平成27年8月31日、厚生労働省 薬食審医薬品第二部会が開催されました。
 今回承認が了承されたものの中で、目玉となるのは、やはり、アッヴィ社のインターフェロンを用いない(IFNフリー)経口C型肝炎治療薬ヴィキラックス配合錠ではないかと思います。
ヴィキラックス配合錠
- ヴィキラックス配合錠
 
一般名:オムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物/リトナビル
 効能・効果:「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」
1日1回2錠を経口投与、服用期間は12週間です。
 IFNフリーのセログループ1(ジェノタイプ1)のC型肝炎治療薬として、ダクルインザ錠/スンベプラカプセルの併用療法、ハーボニー配合錠に続く国内3番目の薬剤になります。
 ソバルディ錠/リバビリンの併用療法を含めたC型肝炎全体で見ると4番目の薬剤ですね。
新規有効成分であるオムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物C型肝炎ウイルスの複製に関わる酵素を阻害することでHCVの増殖を抑えます。
 オムビタスビルはNS5A阻害剤、パリタプレビルはNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤です。
 リトナビルはパリタプレビルの代謝酵素を阻害することで血中濃度を高く維持させる働きをします。
 要はあえて相互作用を起こさせるってことですね。
もうピンときている方も多いと思いますが、リトナビルといえば、抗HIV薬ノービアです。
 つまり、CYP3A4と強い親和性を持ち、3A4により代謝されるほかの薬剤の代謝にも影響します。
 と言うことで、ノービアの添付文書を見ると、
- キニジン硫酸塩水和物(商品名:硫酸キニジン)
 - ベプリジル塩酸塩水和物(商品名:ベプリコール)
 - フレカイニド酢酸塩(商品名:タンボコール)
 - プロパフェノン塩酸塩(商品名:プロノン等)
 - アミオダロン塩酸塩(商品名:アンカロン)
 - ピモジド(商品名:オーラップ)
 - ピロキシカム(商品名:フェルデン等)
 - アンピロキシカム(商品名:フルカム等)
 - エルゴタミン酒石酸塩(商品名:カフェルゴット等)
 - ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(商品名:ジヒデルゴット等)
 - エルゴメトリンマレイン酸塩(商品名:エルゴメトリン)
 - メチルエルゴメトリンマレイン酸塩(商品名:メテルギン等)
 - エレトリプタン臭化水素酸塩(商品名:レルパックス)
 - バルデナフィル塩酸塩水和物(商品名:レビトラ)
 - シルデナフィルクエン酸塩(商品名:レバチオ)
 - タダラフィル(商品名:アドシルカ)
 - アゼルニジピン(商品名:カルブロック、レザルタス等)
 - リファブチン(商品名:ミコブティン)
 - ブロナンセリン(商品名:ロナセン)
 - リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)
 - ジアゼパム(商品名:セルシン等)
 - クロラゼプ酸二カリウム(商品名:メンドン)
 - エスタゾラム(商品名:ユーロジン等)
 - フルラゼパム/フルラゼパム塩酸塩(商品名:インスミン、ダルメート等)
 - トリアゾラム(商品名:ハルシオン等)
 - ミダゾラム(商品名:ドルミカム等)
 - リオシグアト(商品名:アデムパス)
 - ボリコナゾール(商品名:ブイフェンド)
 
これだけの品目が併用禁忌として挙げられています。
 併用注意まで含めると相互作用に注意が必要な薬剤はもっと増えます。
 少なくとも、これらの薬剤はヴィキラックス配合錠でも禁忌となりますので、相互作用には要注意の薬剤となることを覚えておきたいですね。
この相互作用を考えると使用には二の足を踏んでしまいます・・・。
 SVRもハーボニーの方が優れていた気がします。
 おそらく、薬価はハーボニーよりも安くなるということでしたので、そこがメリットのひとつかもしれませんね。
 ただ、現在、日本では肝炎治療費の助成があるので、患者側から見た場合、そこまでのメリットはないのかも・・・。
リュープリンPRO注射用キット
- リュープリンPRO注射用キット22.5mg
 
一般名:リュープロレリン酢酸塩
 効能・効果:「前立腺がん、閉経前乳がん」
24週に1回投与する製剤。
 既存のリュープロレリン含有製剤には4週毎(リュープリン注射用)、12週毎(リュープリンSR注射用)に投与するものが存在します。
 患者の利便性の向上を期待して開発されました。
 患者さんの利便性が向上しますね。
 ちなみに、この製剤は日本独自のものですが、米国は有効成分の含有量が異なる24週間持続型製剤(45mg含有)が承認されており、EUは有効成分含有量は同じで、添加物が異なる24週間持続型製剤が承認されています。
ロコアテープ
- ロコアテープ
 
一般名:エスフルルビプロフェン/ハッカ油
 効能・効果:「変形性関節症における鎮痛・消炎」
新有効成分のエスフルルビプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるフルルビプロフェンの活性本体です。
 ハッカ油はエスフルルビプロフェンの溶解補助剤ですが、添加量が薬用量に近いため有効成分としての扱いになっています。
 1日1回、患部に貼付して使用となっていますが、「1回2枚を超えないように」という制限があります。
 この制限、ほかのシップ薬では聞いたことがないですね。
ヨンデリス点滴静注用
- ヨンデリス点滴静注用0.25mg
 - ヨンデリス点滴静注用1mg
 
一般名:トラベクテジン
 効能・効果:「悪性軟部腫瘍」
少し興味深いのが、トラベクテジンはホヤの一種から単離された化合物ということです。
 DNAに結合し、ヌクレオチド除去修復機構を阻害することで、細胞死や細胞周期停止を誘発した結果、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。
 同じ適応を持つ薬剤に、ヴォトリエント錠200mg(一般名:パゾパニブ塩酸塩)などがあります。
ミティキュアダニ舌下錠
- ミティキュアダニ舌下錠3300JAU
 - ミティキュアダニ舌下錠10000JAU
 
効能・効果:「ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法」
 舌下投与による減感作療法に関する十分な知識・経験を持つ医師によってのみ処方・使用するなどの承認条件がついた。
ヤケヒョウヒダニ及びコナヒョウヒダニからそれぞれ抽出・調製した抽出エキスを等しい抗原活性比で含有する錠剤です。
 鳥居薬品はすでに、皮下注製剤(治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」)を持っていますが、舌下錠の方がアナフィラキシーショックのリスクが低く、注射しなくて済むのは患者にとって大きなメリットになります。
ダニアレルギーに対する舌下免疫療法治療薬としてはアシテアダニ舌下錠(塩野義)に続いて2剤目、舌下免疫療法治療薬全体としてはシダトレンから数えて3剤目の薬剤になりますね。
シプロキサン注の新用量・新適応追加
- シプロキサン注200mg
 
一般名:シプロフロキサシン
 用量変更:「敗血症、肺炎等」 「1回300mg、1日2回点滴静注」 → 「1回400mg、1日2回または3回点滴静注」
 追加された効能・効果:「小児の複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、炭疽及び嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染に伴う症状の改善」
今回の用量変更で、有効性の強化と耐性化の抑制が期待されます。
 小児に対する効能追加は、β-ラクタム系薬無効の小児重症感染症への治療選択肢のひとつとなることが期待されます。
オクトレオスキャン静注用セット
- オクトレオスキャン静注用セット
 
一般名:ペンテトレオチド塩化インジウム(111In液)
 効能・効果:「神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ」
検査薬です。
 希少がんである神経内分泌腫瘍(NET)に過剰発現しているソマトスタチン受容体に結合し、NET病巣を画像化することで、薬剤によるソマトスタチンアナログ治療の適応患者が選択できるようになります。
アレルゲンスクラッチエキス陽性対照液「トリイ」ヒスタミン二塩酸塩
- アレルゲンスクラッチエキス陽性対照液「トリイ」ヒスタミン二塩酸塩
 
一般名:ヒスタミン二塩酸塩
 効能・効果:「アレルゲンスクラッチエキスによる皮膚反応の陽性対照」
アレルゲンテストが正確に行われたかを確認するためのポジティブコントロールとなる試薬です。
 アレルゲン反応による産生されるヒスタミンを直接皮膚に滴下することで、アレルゲン物質を滴下したアレルゲンテストの比較とします。
ヤンセンの慢性リンパ性白血病薬イムブルビカ 審議見送り
希少疾病用医薬品で「再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」の新薬として承認の可否が審議される予定だったヤンセンファーマのイムブルビカカプセル(イブルチニブ)が、「審査に関わる新たな情報が確認された」(厚労省医薬食品局担当官)として、審議が見送られたようです。
報告品目
PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品
ジャカビ錠に新適応追加
- ジャカビ錠5mg
 
一般名:ルキソリチニブリン酸塩
 追加される効能・効果:「真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)」
クラビット点滴静注に新適応追加
- クラビット点滴静注バッグ500mg/100mL
 - クラビット点滴静注500mg/20mL
 
一般名:レボフロキサシン水和物
 追加される効能・効果:「外傷・熱傷・手術創などの二次感染、膀胱炎、腎盂炎等」
タキソール注射液の新用量
- タキソール注射液30mg
 - タキソール注射液100mg
 - ほか、同剤の後発品(日本化薬、ホスピーラ、沢井製薬、サンド、ニプロ、マイラン製薬)
 
一般名:パクリタキセル
 効能・効果:「胃がん」
 追加される用法・用量:「週1回投与」
 
 