昨日に引き続き、C型肝炎についてです。
今日はC型肝炎の治療において重要なジェノタイプ(genotype/遺伝子型)についてです。
先日発売された第二世代のプロテアーゼ阻害剤ソブリアードカプセル(一般名:シメプレビルナトリウム)も「ジェノタイプ1型」慢性C型肝炎治療薬ですよね。
今日はC型肝炎の種類、ジェノタイプならびにセロタイプ(serotype/血清型)とその違いについて復習したいと思います。
C型肝炎ウイルス(HCV:hepatitis C virus)キャリアと判断された場合、将来の肝硬変や肝臓がんの発症を抑制するために治療を行っていきます。
診断に関しては前回の記事を参照してください。
C型肝炎ウイルスの検査 – 薬剤師の脳みそ
その際に使用されるインターフェロン(IFN)の効果予測のために、HCVの型を把握しておくことが重要です。
ジェノタイプ(遺伝子型)とは?
HCVの遺伝子つまりは塩基配列による分類がジェノタイプです。
国際的には1~6の6群に分けられ、さらに1a型、1b型、1c型、2a型、2b型、2c型、3a型、3b型、4型、5a型、6b型(サブタイプ)に分類されています。
Okamotoの分類
日本では国内研究者(Okamotoの分類)による分類であるⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型、Ⅵ型も使用されています。
ジェノタイプの国際分類とOkamotoの分類は以下のように合わせられます。
- Ⅰ型:1a型
- Ⅱ型:1b型
- Ⅲ型:2a型
- Ⅳ型:2b型
- Ⅴ型:3a型
- Ⅵ型:3b型
HCV ジェノタイプの地域差
ウイルスの感染・流行により、国ごとにどのジェノタイプが多いかが異なります。
日本では1b型が70%を占め、続いて2a型(20%)、2b型(10%)が多いです。
アメリカでは1a型が、ヨーロッパでは1a型と3a型という風に国ごとにサブタイプが異なります。
サブタイプにより治療の抵抗性などが異なりますが、日本で多くみられる1b型は治療の中心となるインターフェロンに抵抗性を示します。
塩基配列の測定は複雑で費用が高くなるため保険適応ではなく、病院などで一般的に検査を受けるのは難しいのが欠点です。
セログループ(血清型/セロタイプ)
セログループ(serogroup)とも言います。
ジェノタイプの違いによりHCVが作り出すタンパク質も異なります。
血清中に含まれるそのタンパク質に対する抗体の違いから分類したのがセロタイプです。
遺伝子型に比べて検査が簡便なため、安価で保険適応が認められています。
ですので、ほとんどの型が病院で検査を受けて判別されるのがセロタイプです。
HCV抗体の中でも日本人の陽性率が高いC14抗体により分類され、1群(1グループ)と2群(2グループ)に分けられます。
セログループとジェノタイプ
セログループ1にはジェノタイプ1a、1b、1cが含まれ、セログループ2は2a、2b、2cのサブタイプが含まれます。
- セログループ1
- ジェノタイプ1a
- ジェノタイプ1b(日本人70%)
- ジェノタイプ1c
- セログループ2
- ジェノタイプ2a(日本人20%)
- ジェノタイプ2b(日本人10%)
- ジェノタイプ2c
- セログループ該当なし
- ジェノタイプ3a
- ジェノタイプ3b
血清型検査と遺伝子型検査の相違
セログループ(血清型)とジェノタイプ(遺伝子型)の判定は90%以上が一致します。
ですが、数%の人はC14抗体を保有していないので、その場合は陰性(判定不能)となってしまう場合があります。
また、1グループ、2グループともに陽性となってしまって判定保留なる場合もあります。
判定不能と判定不良をあわせると5~10%くらいです。
ウイルス量が多い場合などは特にジェノタイプの判別が治療方針の決定に重要なので、不明な場合はジェノタイプの検査を受けた方がいい場合もあります。