平成30年1月11日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は5の成分に対して以下のような改訂指示が出されています。
- アリピプラゾール(エビリファイ)による病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害
- テリパラチド製剤(フォルテオ、テリボン)による意識消失など
- エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ)による間質性肺疾患
- イピリムマブ(遺伝子組換え)(ヤーボイ)による筋炎
- レンバチニブメシル酸塩(レンビマ)による急性胆嚢炎
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
使用上の注意の改訂指示(平成30年1月11日)
PMDAへのリンクを貼っておきます。
アリピプラゾール・アリピプラゾール水和物(エビリファイ)による病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害
添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。
- アリピプラゾール
- エビリファイ錠1mg
- エビリファイ錠3mg
- エビリファイ錠6mg
- エビリファイ錠12mg
- エビリファイ散1%
- エビリファイOD錠3mg
- エビリファイOD錠6mg
- エビリファイOD錠12mg
- エビリファイOD錠24mg
- エビリファイ内用液0.1%
- アリピプラゾール錠3mg「各社」
- アリピプラゾール錠6mg「各社」
- アリピプラゾール錠12mg「各社」
- アリピプラゾール錠24mg「各社」
- アリピプラゾール散1%「各社」
- アリピプラゾール細粒1%「タカタ」
- アリピプラゾールOD錠3mg「各社」
- アリピプラゾールOD錠6mg「各社」
- アリピプラゾールOD錠12mg「各社」
- アリピプラゾールOD錠24mg「各社」
- アリピプラゾール内用液分包3mg「各社」
- アリピプラゾール内用液3mg分包「各社」
- アリピプラゾール内用液分包6mg「各社」
- アリピプラゾール内用液6mg分包「各社」
- アリピプラゾール内用液分包12mg「各社」
- アリピプラゾール内用液12mg分包「各社」
- アリピプラゾール水和物
- エビリファイ持続性水懸筋注用300mg
- エビリファイ持続性水懸筋注用400mg
- エビリファイ持続性水懸筋注用300mgシリンジ
- エビリファイ持続性水懸筋注用400mgシリンジ
アリピプラゾール・アリピプラゾール水和物(エビリファイ)の添付文書改訂内容
添付文書「重要な基本的注意」の項に以下の内容が追記されます。
原疾患による可能性もあるが、本剤投与後に病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害があらわれたとの報告がある。衝動制御障害の症状について、あらかじめ患者及び家族等に十分に説明を行い、症状があらわれた場合には、医師に相談するよう指導すること。また、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察し、症状があらわれた場合には必要に応じて減量又は投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
症例報告(アリピプラゾールによる衝動制御障害)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、アリピプラゾールによる衝動制御障害関連症例は4例報告されており、死亡例はありませんでした。
アリピプラゾール水和物での報告はありません。
テリパラチド製剤による意識消失など
添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。
- テリパラチド酢酸塩(皮下注用)
- テリボン皮下注用56.5μg
- テリパラチド(遺伝子組換え)
- フォルテオ皮下注キット600μg
テリパラチド製剤の添付文書改訂内容
テリパラチド酢酸塩(皮下注用)(テリボン)の添付文書改訂内容
- 重要な基本的注意:
- 「痙攣」及び「投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもある」旨を追記
- 「一過性の急激な血圧低下、意識消失」→「ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失」に変更
- 重大な副作用:
- 「ショック、アナフィラキシー」の項→「アナフィラキシー」の項と「ショック、意識消失」の項に分ける
- 「ショック、意識消失」の項:「一過性の急激な血圧低下に伴い、意識 消失を生じ、心停止、呼吸停止を来した症例も報告されている」を追記
「重要な基本的注意」の項の「一過性の急激な血圧低下、意識消失、転倒」に関する記載が下線部のように変更されます。
本剤投与直後から数時間後にかけて、ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、転倒があらわれることがある。投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもあるので、本剤投与時には以下の点に留意すること。
- 1)投与後30分程度はできる限り患者の状態を観察すること。特に、外来患者に投与した場合には、安全を確認して帰宅させることが望ましい。
- 2)投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になるように患者に指導すること。
また、「副作用」の「重大な副作用」の項の「ショック、アナフィラキシー」に関する記載が下線部のように変更されます。
- アナフィラキシー:アナフィラキシー(呼吸困難、血圧低下、発疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- ショック、意識消失:ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失があらわれることがあり、心停止、呼吸停止を来した症例も報告されている。異常が認められた場合には、適切な処置を行い、次回以降の投与中止を考慮すること。
テリパラチド(遺伝子組換え)(フォルテオ)の添付文書改訂内容
- 重要な基本的注意:「ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、転倒」に関する注意喚起を追記
- 重大な副作用:
- 「ショック、アナフィラキシー」の項→「アナフィラキシー」の項と「ショック、意識消失」の項に分ける
- 「ショック、意識消失」の項:「一過性の急激な血圧低下に伴い、意識 消失を生じ、心停止、呼吸停止を来した症例も報告されている」を追記
添付文書の「重要な基本的注意」の項に以下の内容が追記されます。
本剤投与直後から数時間後にかけて、ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失、痙攣、転倒があらわれることがある。投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもあるので、本剤投与時には以下の点に留意するよう患者に指導すること。
- 1)投与後30分程度はできる限り安静にすること。
- 2)投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になること。
また、「副作用」の「重大な副作用」の項の「ショック、アナフィラキシー」に関する記載が下線部のように変更されます。
- アナフィラキシー:アナフィラキシー(呼吸困難、血圧低下、発疹等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- ショック、意識消失:ショック、一過性の急激な血圧低下に伴う意識消失があらわれることがあり、心停止、呼吸停止を来した症例も報告されている。異常が認められた場合には、適切な処置を行い、次回以降の投与中止を考慮すること。
症例報告(テリパラチド製剤による意識消失等)
テリパラチド酢酸塩(皮下注用)に関する症例報告
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、心停止、呼吸停止関連症例は2例報告されており、2例とも因果関係が否定できないものでした。
死亡例はありませんでした。
また、意識消失関連症例は36例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものは35例です。
これについても、死亡例はありませんでした。
テリパラチド(遺伝子組換え)に関する症例報告
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、心停止、呼吸停止関連症例は1例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものはなく、死亡例もありませんでした。
また、意識消失関連症例は8例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものは5例です。
これについても、死亡例はありませんでした。
エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ)による間質性肺疾患
添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。
- リクシアナ錠15mg
- リクシアナ錠30mg
- リクシアナ錠60mg
- リクシアナOD錠15mg
- リクシアナOD錠30mg
- リクシアナOD錠60mg
エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ)の添付文書改訂内容
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
間質性肺疾患:間質性肺疾患があらわれることがあり、血痰、肺胞出血を伴う場合もあるので、観察を十分に行い、咳嗽、息切れ、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
症例報告(エドキサバントシル酸塩水和物による間質性肺疾患)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、間質性肺疾患関連症例は19例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものは8例です。
死亡例も1例報告されており、因果関係が否定できない症例でした。
イピリムマブ(遺伝子組換え)(ヤーボイ)による筋炎
添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。
- ヤーボイ点滴静注液50mg
イピリムマブ(遺伝子組換え)(ヤーボイ)の添付文書改訂内容
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
筋炎:筋炎があらわれることがあるので、筋力低下、筋肉痛、CK(CPK)上昇等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の投与中止、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
症例報告(イピリムマブ(遺伝子組換え)(ヤーボイ)による筋炎)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、筋炎関連症例は2例報告されていますが、因果関係が否定できないものはなく、死亡例もありませんでした。
レンバチニブメシル酸塩(レンビマ)による急性胆嚢炎
添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。
- レンビマカプセル10mg
- レンビマカプセル4mg
レンバチニブメシル酸塩(レンビマ)の添付文書改訂内容
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
急性胆嚢炎:無石胆嚢炎を含む急性胆嚢炎があらわれることがあり、胆嚢穿孔に至った例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬等の適切な処置を行うこと。
症例報告(レンバチニブメシル酸塩(レンビマ)による急性胆嚢炎)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、急性胆嚢炎関連症例は11例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものは4例です。
死亡例が2例報告されていますが、因果関係が否定できない症例ではありませんでした。
まとめ
気になるのは、リクシアナによる間質性肺炎、テリパラチド製剤による意識消失、エビリファイの衝動制御障害ですね。
特に、テリボンについては意識消失の症例数も多く気になるところです。
エビリファイに関しては処方される患者さんの症状もあり、説明するのはかなり難しいですよね。
どうするかな・・・。