ゾフルーザの特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【1回飲み切りのインフルエンザ治療薬】

平成30年2月23日、新規作用機序を持つインフルエンザ治療薬ゾフルーザ(成分名:バロキサビルマルボキシル)が承認されました。
この薬は先駆け審査指定制度の対象となっており、平成29年10月25日の申請からわずか4カ月での承認です。

ゾフルーザについては一般の方からのアクセスが多いので、今回の記事はいつも以上にわかりやすさを意識して書いてみようと思います。

異例の緊急薬価収載!

つい先日、部会で承認が了承されたばかりでしたが、さすが先駆け審査指定を受けているだけあり、すぐに承認、薬価収載までされてしまいましたね。

当初は5月に発売と報道されましたが、インタビューフォームを見ると3月からの発売を想定していることがわかりました。
実際、平成30年3月7日の中医協で3月14日付での薬価収載が決定しました。
薬価収載後即販売という事なので3月中に発売開始となりそうです。
これはこれで塩野義は製造が大変そうですね。
嬉しい悲鳴なのかな?

気になる薬価は?

気になる薬価ですが、やはりイナビルより少し高めになりました。

  • ゾフルーザ錠10mg:1507.50円
  • ゾフルーザ錠20mg:2394.50円

成人80kg未満の場合、1日薬価は4789.00円です。
80kg以上の場合は9578.00円!
ちなみにイナビルの薬価は2139.90円で成人1日薬価は4279.80円です。

色々気になること

異例の緊急薬価収載ということで色々疑問もあります。

緊急薬価収載の理由は?

ゾフルーザが緊急収載されたのはやはり先駆け審査指定制度の対象だからかと思いましたが、それは関係ないそうです。
厚生労働省によると「先駆け審査指定制度の対象品目だから必ず緊急収載するのではなく、ゾフルーザについてはインフルエンザの特徴を考慮して薬価収載を前倒しした」ということです。

薬価改定は?

3月の発売ということで、1ヶ月を待たずに薬価改定を迎えることになりますが、ゾフルーザも薬価改定の対象となるようです。
ですが、実際にどのような計算に基づいて薬価改定が行われるかは明らかにされていません。

世界初!1回飲みきりのインフルエンザ治療薬

まずは、ゾフルーザの特徴について簡単にまとめます。
今回承認されたゾフルーザ錠は世界初の有効成分、世界初の作用機序を持つインフルエンザ治療薬です。
一番の特徴は1回飲むだけで治療が終了するということです。
これまでの薬剤では1回吸入(イナビル吸入粉末剤:1回につき2〜4吸入必要)するだけ、1回点滴を受けるだけ(ラピアクタ点滴静注)というものはありましたが、飲み薬で1回で治療終了という薬は存在しませんでした。

名前の由来

ゾフルーザ。
めっちゃ強そうな名前ですが、命名の理由は医薬品インタビューフォームに記載されています。

Ⅱ.名称に関する項目
1.販売名
(3)名称の由来:XO(ノックアウト、~がない)+influenza=Xofluza

ということです。

世界初の作用機序を持つ薬

ゾフルーザの有効成分であるバロキサビルマルボキシルは塩野義製薬が世界で初めて発見し、医薬品化した物質です。
これまでのインフルエンザ治療薬とは異なる作用により、インフルエンザウイルスの増殖そのものを抑えることができる医薬品です。
(現在、日本で使用されているインフルエンザ治療薬のほとんどはインフルエンザウイルスの増殖自体を押さえることはできません)

小児にも使用可能

また、成人だけでなく小児にも使用可能というのがゾフルーザの特徴です。
イナビルやラピアクタも小児に対して使用可能ではありましたが、

  • イナビル:小児にとって吸入は難しいことがある
  • ラピアクタ:15分以上かけて点滴を行う必要があるので感染拡大の問題から使用が難しいケースがある

などの問題がありました。
タミフルには小児用のドライシロップが存在し、新生児にも使用可能ですが、1日2回5日間の服用が必要で、異常行動の報道のイメージが強気ため、保護者の方が拒否反応を示したり、不安感を持つ場合もあります。

ゾフルーザは体重10kgを越えれば小児でも使用可能なため、錠剤が苦手な場合でも1回だけ頑張って飲めばそれで治療が終了というのは大きなメリットだと思います。

ゾフルーザはどのようにしてインフルエンザウイルスに効果を発揮するのか?

ゾフルーザはどのようにして人の体の中でインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができるのか?
できるだけ簡単にまとめてみようと思います。

インフルエンザはどのように増殖する?

まずはこの画像を見てください。
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これはインフルエンザウイルスが人の細胞に侵入し、増殖して、細胞の外に放出されていく流れを示したものです。

  1. インフルエンザウイルスは人の細胞膜にくっつく(吸着)ことで侵入を開始します
  2. 細胞の中に侵入したインフルエンザウイルスは自分の殻を破り(脱殻)自身のRNAを含む複合体(RNP複合体:ウイルスリボ核タンパク質複合体)を放出します
  3. インフルエンザウイルスのRNP複合体はさらにヒト細胞の核内に入り込みます
  4. 核内でヒトmRNA前駆体(Pre-mRNA)を見つけるとキャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素を使ってキャップ構造と呼ばれる部分を切り取ります
  5. ヒトPre-mRNAのキャップ構造を利用してRNAの転写を行い、自身を合成・複製していきます
  6. 増殖したインフルエンザウイルスは細胞から外に出ていきます
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

ゾフルーザの作用を理解する上で一番大事なのは先ほどの説明の4の部分です。
インフルエンザウイルスはヒト細胞mRNA前駆体のキャップ構造と呼ばれる部分の力を借りないと増殖を開始することができないんです。
そのために必要となるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの働きを邪魔してしまえばインフルエンザは増殖することができないと考えて作られたのがゾフルーザです。
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図のように、キャップ依存性エンドヌクレアーゼの働きを阻害することでゾフルーザはインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。
そのため、ゾフルーザの有効成分であるバロキサビルマルボキシルはcap依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤と呼ばれています。

ちなみに、ゾフルーザの成分であるバロキサビルマルボキシルはそのまま効果を発揮するわけではありません。
体内に吸収される過程で、小腸、血液、肝臓中のエステラーゼという酵素によって加水分解されて活性体となってから全身に移行します。

もっと詳しく、正確に知りたい方は塩野義製薬のホームページに動画が公開されています。
ゾフルーザの作用機序(shionogi.co.jp)

他のインフルエンザ治療薬の作用機序

ゾフルーザの作用と他のインフルエンザ治療薬の作用を比較するために、他のインフルエンザ治療薬の作用機序をまとめてみます。

  • ノイラミニダーゼ阻害薬:
    • タミフルカプセル・タミフルドライシロップ(成分名:オセルタミビルリン酸塩)
    • リレンザ(成分名:ザナミビル水和物)
    • ラピアクタ点滴静注(成分名:ペラミビル水和物)
    • イナビル吸入粉末剤(成分名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)
  • M2タンパク阻害薬:シンメトレル錠・シンメトレル細粒(成分名:アマンタジン) ※A型インフルエンザのみ
  • RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬:アビガン錠(成分名:ファビピラビル) ※緊急時のみの製造となっており実際には使用されていない
  • cap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬:ゾフルーザ錠(成分名:バロキサビル マルボキシル)

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ノイラミニダーゼ阻害剤

現在、日本で使用されているインフルエンザ治療薬のほぼ100%がこの作用を持つ薬です。
インフルエンザがヒト細胞内で増殖した後、細胞外に放出していくのを阻害する薬です。
細胞内で増殖したインフルエンザウイルスは人の細胞膜の表面にくっつく形で現れますが、インフルエンザウイルスはノイラミニダーゼという酵素を使って自信をヒト細胞膜から切り離し広がっていきます。
そのノイラミニダーゼの働きを阻害することで、インフルエンザウイルスが他の細胞に広がっていくのを防ぎます。

M2タンパク阻害剤

人の細胞内に侵入したインフルエンザウイルスは脱殻して自身の情報(RNP複合体)を放出します。
この脱殻において重要な役割を果たしているのがM2蛋白質です。
M2タンパク阻害剤はその働きを阻害することでインフルエンザウイルスの脱殻を防ぎ、インフルエンザウイルスの増殖を抑制します。
ただし、アマンタジンはインフルエンザウイルスA型の持つM2タンパクにしか結合できず、B型インフルエンザウイルスには効果を発揮することができません。
また、ここ数年、A型インフルエンザウイルスのほぼ100%がアマンタジンに対して耐性を持っていることが報告されているため、ほとんど使用されていません。

RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤

cap依存性エンドヌクレアーゼの働きにより、Pre-mRNAのキャップ構造を奪い取った後、RNAの転写や複製を行うのがRNA依存性RNAポリメラーゼです。
この働きを阻害するのがRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤でファビピラビル(医薬品名:アビガン)のみが承認されています。
ですが、ファビピラビルには催奇形性が報告されているため、鳥インフルエンザウイルスなど新型インフルエンザのパンデミック(大流行)が会った時のみの製造とされており、現段階では使用されていません。
アビガンについては過去に詳しくまとめているのでこちらも参考にしていただければ幸いです。

気になるのは安全性

これまでにない作用機序を持ち、さらに世界で初めて承認されたということで、気になるのはやはり安全性です。
添付文書、インタビューフォームなどから臨床試験の結果を読み解いてみます。

非常に少ない副作用

まずは、皆さん一番気になるであろう副作用です。
添付文書から副作用の項を抜粋します。

副作用等発現状況の概要

  • 成人及び12歳以上の小児を対象とした臨床試験における安全性評価対象例910例中、臨床検査値の異常変動を含む副作用は49例(5.4%)に認められた。主なものは、下痢12例(1.3%)、ALT(GPT)増加8例(0.9%)であった。(承認時)
  • 12歳未満の小児を対象とした臨床試験における安全性評価対象例105例中、臨床検査値の異常変動を含む副作用は4例(3.8%)に認められた。主なものは、下痢2例(1.9%)であった。(承認時)

ここに記載されていないものでは頭痛(1%未満)があるのみです。
異常行動については報告されていないようです。

下痢が少し多いですが、副作用はほとんどないと言ってもいいくらいですね。
発売されて使用が進まないとわかりませんが、承認段階としては非常に少ない副作用と言えます。

異常行動については変わらぬ注意を

ゾフルーザの臨床試験では異常行動の報告はありません。
タミフルによって有名になった異常行動の副作用ですが、未成年者の場合、異常行動はインフルエンザ治療薬の有無に関わらず注意が必要です。
それはゾフルーザでも変わらず、以下のように記載されています。

重要な基本的注意

  1. 因果関係は不明であるものの、抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神・神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状があらわれるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

 

禁忌や慎重投与、相互作用は?

安全性で気になるその他の部分についても見ていきます。

禁忌

禁忌については過敏症のみです。

禁忌
(次の患者には投与しないこと)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

慎重投与

また、慎重投与も肝機能障害に対してのみです。

慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
重度の肝機能障害のある患者[使用経験がない。]

ゾフルーザは主に糞中に排泄されるので、肝機能異常による影響が気になるところです。
臨床試験では少数ではありますが、肝機能異常者への影響が検討されたようです。

中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B)及び肝機能正常者各8例にバロキサビル マルボキシル40mgを空腹時単回経口投与したとき、中等度肝機能障害患者でのCmax及びAUC0-infは、肝機能正常者のそれぞれ0.80倍及び1.1倍であった。

この結果を見る限りではほとんど影響は出ていませんね。

相互作用

併用注意・併用禁忌ともに記載はありません。
ですが、In vitro試験の結果が掲載されています。

  • バロキサビルマルボキシル:P-糖蛋白の基質、弱いCYP2B6・CYP2C8・CYP3A阻害作用、P-糖蛋白阻害作用
  • バロキサビルマルボキシル活性体:P-糖蛋白の基質、弱いCYP2B6・CYP3A阻害作用、P-糖蛋白阻害作用、BCRP阻害作用(※)

相互作用に詳しい人であればこの内容を見ると少し不安になるのですが、臨床試験で影響が検討されています。

  • バロキサビルマルボキシル活性体
    • イトラコナゾール(P-糖蛋白阻害剤):Cmax 1.33倍、AUC 1.23倍
    • プロベネシド(UGT阻害剤):Cmax 0.79倍、AUC 0.75倍
  • バロキサビルマルボキシル
    • ミダゾラム(CYP3A基質):Cmax 1.00倍、AUC 0.99倍
    • ジゴキシン(P-糖蛋白基質):Cmax 1.00倍、AUC 0.86倍
    • ロスバスタチン(BCRP基質):Cmax 0.82倍、AUC 0.83倍

確かに、問題となるレベルの変化は見られないですね・・・。

飲み方と効果は?

服用方法と効果についてのデータを見てみます。
ちなみに、タミフルやイナビルとは違って予防投与については認められていません。

体重が大きい方は高くなるかも?

用法・用量

  1. 通常、成人及び12歳以上の小児には、20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)を単回経口投与する。ただし、体重80kg以上の患者には20mg錠4錠(バロキサビル マルボキシルとして80mg)を単回経口投与する。
  2. 通常、12歳未満の小児には、以下の用量を単回経口投与する。
    • 40kg以上:20mg錠2錠(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
    • 20kg以上40kg未満:20mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして20mg)
    • 10kg以上20kg未満:10mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして10mg)

小児は10kgを越えれば服用可能ということになりますね。
あとは錠剤を飲めるかどうかです。
ゾフルーザ錠10mgの直径5mm・厚さ2.65mmの円形の錠剤なのでそんなに大きくはないですが、子供にとってはどうか?と言ったところですね。

成人について気になるのは体重80kg以上の場合。
20mgを4錠服用ということになっています。
ゾフルーザ錠20mgの薬価は2394.50円。
成人標準量の20mg 2錠(4789.00円)でイナビル(2キット:4279.80円)より少し高い値段です。
20mg 4錠となると9578.00円・・・・。
薬剤料だけで9,580円となるので薬局での支払いは3割負担で3,000円を軽く超える計算になります。
これは高い・・・。

空腹時の方が吸収がいい?

14例ではありますが、食事の影響が検討されています。

健康成人男性に、バロキサビル マルボキシル40mgを空腹時(14例)又は普通食摂取後(14例)に単回経口投与したときのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータを表1に、平均血漿中濃度推移を図1に示す。空腹時投与と比べ食後投与でCmaxは48%、AUCは36%減少した。Tmaxの中央値はいずれも4時間であった。

食後だと結構下がっていますよね・・・。
これは食事に含まれる2価の金属イオンとキレートを形成し、吸収できなくなるためとのことです。
錯イオンを形成する性質によってcap依存性エンドヌクレアーゼの活性中心に入り込むのでしょうね。
効果については食後服用でも十分トラフ値を超えるので問題ないようです。
つまり、すぐ飲んだ方がいいよということなんだと思います。
でも、耐性を考えると個人的には空腹時を進めたいなー。

タミフルと同等の効果

主要評価項目はインフルエンザ罹病期間で、成人を対象とした試験が行われています。
その結果、インフルエンザ罹病期間は、

  • ゾフルーザ服用:53.7時間(中央値)
  • プラゼボ:80.2時間(中央値)

となっており、ゾフルーザを服用することでインフルエンザ罹病期は有意に短くなっています。
また、タミフル(オセルタミビル)との比較試験も行われており、効果に有意差はなく、同等の効果を発揮することがわかっています。

ゾフルーザは感染防止に効果あり?

副次評価項目の中で興味深いのがウイルス排出期間に関する検討です。
ゾフルーザ服用後24時間(中央値)でインフルエンザウイルスの排出が停止されており、これはタミフル(オセルタミビル)の72時間(中央値)よりも優位に短くなっています。

あくまでも副次評価項目ではありますが、感染拡大をいち早く食い止める効果が期待されますね。
ただ、まあ、だからと言って、ゾフルーザ飲んだらすぐ出社・登校していいよとはならないですよね。
ゾフルーザでもタミフルでも休む期間は同じですね。

販売開始はいつになる?

ゾフルーザがいつ発売されるのか気になる人は多いと思います。
これについては@IPL_editorsさんから情報をいただきました。
ゾフルーザ インタビューフォームの31ページに下記の記載があります。
ゾフルーザ インタビューフォーム

  • (6)治療的使用
    • 1)使用成績調査・特定使用成績調査(特別調査)・製造販売後臨床試験(市販後臨床試験):該当資料なし
    • 2)承認条件として実施予定の内容又は実施した試験の概要:医薬品リスク管理計画により以下の調査が予定されている。
      1. 使用成績調査
        • 【目的】使用実態下における本剤の安全性及び有効性に関する情報を収集する。
          1. 【実施計画】
            • 実施期間:2018年3月〜2019年3月(1年1ヵ月間)
            • 目標症例数:3000 例[12歳未満の小児を480例(うち、6歳未満を120例目安)、高齢者を 150 例]
            • 実施方法:連続調査方式
            • 観察期間:本剤の投与開始から7日間

ただ、3月に薬価収載となってもすぐ販売開始、フルに流通というわけにはいかないんじゃないかとも思います。
製造が追いつくのかなあ?

まとめ

今話題の新インフルエンザ治療薬ゾフルーザについてまとめてみました。
新しい作用機序、手軽な副作用、効果に副作用の少なさといいことづくめの薬に見えますね。
とは言っても、世界で初めて、全くの新規有効成分なので、使用経験が非常に乏しい薬です。
なので、発売後に臨床試験では見られなかった副作用が発見されたり、新たな問題が発覚する可能性はゼロではありません。
テレビや新聞、ニュースサイトでも報道されているので、「ゾフルーザを出してください」と病院で訴える患者さんが増えるような気がして少々不安です。
あくまでも、症状を改善する効果はタミフルと同等です。
ウイルスの消失がタミフルよりかなり早いというデータはありますが、過剰な期待を持ちすぎないようにお願いしたいところではあります。
自分は来シーズンにインフルエンザになったら、タミフルのジェネリック(オセルタミビル「サワイ」)を使いたいかなあ、安いでしょうし。

耐性の懸念

むやみに使って欲しくない理由として耐性化の懸念もあります。
現段階では新規作用機序で、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤に対して体制を持ったインフルエンザウイルスに対して効果を発揮できることが期待されています。
ですが、ゾフルーザの使用が増えればそれに対する耐性を持つインフルエンザウイルスを増えてしまいます。
実際に、このようなデータが記載されています。

薬効薬理

  1. 耐性:12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験において、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった77例中18例(いずれもA型インフルエンザウイルス感染症患者)にバロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38のアミノ酸変異が認められた。成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験において、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった370例中36例(A型インフルエンザウイルス感染症患者)にI38のアミノ酸変異が認められ、そのうち1例はA型及びB型インフルエンザウイルスの重複感染患者で、両型においてI38のアミノ酸変異が認められた。また、いずれの臨床試験においても、本剤投与中にI38のアミノ酸変異を検出した患者集団では、本剤投与から3日目以降に一過性のウイルス力価の上昇が認められた。なお、成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験の本剤が投与された患者で認められたI38のアミノ酸変異の有無別のウイルス力価の推移は図5のとおりであった。

事実、臨床試験でも一定の割合で耐性化ウイルスが出現しているようです。
その場合、インフルエンザウイルス力価が消失するまでの期間はプラセボよりも長くなってしまっています。
耐性化を防ぐための一つの方法が空腹時服用かもしれませんが、むやみやたらに使用しないのが一番の方法です。

最後に

3月からの販売は製造が間に合わないだろうと思っていましたが、薬価収載後すぐの発売を予定ということなので、3月中にゾフルーザは発売されそうですね。
ゾフルーザの登場で来シーズンのインフルエンザ治療がどうなるのか?

今シーズンまではイナビルが主流でした。
薬局で吸入指導を行い、その場で吸って帰ってもらうケースがほとんどかと思います。
その場合、気になるのは薬局内の他の患者さん、薬局スタッフへの感染です。
吸入薬の性質上、特に指導を行う薬剤師はウイルスの暴露を受けてしまいます。
そういったリスクを減らすためには内服薬による治療が望ましいのかもしれません。

ですが、繰り返しになりますが、ゾフルーザによるインフルエンザ治療期間の短縮効果はタミフルと同等です。
確かに服用回数が少ないのは魅力ですが、成人であれば一日2回 5日間の服用でも問題がない気がします。
副作用等についてもタミフルと比較してゾフルーザの方が少ないかもしれませんが、タミフルには、毎年何百万人もの人に使って来たデータがあり、大きな問題がないことが証明されています。

ゾフルーザは本当に魅力的な薬剤です。
特にウイルス排出停止期間の短さについては眼を見張るものがあります。
だからこそ、発売後もじっくりと育てていって欲しいと願います。
期待と少しの不安が入り混じっていると言った感じですが、期待を大きく発売を待ちたいと思います!

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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