平成29年11月6日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会が開催されました。
経皮吸収型のヒスタミンH1受容体拮抗薬アレサガテープ、アトピー性皮膚炎初の抗体医薬品デュピクセント皮下注、爪白癬治療薬であるネイリンカプセルなどの承認が了承されました。
経皮吸収型の第二世代抗ヒスタミン薬アレサガテープ
- 成分名:エメダスチンフマル酸塩
- 製品名
- アレサガテープ4mg
- アレサガテープ8mg
- 申請者:久光製薬
- 効能・効果:アレルギー性鼻炎
- 用法・用量:通常、成人にはエメダスチンフマル酸塩として1回4mgを胸部、上腕部、背部又は腹部のいずれかに貼付し、24時間毎に貼り替える。なお、症状に応じて1回8mgに増量できる。
- 製品名
- 成分名:エメダスチンフマル酸塩
アレサガテープは第二世代抗ヒスタミン薬
復習ですね。
アレサガテープは第二世代抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)です。
アレルギーの原因(アレルゲン)が体内に侵入すると、肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンという物質が放出されます。
このヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合することで様々なアレルギー反応を引き起こされます。
アレサガテープの成分であるエメダスチンはヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合するのを阻害することで、アレルギー症状を緩和する効果が期待されます。
ちなみに、元々の抗ヒスタミン薬(第一世代抗ヒスタミン薬)は脳内への移行が多いので眠気の副作用が起きやすいです。
また、第一世代抗ヒスタミン薬はmヒスタミン受容体だけでなく、アセチルコリン受容体への作用も阻害(抗コリン作用)するため、口渇や便秘などの副作用を起こしやすく、前立腺肥大症の方や一部の緑内障の方は使用できない場合があります。
アレサガテープの成分はレミカットと同じ
アレサガテープの成分であるエメダスチンフマル酸塩はレミカットカプセルとしてすでに販売されています。
エメダスチンフマル酸塩は第二世代抗ヒスタミン薬ではありますが、眠気の頻度が多く、運転禁止薬(重要な基本的注意に「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させない」の記載あり)となっています。
経皮吸収に変えることで眠気の頻度が下がることもないでしょうから、1日2回の内服(レミカット)が1日1回貼付になることがメリットでしょうか?
レミカットと用法・用量を比較してみると・・・
- アレサガテープ4mg 1日1回貼付→レミカットカプセル1mgを1日2回
- アレサガテープ8mg 1日1回貼付→レミカットカプセル2mgを1日2回
といったところでしょうか?
個人的な印象
ん〜・・・。
これといってメリットは感じられないのですがどうなんでしょう?
せめて、フェキソフェナジン (製品名:アレグラ)とかなら眠気も少なく、認知症の方の飲み忘れを防ぐための使用が可能なのですが。
あと、貼付薬となると皮膚への刺激も気になりますね。
詳しい情報を待ちたいと思います。
経口爪白癬治療薬ネイリンカプセル
- 成分名:ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物
- 製品名
- ネイリンカプセル100mg
- 申請者:佐藤製薬
- 適応菌種:通常、成人には1日1回1カプセル(ラブコナゾールとして100mg)を12週間経口投与する。
- 効能・効果:爪白癬
- 用法・用量:
- 製品名
- 成分名:ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物
ネイリンカプセルはトリアゾール系の経口抗真菌薬
ネイリンカプセルの成分であるホスラブコナゾールは体内でラブコナゾールに変化されます。
トリアゾール系の抗真菌薬について少し復習。
真菌の細胞壁の構成成分の一つにエルゴステロールという脂溶性物質があります。
トリアゾール系抗真菌薬は真菌の細胞壁の構成成分であるエルゴステロールを合成するために必要な酵素を阻害することで、抗真菌作用を発揮します。
ホスラブコナゾールはラブコナゾールのプロドラッグ
先ほども書きましたが、ホスラブコナゾールは体内でラブコナゾールに変換されることで効果を発揮します。
ホスラブコナゾールとすることで消化管内で溶けやすくなり、さらに吸収率も向上させています。
従来のアゾール系抗真菌薬ではCYP3Aを阻害することによる他剤との相互作用が問題になりますが、ホスラブコナゾールは従来のアゾール系抗真菌薬と比較して、CYP3A阻害作用が弱く、相互作用を起こす薬剤が少ないと言われています。
個人的な印象
爪白癬は内服でないと治療効果が上がらないのですが、相互作用の多さと肝障害がネックになります。
相互作用が少ないというのはかなりのメリットですよね。
あとは肝機能障害の頻度はどうなんでしょうか?
アトピー性皮膚炎に対する抗体医薬品デュピクセント皮下注
- 成分名:デュピルマブ(遺伝子組換え)
- 製品名
- デュピクセント皮下注300mgシリンジ
- 申請者:サノフィ
- 効能・効果:既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
- 用法・用量:通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として600mgを投与初日に1回皮下投与し、その後は300mgを2週に1回皮下投与する。
- 製品名
- 成分名:デュピルマブ(遺伝子組換え)
アトピー性皮膚炎に対する初の抗体医薬品
部会の資料から抜粋します。
アトピー性皮膚炎の病態には、インターロイキン(LI)-4およびIL-13を介したシグナル伝達経路うに夜2型炎症反応(2型ヘルパーT(Th2)反応を含む)及びTh2細胞の活性化が重要な役割を果たすと考えられている。2型炎症反応による重度の掻痒に加え、活性化Th2細胞から産生されたサイトカインは、正常表皮分化過程を障害し、表皮最終分化タンパク質の発現を阻害することで、アトピー性皮膚炎における皮膚バリア欠損を惹起し、増大させると考えられている。
デュピルマブは、IL-4受容体のアルファサブユニット(IL-4Rα)に対するヒトIgG4モノクローナル抗体である。本剤は、IL-4受容体およびIL-13受容体を構成するIL-4Rαに結合し、IL-4及びLI-13を介したシグナル伝達を阻害することで、アトピー性皮膚炎に対する薬効が期待される。
IL-4及びLI-13を介したシグナル伝達を特異的に阻害するヒトIgG4モノクローナル抗体です。
海外ではすでに発売済みなので、日本国内では初めてのアトピー性皮膚炎に対する抗体医薬品となります。
アトピー性皮膚炎の治療に対しては、ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、シクロスポリンの内服などが行われますが、それに加わる新たな選択肢となりますね。
抗PD-L1抗体テセントリク点滴静注
- 成分名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
- 製品名
- テセントリク点滴静注1200mg
- 申請者:中外製薬
- 効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
- 用法・用量:通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。
- 製品名
- 成分名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
国内2番目の抗PD-L1抗体
部会の資料から抜粋します。
アテゾリズマブは、ヒトprogrammed cell death ligand-1(PD-L1)に対するIgG1サブクラスのヒト化モノクローナル抗体である。
PD-L1の細胞外領域に結合し、PD-L1とprogrammed cell death-1(PD-1)との結合を阻害すること等によりがん抗原特異的なT細胞の細胞障害活性を増強し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
がん免疫療法に用いる改変型抗PD-L1モノクローナル抗体です。
海外では承認済みです。
すでに発売されている抗PD-L1抗体にはバベンチオ点滴静注(成分名:アベルマブ(遺伝子組換え)、適応:メルケル細胞がん)がありますが、テセントリク点滴静注はそれに次ぐ2剤目の抗PD-L1抗体となります。
そのほか報告品目
今回の部会で報告品目としてあげられたものを列挙します。
アディノベイト静注用の適応拡大(平成29年11月30日に承認)
- 適応拡大:「血液凝固第8因子欠乏患者における出血傾向の抑制」に12歳未満の小児の用法・用量を追加
- 製品名:
- アディノベイト静注用250
- アディノベイト静注用500
- アディノベイト静注用1000
- アディノベイト静注用2000
- 成分名:ルリオクトコグ アルファペゴル(遺伝子組換え)
キイトルーダ点滴静注の適応追加(平成29年11月30日に承認)
- 適応追加:「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」
- 製品名:
- キイトルーダ点滴静注20mg
- キイトルーダ点滴静注100mg
- 成分名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
エタネルセプトBS皮下注用
- 効能・効果:
- 「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
- 「既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」
- 製品名:
- エタネルセプトBS皮下注用10mg「MA」
- エタネルセプトBS皮下注用25mg「MA
- エタネルセプトBS皮下注25mgシリンジ0.5mL「MA」
- エタネルセプトBS皮下注50mgシリンジ1.0mL「MA」
- エタネルセプトBS皮下注50mgペン1.0mL「MA」
- 成分名:エタネルセプト(遺伝子組換え)
- 一般名:エタネルセプト後続1