平成28年3月17日、薬事・食品衛生審議会医薬品再評価部会で、リゾチーム塩酸塩製剤、プロナーゼ製剤についての再評価に関する審議が行われました。
その結果、「現在の医療環境においては本剤の医療上の有用性は低下したと考えられ、現時点での医療上の有用性は確認できない」との見解が出されたことにより、各社は塩化リゾチーム製剤、プロナーゼ製剤の製造中止ならびに自主回収を行うことを発表しました。
ダーゼンの製造中止(平成23年)から続いていたこの問題ですが、ついにすべての薬剤の製造が終了することになりましたね。
この件については昨年末に途中経過を記事にしました。
これまでの詳しい経緯はこちらの記事を参照してください。
今回製造中止が決定した消炎酵素製剤
今回、製造中止が決定したのは、以下の通りです。
塩化リゾチーム製剤
- アクディーム(あすか製薬)
- ノイチーム(エーザイ/サンノーバ)
- レフトーゼ(シオエ製薬/日本新薬)
プロナーゼ製剤
- エンピナース(科研製薬)
- イソパール(科研製薬)
消炎酵素製剤問題のこれまでの簡単な経緯
- 2011.1.19:再評価部会でダーゼンに有効性なしと報告
- 2011.2.21:ダーゼン製造中止
- 2011.2.22:セラセプターゼ製剤製造中止
- 2011.7:キモタブ製造中止
- 2011.9:ゼオエース製造中止
- 2012.1.20:リゾチーム製剤から歯槽膿漏・小手術時後出血
- 2015.5.29:リゾチーム製剤とエンピナースの再評価申請(リゾチーム製剤は副鼻腔炎の取下げ)
- 2015.12.11:リゾチーム製剤から慢性副鼻腔炎に関する適応削除
- 2016.3.17:再評価部会で塩化リゾチーム製剤・プロナーゼ製剤の有用性なしの見解→販売中止・自主回収へ
販売中止・自主回収となる塩化リゾチーム製剤
今回、販売中止・自主回収となる塩化リゾチーム製剤についてまとめておきます。
アクディーム
あすか製薬のホームページで今回の件について案内が公開されています。
http://www.aska-pharma.co.jp/news20160317.pdf
アクディームについては以下の6製品が発売されていました。
- アクディーム錠30mg
- アクディームカプセル90mg
- アクディーム細粒10%
- アクディーム細粒45%
- アクディームシロップ0.5%
- アクディームシロップ1%
ノイチーム
エーザイとサンノーバのホームページに今回の件についての案内が公開されています。
http://www.eisai.co.jp/news/news201613pdf.pdf
http://www.sannova.co.jp/info_201603.html
ノイチームについては以下の6製品が発売されていました。
- ノイチーム錠10mg
- ノイチーム錠30mg
- ノイチーム錠90mg
- ノイチーム顆粒10%
- ノイチーム細粒20%
- ノイチームシロップ0.5%
レフトーゼ
日本新薬とシオエ製薬のホームページに今回の件についての案内が公開されています。
NEWS 2020|日本新薬株式会社
http://www.sioe-pharm.co.jp/contents/news/pdf/topnews160315.pdf
レフトーゼについては以下の5製品が発売されていました。
- レフトーゼ錠10mg
- レフトーゼ錠(30mg)
- レフトーゼ錠(50mg)
- レフトーゼ顆粒10%
- レフトーゼシロップ0.5%
販売中止・自主回収となるプロナーゼ製剤
今回、販売中止・自主回収となるプロナーゼ製剤についてまとめておきます。
プロナーゼ製剤
科研製薬のホームページに今回の件についての案内が公開されています。
2016年03月17日 | 2016年 | ニュースリリース | 科研製薬株式会社
プロナーゼ製剤は配合剤も含めて3製品が発売されていました。
- エンピナース・Pカプセル9000
- エンピナース・P錠18000
- イソパール・P配合カプセル(プロナーゼ・dl‐イソプレナリン塩酸塩)
まとめ
これで、耳鼻科・呼吸器領域に使用できる消炎酵素製剤はすべて製造中止・自主回収になるんだと思います。
消炎酵素剤の効果については、実際どうなのかと言われるとはっきりしないところがあります。
近年では、分子量にもよりますが、ペプチドの一部はそのままの形で吸収されることが知られていますが、塩化リゾチームの吸収量は1%程度と言われています。
ただ、消化管を通る過程でどの程度がそのままの形で残っているのか?
そこからさらにわずかが吸収されて、本当に必要な部位で効果を発揮できるものなのか?
なんていう疑問があり、多くの関係者がもやもやしていた薬剤であるとは思うのですが、ついに販売中止・自主回収となりました。
使われていたのも、安全性の高さや、ほかに薬剤の選択肢がないという理由がほとんどだと思います。
ダーゼンの販売中止があってから、使用量はどんどん減っていたと思うので、影響はそこまで大きくないとは思いますが、使用している薬局では対応が対変化もしれません。
在庫している薬局では、自主回収の準備をしないといけません。
これで、代替薬というものはなくなってしまったので、処方はなしということになりますね。
リゾチーム製剤であれば、カルボシステイン(商品名:ムコダイン等)、アンブロキソール(商品名:ムコソルバン、ムコサール等)が代替薬…と言うには苦しい気もします。
併用しているケースが多いですし、そもそも性質が違いますが、強いてあげるならばというところですね。
しょうがないことなのかもしれないのですが、これまでこの薬剤を使っていた方に対してどのように説明を行うべきか、難しいところですね。