります。
次にロセフィンについて。
これまで意識障害の報告はありましたが、それに加えて痙攣、不随意運動などが報告されているため、精神神経症状という表現に変更、副作用の範囲が広がっています。
注射なので薬局で服薬指導を行うことはないですが、ジェネリックを含めて近隣の医院が採用している可能性は非常に高い薬剤なので、情報提供等に努めたいところですね。