平成26年6月12日から施行される改正薬事法。
今回より処方せんを介さない医薬品を販売した際には記録を残すように求められています。
該当する内容が記載されているのは薬事法ではなく、薬事法施行規則の方です。
薬事法施行規則 第14条
条文をそのまま記載します。
(医薬品の譲受け及び譲渡に関する記録)
第十四条
1 略(譲受に関する内容で以前通りです)
2 薬局開設者は、薬局医薬品、要指導医薬品又は第一類医薬品(以下この項において「薬局医薬品等」という。)を販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師の氏名並びに法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供を行つた薬剤師の氏名
五 薬局医薬品等を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導の内容又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
3 薬局開設者は、第一項の書面を記載の日から三年間、前項の書面を記載の日から二年間、保存しなければならない。
4 薬局開設者は、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師又は登録販売者の氏名及び法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供を行つた薬剤師又は登録販売者の氏名
五 第二類医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
5 薬局開設者は、医薬品を販売し、又は授与したときは、当該医薬品を購入し、又は譲り受けた者の連絡先を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
それではひとつずつ見ていきましょう。
医薬品譲受に関する記録
薬事法施行規則 第14条の1
条文は略しましたが、これは今までどおりです。
記録の保管期間も今まで通り3年間です。(第14条の3)
薬局医薬品等の販売記録
薬事法施行規則 第14条の2
薬局医薬品等を譲渡した際の記録について書かれています。
薬局医薬品等
薬局医薬品等とは、薬局医薬品、要指導医薬品、第一類医薬品です。
要指導医薬品〜どうなる?改正薬事法 その1 – 薬剤師の脳みそ
の記事でも少しまとめましたが復習しておきます。
薬局医薬品
これは現行の薬事法(2009年6月1日施行)で定められたものです。
医療用医薬品と薬局製剤をあわせて薬局医薬品と呼びます。
要指導医薬品
今回の改正で登場した分類ですね。
スイッチ直後品目、販売直後のダイレクトOTC、劇薬(毒薬)指定品目が要指導医薬品とされています。
今回の記事の後半に要指導医薬品の一覧はまとめておきますね。
第一類医薬品
これに関しては説明不要ですね。
今までの第一類医薬品のうち、要指導医薬品に指定されたものを除いたものとなります。
書面に記録する内容
次に掲げる事項を書面に記載しなければならない
書面と指定されていますね。
電磁的記録と書かれていないので、紙で保管しなければならないのだと思います。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師の氏名並びに法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供を行つた薬剤師の氏名
五 薬局医薬品等を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導の内容又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
四、五について補足します。
法第36条の4 第1項
(薬局医薬品に関する情報提供及び指導等)
第三十六条の四
薬局開設者は、薬局医薬品の適正な使用のため、薬局医薬品を販売し、又は授与する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、厚生労働省令で定める事項を記載した書面(当該事項が電磁的記録に記録されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものを含む。)を用いて必要な情報を提供させ、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
ということで、薬局医薬品の情報提供及び薬学的知見に基づく指導に関する規定です。
同じように、
法第36条の6第1項は要指導医薬品に関する規定。
法第36条の10第1項は第一類医薬品に関する規定です。
まとめると。
薬局医薬品等を販売・授与した際に、紙に記録して保管する内容は以下のようになりますね。
1.品目
2.数量
3.販売・授与の日時
4.販売・授与を行った薬剤師、情報提供(及び指導)を行った薬剤師の氏名
5.情報提供(及び指導)を理解したことの確認
ところで、理解したことの確認はどのように記録するのでしょうか?
これに関してはQ&Aで回答されています。
医薬品の販売業等に関するQ&Aについて
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T140402I0020.pdf
【医薬品の譲渡に関する記録】
(問6)購入者が情報提供及び指導の内容を理解したことの確認に当たっては、何をもって購入者が理解したと判断すればよいのか。
(答) 薬剤師等が購入者に口頭等で確認すればよい。
(問7)購入者が情報提供及び指導の内容を理解したことの確認の結果の記録に当たっては、購入者の署名が必要か。
(答) 購入者の署名が望ましいが、購入者に理解したことを確認の上、対応した薬
剤師等が記録することでも差し支えない。
書面を保管する期間
薬事法施行規則 第14条の3
薬局医薬品等の情報提供に関する記録を行った書面は2年間保管するように定められています。
第二類・第三類医薬品の販売記録
薬事法施行規則 第14条の4
4 薬局開設者は、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
一 品名
二 数量
三 販売又は授与の日時
四 販売し、又は授与した薬剤師又は登録販売者の氏名及び法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供を行つた薬剤師又は登録販売者の氏名
五 第二類医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
記録する内容については同じですが、「努めなければならない」ということで、努力義務ですね。
医薬品を販売・授与した相手の連絡先の記録
医薬品全般を販売した際の連絡先の記録については以下のように定められています。
薬事法施行規則 第14条の5
5 薬局開設者は、医薬品を販売し、又は授与したときは、当該医薬品を購入し、又は譲り受けた者の連絡先を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
連絡先の記録は努力義務です。
改正薬事法施行時点での要指導医薬品一覧
平成26年6月12日の時点で要指導医薬品とされる医薬品の一覧です。
劇薬
殺菌消毒薬
- エフゲン(成分:焼セッコウ、タール色素、ホルマリン)
精力剤
- ガラナポーン(成分:ヨヒンビン)
- ハンビロン(成分:ヨヒンビン、ストリキニーネ、ハンビ末、パントテン酸カルシウム)
- ストルピンMカプセル(成分:ヨヒンビン、ガラナエキス、ハンビ末)
- マヤ金蛇精(成分:ヨヒンビン、ストリキニーネ、メチルテストステロン、ニンジン、チアミン、アスコルビン酸、アミノエチルスルホン酸、五八霜末、イカリソウ末、赤カシュウ末)
ダイレクトOTC
むくみ改善薬
- アンチスタックス(成分:赤ブドウ葉乾燥エキス混合物)
スイッチOTC
解熱鎮痛薬
- エルペインコーワ(成分:イブプロフェン、ブチルスコポラミン)
- ナロンメディカル(成分:イブプロフェン)
中性脂肪異常改善薬
- エパデールT(成分:イコサペント酸エチル)
- エパアルテ(成分:イコサペント酸エチル)
内服用抗アレルギー薬
- エバステルAL(成分:エバスチン)
- アレジオン10(成分:エピナスチン)
- アレグラFX(成分:フェキソフェナジン)
- ストナリニ•ガード(成分:メキタジン)
- アレギサール鼻炎(成分:ペミロラスト)
- コンタック鼻炎Z(成分:セチリジン)
- ストナリニZ(成分:セチリジン)
点眼用抗アレルギー薬
- アイフリーコーワAL(成分:アシタザノラスト)
- ノアールPガード点眼薬(成分:ペミロラスト)
- ロートアルガードプレテクト(成分:トラニラスト)
まとめ
当初は一般用医薬品の特定販売が許可されたことに注目された改正薬事法ですが、第一類医薬品に関しては販売記録が義務付けられたため、販売するための制限としては厳しくなったようにも思えます。
販売記録に関しては準備を行なっている薬局も多いかと思いますが、まだの薬局ではそろそろ準備をしておきたいところですね。