特例拡大再算定と市場拡大再算定~4月薬価改定前に在庫を絞っておきたい品目

4月の診療報酬改定、調剤報酬改定まで2か月を切りました。
4月には薬価改定も行われます。
診療報酬改定の概要で発表されているように、改定後の薬価は-1.22%の引き下げとなります。
平成26年が-0.63%(消費税増税分を除外すると-1.36%)、平成24年が-1.26%でしたから、順当なところでしょうか?
ただ、通常の薬価改定とは別枠で大きく薬価が引き下げられるケースがあります。
それが市場拡大再算定と言われるものです。
さらに、今回、新たに特例拡大再算定が加わります。
今回の改定では、特例再算定(巨額再算定)で280億円、通常の市場拡大再算定で200億円の引き下げとされています。

薬価改定で在庫を絞る理由

みなさん、よくご存知かと思いますが
いちおうまとめておきます。

薬価とは

医薬品の値段は各薬局や病院が勝手に決められるわけではなく、薬価として国が定める公定価格です。
なので、どこの薬局でもらっても、同じ薬であれば、その薬自体に支払う費用は同じです。(こまかく言えば異なるケースもありますが)

薬価差益

薬局は薬を仕入れる際に薬価のまま仕入れるのではなく、値引きを受けて仕入れます。
昔はびっくりするような値引き(50%以上)もあったようですが、今は10~15%の範囲ではないでしょうか?
なので、薬自体の値段だけで、10~15%の利益(薬価差益)があるのかと言うと、そういう訳ではありません。
薬局で薬を渡すときには消費税はかかりませんが、薬局が仕入れるときはかかるので、仕入れるときは薬価×0.85~0.9×1.08の値段となります。
なので、薬価の91.8~97.2%を払って仕入れることになりますね。
なので薬価差益は、2.8~8.2%くらいということになります。

薬価改定の影響

例えば、ある薬の薬価を100円、薬価改定前に薬価の10%引きで仕入れた薬が、薬価改定後に薬価が10%下がってしまうとして考えてみます。
100円の薬を97円(90円+税7円)で仕入れていたのに、薬価改定後の薬価は90円となってしまい、薬を一つ出す度に7円の損となってしまいます。
なので、薬価が大きく下がる品目については、薬価改定前には余分なものを購入せず、できるだけ3月中に使いきれるように購入するのが望ましいということになります。

ということで、現時点で薬価が大きく下がることが明らかになっている品目を知り、そろそろ在庫に注意していかなければなりません。

特例拡大再算定

特例拡大再算定は、今回の診療報酬改定の目玉の一つとして、巨額再算定、特例再算等の名称で検討されてきました。
現行の市場拡大再算定をさらに拡大したもので、年間販売額が極めて大きい品目について、さらに薬価を引き下げるものです。
その内訳は、

  • 年間販売額が1000〜1500億円かつ予想販売額の1.5倍以上のもの:薬価を最大25%引き下げ
  • 年間販売額1500億円超かつ予想販売額の1.3倍以上:薬価を最大50%引き下げ

です。

今回対象となったのは、ソバルディ錠、ハーボニー配合錠、プラビックス錠、アバスチン点滴静注用の4品目です。

年間販売額1500億円超の薬剤

まず、年間販売額が1500億円超のものとしてソバルディ錠(成分名:ソホスブビル)が挙げられています。また、その類似品としてハーボニー配合錠(成分名:ソホスブビル/レディパスビル)も対象となります。

  • ソバルディ錠400mg:C型肝炎治療薬(ギリアド・サイエンシズ)市場規模の拡大(1500億円超)のため
  • ハーボニー配合錠:C型肝炎治療薬(ギリアド・サイエンシズ)、ソバルディ錠の類似品として

これらはどちらも30%程度の薬価引き下げとなるのではないかと予想されているようです。
予想通りであれば、ソバルディの薬価が61,799.30 円なので、約18,500円の引き下げとなり、43,000円程度に。
ハーボニーは80,171.30円から約24,000円引かれて56,000円程度になるというのことになります。
これは、ギリアドからしたらかなり辛いですね・・・。

年間販売額1000〜1500億円の薬剤

次に、年間販売額1000〜1500億円のもよとして、プラビックス錠(成分名:クロピドグレル硫酸塩)、アバスチン点滴静注用(成分名:ベバシズマブ(遺伝子組換え))の2剤が挙げられています。
ちなみに、プラビックス錠の類似薬であるエフィエント錠(成分名:プラスグレル)競合性が低いと判断されたため、対象から除外となっています。

  • プラビックス錠25mg/75mg:抗血小板薬(サノフィ)、市場規模の拡大(1000億円超)のため
  • アバスチン点滴静注用100mg/4mL・400mg/16mL:抗悪性腫瘍剤(中外製薬)、市場規模の拡大(1000億円超)のため ※補正加算5%

アバスチンは臨床データで神野有益性が立証されていることで引き下げを緩和するために補正加算が加わっています。

市場拡大再算定

当初予想された売上規模の2倍以上の売り上げとなり、かつ売り上げ規模が150億円を超えた場合が対照となります。

市場拡大再算定の対照品目。

市場拡大再算定については、20成分45品目が対象となっています。

ラミクタール錠(成分名:ラモトリギン)

効能追加による市場規模の拡大のため

  • ラミクタール錠小児用2mg
  • ラミクタール錠小児用5mg
  • ラミクタール錠25mg
  • ラミクタール錠100mg

※イノベロン(成分名:ルフィナミド)は市場における競合性が乏しいことから類似品に該当しないと判断。

イーケプラ(成分名:レベチラセタム)

効能追加による市場規模の拡大のため

  • イーケプラ錠250mg
  • イーケプラ錠500mg
  • イーケプラドライシロップ50%
エビリファイ(成分名:アリピプラゾール)

効能追加による市場規模の拡大のため

  • エビリファイ散1%
  • エビリファイ錠3mg
  • エビリファイ錠6mg
  • エビリファイ錠12mg
  • エビリファイOD錠3mg
  • エビリファイOD錠6mg
  • エビリファイOD錠12mg
  • エビリファイOD錠24mg
  • エビリファイ内用液0.1%
レミッチカプセル/ノピコールカプセル(成分名:ナルフラフィン塩酸塩)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • レミッチカプセル2.5μg
  • ノピコールカプセル2.5μg
リリカカプセル(成分名:プレガバリン)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • リリカカプセル25mg
  • リリカカプセル75mg
  • リリカカプセル150mg
サムスカ錠(成分名:トルバプタン)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • サムスカ錠7.5mg
  • サムスカ錠15mg
  • サムスカ錠30mg

※5%の補正加算が認められています。

ホスレノール(成分名:炭酸ランタン水和物)、リオナ錠(成分名:クエン酸第二鉄水和物)、ピートルチュアブル錠(成分名:スクロオキシ水酸化鉄)

効能追加による市場規模の拡大のため

  • ホスレノール顆粒分包250mg
  • ホスレノール顆粒分包500mg
  • ホスレノールチュアブル錠250mg
  • ホスレノールチュアブル錠500mg

類似品として、

  • リオナ錠250mg
  • ピートルチュアブル錠250mg
  • ピートルチュアブル錠500mg
イクスタンジンカプセル(成分名:エンザルタミド)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • イクスタンジカプセル40mg

※5%の補正加算が認められています。

ダクルインザ錠(成分名:ダクラタスビル塩酸塩)、スンベプラカプセル(成分名:アスナプレビル)、ヴィキラックス配合錠(成分名:オムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物/リトナビル)

効能追加による市場規模の拡大のため

  • ダクルインザ錠60mg

類似品として、

  • スンベプラカプセル100mg
  • ヴィキラックス配合錠
アイリーア硝子体内注射液(成分名:アフリベルセプト(遺伝子組換え))、マクジェン硝子体内注射用(成分名:ペガプタニブナトリウム)、ルセンティス硝子体内注射液(成分名:ラニビズマブ(遺伝子組換え))

効能追加による市場規模の拡大のため

  • アイリーア硝子体内注射液40mg/mL

類似品として、

  • マクジェン硝子体内注射用キット0.3mg
  • ルセンティス硝子体内注射液10mg/mL
  • ルセンティス硝子体内注射用キット10mg/mL
フォルテオ皮下注キット(成分名:テリパラチド(遺伝子組換え))、テリボン皮下注用(成分名:テリパラチド酢酸塩)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • フォルテオ皮下注キット600μg

類似品として、

  • テリボン皮下注用56.5μg
アブラキサン点滴静注用(成分名:パクリタキセル)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため

  • アブラキサン点滴静注用100mg

ドセタキセル、パクリタキセル(タキソール等)、カバジタキセルアセトン付加物は市場における競合性が低いことから該当しないと判断されました。

ベルケイド注射用(成分名:ボルテゾミブ)

市場規模の拡大(原価計算品目)のため
ベルケイド注射用3mg
※5%の補正加算が認められています。

効能変化再算定

リクシアナ錠(成分名:エドキサバントシル酸塩水和物)

主たる効能効果が変化したため、効能変化再算定の対象となっています。
「下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」→2014年9月「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制」が追加
今は「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」がメインの適応となってますよね。

  • リクシアナ錠15mg
  • リクシアナ錠30mg
  • リクシアナ錠60mg

 

まとめ

ざっとまとめましたが、どの薬局にも当てはまる品目がけっこうあるのではないかと思います。
欠品続きで患者さんが困る・・・なんて状況は絶対に避けないといけませんが、そうならない範囲に在庫を意識したいところですね。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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