メトロニダゾール含有医薬品の添付文書に肝機能障害が追加〜コケイン症候群とは?

平成30年6月5日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
その中でも、メトロニダゾール含有医薬品に追加された肝機能障害に注目してみました。
コケイン症候群の方に投与する場合について特に注意喚起を呼びかける内容になっています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないことがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

平成30年6月5日付 添付文書改訂指示の概要についての記事はこちら。
pharmacist.hatenablog.com

メトロニダゾール含有製剤(フラジール、アネメトロ、ヘリコバクター・ピロリ二次除菌パック)の添付文書改訂

改訂指示の内容は以下のリンクを参照してください。
メトロニダゾール含有製剤(経口剤及び注射剤) の「使用上の注意」の改訂について

添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
f:id:pkoudai:20180606184704j:plain

添付文書改訂内容:肝機能障害

メトロニダゾールに由来する肝機能障害が重大な副作用に追加されます。

肝機能障害:肝機能障害があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。コケイン症候群の患者で重度の肝毒性又は急性肝不全が発現し死亡に至ったとの報告がある。

さらにこれらに伴い慎重投与の欄に

コケイン症候群の患者

が追加されています。

コケイン症候群とは?

恥ずかしながら、コケイン症候群という病名について全く知らなかったので調べてみました。
指定難病の一つらしく公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターに説明があります。

コケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)は紫外線性DNA損傷の修復システム、特にヌクレオチド除去修復における転写共益修復(転写領域のDNA損傷の優先的な修復)ができないことにより発症する常染色体劣性遺伝性の早老症である。1936年にイギリスの小児科医 Cockayneにより「視神経の萎縮と難聴を伴い発育が著明に低下した症例」として最初に報告された。日光過敏症、特異な老人様顔貌、皮下脂肪の萎縮、低身長、著明な栄養障害、視力障害、難聴なども伴う稀な疾患で、常染色体劣性形式で遺伝する。CSの本邦での発症頻度は2.7/100万人である。
コケイン症候群(指定難病192) – 難病情報センター

いわゆる早老症の一つのようです。
日本での患者数は約50人とのことです。

コケイン症候群とプロジェリア症候群

早老症というと、日本のテレビ番組でも何回か特集されたアシュリーちゃん(アシュリー・ヘギ – Wikipedia)のハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群が印象的に残っている方も少なくないのではないでしょうか。

プロジェリアとコケイン症候群の違いについて解説しているページがありました。

プロジェリアが内因性の老化の病気であるのに対し、コケイン症候群は転写(遺伝子の設計図をコピーすること)の異常であり、皮下脂肪が委縮した状態になることから老人のように見えているだけなのです。つまり、どちらも早老症という括りではありますが、本当に生物的な老化が起きているのがプロジェリアであり、コケイン症候群は眼窩や頬部の皮下脂肪が減ることで、顔貌が老人のように見えてしまうということになります。
コケイン症候群とは? 特徴的な症状が現れる遺伝性の病気 | メディカルノート

メトロニダゾールとコケイン症候群の関連

コケイン症候群の患者で重度の肝毒性又は急性肝不全が発現し死亡に至ったとの報告がある。

この文章だけ見ると、コケイン症候群だけが特に重篤な症状を引き起こしやすいように見えます。
その原因についても少し調べてみましたがよくわかりませんでした。

イギリスでの改訂状況

ただ、平成29年3月17日(金)の厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会でメトロニダゾールとコケイン症候群について報告された資料が見つかりました。
<議題2 医薬品等の副作用等報告の状況について>資料2-3 外国での新たな措置の報告状況

番号医薬品名(一般名)措置概要措置国
217メトロニダゾール、ランソプラゾール・アモキシシリン 水和物・メトロニダゾール、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・メトロニダゾールPRAC*1はメトロニダゾール含有医薬品(皮膚外用剤を除く)の製品情報の改訂を勧告した。改訂内容は以下のとおり。また、患者向け解説書も改訂される。
・Special warnings and precautions for useの項に、以下を追記する。
メトロニダゾール含有医薬品を全身的使用したコケイン症候群患者において、投与後の急激な症状の発現を伴う致死的な転帰を含む、重度の肝毒性/急性肝不全症例が報告されている。この患者集団においては、メトロニダゾールのリスクベネフィット評価を行った後に、それ以外の代替治療がない場合のみに限定して注意深く投与すること。 肝機能検査は治療開始直前、治療中および治療後に行われ、肝機能検査値が正常範囲内になる、または基準値に到達するまで実施すること。投与中に肝機能検査値が顕著に上昇した場合には投与を中止すること。コケイン症候群患者は肝障害の可能性のある症状について直ちに担当医に報告し、メトロニダゾールの投与を中止すること。
イギリス

重要と思う部分を箇条書きにしてみます。

  • メトロニダゾールのリスクベネフィット評価を行った後に、それ以外の代替治療がない場合のみに限定して注意深く投与
  • 肝機能検査は治療開始直前、治療中および治療後に行われ
  • 肝機能検査値が正常範囲内になる、または基準値に到達するまで実施する
  • 投与中に肝機能検査値が顕著に上昇した場合には投与を中止
  • コケイン症候群患者は肝障害の可能性のある症状について直ちに担当医に報告

コケイン症候群の方に対してメトロニダゾール含有医薬品を投与する機会というのはほぼないとは思いますが、この文章をみると実際の対応がイメージできるのではないでしょうか?

日本国内でのメトロニダゾール含有医薬品による肝機能障害症例報告

日本国内での症例報告がまとめられています。
国内の患者数を考えるに、おそらくコケイン症候群の患者以外についての症例報告なのではないかと思います。

メトロニダゾール(経口剤及び注射剤)

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、メトロニダゾール(経口剤及び注射剤)の影響が疑われる肝機能障害関連症例が4例報告されており、そのうち2例が因果関係が否定できないものでした。死亡例の報告はありません。

各配合剤(ランソプラゾール・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール)

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、メトロニダゾール各配合剤の影響が疑われる肝機能障害関連症例はありませんでした。

まとめ

メトロニダゾール単剤での報告数はそこまで多くはなく、ピロリ二次除菌パック製剤に関して症例報告はありません。
ですが、特にピロリ二次除菌パック製剤については、薬局でも調剤する機会は少なくないと思いますので、注意喚起を行っていきたいところですね。

*1:The Pharmacovigilance Risk Assessment Committee:ファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会

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