【令和3年6月15日付】キイトルーダの劇症肝炎とトルツ皮下注の間質性肺炎【使用上の注意改訂指示通知】

令和3年6月15日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品等について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は大きく分けて2つの改訂指示が出されています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

使用上の注意の改訂指示(令和3年6月15日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。
令和3年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

添付文書の改訂が実施されたのは以下の2つです。

  • ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(キイトルーダ):劇症肝炎・肝不全
  • イキセキズマブ(遺伝子組換え)(トルツ):無菌性髄膜炎

ちなみに、令和元年度からpmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

現時点で各医薬品が採用している記載方式に従ってまとめます。

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)による劇症肝炎

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
    • キイトルーダ点滴静注100mg

改訂指示の内容

添付文書の重要な基本的注意と重大な副作用に赤色マーカーの内容が追加されます。

8.重要な基本的注意
8.4 劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、硬化性胆管炎があらわれることがあるので、肝機能検査を定期的(特にアキシチニブとの併用投与は頻回)に行い、患者の状態を十分に観察すること。
引用元:キイトルーダ点滴静注100mgの添付文書改訂のお知らせ

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.6 劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎
劇症肝炎(頻度不明)、肝不全(0.1%未満)、AST、ALT、γ-GTP、Al-P、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害 (11.1%)、肝炎(1.0%)、硬化性胆管炎(0.1%未満)があらわれることがある。
引用元:キイトルーダ点滴静注100mgの添付文書改訂のお知らせ

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

肝不全関連症例が29例(因果関係が否定できないもの5例)
【死亡例18例(因果関係が火的できない症例3例)】上記には劇症肝炎症例7例(因果関係が否定できないもの2例)
【死亡例6例(因果関係を否定できない症例2例)】を含みます

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

ひとこと

キイトルーダは元々、重大な副作用に「肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎」、RMPの重要な特定されたリスクに「肝機能障害、硬化性胆管炎」が記載されていました。
使用される患者さんの病態等を考慮すると劇症肝炎や肝不全が発生する可能性は極めて高く、今回の改訂は想定の範囲内なのではないでしょうか?

 

イキセキズマブによる間質性肺炎

添付文書改訂の対象となる医薬品は以下のとおりです。

  • イキセキズマブ(遺伝子組換え)
    • トルツ皮下注80mgオートインジェクター
    • トルツ皮下注80mgシリンジ

改訂指示の内容

添付文書の重要な基本的注意と重大な副作用に赤色マーカーの内容が追加されます。

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.5 間質性肺炎
間質性肺炎が報告されているので、咳嗽、呼吸困難、発熱等が認められた場合には、速やかに胸部 X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
引用元:トルツ皮下注80mg「添付文書改訂のお知らせ」

改訂理由

過去3年度で以下の通り国内での症例報告が集積されています。

間質性肺炎症例が8例(因果関係が否定できないもの4例)
【死亡例なし】

国内症例が集積したため、今回の改訂が望ましいと判断されました。

ひとこと

免疫に作用する薬剤なので間質性肺炎を起こす可能性はありました。
RMPには記載されていませんでしたが、これも可能性のある副作用ではあったということになりますね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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