タリージェ®︎錠が発売

  • 2019年4月15日
  • 2021年1月10日
  • 新発売
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2019年4月15日、第一三共はタリージェ錠の販売を開始しました。
リリカカプセル/OD錠(成分名:プレガバリン)と同じく電位依存性カルシウムチャネルα2δサブユニットリガンドとして作用することで神経障害性疼痛の症状を和らげます。
ただし、リリカが神経障害性疼痛の適応を有し、中枢性・末梢性のいずれに対しても使用できるのに対して、タリージェは末梢性神経障害性疼痛に対する適応しか持っていないため、中枢性のものに対しては保険上使用することができないので注意が必要です。
発売に際して、使用上の注意の解説が更新されているのでその内容と合わせて改めてまとめてみようと思います。

タリージェ錠

概略については過去記事にまとめています。

  • 医薬品名と薬価
    • タリージェ錠2.5mg:78.00円/錠
    • タリージェ錠5mg:107.70円/錠
    • タリージェ錠10mg:148.70円/錠
    • タリージェ錠15mg:179.60円/錠
  • 成分名:ミロガバリンベシル酸塩
  • 製造販売元:第一三共
  • 効能・効果:末梢性神経障害性疼痛
  • 用法・用量:通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与する。
  • 1日薬価:297.4〜359.2円

電位依存性カルシウムチャネルα2δサブユニットに結合することで、神経障害性疼痛に大きく関わるサブスタンスPやグルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制し、神経障害性疼痛に対して効果を発揮します。

「使用上の注意」の解説

「使用上の注意」の解説について詳しく読んでみます。

適応と効果

効能・効果は「末梢性神経障害性疼痛」です。
日本を含むアジア第III相二重盲検試験でその効果が確認されています。
「糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者」に対しては、ミロガバリン30mg/日投与群でプラセボ群に対して有意な効果が確認されています。
「帯状疱疹後神経痛患者」に対しては、ミロガバリン15mg/日・20mg/日・30mg/日投与群でプラセボ群に対して有意な効果が確認されています。

用法・用量

用法・用量
通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与する。
引用元:タリージェ錠 添付文書

上記の効果と忍容性を元に用法・用量が決定されていますが、糖尿病性末梢神経障害性疼痛の場合は30mg/日まで用量をあげないと効果は十分な効果は期待できそうにないですね。

リリカもそうですが、副作用を気にするあまり十分な用量まで増量されずに様子を見たままになっているケースが多いのでそこは注意したいですね。

腎機能障害時の用量調節

■腎機能障害患者における用量調節
腎機能障害者を対象にした臨床薬理試験において、ミロガバリンのAUClastは正常腎機能者と比べ、中等度腎機能障害者及び重度腎機能障害者でそれぞれ1.90倍及び3.64倍であったことから、中等度腎機能障害患者及び重度腎機能障害患者では正常腎機能患者での1日投与量の1/2量及び1/4量を投与すれば、定常状態においてほぼ同程度のAUC0-24h,ssが得られると考えられました。
引用元:タリージェ錠2.5mg・錠5mg・錠10mg・錠15mg 新医薬品の「使用上の注意」の解説

中等度腎機能障害患者では15mg(7.5mg 1日2回)、重度腎機能障害患者では7.5mg(7.5mg 1日1回)を固定用量期(12週間)の用法・用量としました。漸増期は、中等度腎機能障害患者では2.5mg1日2回で1週間投与した後、5mg 1日2回投与、重度腎機能障害患者では2.5mg 1日1回で1週間投与した後、5mg 1日1回投与としました。 その結果、忍容性は良好で、腎機能障害の程度によらず有効性が認められました。
引用元:タリージェ錠2.5mg・錠5mg・錠10mg・錠15mg 新医薬品の「使用上の注意」の解説

クレアチニンクリアランが60mL/min以上であれば通常量での使用が可能です。

  • Ccr≧60:5mg/回 1日2回→(1週間)→10mg/回 1日2回(最低用量)→(1週間)→15mg/回 1日2回(推奨用量)
  • 60>Ccr≧30:2.5mg/回 1日2回→(1週間)→5mg/回 1日2回(最低用量)→(1週間)→7.5mg/回 1日2回(推奨用量)
  • 30>Ccr:2.5mg/回 1日1回→(1週間)→5mg/回 1日1回(最低用量)→(1週間)→7.5mg/回 1日1回(推奨用量)

Ccr60未満は高齢者であれば普通なので用量調節についてはしっかりチェックしたいですね。
(リリカでもこの厳しさが低用量での漫然投与につながっているのだと思うのですが・・・)

採用する規格は?

タリージェ錠には4つの規格が存在します。

  • 2.5mg
  • 5mg(割線あり)
  • 10mg(割線あり)
  • 15mg(割線あり)

ひとまず5mgがあれば全て事足りそうですね。
あとは使用される用量を見てから採用を増やしていければいいのではないかと思います。
(処方医との相談が必要とは思いますが)

とMRさんからの勧めもあって思っていたのですが、微妙ですね。
インタビューフォームの過酷試験の結果を見ると、分包した状態での安定性に疑問が残ります。
40°C/75%RH、シャーレ解放の条件下で、

  • 2.5mg・5mg・10mg:3日時点で類縁物質増加(規格外)、含量低下(規格外)
  • 15mg:3日時点で類縁物質増加(規格外)、7日時点で含量低下(規格外)

となっています。
温度条件(60℃)の場合は4週時点で類縁物質増加(規格外)、
湿度条件(25°C/93%RH)の場合は2.5mg・5mg・10mgが2週時点で類縁物質増加(規格外)、15mgが4週時点で類縁物質増加(規格外)
となっていることから温度・湿度両方が高い場合、特に湿度による影響を受けやすいことが想像できます。
2.5mgの頻度が少なく、新薬投与制限の14日分であれば、乾燥剤をつけて保存でいけないことはないかな・・・とは思いますが、分包していいとは言えませんね。どうするかなあ・・・?
ちなみにMRさんは「14日間であれば大丈夫です!」と言ってくれましたが、根拠を聞くと明確な答えはしてくれませんでした・・・。

2019.4.16追記
MRさんの持参した資料によると、5mgの半錠は25℃75%で2週間は安定だが4週間で類縁物質が明確に増加し規格外に。
半割は積極的に進めてはいないが2週間であればこういうデータがありますよ、とのこと。
じゃあ、なんで割線つけたんだ。。。

使用上の注意

使用上の注意についてみていきます。

慎重投与

慎重投与はリリカより少なく2項目のみです

  • 腎機能障害のある患者
  • 高齢者

腎機能障害については用量調節で考慮されていれば大丈夫です。
高齢者についても当然ですね。

重要な基本的注意

重要な基本的注意

  1. めまい、傾眠、意識消失等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。特に高齢者ではこれらの症状により転倒し骨折等を起こすおそれがあるため、十分に注意すること。
  2. 本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加又は長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
  3. 本剤による神経障害性疼痛の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、疼痛の原因となる疾患の診断及び治療を併せて行い、本剤を漫然と投与しないこと。
  4. 本剤の急激な投与中止により、不眠症、悪心、下痢、食欲減退等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
  5. 本剤の投与により、弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害があらわれることがあるので、診察時に、眼障害について問診を行うなど注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

引用元:タリージェ錠 添付文書

体重増加はリリカにも見られる特徴的な副作用ですが、日本を含むアジア第III相二重盲検試験では平均して2kgの増加がみられたようです。
徐々に減量することについては、日本を含むアジア第III相二重盲検試験では報告はありませんが、日本を含むアジア第III相非盲検長期投与試験において、離脱症候群が0.4%(2/451例)で報告されているのと、投与中止後に、不眠症、 悪心、下痢、食欲減退等の有害事象が報告されていることによります。

相互作用

トランスポーターを介した相互作用が存在しますが、併用禁忌はありません。

ミロガバリンは主要なヒトCYP分子種の阻害・誘導はありません。
ミロガバリンの分泌に関わる主なトランスポーターは、有機アニオントランスポーター (OAT*1)1 、OAT3 、H+/有機カチオンアンチポーター(MATE*2)1 及び MATE2-Kです。
また、UDPグルクロン酸転移酵素(UGT*3)による代謝も受けます。

併用注意
  • プロベネシド(ベネシッド):OAT1、OAT3、UGT阻害作用によりミロガバリンの血中濃度上昇(Cmax 29%上昇、AUClast 76%上昇)
  • シメチジン(タガメット):MATE1及びMATE2-K阻害作用によりミロガバリンの血中濃度上昇(Cmax 17%上昇、AUClast 44%上昇)
  • ロラゼパム(ワイパックス)・アルコール(飲酒):相互に中枢神経抑制作用を増強

副作用

重大な副作用は以下の通りです。

4 .副作用
(1)重大な副作用

  1. めまい(頻度不明)、傾眠(頻度不明)、意識消失(0.1%未満):めまい、傾眠、意識消失があらわれ、転倒し骨折等を起こすおそれがあるので、観察を十分に行い、 異常が認められた場合には投与を中止又は減量するなど適切な処置を行うこと。
  2. 肝機能障害(頻度不明):AST(GOT)、ALT(GPT)上昇等の肝機能障害があらわれることがあるので、観察 を十分に行い、全身倦怠感や食欲不振等の初期症状を含む異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:タリージェ錠 添付文書

めまい

日本を含むアジアで実施した糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者及び帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床試験での合計をまとめます。

  • 浮動性めまい:142/1,407例
  • 体位性めまい:6/1,407例
傾眠

日本を含むアジアで実施した糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者及び帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床試験での合計をまとめます。

  • 傾眠:217/1,407例
  • 過眠症:1/1,407例
  • 疲労:2/1,407例
意識消失

日本を含むアジアで実施した糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者及び帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床試験での合計をまとめます。

  • 意識消失:2/1,407例

このうち1件は重篤なもので入院を要したようです。

肝機能障害

日本を含むアジアで実施した糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者及び帯状疱疹後神経痛患者を対象とした臨床試験での合計をまとめます。

  • 肝機能異常:4/1,407例
  • 脂肪肝:1/1,407例
  • アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加:6/1,407例
  • アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加:4/1,407例
  • 血中ビリルビン増加:1/1,407例
  • γ – グルタミルトランスフェラーゼ(GTP)増加:3/1,407例
  • 肝機能検査異常:2/1,407例
  • 血中アルカリホスファターゼ(ALP)増加:2/1,407例
  • 肝酵素上昇:5/1,407例

2例3件で重篤な副作用(ALT増加、AST増加)が認められたようです。

そのほかの副作用

そのほかの副作用として注意したいのは、慎重投与にある項目ですね。

  • 体重増加
  • 不眠症
  • 悪心
  • 下痢
  • 食欲減退
  • 眼障害(弱視、視覚異常、霧視、複視)

高齢者・妊婦・授乳婦・小児

高齢者に対しては腎機能の低下や副作用発現時の影響の大きさが想定されるため、腎機能を元にした用法・用量の調節をしっかり行う必要があります。

妊婦・授乳婦についてはほとんどデータがありませんが、ラットにおいて胎盤通過・乳汁中への移行が報告されているため、妊婦については有益性投与、授乳婦については授乳を避けると記載されています。

小児については使用経験がありません。

過量投与

海外臨床試験で線維筋痛症に対して60mg投与を行なった例があるようです。
過量投与時にみられた症状は以下の通りです。

  • 多幸気分
  • 構語障害
  • 頭痛
  • 嚥下障害
  • 関節炎
  • 関節膨張
  • 無力症

※線維筋痛症に対する投与は適応外です

もし、起こってしまった場合、血液透析により15.3%が除去されるようなのでそれを参考に対応するしかないですね。

その他の注意

日本を含むアジア第II相及び第III相二重盲検試験において以下の報告があるので参考までに。

  • 自殺既遂:1/1,227例
  • 自殺念慮:2/1,227例
  • 死亡:2/1,227例

死亡については、冬季の浴室での発現、あるいは突然死のリスクとなる心血管系疾患を合併していた患者のようです。

まとめ

個人的な感想としては急いで採用する薬ではなと考えています。
理由としては、

  • 14日間の新薬投与制限
  • 海外での使用実績がないためデータが不十分
  • リリカとの直接比較試験が行われていない
  • リリカを十分な用量で使用できていない症例がまだ多く存在する

といったところでしょうか。

リリカをどうしても使用できないケースであればタリージェに挑戦してみる価値はあると思いますが、あくまでも選択肢の1つです。
もっと明確なデータがないと厳しいかなとは思いますが、こればっかりは処方する医師の判断になるので・・・。
ただ、リリカと比較して悪い薬ではなく、良い薬剤である可能性は十分に秘めていると思います。
これに実績がつけば・・・といったところですね。

*1:Organic Anion Transporter

*2:Multidrug And Toxin Extrusion

*3:Uridine diphosphate Glucuronosyl-Transferase

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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