サインバルタに慢性腰痛症の適応追加など複数の適応追加についての承認了承

平成28年2月5日、厚労省の薬食審医薬品第一部会が開催され、4製品の適応追加についての審議が行われ、すべて承認することで了承されました。
今回の目玉の一つがセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)サインバルタ(成分名:デュロキセチン塩酸塩)への「慢性腰痛症に伴う疼痛」の適応追加です。
ですが、これについては、整形外科において「自殺企図」の副作用を有する薬剤が使用されることに対するリスクが懸念されるため、承認を反対する委員もいたようです。
そのため、次回の部会で安全面についての報告が予定されているようです。

審議品目:サインバルタ、リツキサン、イーケプラ、リスパダール

今回審議された内容についてまとめます。

サインバルタカプセルに慢性腰痛症に対する適応追加

主成分名:デュロキセチン塩酸塩
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • サインバルタカプセル20mg
  • サインバルタカプセル30mg

追加された効能・効果:慢性腰痛症に伴う疼痛
用法・用量:「通常,成人には1日1回朝食後,デュロキセチンとして60mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し,1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。」(線維筋痛症と同様)

慢性腰痛症の基準は「4~6週間程度の保存的治療を行っても十分な効果が得られず、3カ月以上腰痛症状が持続する」とされています。
慢性腰痛症に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)やアセトアミノフェンが使用されていますが、異なる作用機序の薬剤が使用可能となることで、新たな選択肢が増えることになります。
ただ、冒頭にも書きましたが、「自殺企図」の副作用が気になるところではあります。
サインバルタの慢性腰痛症への適応は、米国等、複数の国で承認済ですが、欧州ではベネフィット・リスクに否定的な見解が出されており、慢性腰痛症の効能では承認されていないとのことです。

個人的にはNSAIDsの漫然投与を減らすための選択肢として期待していますが、気楽に投与される薬剤でもないなとは思います。
そのあたりが次回の部会でどのように述べられるか見守りたいところです。

リツキサンの適応追加

主成分名:リツキシマブ(遺伝子組み換え)
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • リツキサン注10mg/mL

追加された効能・効果:腎移植、肝移植のABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
用法・用量:「通常、リツキシマブ (遺伝子組換え) として1回量375mg/㎡を点滴静注する。ただし、患者の状態により適宜減量する。」

厚生労働省の「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘され、開発が要請されていたものです。
日本では脳死移植ドナーが少ないため、海外に比べて血液型の異なる親族間による生体腎移植・肝移植の割合が高いようです。
結果として、ABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応を抑制しなければならない割合も高くなっています。
なので、海外ではこの適応は承認されておらず、日本独自のもののようです。

イーケプラの適応追加

主成分名:レベチラセタム
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • イーケプラ錠250mg
  • イーケプラ錠500mg
  • イーケプラドライシロップ50%
  • イーケプラ点滴静注500mg

追加される効能・効果:他の抗てんかん薬で十分な効果が認められていないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法

強直間代発作(大発作)は癲癇の全般発作の一つです。
強直発作(意識消失、全身硬直)に続いて、間代発作(がくがくとした痙攣)を起こします。

厚生労働省の「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘され、開発が要請されていたもののようです。

リスパダールの適応追加

主成分名:リスペリドン
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • リスパダール錠1mg
  • リスパダール錠2mg
  • リスパダール細粒1%
  • リスパダールOD錠0.5mg
  • リスパダールOD錠1mg
  • リスパダールOD錠2mg
  • リスパダール内用液1mg/mL

追加される効能・効果:小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
用法・用量:

  • 体重15kg以上20kg未満の患者:「通常、リスペリドンとして1日1回0.25mgより開始し、4日目より1日0.5mgを1日2回に分けて経口投与する。症状により適宜増減するが、増量する場合は1週間以上の間隔をあけて1日量として0.25mgずつ増量する。但し、1日量は1mgを超えないこと。」
  • 体重20kg以上の患者:「通常、リスペリドンとして1日1回0.5mgより開始し、4日目より1日1mgを1日2回に分けて経口投与する。症状により適宜増減するが、増量する場合は1週間以上の間隔をあけて1日量として0.5mgずつ増量する。但し、1日量は、体重20kg以上45kg未満の場合は2.5mg、45kg以上の場合は3mgを超えないこと。」

厚生労働省の「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘され、開発が要請されていたようです。
易刺激性は自閉症の周辺症状の一つで自傷行為や攻撃性などが挙げられます。

報告品目:キックリン、トリプタノール

報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品です。

キックリンカプセルの適応追加

主成分名:ビキサロマー
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • キックリンカプセル

追加される効能・効果:慢性腎臓病患者における高リン血症の改善

これまでの効能・効果は「透析中の慢性腎不全患者における抗リン血症の改善」でした。
つまり、「透析中の慢性腎不全患者」から「慢性腎臓病患者」に対象患者を拡大されることになります。

トリプタノールの適応追加

主成分名:アミトリプチリン塩酸塩
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • トリプタノール錠10
  • トリプタノール錠25
  • アミトリプチリン塩酸塩錠10mg「サワイ」
  • アミトリプチリン塩酸塩錠25mg「サワイ」

追加される効能・効果:末梢性神経障害性疼痛
用法・用量:「アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人1日10mgを初期用量とし、その後、年齢、症状により適宜増減するが、1日150mgを超えないこと。」

厚生労働省の「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で公知申請が妥当と判断されていたものです。

まとめ

適応追加と言っても、使われているところでは当たり前のように使われているものが多い気もします。
ですが、これで保険請求上、堂々と使えるようになったのは嬉しいですね。
やはり、一番気になるのはサインバルタの慢性腰痛症。
NSAIDsの長期漫然投与をなくしていくための選択肢になるのではないかとも思いますが、気になるのは自殺企図をはじめとする副作用。
このへんとの兼ね合いが気になるところではあります。
次回の部会で、塩野義製薬がどのように整形外科に対して安全管理を徹底させていくかが報告されるようなので、それを待ちたいと思います。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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