認知症治療薬の少量投与と一般名処方の銘柄名併記(疑義解釈その11)

平成29年5月26日に疑義解釈その11が公開されています。
今回は認知症治療薬の少量投与や一般名処方への銘柄併記についてなど、薬局に深く関わる内容があったのでまとめてみようと思います。

H28年度 調剤報酬改定についての過去記事はこちらです。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。

疑義解釈資料の送付について(その11)

厚生労働省のホームページで公開されているのでリンクを貼っておきます。
疑義解釈資料の送付について(その11) 事務連絡 平成29年5月26日

認知症治療薬の少量投与について

認知症の中核症状に対して使用される薬剤として、

  • ドネペジル塩酸塩(アリセプト)
  • メマンチン塩酸塩(メマリー)
  • ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール)
  • リバスチグミン(リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ)

の4種類が平成29年5月26日の時点で存在しています。
これらの薬剤はいずれも低用量から開始し、増量を行い、通常用量まで達したあとは、その用量で継続していく薬剤とされています。
ですが、副作用の観点から常用量よりも少ない量で継続するケースがあったり、コウノメソッドのように患者さんによっては初めから低用量を検討するようなケースも存在しています。
少量投与については保険上の適応と異なる適応外の使用として、県によっては一律査定の対象となっていたようですが、それに対して、少しブレーキをかけるような内容が今回の疑義照会で改めて確認されています。

認知症治療薬の用量については個々の症例に応じた判断を行う

疑義解釈の内容を見てみましょう。

〈別添1〉 医科診療報酬点数表
【認知症薬】

  • (問2)認知症治療薬について、患者の症状等により添付文書の増量規定によらず当該規定の用量未満で投与した場合、当該用量未満の認知症治療薬の取扱いはどのようになるか。
    ※例えば、ドネペジル塩酸塩錠については、添付文書の「用法・用量」欄において、「通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する」と記載されている。
  • (答)添付文書の増量規定によらず当該規定の用量未満で投与された認知症治療薬については、平成28年6月1日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡により審査支払機関に対して、一律に査定を行うのではなく、診療報酬明細書の摘要欄に記載されている投与の理由等も参考に、個々の症例に応じて医学的に判断するよう連絡している。

疑義解釈資料の送付について(その11) 事務連絡 平成29年5月26日

ということで、平成28年6月1日付けで出された事務連絡の内容について再確認されています。
事務連絡の内容とは、「認知症治療薬の用量(少量投与)については、一律の査定を行うのではなく、摘要欄に記載された内容を参考にして、個々の症例に応じて医学的に判断を行う」ということです。
これまで、一律に査定が行われていた県もあったようですが、現在はそうではないということですね。

ただし、少量投与が全て認められるというわけではありません。
初めから少量投与ありきということではなく、あくまでも、何らかの理由で少量投与を行わざるを得ない場合は、摘要欄にその理由を記載していれば、それを加味してもらえる・・・程度の話ですね。
そこのところはしっかり把握しておかなければいけないと思います。

ただ、認知症治療薬に限らず、用量の制限がある薬というのは多く存在します。
その中で、認知症治療薬がこのような議論の対象となり、事務連絡まで出される結果になったのは、少々不思議な気もしますが、「一般社団法人 抗認知症薬の適量処方を実現する会」などの団体も存在するので、そういった活動の結果なのかもしれませんね。

一般名処方への銘柄名併記

一般名処方がで始めた時、いくつかの病院で、処方箋の一般名の隣に先発医薬品名が印刷されていたり、鉛筆で記載されていたのを見かけた記憶があります。
当時は、これはどういうことなんだろう・・・と思った記憶があります。
ですが、一部の医薬品の一般名はそれが何の薬を指すのかが非常にわかりにくいケースが存在します。
そのような場合は、医師がどの薬を処方しようとしているのかが記載してあった方がわかりやすく、何よりも調剤ミスの回避のために大切だと思います。
今回の疑義解釈では、一般名処方の内容をわかりやすくするために先発医薬品や後発医薬品の銘柄名を記載した場合でも、一般名処方加算(医科)の算定は可能という内容です。
つまり、一般名処方の銘柄名併記を認めるという内容になります。

医療安全のために一般名処方へ銘柄名を併記することは問題ない

疑義解釈資料の内容を確認してみましょう。

〈別添1〉 医科診療報酬点数表
【一般名処方加算】

  • (問3)区分番号「F400」処方せん料の注7に規定する一般名処方加算について、一般的名称で処方薬が記載された処方せんに、医療安全の観点から類似性等による薬の取り違えを防ぐ目的の参考情報として、一般的名称に先発品又は後発品の銘柄名を併記する場合は、当該加算は算定可能か。
  • (答)算定可能である。一般名処方加算は、一般的名称による処方せんを交付した場合に限り算定できるものであり、医師が個別の銘柄にこだわらずに処方を行っていることを評価した点数である。したがって、この場合に併記される銘柄名は、処方薬に係る参考情報であることから、個別銘柄の指定と誤解されることのないよう、備考欄などに記載することが望ましい。
    • (参考)この疑義解釈については、薬剤名の一般的名称を基本とした販売名の類似性に起因する薬剤取り違え防止のための対応が課題とされた「平成27年度厚生労働科学研究内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」を踏まえ、その対応策の一つとして、 類似性等による取り違えリスクが特に懸念される名称のものについては、先発品の使用が誘引されることがない範囲で、先発品や代表的な後発品の製品名等を参考的に付記する等の工夫が有効と考えられることを示した平成29年5月26日付け厚生労働省事務連絡「平成27年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」結果の概要について(情報提供)」において医療機関等へ周知されることになったことに合わせて、個別の銘柄へのこだわりではなく医療安全の観点での銘柄名の併記による、一般名処方加算についての取り扱いを明確にしたものである。

疑義解釈資料の送付について(その11) 事務連絡 平成29年5月26日

以上のように、
「先発医薬品の使用を誘引する目的ではなく、薬剤の取り違えを防ぐ目的であれば、一般名処方に特定の銘柄名を記載した処方箋を発行した場合においても一般名処方加算は算定可能」
ということが明確に記載されています。
一般名処方が普及して何年か経ちましたが、やはりたまに「え!?この薬なんだ?」って思うような一般名を見かけることがあります。
中には類似した名前が複数存在することもあり、医薬品の取り違いなどの調剤ミスのリスクに繋がるケースがあるので、わかりやすく処方箋に記載されていればありがたいと思います。
(今回の疑義解釈を受けて、銘柄併記が増えるということはあまり期待はできませんが・・・)

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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