アンジオテンシン変換酵素阻害剤

  • 2012年6月17日
  • 2021年1月3日
  • 高血圧
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昨日までの流れに任せて、他のレニン-アンジオテンシン(RA)系阻害剤についてもまとめようと思います。

各RA阻害薬の特徴

RA阻害剤は昨日まとめたDRI(直接的レニン阻害剤)のほかに、ACE-I(アンギオテンシン変換酵素阻害剤)、ARB(AT1受容体阻害剤)が存在します。
それぞれの作用部位とRA系における影響は以下のとおり。

Angiotensinogen

↓←Renin DRI

AngiotensinI

↓←ACE ACE-I

AngiotensinII
↓           ↓
↓           ↓
AT1 ARB    AT2

  • レニン活性:DRI↓、ACE-I↑、ARB↑
  • レニン濃度:DRI↑、ACE-I↑、ARB↑
  • アンジオテンシンI:DRI↓、ACE-I↑、ARB↑
  • アンジオテンシンII:DRI↓、ACE-I↓、ARB↑
  • ブラジキニン:DRI→、ACE-I↑、ARB→

ACE阻害薬の作用機序

というわけで、まずはACE阻害剤の効果について。

アンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡに変換するアンジオテンシン変換酵素を阻害することでアンジオテンシンIIの産生を抑制。
アンジオテンシンIIは血管の収縮などにより昇圧作用を起こす薬で、アンジオテンシンIIの産生を抑制した結果、ACE-Iは降圧効果を発揮します。
また、アンジオテンシン変換酵素はキニナーゼⅡとも呼ばれており、ブラジキニンやサブスタンスPを分解する働きを持ちます。
結果、ブラジキニンの増大により一酸化窒素(NO)の増加を引き起こし、末梢血管の拡張による降圧作用を発揮。
このダブル効果がACE-Iの降圧作用というわけです。

降圧作用以外の効果

こっからはサブ的な効果、いわゆる多様性作用。
まずはとっても有名な腎保護作用。
腎臓の輸出細動脈を拡張し、糸球体内圧を下げ、直接的な腎保護作用を発揮。
ただし、「Ccr(クレアチニンクリアランス)30未満の場合、腎輸出細動脈の拡張により糸球体内圧が過度に低下し、腎機能が悪化することがあるので注意が必要」と添付文書に記載されています。

これも有名な話ですが、誤嚥性肺炎防止効果を持ちます。
肺炎発生率を1/3程度に低下させた報告あり(脳卒中治療ガイドライン2009)。
高齢者では、大脳基底核でのドパミン産生低下に伴いC繊維のサブスタンスP低下、嚥下機能の低下が起こっているので夜間に唾液の誤嚥を起こし、肺炎を起こす可能性があります。
ACE-IはキニナーゼⅡの阻害により、サブスタンスPの分解を抑制、低下した嚥下機能を改善し、夜間の不顕性誤嚥を防止することが可能となるというわけです。
ただ、これはあとに記載する空咳の副作用と表裏一体。

インスリン感受性を改善し、その効果は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬よりも優れているとの報告もあります(FISIC試験:2011)。
その証拠に、ACE-I、ARBは糖尿病治療薬は併用注意になってますよね。

また、心筋梗塞や心不全患者の心筋リモデリングを防止することで、生命予後改善するという報告もあります。

最後に、アルツハイマーに対する効果。
近年、ペリンドプリル(商品名:コバシル)がアルツハイマーの進行を遅らせるという報告があげられた。
アルツハイマー病の患者ではアミロイドベータというタンパク質が脳内にたまることが知られているが、これにより脳内のアンジオテンシン変換酵素の活性が上がることがわかっています。
結果、グリア細胞などを活性化させて炎症を引き起こし、神経細胞を傷めて認知機能を低下させることが推定されるというわけ。
BBB(血液-脳関門)通過性をもつペリンドプリルは脳の中に移行しやすいため、このような効果を発揮することが予想される。
同様にBBB通過性をもつカプトリル(商品名:カプトリル)にもこのような作用を示唆する報告が上がってます。

こうして見ると、すげー。
まさに、多様な作用の数々って感じ。

ACE阻害薬の副作用

代表的な副作用は空咳、高カリウム血症、味覚異常、血管浮腫。

空咳はACE-IがキニナーゼIIとして働いた結果、ブラジキニンやサブスタンスPの過剰産生を起こすため。
空咳は若い女性に比較的多いけれど、閉経後や高齢者では少なく、心保護効果や誤嚥性肺炎防止効果の方が強く出る傾向にあります。

高カリウム血症はRA系阻害剤すべてに生じる副作用。
RA系の最終産物であるアルドステロンは接合尿細管や集合管でナトリウム再吸収、カリウム排泄、酸排泄を促進する。
RA系阻害剤により、それを減少させるのでカリウムの上昇を引き起こしてしまいます。

味覚異常は体内の亜鉛排出が促進された結果。
ACE阻害剤はその構造から亜鉛とキレートを形成するため、亜鉛排出が促進されてしまいます。

血管浮腫もACE-IがキニナーゼIIとして働いた結果、生じる副作用。
ブラジキニンの増加により、ブラジキニンがもつ血管拡張・血管透過性亢進作用が強く出てしまい、血管浮腫が起きるというわけです。
アレルギー性のものだという説もあります。
血管浮腫に関しては、咽頭に発生した場合、呼吸困難を引き起こし、命に関わるので注意が必要です。

 

とまあ、知れば知るほど面白い薬です。
RA系阻害剤の中では最も古い薬でもあるので、薬価も安い。
降圧作用以外の効果があるので、どんどん使って欲しい薬なのですが、空咳がけっこう出るんですよね・・・。
あと、降圧効果が弱いイメージ。
でも、それを差し引いても、予防的に服用していい薬だと個人的には思います。
めっちゃいい薬だし、面白い薬!

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