平成27年7月31日に開催された薬食審第一部会では、主に新規適応や新規用法用量の追加についての審議が行われました。
その中で、報告品目として、イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ(一般名:リバスチグミン)の漸増投与に関する新規用量の承認が了承されています。
イクセロンパッチ/リバスタッチパッチの1段階漸増
現在、イクセロンパッチ/リバスタッチパッチの用法•用量は、
通常、成人にはリバスチグミンとして1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付する。
本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える。
とされているように、3段階漸増が採用されていました。
イクセロンパッチ/リバスタッチパッチを使用する患者さんは、使用開始から三ヶ月経過して、初めて、効果を発揮する18mgの使用が可能となります。
つまり、これまでは、治療を開始しても、効果が出るのは三ヶ月経過して、四ヶ月目に入ってからというのとになっていました。
今回、用法•用量に、
患者の状態に応じて、1日1回9mgを開始用量とし、原則として4週後に18mgに増量することもできる
が追記されることが了承されたので、正式に承認されれば、1ステップ漸増が可能となり、治療を開始した翌月から、効果を発揮させることができます。
また、薬局としては、在庫管理も楽になります。
これまでは、新規に治療を開始する患者さんのために、4.5mg、9mg、13.5mg、18mgの4規格を在庫しておく必要がありました。
もし、仮にイクセロンパッチ、リバスタッチパッチの双方が処方されるのであれば、8品目となってしまいます。
今回の新用法•用量が正式に承認され、この用法•用量がメインとなれば、9mgと18mgの2規格でよくなるので、在庫は半分ですみますね。
ただ、これまでと比較して、急激な増量となるので、漸増投与により発現を抑えていた胃腸障害や皮膚障害がどの程度増えるかが気になりますね。
海外では今回了承された1段階漸増のみが採用されており、3段階漸増は日本国内だけのようですが、そこには理由があったはずなので、それが少し気にはなりますね。
その他の了承品目
その他の了承品目と審議内容は以下の通りです。
トラクリア錠62.5mg(一般名:ボセンタン水和物)に全身性強皮症に対する適応追加
これまでトラクリアの効能•効果は、
肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスII、III及びIV)
のみでした。
今回、「全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制(ただし手指潰瘍を現在有している、または手指潰瘍の既往歴のある場合に限る)」の効能・効果の追加が了承されました。
ボセンタンはエンドセリン受容体拮抗薬であるため、エンドセリンの受容体を阻害することにより、血管収縮を抑制、血流を改善することで皮膚潰瘍の新規発現を抑制します。
アイノフロー吸入用800ppm(一般名:一酸化窒素)に心臓手術周術期の肺高血圧に関する適応追加
これまでアイノフロー吸入用の効能•効果は、
新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の改善
のみでした。
血管弛緩に関与する内皮由来血管弛緩因子である一酸化窒素を吸入することにより、肺に対して直接作用させ、全身血圧の低下を引き起こすことなく肺血管を拡張させることが可能です。
この特性を活かした適応追加となります。
アーチスト錠2.5mg、アーチスト錠10mg、アーチスト錠20mg(一般名:カルベジロール)に「頻脈性心房細動」の適応追加
報告品目です。
2009年3月に、日本心電学会、日本循環器学会、日本心臓病学会、日本不整脈学会、日本心不全学会の循環器関連主要学会から、心房細動の効能を追加することに関する要望書が厚労省に提出されていました。
類薬として、メインテート錠(一般名:ビソプロロール)が承認されています。
トレシーバ注フレックスタッチ、トレシーバ注ペンフィル(一般名:インスリン デグルデク(遺伝子組換え))に小児用量追加
報告品目です。
現段階で、小児糖尿病に使用できるBasalインスリンは、持効型インスリンとして、ランタス注とレベミル注がありますが、トレシーバもそこに加わることになります。
日本に先駆けて、欧州では今年の1月に承認されています。