カロナール錠500mg発売~肝機能障害とカロナールの歴史

  • 2014年11月21日
  • 2021年1月17日
  • 新発売
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解熱鎮痛剤の中でも比較的安全性が高く、小児から大人まで使用可能、市販薬としても広く普及しているアセトアミノフェン。
医療用の製剤としてはカロナールが代表的です。
そんなカロナールシリーズにカロナール錠500mgが加わり、近々、販売開始になります。

カロナール錠500mgはすでに平成26年9月26日に製造承認を取得し、12月の上旬に販売開始となる予定です。

比較的弱い効果のイメージがあったカロナールですが、それは日本での用量の少なさのため、2011年からの用量拡大により、高用量ではがん性疼痛にも効果を発揮することが知られています。

現在、カロナールでは、成人の鎮痛(急性上気道炎以外)に対する用量が1回300~1000mgとなっています。
1回最大量である1000mgでの服用の場合、これまでは200mg錠を1回5錠服用していました。
500mg錠の発売で1回2錠で済むようになります。

2011年のカロナール用量拡大

2011年の用量拡大があるまで、カロナールの添付文書に記載された用法・用量は次のような内容でした。

通常、成人にはアセトアミノフェンとして、1回300~500mg、1日900~1500mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

しかし、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」には以下のように記載されていました。

WHO3段階除痛ラダー第1段階に使う非オピオイド製剤として、アセトアミノフェンを2400mg~4000mg/日程度が妥当な鎮痛量であり、肝機能障害に注意しながら4000mg/日まで増量が可能だと考えられている。また投与は1日4回程度に分けて行い、1回投与量が1000mgを超えないようにする。

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン:「1回1000mg、1日1500mg」
当時の用法・用量:「1回300~500mg、1日900~1500mg」
このように開きがあることを問題として、申請が行われた結果、用量の拡大が行われ、用法・用量は次のように変更されました。

通常、成人にはアセトアミノフェンとして、1回300~1000mgを経口投与し、投与間隔は4~6時間以上とする。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日総量として4000mgを限度とする。また、空腹時の投与は避けさせることが望ましい。

カロナールによる肝機能障害

アセトアミノフェンと言えば肝機能障害です。
アセトアミノフェンはシトクロムP450(CYP)2E1で代謝を受け、アセトアミドキノン(N-アセチルp-ベンゾキノンイミン)になります。
アセトアミノキドンはグルクロン酸抱合によりメルカプツール酸に無毒化されますが、グルクロン酸抱合が間に合わず、アセトアミドキノンが増加した場合、肝細胞内のたんぱく質や核酸に結合し、ダメージを与えてしまいます。
これがアセトアミノフェンによる肝機能障害の原因です。

アルコールが併用注意に挙げられているのは、アルコールの常飲により、CYP2E1が誘導された状態では、アセトアミノフェンからアセトアミドキノンへの代謝が亢進してしまい、肝毒性が強くなると考えられるためです。

また、アセトアミノフェンの服用量が増えることもアセトアミドキノンの増加につながりますが、過量投与による肝障害の発生について見てみると、

  • 小児:120~150mg/kg
  • 成人:150mg/kgまたは7.5g以上の摂取

となっています。
ですが、これはあくまでも急性の肝障害の発現に関するもので、4000mg/日を越す量を継続して使用すると肝障害のリスクは高まります。

汎用されるアセトアミノフェン製剤

医療用・市販薬の鎮痛解熱剤・総合感冒薬の多くに含まれるアセトアミノフェンは併用してしまうリスクも高い状態です。
一つの処方が問題のない用量でも、重複して服用することで、リスクは増してしまいます。
肝機能障害のリスクに加えて、併用の危険性も踏まえて、2011年の用量拡大に合わせて警告文が記載されました。

警告
(1)本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には、定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること。
(2)本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあることから、これらの薬剤との併用を避けること。

医療用のアセトアミノフェン製剤

現在承認されているアセトアミノフェン(APP)製剤をまとめてみます。(カロナール、一般名表記のもの以外)

配合剤
  • PL配合顆粒 APP:150mg/g(包)、600mg/day(4g)
  • サラザック配合顆粒 同上
  • セラピナ配合顆粒 同上
  • トーワチーム配合顆粒 同上
  • マリキナ配合顆粒 同上
  • ピーエイ配合錠 APP:75mg/錠、600mg/day(8錠)
  • 幼児用PL配合顆粒 APP:25mg/g(包)、100mg~300mg/day(4g~12g)
  • ペレックス配合顆粒 APP:150mg/g(包)、600mg/day(4g)
  • 小児用ペレックス配合顆粒 APP:25mg/g(包)、100mg~300mg/day(4g~12g)
  • SG配合顆粒 APP:250mg/g(包)、最大1000mg/day(4g)
  • カフコデN配合錠 APP:100mg/錠、600mg/day(6錠)
  • トラムセット配合錠 APP:325mg/錠、最大2600mg/day(8錠)
APP単剤
  • アトミフェンD.S.20%、アトミフェン錠200
  • アニルーメ細粒20%、アニルーメ錠200、アニルーメ錠300
  • アフロギス坐剤50、アフロギス坐剤100、アフロギス坐剤200
  • アルピニー坐剤50、アルピニー坐剤100、アルピニー坐剤200
  • アンヒバ坐剤小児用50mg、アンヒバ坐剤小児用100mg、アンヒバ坐剤小児用200mg
  • カルジール小児用シロップ2%、カルジール錠200
  • コカール小児用D.S.20%、コカール小児用D.S.40%、コカール錠200mg
  • サールツードライシロップ小児用シロップ2%、サールツー小児用D.S.20%、サールツー細粒20%、サールツー錠200mg
  • ナパ
  • パラセタ坐剤小児用50、パラセタ坐剤小児用100、パラセタ坐剤小児用200
  • ピリナジン末
OTC

市販されているものでは、総合感冒薬、解熱鎮痛剤の多くにアセトアミノフェンが使用されています。
代表的なものをあげてみます。

  • タイレノール A(武田=ジョンソン=東亜薬品) APP:300mg/錠
  • パブロン S(大正) APP:300mg/包
  • カゼリック顆粒(米田薬品) APP:270mg/包
  • グレランエース錠(あすか=武田) APP:50mg/錠
  • ベンザエース A(武田) APP:150mg/錠
  • セデス・ハイ (塩野義) APP:125mg/錠
  • サリドンエース(第一三共ヘルスケア) APP:110mg/錠
  • 新ルル‐A錠(第一三共ヘルスケア) APP:100mg/錠
  • 新セデス錠 APP:80mg/錠

これらの薬剤の併用をチェックすることはもちろん、現在服用していなくても、アセトアミノフェンが処方された患者さんに対しては、どのような薬に中止すべきか伝えておく必要があると思います。

一度は幻となったカロナール錠500mg

実は2011年の用量拡大の際に、カロナール錠500mgの承認も了承されていました。

2010年11月29日の薬食審・医薬品第二部会で用量拡大、適応追加(変形性関節症)とともに、500mgの承認了承。
ですが、2011年1月21日承認前の1月14日に米国FDAで、アセトアミノフェンを含む全ての処方薬に関して、1規格(1錠、1カプセル等)あたりの配合上限を325mgまでに制限する安全対策を講じられたため、日本でも325mgを越す規格の承認は見送りとなりました。
用量拡大に伴う警告の追加も、FDAの安全対策が講じられたことが一つの理由かと思います。

そんなカロナール500mg錠ですが、3年越しでようやく発売となります。

承認条件の削除とカロナール錠500mg承認

2011年の用量拡大の際、その承認には条件がありました。

承認条件
本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることから、協力の得られた高用量で長期投与を行う医療機関を対象に肝障害の発現状況を定期的に確認し、規制当局に報告すること。また、その発現状況等に変化が認められた場合は、必要な措置を講じるとともに、直ちに規制当局に報告すること。

特定使用成績調査を実施し、結果が提出され、2014年9月5日の薬食審・医薬品第二部会で承認条件を満たしていることが確認されたため、承認条件が添付文書から削除されました。
これにより、カロナール500mg錠の承認が認められ、2014年9月26日に晴れて承認となりました。

また、使用上の注意も改訂されています。
新たに次の項が追加になりました。

本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあることから、特に総合感冒剤や解熱鎮痛剤等の配合剤を併用する場合は、アセトアミノフェンが含まれていないか確認し、含まれている場合は併用を避けること。また,アセトアミノフェンを含む他の薬剤と併用しないよう患者に指導すること。

この文章により、2011年に加えられた警告文の更なる注意喚起が求められています。

米国では薬剤性肝障害のほとんどはアセトアミノフェンが原因とされています。
市販薬でも非常に手に入りやすい薬剤ですので、高用量の使用に際しては、併用に関する注意喚起が重要となることを意識しなければなりませんね。

カロナールの歴史

最後に、カロナールの歴史をまとめてみます。

1984年7月 カロナール細粒 発売開始(1982年3月3日承認、1984年6月2日薬価収載)
1987年10月 カロナール坐剤100 発売開始(1986年10月31日承認、1987年10月1日薬価収載)
1987年10月 カロナール坐剤200 発売開始(1986年10月31日承認、1987年10月1日薬価収載)
1996年7月 カロナール錠 販売開始(1996年3月14日承認、1996年7月5日薬価収載)
2000年5月 カロナールシロップ 発売開始(1999年12月14日承認、2000年5月12日薬価収載)
2003年7月9日 カロナール錠300mg 発売開始(2003年3月14日承認、2003年7月4日薬価収載)
2003年7月9日 カロナール細粒50% 発売開始(2003年3月14日承認、2003年7月4日薬価収載)
2004年7月 名称変更:カロナール細粒→カロナール細粒20%、カロナール錠→カロナール錠200mg(2003年7月1日承認、2004年7月9日薬価収載)
2005年6月 名称変更:カロナールシロップ→カロナールシロップ2%(2005年2月2日承認、2005年6月5日薬価収載)
2007年10月 カロナール細粒20%・同50%、カロナール錠200mg・同300mg 「小児科領域における解熱・鎮痛」の効能・効果と用法・用量の追加
2007年10月 カロナールシロップ2%、カロナール坐剤100・同200 「小児科領域における鎮痛」の適応ならびに体重1kgあたりの用量追加
2010年1月14日 カロナール坐剤小児用50 発売開始(2009年7月13日承認、2009年11月13日薬価収載)
2010年5月27日 カロナール原末 発売開始(2010年1月15日承認、2010年5月7日薬価収載)
2011年1月21日 カロナール原末、カロナール細粒20%・同50%、カロナール錠200mg・同300mg 「変形性関節症」の効能・効果追加承認、成人における用量拡大承認、警告の記載追加
2014年11月 カロナール錠200mg・同300mg、カロナール原末、カロナール細粒20%・同50%、カロナールシロップ2%、カロナール坐剤小児用50、カロナール坐剤100・同200 使用上の注意の改定、承認条件の削除
2014年12月 カロナール錠500mg 発売開始予定(2014年9月26日承認、2014年12月薬価収載?)

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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