2018年5月16日、厚労省の中医協・総会で新規医薬品の薬価が決定し、5月22日に薬価収載されました。
中医協 総-1-1 30.5.16新医薬品一覧表(平成30年5月22日収載予定)
今回の収載品目で気になるのは、
- 覚せい剤原料ではないMAO-B阻害薬アジレクト錠
- やっと薬価収載されるSPPARMα パルモディア錠
- オキサゾリジノン系合成抗菌剤 シベクトロ錠
- 肝機能障害・相互作用の少ない爪白癬治療薬ネイリンカプセル
- スーグラ・ジャヌビアの合剤スージャヌ配合錠
といったところでしょうか?
薬価収載される医薬品についてできるだけ詳しくまとめてみました。
- 1 新規成分を含有する医薬品
- 1.1 エフピーに続くMAO-B阻害剤 アジレクト錠
- 1.2 1年近くかかって薬価収載 パルモディア錠
- 1.3 消化器障害を改善した二次性副甲状腺機能亢進症治療薬 オルケディア錠
- 1.4 ファブリー病治療薬 ガラフォルドカプセル
- 1.5 MRSAに対する新たな選択肢 シベクトロ錠・点滴静注用
- 1.6 造血幹細胞移植時のCMV感染予防薬 プレバイミス錠・点滴静注
- 1.7 肝機能異常時にも投与可能で併用禁忌のない爪白癬治療薬 ネイリンカプセル
- 1.8 乾癬治療の新たな選択肢 トレムフィア皮下注シリンジ
- 1.9 後縦靭帯下脱出型腰椎椎間板ヘルニアに対する初の医薬品 ヘルニコア椎間板注用
- 1.10 日本発のヒト化バイスペシフィック抗体 ヘムライブラ皮下注
- 2 既存の医薬品の有効成分を用いた新医薬品
新規成分を含有する医薬品
まずは新規有効成分を有する医薬品からまとめます。
エフピーに続くMAO-B阻害剤 アジレクト錠
平成30年6月11日発売
アジレクト錠 添付文書
- 医薬品名と薬価
- アジレクト錠0.5mg:512.10円/錠
- アジレクト錠1mg:948.50円/錠
- 成分名:ラサギリンメシル酸塩
- 申請者:武田薬品工業
- 効能・効果:「パーキンソン病」
- 用法・用量:通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与する。
- 一日薬価:948.50円
覚せい剤原料ではないMAO-B阻害剤
線条体に多く発現しているモノアミン酸化酵素B型(MAO-B)はドパミンを分解する酵素です。
MAO-B阻害薬は、非可逆的かつ選択的にモノアミン酸化酵素B型を阻害することで、シナプス間隙中のドパミン濃度を高め、パーキンソン病の症状を改善します。
日本国内ですでに承認されているMAO-B阻害薬としてエフピーOD錠(成分名:セレギリン塩酸塩)がありますが、アンフェタミン骨格を有するため覚せい剤原料に指定されています。
今回登場するアジレクト錠(成分名:ラサギリン)は覚せい剤原料ではないので在庫管理における規制の対象となりません。
後に記載していますが、エフピーとの薬価差もほとんどないため、エフピーからアジレクトへと移行していくのではないかなあと思います。
在庫管理もですが、一包化調剤などで錠剤を落下させてしまった際のリスクがなくなるのはありがたいです。
参考薬価
参考薬価としてエフピー錠とその後発医薬品の薬価を記載しておきます。
- エフピーOD錠2.5mg:301.90円/錠(1日薬価:903.80円)
- セレギリン塩酸塩錠2.5mg「アメル」:173.50円/錠
- セレギリン塩酸塩錠2.5mg「タイヨー」:173.50円/錠
1年近くかかって薬価収載 パルモディア錠
平成30年6月1日発売
パルモディア錠 添付文書
パルモディア錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- パルモディア錠0.1mg:33.90円/錠
- 成分名:ペマフィブラート
- 申請者:興和
- 効能・効果:「高脂血症(家族性を含む)」
- 用法・用量:通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までとする。
- 一日薬価:67.80円
SPPARMα
従来のフィブラート系薬剤はPPARα(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor α)活性化させることで、中性脂肪の低下、HDL-Cの増加という効果を発揮しますが、同時に肝機能異常を起こしてしまうことがあります。
これに対して、パルモディア(成分名:ペマフィブラート)はPPARαの活性を調節させるように働くことで、中性脂肪の低下やHDL-Cの増加と行った有益な効果を保ちつつ、肝機能異常は起こさないように作用することが期待されています。
そのため、PPARαアゴニストではなく、SPPARMα(Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Modulator α:高活性かつ高選択なPPARαモジュレーター)と名乗っています。
詳しくは過去記事に記載しています。
承認から一年近くかかった薬価収載
平成29年7月3日に承認されていたパルモディアですが、薬価収載までは揉めに揉め、なんと3回も薬価収載が見送られ、10ヶ月経っての薬価収載となってしまいました。
かなり揉めたようで、m3.comにその記事が掲載されています。(登録がまだの方はこちらから→m3.com薬剤師会員登録)
興和が期待したほどの評価が受けられず、薬価が安くなってしまったことで、なかなか薬価を受け入れることができなかったというのが原因だと推察されますが、もしそうだとしても、薬価収載の見送りについては2回までにする等のルールを決めて欲しいとは思います。
承認されたのになかなか発売されないということも問題ですが、メーカーが満足する薬価になるまで延々と交渉していくことが認められてしまうと、ごね得みたいな話になってしまいかねません・・・。
参考薬価
リピディル・トライコアの薬価を掲載します。
- リピディル錠53.3mg:26.10円/錠(1日薬価:52.20〜67.80円)
- リピディル錠80mg:33.90円/錠(1日薬価:52.20〜67.80円)
- トライコア錠53.3mg:26.00円/錠(1日薬価:52.00〜67.40円)
- トライコア錠80mg:33.70円/錠(1日薬価:52.00〜67.40円)
リピディル錠80mgと全く同じ薬価になりましたね。
確かに、興和が薬価に納得できなかったのではないかと言われているのもわかります。
ですが、作用機序上のメリットが承認内容にまで十分に反映されているかというと微妙なのでしょうがないのかな、とも思います。
消化器障害を改善した二次性副甲状腺機能亢進症治療薬 オルケディア錠
平成30年5月22日発売
カルシウム受容体作動薬「オルケディア®錠」国内販売開始のお知らせ
オルケディア錠 添付文書
オルケディア錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- オルケディア錠1mg:280.70円/
- オルケディア錠2mg:412.10円/
- 成分名:エボカルセト
- 申請者:協和発酵キリン
- 効能・効果:「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」
- 用法・用量:通常、成人には、エボカルセトとして1回1mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。患者の状態に応じて開始用量として1日1回2mgを経口投与することができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1日1回1~8mgの間で適宜用量を調整し、経口投与するが、効果不十分な場合には適宜用量を調整し、1日1回12mgまで経口投与することができる。
- 1日薬価:280.70〜1,648.40円
維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症とは?
腎機能が悪化すると、ビタミンD3を活性化することができないため、血中カルシウム濃度が低下してしまいます。
血中カルシウム濃度が低下すると、血中のカルシウム濃度を上昇させるため骨吸収が進み、カルシウムと一緒にリンが血中に放出されます。
さらに、腎機能が低下するとリンを排泄することもできないため、血中のリン濃度が高くなります。
リンは副甲状腺を刺激するため、副甲状腺ホルモン(PTH:ParaThyroid Hormone)の分泌が促進されます。
これが、腎機能悪化時(透析時)に二次性副甲状腺機能亢進症が起こる原因です。
カルシウム感知受容体作動薬
二次性副甲状腺機能亢進症を防ぐためには活性型ビタミンD3製剤などを投与して、血中のカルシウム濃度を高めればいいのですが、高カルシウム血症を引き起こしてしまう可能性があります。
それに対し、従来から使用されているレグパラ(成分名:シナカルセト)や今回薬価収載されるオルケディア(成分名:エボカルセト)は、副甲状腺に存在するカルシウム感知受容体(CASR:CAlcium-Sensing Receptor)に作用することで、実際のカルシウム濃度が低くてもそうではないと認識させ、PTHの分泌を抑制します。
レグパラとの違い
レグパラの使用で問題になるのが吐き気などの上部消化器障害ですが、オルケディアはその発言頻度を減らすことを期待して開発された薬剤です。
実際にオルケディアの上部消化器障害の発現頻度はレグパラと比較して低くなっています。
参考薬価
参考までにレグパラ錠の薬価を記載しておきます。
- レグパラ錠12.5mg:374.20円/錠(1日薬価:549.50〜1,559.50円)
- レグパラ錠25mg:549.50円/錠(1日薬価:549.50〜1,559.50円)
- レグパラ錠75mg:1010.00円/錠(1日薬価:549.50〜1,559.50円)
ファブリー病治療薬 ガラフォルドカプセル
平成30年5月30日発売
ガラフォルドカプセル 添付文書
- 医薬品名と薬価
- ガラフォルドカプセル123mg:142,662.10円/
- 成分名:ミガーラスタット塩酸塩
- 申請者:Amicus Therapeutics
- 効能・効果:「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」
- 用法・用量:通常、16歳以上の患者にはミガーラスタットとして1回123mgを隔日経口投与する。なお、食事の前後2時間を避けて投与すること。
- 1日薬価:70,631.05円
ファブリー病とは?
ファブリー病とはライソゾーム病の一種に分類される疾患です。
ライソゾーム酵素の一つである、αガラクトシダーゼAの欠損、またはその活性が低下することで、糖脂質(グロボトリアオシルセラミドなど)が血管内皮細胞、平滑筋細胞、神経節細胞などに蓄積してしまい、四肢痛、低汗症、腎不全、心肥大などの様々な症状を引き起こします。
全身の症状を持つ古典的ファブリー病、主に心臓に障害が発生する心ファブリー病、ほぼ腎臓のみを障害する腎ファブリー病が存在します。
特定の遺伝子変異に伴うα-ガラクトシダーゼA活性低下を改善
ファブリー病の原因となるα-ガラクトシダーゼAの欠損や活性低下には様々な原因がありますが、特定の遺伝子変異により、不安定な高次構造を持つα-ガラクトシダーゼAが生成され、その活性が低下してしまう場合があります。
ガラフォルドカプセルの成分であるミガーラスタットは、特定の変異を持つα-ガラクトシダーゼAに結合し、正常な立体構造の維持を助け(薬理学的シャペロンとして作用)ます。
その結果、α-ガラクトシダーゼAはリソソームに輸送され、そこでミガーラスタットが遊離することで、糖脂質の分解を促進し、その蓄積を防ぎます。
全てのファブリー病に有効というわけではなく、α-ガラクトシダーゼAが特定の変異を持つ場合にのみ有効なので、「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」という適応になっています。
MRSAに対する新たな選択肢 シベクトロ錠・点滴静注用
平成30年8月21日発売。
ニュースリリース|ニュースルーム|MSD
- 医薬品名と薬価
- ①シベクトロ錠200mg:20,801.40円/錠
- ②シベクトロ点滴静注用200mg:28,084円/瓶
- 成分名:テジゾリドリン酸エステル
- 申請者:バイエル薬品
- 効能・効果:
- <適応菌種>テジゾリドに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
- <適応症> 深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染
- 用法・用量:
- ①通常、成人にはテジゾリドリン酸エステルとして200mgを1日1回経口投与する。
- ②通常、成人にはテジゾリドリン酸エステルとして200mgを1日1回、1時間かけて点滴静注する。
- 1日薬価:
- ①20,801.40円
- ②28,084円
オキサゾリジノン系合成抗菌剤
シベクトロの成分であるテジゾリドはすでに発売さているリネゾリド(製品名:ザイボックス)と同じオキサゾリジノン系合成抗菌剤に分類されます。
テジゾリドはプロドラッグで加水分解を受けることで活性化し、細菌の50Sリボソームサブユニットに結合、蛋白合成を阻害することで静菌的に作用します。
シベクトロとザイボックスの違い
テジゾリド(製品名:シベクトロ)の特徴はブドウ球菌に対する抗菌活性の強さで、リネゾリド(製品名:サイボックス)と比較して4~16倍と言われています。
適応症にも違いがあり、シベクトロはザイボックスと比較して、「敗血症」・「肺炎」に対する適応を持たず、「びらん・潰瘍の二次感染」に対する適応が追加されています。
また、ザイボックスが1日2回なのに対して、テジゾリドは1日1回になっています。
薬品名 | シベクトロ (テジゾリド) | サイボックス (リネゾリド) |
---|---|---|
深在性皮膚感染症 | ◯ | ◯ |
慢性膿皮症 | ◯ | ◯ |
外傷・熱傷及び手術創等の二次感染 | ◯ | ◯ |
びらん・潰瘍の二次感染 | ◯ | – |
敗血症 | – | ◯ |
肺炎 | – | ◯ |
参考薬価
参考としてザイボックスの薬価を記載します。
ジェネリックはMRSAに対する適応を取得していないので今回は除外します。
- ザイボックス錠600mg:10400.70円/錠(1日薬価:20,801.40円)
- ザイボックス注射液600mg:14042.00円/袋(1日薬価:28,084.00円)
1日薬価はシベクトロとザイボックスで同じになっていますね。
造血幹細胞移植時のCMV感染予防薬 プレバイミス錠・点滴静注
平成30年5月28日発売
プレバイミス錠 添付文書
プレバイミス錠 インタビューフォーム
プレバイミス点滴静注 添付文書
プレバイミス点滴静注 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ①プレバイミス錠240mg:14,379.20円/錠
- ②プレバイミス点滴静注240mg:17,897円/瓶
- 成分名:レテルモビル
- 申請者:MSD
- 効能・効果:「同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」
- 用法・用量:
- ①通常、成人にはレテルモビルとして480mgを1日1回経口投与する。シクロスポリンと併用投与する場合にはレテルモビルとして240mgを1日1回経口投与する。
- ②通常、成人にはレテルモビルとして480mgを1日1回、約60分かけて点滴静注する。シクロスポリンと併用投与する場合にはレテルモビルとして240mgを1日1回、約60分かけて点滴静注する。
- 1日薬価:
- ①14,379.20〜28,758.40円
- ②17,897〜35,794円
造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症
白血病などを根本治療するために造血幹細胞移植が行われます。
造血幹細胞移植の前には全身放射線照射や大量の抗ガン剤により、患者体内の白血病細胞を根絶させる必要があります。
その際に、正常な骨髄細胞まで破壊してしまうため、移植した造血幹細胞が分化増殖(生着)し、末梢血に好中球が出現するまでは免疫不全状態となってしまいます。
サイトメガロウイルス(CMV:CytoMegaloVirus)は健康成人の多くに感染していますが、通常、害となることはありません。
ですが、免疫不全状態になってしまうと、様々な感染症を引き起こし、命に関わります。
そのため、造血幹細胞移植後はサイトメガロウイルスの感染に対して細心の注意が必要となり、感染が疑われる場合、速やかな治療が必要となります。
CMVターミナーゼ阻害剤
レテルモビルはサイトメガロウイルス特有のターミナーゼという酵素を阻害します。
サイトメガロウイルスのDNAはカプシドと呼ばれるタンパク質の殻に覆われています。
ターミナーゼは宿主細胞内で複製されたサイトメガロウイルスDNAをカプシドに封入する過程で必要となる酵素です。
そのため、レテルモビルがターミナーゼを阻害することでサイトメガロウイルスの増殖を抑制することが可能になります。
既存のCMV治療薬
既存のCMV治療薬には以下の3種類があります。
- デノシン点滴静注用(一般名:ガンシクロビル)
- バリキサ錠(一般名:バルガンシクロビル)
- 点滴静注用ホスカビル注(一般名:ホスカルネット)
ガンシクロビル/バルガンシクロビル
ガンシクロビルはウイルス内でリン酸化を受けてガンシクロビル5′-三リン酸になり、DNAポリメラーゼによるdGTPの使用を阻害します。
また、DNAポリメラーゼに直接結合することでDNA鎖の伸長を阻害する作用も持ちます。
バルガンシクロビルはガンシクロビルをプロドラッグ化することで経口投与を可能にした薬剤です。
副作用として、好中球減少症・血小板減少症・貧血、中枢神経症状などが知られているため、生着前に予防的に使用することはできません。
ホスカルネット
ホスカルネットはピロリン酸に類似した構造を持っています。
そのため、ウイルスのDNAポリメラーゼのピロリン酸結合部位に結合し、ウイルスDNAの合成を阻害します。
副作用として、急性腎不全、血栓性静脈炎、痙攣発作貧血、血中ヘモグロビン減少、顆粒球減少、腎機能異常などが知られています。
既存治療薬では不可能だった予防投与を可能にする薬剤
今回発売されるプレバイミス(成分名:レテルモビル)は初となる「同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」の適応を取得しています。
既存治療薬では同様の適応はありません。
- デノシン点滴静注用:「下記におけるサイトメガロウイルス感染症 臓器移植(造血幹細胞移植も含む)」
- バリキサ錠:臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制
- 点滴静注用ホスカビル注:造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス血症及びサイトメガロウイルス感染症
ガンシクロビル/バルガンシクロビルは好中球減少症・血小板減少症などを引き起こすため、生着前に投与することができませんでした。
ですが、今回発売されるプレバイミス(成分名:レテルモビル)は既存治療薬と比較して副作用が少ないため、予防投与が可能になります。
実際に、第III相国際共同試験(001試験)では、CMV抗体陽性の成人同種造血幹細胞移植患者をレテルモビル予防投与群とプラセボ群に分けて、発症抑制効果を検討し、レテルモビル予防投与群が移植後24週以内のCMV感染を有意に低下させるという結果を得ています。
参考薬価
既存のCMV治療薬の薬価を記載しておきます。
- デノシン点滴静注用500mg:12079.00円/瓶
- バリキサ錠450mg:3016.70円/錠
- 点滴静注用ホスカビル注24mg/mL 6g250mL:9130.00円/瓶
肝機能異常時にも投与可能で併用禁忌のない爪白癬治療薬 ネイリンカプセル
平成30年7月27日発売
経口抗真菌剤「ネイリン®カプセル 100mg」 新発売のお知らせ
ネイリンカプセル 添付文書
ネイリンカプセル インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ネイリンカプセル100mg:804.60円/カプセル
- 成分名:ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物
- 申請者:佐藤製薬
- 効能・効果:
- 〈適応菌種〉皮膚糸状菌(トリコフィトン属)
- 〈適応症〉爪白癬
- 用法・用量:通常、成人には1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100mg)を12週間経口投与する。
- 1日薬価:804.60円
爪白癬治療の新たな選択肢
ネイリンカプセルの成分であるホスラブコナゾールはその活性代謝物であるラブコナゾールの溶解性や生物学的利用率(BA:BioAvailability)を向上させたプロドラッグです。
真菌細胞の細胞膜の成分であるエルゴステロール生合成を阻害することで抗真菌作用を発揮します。
現在、日本で承認されている爪白癬治療薬は、
- 内服薬
- イトラコナゾール(製品名:イトリゾール等)
- テルビナフィン(製品名:ラミシール等)
- 外用薬
- エフィナコナゾール(製品名:クレナフィン爪外用液)
- ルリコナゾール(製品名:ルコナック爪外用液)
とわずか4成分しか存在しません。
外用薬については副作用等少なく治療しやすいのがメリットですが、治療期間が長く(クレナフィン・ルコナックともに48週が目安)、治癒率はそこまで高くありません。(クレナフィン:17.8%・日本人28.8%、ルコナック:14.9%)
内服薬は治癒率が高いのですが、肝機能障害や薬物相互作用、服用期間が障害になります。
ネイリンカプセルの登場することで貴重な選択肢が増えることになります。
その特徴をまとめると次のようになります。
- 重度の肝機能障害でも治療可能
- 1日1回1カプセル、12週間で治療完了
- 薬物相互作用が少ない
既存の内服薬との比較
既存の内服薬とネイリンカプセルの特徴を比較してみます。
イトラコナゾール パルス療法との比較
薬品名 | ネイリンカプセル (ホスラブコナゾール) | イトリゾール等 (イトラコナゾール) |
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用法・用量 | 1日1回 1カプセル(100mg) | 1日2回 1回200mg(1日量400mg) 食直後 |
服用期間 | 12週間 | 1週間経口+3週間休薬を3サイクル(12週間) |
併用禁忌 | なし | 25成分 |
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テルビナフィンとの比較
薬品名 | ネイリンカプセル (ホスラブコナゾール) | ラミシール等 (テルビナフィン) |
---|---|---|
用法・用量 | 1日1回 1カプセル(100mg) | 1日1回 1錠(125mg) 食後 |
服用期間 | 12週間 | 24週間*1 |
併用禁忌 | なし | なし |
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参考薬価
参考までにイトラコナゾール・テルビナフィンの薬価を記載しておきます。
- イトリゾールカプセル50mg:315.60円/カプセル
- イトラコナゾール錠50(MEEK、科研、SW、日医工):130.50円/錠
- イトラコナゾール錠100(MEEK、日医工):243.20円/錠
- イトラコナゾール錠200「MEEK」:546.50円/錠
- ラミシール錠125mg:167.70円/錠
- テビーナ錠125mg:98.70円/錠
- ネドリール錠125mg:98.70円/錠
- テルビナフィン錠125mg(TCK、日医工、トーワ):98.70円/錠
- ケルガー錠125mg:73.10円/錠
- リプノール錠125mg:73.10円/錠
- テルビー錠125mg:61.00円/錠
- テルミシール錠125mg:61.00円/錠
- テルビナフィン錠125mg(MEEK、NP、F、サンド、CH、タイヨー、YD、タナベ、サワイ、ケミファ、ファイザー):61.00円/錠
乾癬治療の新たな選択肢 トレムフィア皮下注シリンジ
平成30年5月22日発売
新作用機序を持つ乾癬治療薬 「トレムフィア®皮下注100mgシリンジ」 新発売のお知らせ
トレムフィア皮下注シリンジ 添付文書
- 医薬品名と薬価
- トレムフィア皮下注100mgシリンジ:319,130円/筒
- 成分名:グセルクマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:ヤンセンファーマ
- 効能・効果:「既存治療で効果不十分な下記疾患(尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症)」
- 用法・用量:通常、成人にはグセルクマブ(遺伝子組換え)として、1回100mgを初回、4週後、以降8週間隔で皮下投与する。
- 1日薬価:5698.75円
ヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤
ヤンセンファーマのホームページの記載がわかりやすかったので転載します。
トレムフィアは、日本初の、IL-23のサブユニットタンパク質であるp19を特異的に阻害するモノクローナル抗体です。乾癬は正常の約30倍にも及ぶ表皮細胞の異常増殖が特徴で、その病態にはヘルパーT細胞17(Th17)が大きく関与していると考えられています。IL-23は、Th17の分化、増殖およびその維持に関与するサイトカインであり*2、トレムフィアは、IL-23のp19サブユニットに結合することによってIL-23の活性を特異的に阻害し、IL-23の下流にあるTh17へのシグナル伝達を抑制します*3。
乾癬治療の新たな選択肢
既存の治療薬と異なる標的部位に作用することから乾癬治療に新たな選択肢として加わることが期待されます。
参考までに既存の治療薬とその作用をまとめておきます。
- レミケード(一般名:インフリキシマブ):キメラ型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体
- コセンティクス(一般名:セクキヌマブ):ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体
- ルミセフ(一般名:ブロダルマブ):ヒト型抗ヒトIL-17受容体(R)Aモノクローナル抗体
- トルツ(一般名:イキセキズマブ):ヒト化抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体
- ヒュミラ(一般名:アダリムマブ):ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体
- ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ):ヒト型抗ヒトIL-12/IL-23p40モノクローナル抗体
後縦靭帯下脱出型腰椎椎間板ヘルニアに対する初の医薬品 ヘルニコア椎間板注用
平成30年8月販売予定
腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア®椎間板注用1.25単位」の国内における薬価基準収載及び発売時期に関するお知らせ
ヘルニコア椎間板注用 添付文書
ヘルニコア椎間板注用 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ヘルニコア椎間板注用1.25単位:81,676円/
- 成分名:コンドリアーゼ
- 申請者:生化学工業
- 効能・効果:「保存療法で十分な改善が得られない後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア」
- 用法・用量:通常、成人にはコンドリアーゼとして1.25単位を症状の原因である高位の椎間板内に単回投与する。
腰椎椎間板ヘルニアの分類
腰椎椎間板ヘルニアは以下のように分類されます。
- 髄核膨隆型
- 髄核突出
- 後縦靱帯下脱出型
- 経後縦靱帯脱出型
- 髄核分離型
「経後縦靱帯脱出型」は椎間板の外縁部分を構成する線維輪だけでなく後縦靱帯も破れてしまい、髄核が飛び出してしまっている状態を指します。
ヘルニコア椎間板注用(成分名:コンドリアーゼ)は後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニアにのみ使用可能です。
グリコサミノグリカン分解酵素
コンドリアーゼは、椎間板中心の髄核を構成する成分であるグリコサミノグリカン(GAG:GlycosAminoGlycan)を分解することで、髄核の保水能を低下させることで椎間板内圧を低下させます。
ヘルニコア椎間板注用の投与により、髄核が縮小し、神経圧迫が減少することが期待されます。
発売は少し先に
ヘルコニアの発売は少し先の8月を予定しているようです。
理由は「腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア®椎間板注用1.25単位」の国内における薬価基準収載及び発売時期に関するお知らせ」に記載されている通り。
なお、本剤は新規作用機序の医療用医薬品であり、安全確保の観点から添付文書における「使 用上の注意」として、「本剤の投与は、腰椎椎間板ヘルニアの診断及び治療に十分な知識・経 験を持つ医師のもとで行うこと。また、椎間板穿刺に熟達した医師が投与すること。」とされ ています。
これに従いまして、現在、具体的な医師要件及び施設要件の検討が進められており、これら の要件が定められた後に販売を開始し、適正使用を推進しながら、段階的な普及に努めてまい ります。
日本発のヒト化バイスペシフィック抗体 ヘムライブラ皮下注
平成30年5月22日発売
血友病A治療薬「ヘムライブラ®皮下注」発売のお知らせ
ヘムライブラ皮下 添付文書
ヘムライブラ皮下 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- ヘムライブラ皮下注30mg:376,006円/瓶
- ヘムライブラ皮下注60mg:692,565円/瓶
- ヘムライブラ皮下注90mg:989,990円/瓶
- ヘムライブラ皮下注105mg:1,134,028円/瓶
- ヘムライブラ皮下注150mg:1,552,824円/瓶
- 成分名:エミシズマブ(遺伝子組換え)
- 申請者:中外製薬
- 効能・効果:「血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」
- 用法・用量:通常、エミシズマブ(遺伝子組換え)として1回3mg/kg(体重)を1週間の間隔で4回皮下投与し、以降は1回1.5mg/kg(体重)を1週間の間隔で皮下投与する。
活性型血液凝固第Ⅸ因子と血液凝固第Ⅹ因子に対するバイスペシフィック抗体
エミシズマブは活性型血液凝固第Ⅸ因子と血液凝固第Ⅹ因子に対するヒト化バイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)です。
活性型第IX因子と第X因子に結合し、活性型第IX因子による第X因子の活性化反応を促進することで、血友病Aで欠損・機能異常となっている第VIII因子の補因子機能を代替します。
エミシズマブは血液凝固第Ⅷ因子では効果の期待できないようなインヒビターを保有する成人血友病A患者に対して出血率の低下が認めらていることから、「血液凝固第VIII因子に対するインヒビター(中和抗体)を保有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」に対する適応で承認されました。
これまでは、インヒビターを保有する血友病A患者に対しては、血漿分画製剤しか選択肢がなく、感染リスクが否定できませんでしたが、抗体製剤であるエミシズマブを使用することで感染症リスクを軽減することが可能です。
既存の医薬品の有効成分を用いた新医薬品
ここからは既存の有効成分を使用した新医薬品についてまとめます。
SGLT2阻害薬/DPP-4阻害薬の配合剤 スージャヌ配合錠
平成30年5月22日発売
2型糖尿病治療剤「スージャヌ®配合錠」発売のお知らせ
スージャヌ配合錠 添付文書
スージャヌ配合錠 インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- スージャヌ配合錠:263.80円/錠
- 成分名:シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジン L-プロリン
- 申請者:MSD
- 効能・効果:「2型糖尿病 ただし、シタグリプチンリン酸塩水和物及びイプラグリフロジンL-プロリンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。」
- 用法・用量:通常、成人には1日1回1錠(シタグリプチン/イプラグリフロジンとして50mg/50mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。
- 一日薬価:263.80円
名前もだけどパンフレットのデザインもインパクトがあるスージャヌ(笑)
国内2番目のDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬 配合剤
名前を見たらすぐわかると思いますがDPP-4阻害薬であるジャヌビア(成分名:シタグリプチン)とSGLT2阻害薬であるスーグラ(成分名:イプラグリフロジン)の配合錠です。
成分の含有量はシタグリプチン50mg/イプラグリフロジン50mgの1規格のみです。
DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬との配合剤として、すでにカナリア配合錠(テネリア/カナグル、テネリグリプチン20mg/カナグリフロジン100mg)が発売されているので、スージャヌ配合錠は2番目の同タイプの配合薬ということになります。
投与開始に際する保険上の注意
- 既にシタグリプチン50mg 1日1回及びイプラグリフロジン50mg 1日1回を併用し状態が安定している場合
- シタグリプチン50mg 1日1回の単剤治療により効果不十分な場合
- イプラグリフロジン50mg 1日1回の単剤治療により効果不十分な場合
少なくともどちらか1剤を使っている方に対して切り替えで使用開始するのが無難ですね。
これもカナグル配合錠と全く同じです。
参考薬価
参考としてスーグラとジャヌビアの薬価を掲載しておきます。
- ジャヌビア錠50mg:129.50円/錠
- スーグラ錠50mg:200.20円/錠
結節性硬化症皮膚病変に対する外用薬 ラパリムスゲル
平成30年6日6日発売
ラパリムスゲル 添付文書
- 医薬品名と薬価
- ラパリムスゲル0.2%:3,855.00円/g
- 成分名:シロリムス
- 申請者:ノーベルファーマ
- 効能・効果:「結節性硬化症に伴う皮膚病変」
- 用法・用量:通常、1日2回、患部に適量を塗布する。
内服薬とは異なる適応
同成分の内服薬として「ラパリムス錠1mg」承認・発売されていますが、適応は「リンパ脈管筋腫症」となっており、ラパリムスゲル(適応:結節性硬化症に伴う皮膚病変)とは異なります。
「結節性硬化症に伴う皮膚病変」に対する医薬品はこれまで存在しておらず、外科的切除等の方法で治療するしかありませんでした。
mTOR阻害薬
結節性硬化症は染色体優性遺伝性疾患に起こる全身の過誤腫を特徴とする皮膚病変です。
様々な場所に腫瘍や組織を形成してしまうため、脳内にできた場合はてんかんを引き起こしたり、心臓にできた場合は心不全等の原因になります。
皮膚病変でも重症化することで出血を引き起こしたり、鼻腔内の閉塞を起こしてしまうことがあります。
染色体異常により哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR:mammalian Target Of Rapamycin)の抑制が効かなくなっていることが結節性硬化症の原因です。
シロリムスはmTORを阻害することで結節性硬化症を改善すると考えられています。
1日1回投与が可能になったアイセントレス錠600mg追加
平成30年6月14日発売
アイセントレス錠600mg 添付文書
アイセントレス錠600mg インタビューフォーム
- 医薬品名と薬価
- アイセントレス錠600mg:1,553.60円/錠(アイセントレス錠400mg:1553.60円/錠)
- 成分名:ラルテグラビルカリウム
- 申請者:MSD
- 効能・効果:「HIV感染症」
- 用法・用量:通常、成人にはラルテグラビルとして1,200mg(本剤を2錠)を1日1回経口投与する。本剤は、食事の有無にかかわらず投与できる。なお、投与に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。
- 1日薬価:3,007.20円
1日1回投与を可能としたアイセントレスの新規格
インテグラーゼ阻害剤であるアイセントレス錠の新規格です。
従来から存在するアイセントレス錠400mgの用法・用量は以下の通りです。
アイセントレス錠400mg 添付文書
用法及び用量
通常、成人にはラルテグラビルとして400mgを1日2回経口投与する。本剤は、食事の有無にかかわらず投与できる。なお、投与に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。
使用に際しての保険上の注意
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.本剤は抗HIV治療経験がないHIV感染患者、あるいはラルテグラビル400mg 1日2回と他の抗HIV薬でウイルス学的抑制が得られているHIV感染患者に使用すること。
2.本剤による治療にあたっては、患者の治療歴及び薬剤耐性検査結果を参考にすること。