平成27年8月28日、厚労省薬食審医薬品第一部会で11製品の製造承認が了承されました。
個人的に気になったのは、国内2剤目の週1回DPP-4阻害薬マリゼブ錠(一般名:オマリグリプチン)、国内初となるDPP-4阻害薬とメトホルミン製剤との合剤エクメット配合錠(一般名:ビルダグリプチン・メトホルミン塩酸塩)です。
また、今年2月に承認了承が見送られたイグザレルト錠の適応拡大も了承されています。
また、アボルブの有効成分でもあるデュタステリドが新たに男性型脱毛症治療薬ザガーロカプセルとして登場です。
今回了承された薬剤は、いずれも9月下旬~10月上旬に正式に承認される見込みです。
マリゼブ錠
- マリゼブ錠12.5mg
- マリゼブ錠25mg
一般名:オマリグリプチン
申請者:MSD
効能・効果:「2型糖尿病」
ザファテック(一般名:トレラグリプチンコハク酸塩)に続く、2剤目の週1回投与DPP-4阻害薬です。
用法・用量は「通常、成人にはオマリグリプチンとして25mgを週1回経口投与する」となっています。
DPP-4阻害剤全体で見ると9成分目になりますね。
エクメット配合錠
- エクメット配合錠LD
- エクメット配合錠HD
一般名:ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩
申請者:ノバルティスファーマ
効能・効果:「2型糖尿病(ただし、ビルダグリプチン及びメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る)」
DPP-4阻害薬とビグアナイド(BG)系薬の合剤は国内初となります。
製品名で言うと、エクアとメトグルコの合剤ですね。
エクアとメトグルコでエトメット、このネーミングセンス嫌いじゃないです。
成分含量は、
- エクメットLD:ビルダグリプチン50mg/メトホルミン250mg
- エクメットHD:ビルダグリプチン50mg/メトホルミン500mg
となっています。
用法・用量は、「通常、成人には1回1錠(ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩として50mg/250mg又は50mg/500mg)を1日2回朝、夕に経口投与する。」となっています。
DPP-4阻害剤を含有する配合剤としては、ネシーナ(一般名:アログリプチン)とアクトス(一般名:ピオグリタゾン)リオベル配合錠があります。
その他、ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)とスーグラ(一般名:イプラグリフロジン)、ネシーナとアプルウェイ(一般名:トホグリフロジン)、テネリア(一般名:テネリグリプチ)とカナグル(一般名:カナグリフロジン)の合剤が試験中だったと思います。
イグザレルトの新適応
- イグザレルト錠10mg
- イグザレルト錠15mg
一般名:リバーロキサバン
申請者:バイエル薬品
効能•効果:「深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制」
イグザレルト錠のVTE適応の追加は平成27年2月20日に開催された薬食審第一部会でも審議されましたが、そのときは、「承認の可否を判断するにあたり懸念されることがあった」(厚労省医薬食品局担当官)ため、継続審議扱いとなっていました。
ワントラム錠~トラマールの1日1回製剤~などの承認が了承 – 薬剤師の脳みそ
「(今回改めて)懸念される事項を含めて審議し、承認して差し支えないということになった」
「懸念を払しょくするような資料を含め、きちんと審議した」
ということですが、議事録が公開されるまでは、その内容は不明です。
過去の例を見ると半年後くらいに公開されることが多いようですね。
VTEに対する適応を有する薬剤には、同じくNOACDOAC(Direct Oral AntiCoagulant:直接経口抗凝固薬)のリクシアナ錠(一般名:エドキサバントシル酸塩)やワーファリン錠(一般名:ワルファリンカリウム)があります。
今回適応追加となるVTE静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)に対する用法・用量は、「通常、成人には発症後の初期3週間はリバーロキサバンとして15mgを1日2回食後に経口投与し、その後は15mgを1日1回食後に経口投与する」となっています。
ほかの適応では1日1回ですが、VTEに用いる場合は、1日2回投与で治療を開始することになるのがポイントですね。
表される議事録で確認してもらいたいと語った。これまでのケースでは議事録は約半年後に公表されている。
ザガーロカプセル
- ザガーロカプセル0.1mg
- ザガーロカプセル0.5mg
一般名:デュタステリド
申請者:グラクソ・スミスクライン(GSK)
効能•効果:「男性の男性型脱毛症における発毛及び育毛、脱毛(抜け毛)の進行予防」
男性における男性型脱毛症の適応を持つ薬剤は、同様の作用機序である5α還元酵素阻害薬プロペシア錠(一般名:フィナステリド)があります。
GSKが承認を取得しているアボルブカプセル0.5mgは、ザガーロと同じ有効成分デュタステリドで、適応は前立腺肥大症です。
アボルブカプセルと識別できるように、ザガーロカプセルはカプセル剤皮の色を変更しているようです。
男性型脱毛症の適応なので、保険適用外、自由診療の対象となるので、別薬剤としたのだと思います。
イフェクサーSRカプセル
- イフェクサーSRカプセル37.5mg
- イフェクサーSRカプセル75mg
一般名:ベンラファキシン塩酸塩
申請者:ファイザー
効能•効果:「うつ病、うつ状態」
トレドミン(一般名:ミルナシプラン塩酸塩)とサインバルタ(一般名:デュロキセチン塩酸塩)に続く、国内3番目のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(以下、SNRI)です。
国際的には20年近く前に承認されている薬剤のようですが、世界的には効果の面でかなり評価されている薬剤のようです。
国内では臨床試験がうまくいかず、一度、治験に失敗したはずですが、再度挑戦でうまくいったようですね。
ムルプレタ錠
- ムルプレタ錠3mg
一般名:ルストロンボパグ
申請者:塩野義製薬
効能•効果:「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」
ムルプレタ錠は低分子トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬です。
TPO受容体に作用することで、造血幹細胞・巨核球系前駆細胞から血小板を産生する巨核球への増殖・分化を促進し、その結果として血小板数を増加させます。
国内では、適応は異なりますが、同じ作用機序の経口薬として、レボレード錠(一般名:エルトロンボパグオラミン)が慢性特発性血小板減少性紫斑病の効能・効果で承認されています。
ベンテイビス吸入液
- ベンテイビス吸入液10μg
一般名:イロプロスト
申請者:バイエル薬品
効能•効果:「肺動脈性高血圧症」
ベンテイビス吸入液はプロスタグランジンI2(PGI2)誘導体で、血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を持ちます。
同様の適応を持つPGI2誘導体に、静注用フローラン(一般名:エポプロステノールナトリウム)、トレプロスト注射液(一般名:トレプロスチニル)、ドルナー錠(一般名:ベラプロストナトリウム)があります。
吸入剤は国内初となります。
トラクリア小児用分散錠
- トラクリア小児用分散錠32mg
一般名:ボセンタン水和物
申請者:アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパン
効能•効果:「肺動脈性高血圧症」
肺動脈性高血圧症(PAH)の適応をもつエンドセリン受容体拮抗薬はヴォリブリス錠(一般名:アンブリセンタン)、オプスミット錠(一般名:マシテンタン)がありますが、小児適応を取得したのはトラクリアだけです。
そのためトラクリア小児用が、小児PAH治療の第一選択薬となります。
ラミクタールの新適応
- ラミクタール錠25mg
- ラミクタール錠100mg
- ラミクタール錠小児用2mg
- ラミクタール錠小児用5mg
一般名:ラモトリギン
申請者:グラクソ・スミスクライン
効能•効果:「てんかん患者の定型欠神発作に対する単剤療法」
現在、ラミクタールが持つ適応は、
- てんかん患者の下記発作に対する単剤療法
- 部分発作(二次性全般化発作を含む)
- 強直間代発作
- 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
- 部分発作(二次性全般化発作を含む)
- 強直間代発作
- Lennox-Gastaut症候群における全般発作
- 双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制
となっています。
現在、定型欠神発作の第一選択薬は、デパケン(一般名:バルプロ酸ナトリウム)やエピレオプチマル散(一般名:エトスクシミド)となっていますが、アレルギーなどでこれらが使用できない場合、ラミクタール錠が選択肢のひとつになります。
コパキソン皮下注
- コパキソン皮下注20mgシリンジ
一般名:グラチラマー酢酸塩
申請者:武田薬品
効能•効果:「多発性硬化症の再発予防」
コパキソンは、抗原提示細胞の表面に存在する主要組織適合遺伝子複合体分子に結合し、抗原特異的なT細胞の活性化を阻害するなどして多発性硬化症(MS)に対する作用を示します。
1日1回皮下投与を行います。
現在、日本では、MSに対する第一選択薬は、アボネックス筋注(一般名:インターフェロンベータ-1a(遺伝子組換え))やベタフェロン皮下注(一般名:インターフェロンベータ-1b(遺伝子組換え))ですが、海外では、コパキソンが第一選択薬となっており、国内でも大きな選択肢の一つとなります。
ピートルチュアブル錠
- ピートルチュアブル錠250mg
- ピートルチュアブル錠500mg
一般名:スクロオキシ水酸化鉄
申請者:キッセイ薬品
効能•効果:「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」
ピートルは酸化水酸化鉄(III)/スクロース/デンプンから成るカルシウムを含有しないリン吸着薬です。
消化管内で食事由来のリン酸と同剤に含まれる鉄との結合作用によって難溶性の沈澱を形成することで、リンの吸収を抑制することができます。
大きな特徴として、安全性上の懸念が少ないことが挙げられます。
成分中にカルシウムを含まないため、カルタン(一般名:沈降炭酸カルシウム)のような、高カルシウム血症のリスクがありません。
また、非ポリマー性のため、レナジェル錠/フォスブロック錠(一般名:セベラマー塩酸塩)、キックリンカプセル(一般名:ビキサロマー)のようなポリマー性の経口リン吸着薬で認められる便秘や腸閉塞などの重篤な副作用のリスクが低くなります。
さらに、生体内必須金属元素である鉄を主成分としているため、ホスレノール(一般名:炭酸ランタン水和物)で危惧される生体内非必須金属元素であるランタンの長期投与に伴う骨への蓄積のような懸念も少ないとされています。