サムスカの急性肝不全、ウプトラビとプラビックスが併用禁忌に、トラゼンタ・スイニー・テネリア・カナリアによる類天疱瘡・急性膵炎〜平成30年3月20日添付文書改訂指示

平成30年3月20日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は7つの成分に対して以下のような改訂指示が出されています。

  • トルバプタン(サムスカ)による急性肝不全
  • セレキシパグ(ウプトラビ)とクロピドグレル硫酸塩(プラビックス・コンプラビン)による相互作用
  • アナグリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物による類天疱瘡・急性膵炎
  • 滅菌調整タルクによるショック(これについては省略)

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

使用上の注意の改訂指示(平成30年3月20日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。

トルバプタン(サムスカ)による急性肝不全

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • サムスカ錠7.5mg
  • サムスカ錠15mg
  • サムスカ錠30mg
  • サムスカ顆粒1%

サムスカの添付文書改訂内容

添付文書「副作用」の「重大な副作用」の項の肝機能障害に関する記載に下線部が追記されます。

急性肝不全、肝機能障害:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-P、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれ、急性肝不全に至ることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、肝機能障害が回復するまでは頻回に血液検査を実施するなど観察を十分に行うこと。

症例報告(トルバプタンによる急性肝不全)

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、トルバプタンの影響が疑われる急性肝不全関連症例が11例報告されており、そのうち4例は因果関係が否定できないものでした。
また、死亡例は7例で、そのうち因果関係が否定できない症例は3例です。

セレキシパグ(ウプトラビ)とクロピドグレル硫酸塩(プラビックス・コンプラビン)による相互作用

添付文書改訂の対象となる商品名は以下のとおりです。

  • セレキシパグ
    • ウプトラビ錠0.2mg
    • ウプトラビ錠0.4mg
  • クロピドグレル硫酸塩
    • プラビックス錠25mg
    • プラビックス錠75mg
    • クロピドグレル錠25mg「各社」
    • クロピドグレル錠50mg「各社」
    • クロピドグレル錠75mg「各社」
  • クロピドグレル硫酸塩・アスピリン
    • コンプラビン配合錠

セレキシパグは選択的プロスタサイクリン受容体作動薬で、ウプトラビは「肺動脈性肺高血圧症」に対する適応を有します。

クロピドグレルは抗血小板薬です。
プラビックス・クロピドグレルは下記の適応を有します。

  • 虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
  • 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    • 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、 ST上昇心筋梗塞)
    • 安定狭心症
    • 陳旧性心筋梗塞
  • 末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

コンプラビンは下記の適応を有します。

  • 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    • 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、 ST上昇心筋梗塞)
    • 安定狭心症
    • 陳旧性心筋梗塞

各薬剤の添付文書改訂内容

それぞれ、添付文書の「禁忌」・「相互作用」の「併用禁忌」の項に追記が行われます。

ウプトラビの添付文書改訂内容

添付文書の「禁忌」の項に以下の内容が追加されます。
また、「相互作用」の「併用禁忌」に以下の内容が追記されます。

禁忌:クロピドグレル含有製剤を投与中の患者
併用禁忌:クロピドグレル含有製剤

プラビックス・クロピドグレル・コンプラビンの添付文書改訂内容

添付文書の「禁忌」の項に以下の内容が追加されます。
また、「相互作用」の「併用禁忌」に以下の内容が追記されます。

禁忌:セレキシパグを投与中の患者
併用禁忌:セレキシパグ

添付文書改訂理由(セレキシパグとクロピドグレル硫酸塩による相互作用)

海外での薬物相互作用試験の結果、ゲムフィブロジルとセレキシパグの併用で、セレキシパグの血中濃度が著しく上昇する結果が得られました。
※gemfibrozil(ゲムフィブロジル:フィブラート系薬、日本でも承認申請されていたが2002年に取り下げ)
この原因はセレキシパグの主な代謝酵素であるCYP2C8が阻害されるためということがわかっています。
そのため、CYP2C8阻害剤であるクロピドグレルとセレキシパグを併用した場合も同様に相互作用が起こることが予想されるため、今回の添付文書の改訂が行われたようです。

アナグリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物による類天疱瘡・急性膵炎

  • アナグリプチン
    • スイニー錠100mg
  • リナグリプチン
    • トラゼンタ錠5mg
  • テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物
    • テネリア錠20mg
    • カナリア配合錠

アナグリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物はDPP4阻害剤で、スイニー・トラゼンタ・テネリア・カナリアは「2型糖尿病」に対する適応を有しています。

各薬剤の添付文書改訂内容

それぞれ、添付文書の「重要な基本的注意」・「副作用」の「重大な副作用」の項に追記が行われます。

スイニーの添付文書改訂内容

添付文書の「重要な基本的注意」の項に以下の内容が追記されます。

急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。

また、「副作用」の「重大な副作用」の項には以下の内容が追記されます。

  • 急性膵炎:急性膵炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 類天疱瘡:類天疱瘡があらわれることがあるので、水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
類天疱瘡

類天疱瘡については、アログリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチンに対して、平成28年11月22日に追記されていますね。

過去にも調べたことがありましたが、類天疱瘡とは、基底膜部(表皮と真皮の境の部分)に対する自己抗体(抗表皮基底膜部抗体)ができてしまった結果、基底膜部が破壊され、表皮と真皮の接着が悪くなり、水疱が引き起こされるもののようです。
天疱瘡とまとめて自己免疫性水疱症とも呼ばれます。
テトラサイクリン/ミノサイクリン・ニコチン酸アミドの内服併用、副腎皮質ステロイドの内服や外用、レクチゾールの内服、ロキシスロマイシン内服などの治療が行われるようです。

トラゼンタ・テネリア・カナリアの添付文書改訂内容

添付文書の「重要な基本的注意」の項に以下の内容が追記されます。

急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること。

また、「副作用」の「重大な副作用」の項には以下の内容が追記されます。

急性膵炎:急性膵炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

症例報告

類天疱瘡と急性膵炎で分かれています。

アナグリプチンによる類天疱瘡の症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、アナグリプチンの影響が疑われる急性肝不全関連症例が7例報告されており、そのうち1例は因果関係が否定できないものでした。
死亡例はありません。

アナグリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物による急性膵炎の症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、各薬剤の影響が疑われる急性膵炎の報告数は以下の通りでした。

  • アナグリプチン:4例(因果関係が否定できないもの2例)
  • リナグリプチン:19例(因果関係が否定できないもの5例)
  • テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物:9例(因果関係が否定できないもの4例)
  • テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物:0例

全て死亡例はありません。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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