2018年8月22日、厚労省の中医協・総会で新規医薬品の薬価が決定し、8月29日に薬価収載されました。
新医薬品一覧表(平成30年8月29日収載予定)
また、オプジーボの用法用量変化再算定についても決定しています。
今年度から新しく導入された「薬価収載時の薬価再算定ルール」が初めて適応されることになります。
オプジーボの薬価再算定は平成30年11月1日に実施されました。
新規有効成分を含む新医薬品
まずは新規有効成分を含有する医薬品として承認され、薬価収載が決定した医薬品についてまとめます。
今回の薬価収載では5品目が該当します。
エンタイビオ点滴静注
平成30年11月7日発売
エンタイビオ点滴静注用 添付文書
エンタイビオ点滴静注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- エンタイビオ点滴静注用300mg:274,490円/瓶
- 成分名:ベドリズマブ(遺伝子組み換え
- 申請者:武田薬品
- 効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
- 用法・用量:通常、成人にはベドリズマブ(遺伝子組換え)として1回300mgを点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注する。
- 1日薬価:4,902円
新しい潰瘍性大腸炎治療薬
エンタイビオ点滴静注用については過去記事でまとめています。
潰瘍性大腸炎は免疫系の異常による疾患です。
免疫系が大腸粘膜を異物と認識した結果、血管内から腸管組織にTリンパ球が移動し、大腸粘膜を攻撃し、大腸粘膜の炎症を引き起こします。
症状の程度は様々ですが、エンタイビオの適応となるのは「中等症から重症の潰瘍性大腸」で「既存治療で効果不十分な場合」です。
Tリンパ球の遊走
血管内に存在する白血球の一種であるTリンパ球が標的部位に移動することを、「Tリンパ球の遊走」と言います。
活性化されたTリンパ球の表面には「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が発現しています。
この「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が、血管内皮細胞に発現している「MAdCAM-1*1」に結合することで、活性化Tリンパ球が血管内皮に接着し、そこから組織内に移行していきます。
ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体の働き
エンタイビオの有効成分であるベドリズマブは「ヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体」と呼ばれています。
ベドリズマブは「α4β7インテグリン」に特異的に結合することで、「α4β7インテグリン」と「MAdCAM-1」の結合を阻害し、「Tリンパ球の遊走」を抑制、炎症を軽減します。
日本でも大型新薬となるか?
エンタイビオはすでに海外で発売(Entyvio)され、2016年度は全世界で1432億円を売り上げるブロックバスター*2です。
抗TNFα抗体による治療に対し効果不十分な場合でも効果が期待できることから、日本での承認が期待されています。
これまでエンティビオと呼ばれていましたが、日本国内での正式名称はエンタイビオになったみたいですね。
薬価について
同様の適応を持つ薬剤と比較してみます。
- エンタイビオ点滴静注用300mg:274,490円/瓶(1日薬価:4,902円)
- レミケード点滴静注用100mg:80,426円/瓶(1日薬価:4,309円)
- ヒュミラ皮下注40mgペン0.4mL:62,596円/キット(1日薬価:4,471円)
エンタイビオが若干高くはなってはいますね。
エンタイビオには新薬創出等加算が適用されています。
新規作用機序であること(抗TNFα抗体治療歴がある患者にも有効性が認められていること)から有用性加算2(A=10%)も適用されています。
ダフクリア錠
平成30年9月18日発売
ダフクリア錠 添付文書
ダフクリア錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ダフクリア錠200mg:3943.80円/錠
- 成分名:フィダキソマイシン
- 申請者:アステラス製薬
- 効能・効果:感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
- 用法・用量:通常、成人にはフィダキソマイシンとして1回200mgを1日2回経口投与する。
- 1日薬価:7,887.60円
クロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎の新たな選択肢
ダフクリア錠については過去記事でまとめています。
フィダキソマイシンはRNAポリメラーゼ阻害剤です。
クロストリジウム・ディフィシル(CD*3)に対して選択的・殺菌的に作用することが可能です。
現在使用されているバンコマイシンと比較して、他の腸内細菌に対する影響が少ないと言われています。
現在使用されているメトロニダゾールとバンコマイシンがありますが、感受性の低下や再発等の問題が生じており、ダフクリア錠が新たな選択肢に加わることが期待されています。
また、国内外の臨床試験において、CD感染症に対する再発抑制効果が確認されています。
薬価について
同様の適応を持つ薬剤と比較してみます。
- ダフクリア錠200mg:3943.80円/錠(1日薬価:7,887.60円)
- 塩酸バンコマイシン散0.5g:2536.60円/瓶(1日薬価:10,142.40円)
- バンコマイシン塩酸塩散0.5g:1113.10円/瓶(1日薬価:4,452.40円)
- フラジール内服錠250mg:35.50/錠(1日薬価:213円)
バンコマイシンの先発(最大量)よりは安いってくらいですね。
新規作用機序を有し、クロストリジウム・ディフィシル感染症に選択性の高い抗菌スペクトルを有するため、有用性加算2(A=5%)が適用されています。
イミフィンジ点滴静注
平成30年8月29日発売
イミフィンジ点滴静注 添付文書
イミフィンジ点滴静注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- イミフィンジ点滴静注120mg:112,938円/瓶
- イミフィンジ点滴静注500mg:458,750円/瓶
- 成分名:デュルバルマブ(遺伝子組み換え)
- 申請者:アストラゼネカ
- 効能・効果:切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法
- 用法・用量:通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。ただし、投与期間は12カ月間までとする。
- 1日薬価:32,768円
新規抗PD-L1抗体デュルバルマブ
イミフィンジ点滴静注については過去記事でまとめています。
イミフィンジ(成分名:デュルバルマブ)はがん免疫療法や免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる、抗PD-L1抗体(抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体)です。
日本では3番目の抗PD-L1抗体です。
抗PD-L1抗体の作用機序について復習しておきます。
活性化された免疫細胞(T細胞やB細胞)の表面には、PD-1*4と呼ばれる、免疫細胞のアポトーシス(細胞自己死)に拘わる分子が存在しています。
PD-1は免疫のブレーキ役(免疫チェックポイント)として免疫応答を調節しています。
また、PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)とて発見されたのがPD-L1*5とPD-L2*6です。
PD-1にPD-L1が結合すると、免疫細胞としての反応が抑制されてしまいます。
がん細胞は自身の表面にPD-L1を発現させることで、免疫反応による攻撃を回避します。
イミフィンジの有効成分であるデュルバルマブは抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体です。
デュルバルマブはPD-L1に結合することで、PD-1とPD-L1の結合を阻害します。
その結果、免疫反応にかかっていたブレーキが解除され、がんを抗原とする抗原抗体反応を増強、悪性腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。
ステージⅢの非小細胞肺がんに対して使用できる初の免疫チェックポイント阻害薬
イミフィンジは非小細胞肺がんに対する適応を持つ4剤目の免疫チェックポイント阻害剤になります。
ですが、「ステージⅢの非小細胞肺がん」に対して使用可能な免疫チェックポイント阻害薬はイミフィンジが初めてです。
医薬品名 | 成分名 | 分類 | 効能・効果 |
---|---|---|---|
オプジーボ点滴静注 | ニボルマブ | 抗PD-1抗体 | 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 |
キイトルーダ点滴静注 | ペムブロリズマブ | 抗PD-1抗体 | PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 |
テセントリク点滴静注 | アテゾリズマブ | 抗PD-L1抗体 | 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 |
イミフィンジ点滴静注 | デュルバルマブ | 抗PD-L1抗体 | 切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法 |
イミフィンジの効能・効果に記載されている「切除不能な局所進行の非小細胞肺がん」は「ステージⅢの非小細胞肺がん」に該当します。
ステージⅢの非小細胞肺がんに対しては化学療法(プラチナ製剤)と放射線療法を組み合わせた「化学放射線療法」を行うのが標準治療となっています。
これまでは化学放射線療法後に行える治療が存在しなかったため、転移や再発を起こしてしまうケースが多かったのですが、今回、イミフィンジが承認されることで、化学放射線療法後にも積極的な治療を継続することが可能になります。
保険外併用療法費制度の対象薬剤
アストラゼネカはイミフィンジの対象患者の治療法が極めて限られているということで、厚労省の「保険外併用療法制度」のもとで薬価収載までの間、同剤を無償提供が行われていました。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/20170925.pdf
薬価について
非小細胞肺がんに対する適応を持つ免疫チェックポイント阻害剤と薬価を比較してみます。
- イミフィンジ点滴静注120mg:112,938円/瓶(1日薬価:32,768円)
- オプジーボ点滴静注100mg:278029.0円/瓶(1日薬価:49,648円)
- オプジーボ点滴静注100mg:173,768.0円/瓶(1日薬価:29,788.8円) ※用法用量変化再算定後(平成30年11月1日)
- キイトルーダ点滴静注100mg:364600.0円/瓶(1日薬価:34,723.8円)
- テセントリク点滴静注1200mg:625567.0円/瓶(1日薬価:29,788.9円)
イミフィンジは新薬創出等加算が適用されています。
臨床試験で意義のある効果が認められ、国内外の診療ガイドラインにおいて初の標準治療として推奨されていることから有用性加算2(A=10%)も適用されています。
ガザイバ点滴静注
平成30年8月29日発売
ガザイバ点滴静注 添付文書
ガザイバ点滴静注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ガザイバ点滴静注1000mg:450,457円/瓶
- 成分名:オビヌツズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:中外製薬
- 効能・効果:CD20陽性の濾胞性リンパ腫
- 用法・用量:通常、成人には、オビヌツズマブ(遺伝子組換え)として1日1回1000mgを点滴静注する。導入療法は、以下のサイクル期間及び投与サイクル数とし、1サイクル目は1、8、15日目、2サイクル目以降は1日目に投与する。維持療法では、単独投与により2カ月に1回、最長2年間、投与を繰り返す。
- シクロホスファミド水和物、ドキソルビシン塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩及びプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン併用の場合:3週間を1サイクルとし、8サイクル
- シクロホスファミド水和物、ビンクリスチン硫酸塩及びプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン併用の場合:3週間を1サイクルとし、8サイクル
- ベンダムスチン塩酸塩併用の場合:4週間を1サイクルとし、6サイクル
糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体
ガザイバ点滴静注については過去記事でまとめています。
現在、CD20陽性のB細胞性濾胞性リンパ腫に対する標準治療は「リツキシマブと化学療法の併用」です。
今回審議されたガザイバ(オビヌツズマブ)は「濾胞性リンパ腫」の治療でリツキシマブを上回る有用性が確認されています。
リツキシマブ(製品名:リツキサン)もオビヌツズマブも腫瘍細胞のCD20に対する抗体ということでは同じですが、オビヌツズマブはより抗体依存性細胞傷害(ADCC*7)活性を高めた医薬品になります。
臨床試験ではリツキサンに対して有意に無増悪生存期間を延長しています。
薬価について
ガザイバは新薬創出等加算が適用されています。
濾胞性リンパ腫(FL*8)の一次治療で用いられているリツキシマブ/化学療法群と比較して、オビヌツズマブ/化学療法群では無増悪生存期間が有意に延長しており、海外の診療ガイドラインにおいて標準的治療法として推奨されていることから有用性加算2(A=20%)が適用されています。
レフィキシア静注用
レフィキシア静注用 添付文書
レフィキシア静注用 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- レフィキシア静注用500:216,394円/瓶
- レフィキシア静注用1000:427,968円/瓶
- レフィキシア静注用2000:846,403円/瓶
- 成分名:ノナコグ ベータ ペゴル(遺伝子組換え)
- 申請者:ノボ ノルディスク ファーマ
- 効能・効果:血液凝固第Ⅸ因子欠乏患者における出血傾向の抑制
- 用法・用量:本剤を添付の専用溶解用液全量で溶解し、下記のとおり、4mL/分を超えない速度で緩徐に静脈内に注射する。
- 出血時の投与
- 軽度から中等度:40IU/kgを投与する。患者の状態に応じて、1回40IU/kgの追加投与ができる。
- 重度又は生命を脅かす出血:80IU/kgを投与する。
- 小手術:術前に40IU/kgを投与する。
- 大手術:術前に80IU/kgを投与するが、手術中の血中の血液凝固第IX因子活性が約100%(1IU/mL)に維持されるように必要に応じて調整する。
術後は、血中の血液凝固第IX因子活性の目標値に応じて、術前投与の24~48時間後に40IU/kgを投与する。術後最初の7日間は、血中の血液凝固第IX因子活性が約50%(0.5IU/mL)を維持するように投与する。
- 定期的な投与:40IU/kgを週1回投与する。
- 出血時の投与
半減期延長型の血液凝固第IX因子製剤としては国内3剤目
レフィキシア静注用については過去記事でまとめています。
血液凝固第IX因子をPEG化することで半減期を延長した製剤です。
半減期延長型の血液凝固第IX因子製剤としては3製品目になります。
- オルプロリクス静注用(成分名:エフトレノナコグ アルファ(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子をIgG1のFc 領域に共有結合させることで半減期延長
- イデルビオン静注用(成分名:アルブトレペノナコグ アルファ(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子とアルブミンを遺伝子レベルで結合させることで半減期延長
- レフィキシア静注用(成分名:ノナコグ ベータペゴル(遺伝子組換え)):血液凝固第IX因子にPEG*9を結合させることで半減期延長
既存の有効成分を用いて作られた新規医薬品
既存の医薬品として使用されている有効成分を用いて作られた医薬品についてまとめます。
新医薬品3品目と規格追加(適応追加に伴う)1品目です。
オデフシィ配合錠
オデフシィ配合錠は8月21日に承認されたばかりですが、抗HIV薬のため緊急薬価収載の対象になっています。
オデフシィ配合錠 添付文書
- 医薬品名と薬価
- オデフシィ配合錠:6,043.00円/錠
- 成分名:リルピビリン塩酸塩/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩
- 申請者:ヤンセンファーマ
- 効能・効果:HIV-1感染症
- 用法・用量:通常、成人及び12歳以上かつ体重35kg以上の小児には、1回1錠(リルピビリンとして25mg、テノホビル アラフェナミドとして25mg及びエムトリシタビンとして200mgを含有)を1日1回食事中又は食直後に経口投与する。
- 1日薬価:6,043.00円
オデフシィ配合錠の成分
オデフシィ配合錠については過去記事でまとめています。
オデフシィ配合錠に含まれている成分は全て他のHIV-1感染症治療薬で使用されているものです。
リルピビリン
リルピビリン(RPV*10)は非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI*11)で、
- エジュラント錠25mg(リルピビリン25mg)
- コムプレラ配合錠(リルピビリン塩酸塩25mg/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩245mg/エムトリシタビン200mg)
としてすでに承認されています。
※リルピビリン塩酸塩:リルピビリンとしての量を記載
※テノホビルジソプロキシルフマル酸塩:テノホビルジソプロキシルとしての量を記載
エムトリシタビン
エムトリシタビン(FTC)は核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI*12)で、
- エムトリバカプセル200mg(エムトリシタビン200mg)
- ツルバダ配合錠(エムトリシタビン200mg/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩245mg)
- スタリビルド配合錠(エルビテグラビル150mg/コビシスタット150mg/エムトリシタビン200mg/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩245mg)
- コムプレラ配合錠(リルピビリン塩酸塩25mg/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩245mg/エムトリシタビン200mg)
- ゲンボイヤ配合錠(エルビテグラビル150mg/コビシスタット150mg/エムトリシタビン200mg/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩10mg)
- デシコビ配合錠(エムトリシタビン200mg/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩25mg)
としてすでに承認されています。
※リルピビリン塩酸塩:リルピビリンとしての量を記載
※テノホビルジソプロキシルフマル酸塩:テノホビルジソプロキシルとしての量を記載
※テノホビルアラフェナミドフマル酸塩:テノホビルアラフェナミドとしての量を記載
テノホビルアラフェナミドフマル酸塩
最後にテノホビルアラフェナミドフマル酸塩(TAF*13)ですが、これもNRTIになります。
テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF*14)と同様にテノホビルのプロドラッグですが、TDFと比較してTAFは感染細胞に取り込まれやすくなっており、TDFよりもはるかに少ない量で効果を発揮することができるため、製剤の大きさを小さくすることが可能です。
また、体内への暴露量を減らすことにより、副作用の頻度も低下します。
元々、B型肝炎治療薬として単剤で承認された成分です。
- ベムリディ錠25mg(HBV感染症治療薬)
- ゲンボイヤ配合錠(エルビテグラビル150mg/コビシスタット150mg/エムトリシタビン200mg/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩10mg)
- デシコビ配合錠(エムトリシタビン200mg/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩25mg)
※テノホビルアラフェナミドフマル酸塩:テノホビルアラフェナミドとしての量を記載
服用が容易でより安全に治療を行えるHIV-1感染症治療配合薬
オデフシィ配合錠はコムプレラ配合錠のTDFをTAFに置き換えたものになります。
コムプレラ配合錠はかなり大きかった(長径:19.0mm、短径:8.5mm、厚さ:8.0mm)ので、オデフシィはHIV感染症治療配合剤の中では比較的小さいサイズになり、服薬の際の負担が軽減されるのではないかと思います。
また、TDFがTAFに変更されて投与量が減ったことにより、腎や骨に対する副作用が軽減されることが期待されます。
薬価について
オデフシィ配合錠は希少疾病医薬品に指定されており新薬創出等加算が適用されています。
薬価はコムプレラ配合錠よりは若干高くなっています。
- オデフシィ配合錠:6,043.00円/錠(1日薬価:6,043.00円)
- コムプレラ配合錠:5815.90円/錠(1日薬価:5815.90円)
新薬処方日数制限の対象外
オデフシィ配合錠は新薬処方制限の対象外になっています。
これは以下の理由により安全性が確保されているからです。
- 他のHIV治療薬と同様にHIV感染症治療薬を製造販売する企業(6社)が共同で前例市販後調査を行うようになっていること
- HIV感染症の治療は、治療・投薬に専門の知識が必要であることから専門の医療機関への集約化が行われていること
平成30年8月薬価収載予定の新薬のうち14日ルールの例外的な取扱いをすることについて(案)(中医協 総-2-3 30.8.22)
スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」
スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」 添付文書
スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」:224.60円/錠
- 成分名:スピラマイシン
- 申請者:サノフィ
- 効能・効果:先天性トキソプラズマ症の発症抑制
- 用法・用量:通常、妊婦には1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口投与する。
- 1日薬価:1,347.60円
先天性トキソプラズマ症の発症抑制
スピラマイシン錠「サノフィ」については過去記事でまとめています。
妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合、トキソプラズマが胎盤を介して胎児に感染してしまう可能性があります。
その場合、胎児に「先天性トキソプラズマ症」が発症し、流産や死産、水頭症などの原因となる場合があります。
現在は適応外でアセチルスピラマイシン錠(成分名:スピラマイシン酢酸エステル)が使用されていますが、適応を持った薬剤を使用すべく日本産婦人科学会からの要望に基づいて開発された薬剤です。
薬価について
スピラマイシン錠150万単位は新薬創出等加算が適用されています。
また、国内外のガイドラインにおいて、トキソプラズマに初感染した妊婦から胎児へのトキソプラズマ感染を防ぐための標準治療薬とされていることから有用性加算2(A=10%)が適用されています。
- スピラマイシン錠150万単位「サノフィ」:224.60円/錠(1日薬価:1,347.60円)
- アセチルスピラマイシン錠100mg:17.70円/錠(1日薬価:212.40円) ※保険適用外
ジェミーナ配合錠
平成30年10月4日発売
ジェミーナ配合錠 添付文書
ジェミーナ配合錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ジェミーナ配合錠:314.10円/錠
- 成分名:レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール
- 申請者:ノーベルファーマ
- 効能・効果:月経困難症
- 用法・用量:下記のいずれかを選択する。
- 1日1錠を毎日一定の時刻に21日間連続経口投与し、その後7日間休薬する。以上28日間を1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。
- 1日1錠を毎日一定の時刻に77日間連続経口投与し、その後7日間休薬する。以上84日間を1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、85日目から次の周期を開始し、以後同様に繰り返す。
- 1日薬価:235.60円
初のレボノルゲストレル配合月経困難症薬
ジェミーナ配合錠については過去記事でまとめています。
レボノルゲストレル0.09mg、エチニルエストラジオール0.02mgの配合剤です。
28日間を1周期とするか、84日間を1周期とするか、患者ごとに用法を選択できます。
配合されるレボノルゲストレル/エチニルエストラジオールの量は異なりますが、成分としてはアンジュ、トリキュラー、ラベルフィーユと同じですね。
レボノルゲストレルを有効成分とする月経困難症治療薬としては子宮内黄体ホルモン放出システムであるミレーナがありますが、レボノルゲストレルを配合した薬剤で月経困難症薬に対する適応を有する薬剤は初めてです。
薬価について
月経困難症に使用されている配合錠と比較してみます。
- ジェミーナ配合錠:314.10円/錠(1日薬価:235.60円)
- ヤーズ配合錠:245.70円/錠(1日薬価:245.70円)
- ルナベル配合錠ULD:314.10円/錠(1日薬価:235.60円)
ジェミーナはルナベル配合錠ULDと同じ薬価ですね。
新薬処方日数制限は一部解除
ジェミーナ配合錠は新薬ではありますが、処方日数制限は14日間ではなく、30日間となっています。
これは以下の理由によるものです。
- 28日間を1周期とする服用方法(21日間服用+7日間休薬)が基本となっていること
- 第III相試験の結果から28日周期投与での安全性について既承認のエストロゲン/プロゲスチン配合剤と差がなかったこと
平成30年8月薬価収載予定の新薬のうち14日ルールの例外的な取扱いをすることについて(案)(中医協 総-2-3 30.8.22)
シグニフォーLAR筋注用キット(規格追加)
平成30年8月29日発売(10mg/30mg)
シグニフォーLAR筋注用キット 添付文書
シグニフォーLAR筋注用キット インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- シグニフォーLAR筋注用キット10mg(溶解液付):103,034円/キット
- シグニフォーLAR筋注用キット30mg(溶解液付):260,258円/キット
- 成分名:パシレオチドパモ酸塩
- 申請者:ノバルティスファーマ
- 効能・効果:クッシング病(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合)※
- 用法・用量:通常、成人にはパシレオチドとして10mgを4週毎に、臀部筋肉内に注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増量できるが、最高用量は40mgとする。
- 1日薬価:3,679.80円
※10mg・30mgは「先端巨大症・下垂体性巨人症」に対する適応はありません。
ソマトスタチンアナログ製剤パシレオチド
シグニフォーLAR筋注用キットについては過去記事でまとめています。
パシレオチドはSSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR5の4種類のサブタイプに対して親和性を持つ新しいタイプの持続型ソマトスタチンアナログ製剤(SSA*15)になります。
ソマトスタチンアナログはソマトスタチン受容体と結合することで、ホルモン分泌を抑制します。
パシレオチドは従来のソマトスタチンアナログ製剤と比較して、より安定的に成長ホルモンとIGF-1を抑制することで、優れた効果を発揮します。
長時間作用型の徐放性製剤
シグニフォーLAR筋注用キットはその名前からわかるように、サンドスタチンLAR筋注用(キット)と同様の徐放製剤です。
サンドスタチンでは通常の筋注が1日2〜3回の皮下注が必要なのに対し、LAR筋注では4週間に1回の筋肉内注射で済みます。
(皮下注は在宅自己注が行いやすいというメリットがありますが)
LAR*16とは、マイクロスフェア(マイクロカプセル)の中に有効成分を封じ込めた製剤です。
生体内でマイクロスフェアが少しずつ加水分解されるのに合わせて、有効成分が徐々に放出されるため、安定した効果を持続することを可能とした徐放製剤です。
クッシング病に対する適応追加
2018年3月23日付けでクッシング病に対する適応が追加されており、今回の規格追加はそれに伴うものです。
シグニフォーに適応が追加されるまで、クッシング病に対する適応を持つ薬剤は副腎皮質ステロイド合成阻害剤のみでした。
- オペプリム(成分名:ミトタン)
- デソパン錠60mg(成分名:トリロスタン)
- メトピロンカプセル250mg(成分名:メチラポン)
そのため、ホルモン分泌自体を抑制できるソマトスタチンアナログ製剤のような薬剤の登場が期待されていました。
ですが、クッシング病の腫瘍ではSSTR5が発現しており、従来のソマトスタチンアナログ製剤(主にSSTR2に対する親和性を持つ)では効果を発揮することができませんでした。
ですが、パシレオチドはSSTR5に対する親和性を持っているため、効果を発揮することが可能となっています。
初の四半期再算定が実施
今回の中医協総会では、今年4月(2018年4月)から実施されている新薬価制度における、年4回(新薬の薬価収載と同時)の薬価再算定ルールが初めて適応されました。
オプジーボの用法用量変化再算定
初の四半期再算定の対象となったのは、やはり、オプジーボ!
固定用量の追加に伴う用法用量変化再算定が審議され、決定しています。
用法用量変化再算定品目について(中医協 総-2-2 30.8.22)
固定用量の追加に伴う薬価引き下げ
オプジーボの固定用量については過去記事でまとめています。
今回の再算定は、オプジーボの主たる効能効果である「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する用法用量の変更(平成30年8月21日)に対するものです。
- 旧 用法・用量:2週に1回3mg/kg
- 新 用法・用量:2週に1回240mg
この用法・用量の変化に伴い、オプジーボの薬価は以下の通り引き下げられます。
- オプジーボ点滴静注 20mg:57,225円/瓶 → 35,766円/瓶
- オプジーボ点滴静注 100mg:278,029円/瓶 → 173,768円/瓶
ただし、実際の薬価改定は、医療機関における在庫への影響等を踏まえ、再算定薬価の適用には一定の猶予期間が設けられており、平成30年11月1日付とされています。
オプジーボの薬価の推移
オプジーボはその画期的な作用機序や効果のみではなく、高額な薬価やその見直しでも話題になってきた薬剤です。
医薬品名 | 薬価(円/瓶) | |||
---|---|---|---|---|
2014.9.2 | 2017.2 | 2018.4 | 2018.11.1 | |
オプジーボ点滴静注 20mg | 150,200 | 75,100 | 57,225 | 35,766 |
オプジーボ点滴静注100mg | 729,849 | 364,925 | 278,029 | 173,768 |
引き下げ率(薬価収載時と比較) | ↓ 50% | ↓ 24%(↓ 62%) | ↓ 37.5%(↓ 76%) |
*1:Mucosal Addressin Cell Adhesion Molecule-1
*2:画期的な新薬かつ、その領域で圧倒的な売り上げの製品
*3:Clostridium Difficile
*4:Programmed cell death-1
*5:Programmed Death-Ligand 1
*6:Programmed Death-Ligand 2
*7:Antibody-Dependent-Cellular-Cytotoxicity
*8:Follicular lymphoma
*9:ポリエチレングリコール
*10:RilPiVirine
*11:Non-Nucleic acid Reverse Transcriptase Inhibitor
*12:Nucleoside Analogue Reverse Transcriptase Inhibitor
*13:Tenofovir Alafenamide Fumarate
*14:Tenofovir Disoproxil Fumarate
*15:SomatoStatin Analogues
*16:Long Acting Repeatable