ティーエスワンの隔日投与

この記事は2013年に作成しました。
現在もTS-1の隔日投与は保険適応外の投与方法で、主だった使用方法ではありません。

最近、OD錠が発売されたティーエスワン(TS-1/成分名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)ですが、いまいち患者さんの評判がよろしくないです。
錠剤なのでカプセルより小さいし、OD錠なのですぐ溶けるのでご高齢の方には飲みやすいかなと思ってたんですが・・・。
聞いてみると、「口の中で溶けるのが気持ち悪い」だそうです。
「他の薬はともかく、抗がん剤が口の中に残ったら嫌」とのこと。
溶けやすいけど普通に飲めばカプセルと同じように効果を発揮することは説明しているのですが、実際に飲むとやっぱり不安だそうです。
「カプセルの方がよかったなあ」って声もチラホラ。
実際に使ってみないとわからないですよね。
ちなみに、味はピーチ味とのことですが、グレープフルーツだとかレモン味のように感じる人もいるようです。
さすがに、味見する勇気はないな・・・。

さて、そんなTS-1ですが、最近、隔日投与での処方をよく見かけるようになりました。
最初から隔日投与の方もいるし、添付文書通り4投2休(4週間連続投与+2週間休薬)で開始したけど副作用が出た結果、隔日に変更する方もいます。
副作用を出しにくいってのが隔日投与のメリットです。

胃がんの標準治療では、手術後にTS-1を12ヶ月服用する術後化学療法が行われます。
これを行った場合とそうでない場合の3年生存率を比較した場合、術後化学療法あり81.9%に対して、術後化学療法なし70.1%。
5年生存率では術後化学療法あり71.7%に対し、術後化学療法なし61.1%。
いずれも術後化学療法を行ったほうが生存率は10%高くなっています。

ただし、欠点はコンプライアンス。
TS-1による治療は多くの副作用を伴います。
その中で多い自覚症状は食欲不振、吐き気、下痢、倦怠感。
抗がん剤の中では継続を中止しなければならないGrade3/4の副作用が少ないとされてはいますが、あるデータでは12ヶ月服用を継続できるのは65.8%しかなかったとされています。

じゃあ、なぜ隔日投与にすれば副作用を減らすことができるのか?
そもそもTS-1の4投2休という服用方法は副作用を考慮して、2週間を細胞の回復期間として用意したものです。
隔日投与では、服用、休薬を交互に繰り返すのみで、連続した休薬期間は取りません。
なぜ、この服用方法が考えられたかという話が理にかなっていて面白いんです。

TS-1のような化学療法剤と呼ばれる抗がん剤の副作用は、薬ががん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうために起こります。
正常な細胞を攻撃しにくいように様々な工夫がなされていますが、ゼロにはできないですし、効果を上げようとすれば細胞を攻撃する力も強くなってしまいます。
特に、細胞分裂が盛んな骨髄の細胞や、内服薬の通り道でもある消化管粘膜が攻撃を受けやすいため、副作用の原因となっています。
隔日投与の発見では、骨髄細胞や消化管粘膜細胞とがん細胞の細胞が分裂するのに必要な期間(細胞周期)に注目しました。
正常な骨髄細胞・消化管粘膜細胞の細胞周期が0.42〜1.32日なのに対して、がん細胞の細胞周期は3.8〜5.0日とされています。
TS-1は投与後24hr以内に代謝されるので1日間を空ければ正常な細胞が回復する期間としては十分ということになります。
それに対し、がん細胞の細胞周期では1日では回復できません。

この考えから生まれたのが隔日投与です。
実際に、4投2休から切り替えになった患者さんに聞いてみると「今は副作用はぜんぜん感じないね」って方もいました。
実際の効果がどうなのか?
多くの臨床研究が行われているので最終結論まではもうしばらくかかりそうですが、4投2休をリタイアせざるを得ない患者さんに対しては大きな選択肢になると思います。

ちなみに、保険適応上、問題ないかとメーカーさんに聞いたことがありますが、適宜増減の範囲として認められるそうです。

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