2015年発売予定の後発医薬品について気になること~クロピドグレルの結晶多形

少し前に2015年に発売が予定されている新規ジェネリック医薬品に関する記事を書きました。

このうち、プラビックス(一般名:クロピドグレル)について気になる話があるのでまとめておきます。

クロピドグレルのジェネリックを巡る争いが開始

平成27年2月10日、クロピドグレルの先発医薬品であるプラビックスを発売しているサノフィが下記のような発表を行いました。
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/layout.jsp?cnt=75E5C836-74B7-4513-91AE-11C0D00F8BAE

クロピドグレル硫酸塩に関する特許権について

サノフィ株式会社(以下「当社」)は、クロピドグレル硫酸塩を有効成分とする「プラビックス錠®25mg」、「プラビックス錠®75mg」(以下「プラビックス錠®」)を製造販売しております。
クロピドグレル硫酸塩に関する物質特許は既に満了しておりますが、サノフィ・グループ(以下「当社グループ」)は、プラビックス錠®の用途・結晶形・製法特許等、平成27年2月以降も有効に存続する特許権を保有しております。また、当社グループが保有するクロピドグレル原薬のⅡ型結晶に関する特許権(日本特許第3641584号、平成36年6月10日満了)に関し、当社は最終製品中に含まれるクロピドグレル硫酸塩の結晶形を高感度で測定する方法を既に確立しております。
当社および当社グループは、その知的財産権を侵害する行為または侵害するおそれのある行為に対しては、厳正なる法的手段を検討いたします。
クロピドグレル硫酸塩を有効成分として含有する医薬品の製造販売を計画されている企業におかれましては、当社および当社グループの知的財産権を侵害することがないよう十分ご留意いただきたく、お願い申し上げます。

平成27年2月10日
サノフィ株式会社 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号

クロピドグレル自身に対する物質特許は切れているけど、プラビックス錠の用途・結晶形・製法特許等に関する特許はまだ切れておらず、特に結晶形に関する特許は平成36年6月10日まで続くということです。

クロピドグレルの効能・効果

まず、用途に関する特許とは何のことでしょう?
おそらく、効能・効果に関するものと考えられます。
プラビックスの効能・効果承認の流れを振り返ってみると、

  • 2006年5月 発売開始:「虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制」
  • 2007年10月 「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)」追加
  • 2011年12月 「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される安定狭心症、陳旧性心筋梗塞」追加
  • 2012年8月 「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(ST上昇心筋梗塞)」追加
  • 2012年9月 「末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制」追加

この中で「末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制」は再審査期間が2016年9月までとなってます。
ですので、ジェネリックが発売されたとしても、末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)の効能・効果はしばらく取得できないということになります。
また、「虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制」以外の適応についても取得できないかもしれません。

クロピドグレルの結晶多形

クロピドグレルには結晶多形があるのをご存知でしたでしょうか?
添付文書の最後の方に下記のように少しだけ記載されています。

有効成分に関する理化学的知見
性状
本品は結晶多形が認められる。

クロピドグレルの結晶形にはフォームⅠ(フォーム1)とフォームⅡ(フォーム2)が存在し、プラビックスにはフォームⅡのクロピドグレルが使用されています。
フォームⅡは高温での安定性が高いため、工業的に効率よく生産できるという特徴があります。

他社がクロピドグレル製剤を製造する場合、2024年6月10日までは、
– サノフィが保有している製造特許以外の方法でクロピドグレル フォームⅡの精製を行う
※サノフィが取得している特許を見るとフォームⅡ自体が特許かもしれません。もしくはフォームⅡの確認方法?

  • フォームⅡ以外のクロピドグレルを効率よく製造する方法を開発する

といった方法で製造を行うしかないのだと思います。
ですが、フォームⅡを避けた場合、効果に差はでないのか?など不安が残ります。
また、ジェネリック発売後に特許に関する裁判に負けて、結局、ジェネリックは製造中止なんてパターンは困りますよね。

サノフィとしては、

  • 結晶多形を武器に先発医薬品であるプラビックスの有意性を主張していく
  • 日医工サノフィを通じて特許を自由に使えるオーソライズドジェネリック(AG)を発売する

の二種類の戦略があるわけです。

どうなる?クロピドグレルのGE

色々考えても想像の域を出ませんが、クロピドグレルのジェネリックが発売されるのであれば、結晶多形に注目して、各メーカーの主張を注意深く聞いていきたいと思います。

また、他の特許を見ていると、ダイト株式会社がフォームⅠの製造方法、テバがフォームⅢ、Ⅳ、Ⅴの構造と製造方法について特許を取得しているのも気になるところです。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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