平成27年4月16日、内閣府の規制改革会議 健康・医療ワーキング・グループでは、「医薬分業」の見直しについて検討が行われました。
昨日の記事では、新薬の投与日数制限についての内容をまとめましたが、今日はそれ以外の内容についてまとめておこうと思います。
何故、今、医薬分業についての見直しが行われるのか?
そもそもの発端は敷地内薬局の問題なのではないかと思います。
ここ数年、病院敷地内での薬局の開局が認められるケースがいくつかありました。
みなさんご存知かとは思いますが、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3第1項には
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則
第二条の三 保険薬局は、その担当する療養の給付に関し、次の各号に掲げる行為を行つてはならない。
一 保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行うこと。
このように記載されております。
つまり、保険薬局は他の保険医療機関と構造的に独立していなければならない、ということです。
なので、病院・医院と薬局の間には、公道など施設外の部分が存在するような立地になっています。
病院・医院等が入った医療ビルのような建物の一回に薬局があっても、構造的には一度外に出ないと薬局に入れないような形にしてあるところも多いと思います。
ここ数年で、病院などの敷地内に存在する薬局の開局が認められるケースがでてきており、議論となっています。
ですが、認められた前例が出てきた以上、今後、このような門内薬局が増えていくことが想像できます。
となると、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3第1項」に矛盾するような形になっていくのも事実です。
そんな中、平成26年10月31日、総務省が行政からの要望をとりまとめ、厚生労働省に提案を行いました。
「保険薬局と保険医療機関との一体的な構造を規制する規定の解釈の見直し(あっせん)」の通知(14年10月31日付総評相第247号)
保険薬局が保険医療機関から経営上独立していることが十分に確保されている場合には、構造上の独立性に関する規定は緩やかに解釈するのが相当であり、身体が不自由な者等の利便に配慮する観点から規定の解釈を見直す必要がある。
こうした流れの中で、規制改革会議では薬局の独立性(フェンス問題)が話し合われるかと思いきや、平成26年3月12日の公開ディスカッションでは、「医薬分業」自体がテーマに挙げられたというわけです。
その直前には「薬歴未記載問題」もあったので、一部の薬剤師の方は医薬分業に関する公開ディスカッションでどのような話し合いが行われるか不安だったかと思います。
結果、公開ディスカッションでは薬歴未記載問題に関わるような話はなかったのですが、医薬分業に関する見直しが始まったということが大きかったと思います。
この流れを受けて、今回、4月16日、内閣府の規制改革会議 健康・医療WGが開催されたというわけです。
医薬分業についての見直し
今回、具体的に取り上げられたテーマは以下の通りです。
- 1.患者の利便性(構造の独立性)
- コストとメリット
- その他(ICTの活用等)
患者の利便性(構造の独立性)の問題
今回の会議で挙げられた意見は以下のとおりです。
- 高齢者や車椅子の方が、薬局に行くために道路を渡るのは大変であり、規制が患者視点に立っていない。
- 建物が同じだからといって経営が一体になるわけではない。
- また、物理的に離れていれば経営上の独立性が担保されるわけでもない。
- 門前薬局が認められるならば、門内薬局も認めてよいのではないか。
- 様々な形態の薬局を認め、患者の選択肢を広げるべき。
- 構造上の独立性の基準は、地域によって解釈にばらつきがある。
- 一体的な構造を認める場合、医療機関と薬局の経営上の独立性をどう担保すればよいのか。癒着がない仕組みが必要。
- 薬局は、医療機関から経済的、構造的、機能的に独立していなければ、本来の機能を果たせない。
- 規制の見直しに当たっては、規制が導入された経緯を念頭に置いて検討すべき。
構造上の独立性に関しては、確かに患者さんの利便性を大きく損ねます。
経営の独立性についても、構造的に独立しているから守られているわけではありません。
じゃあ、門内薬局が認められた場合、どのような問題があるかと考えると、その医療機関にだけに特化してしまい、かかりつけ薬局としての機能が薄れるということがあるかもしれません。
ですが、調剤報酬的な評価等により、特定の病院に特化したタイプの薬局と、幅広い病院・医院に対応できる薬局(いわゆるかかりつけ薬局)に分かれていけばいいのではないかと思います。
また、患者さんの利便性を重視するアメリカなどでは、門内薬局は当然です。
日本では病院と薬局の結びつきが強くなることで、経営的な独立性が薄まると考えがちですが、アメリカではお互いの考えなどの理解が深まることで、医療の質の向上や余計なコストの削減につながると考えます。
コストとメリット
政策の効果の検証
- 医薬分業は道半ばである。
- 患者がコストに見合ったサービスを受けたと感じられるかどうかが重要。
- 医薬分業の目的である「医療の質の向上」と「医療費・薬剤費の抑制」がどれだけ達成されたか検証すべき。
- 医薬分業の効果は財政面だけでなく、薬剤師による健康相談等の様々な効果があるので、費用対効果を算出するのは難しい。
- 医薬分業により、薬に関する患者への情報提供が進んできた経緯がある。医薬分業の効果は長期的な視野で評価すべき。
コストの見直し
- 医療費の伸びの中でも、調剤料の伸びは特に大きい。医薬分業のコストが調剤料の伸びに影響していると考えられる。
- 院外処方へのインセンティブのつけ方を見直すべきではないか。
- 薬局によって調剤基本料が違うのは理解しにくい。
- 薬局機能は薬局ごとにばらつきがある。一律の報酬とせずに、より充実したサービスを提供している薬局に、付加的に報酬をつけるべきではないか。
- 医薬分業が本当に必要ならば、義務付けるべきではないか。義務付ければインセンティブとしての報酬が不要となり、院内処方と同じ費用で院外処方が実現するのではないか。
医薬分業の義務化が取り上げられています。
たしかに、日本は先進国で唯一、完全分業とされていない国です。
でも、そこには医師の調剤権をどうするかという大きな問題が存在します・・・。
サービスの見直し
- 薬局機能は、現時点では不十分と考えられる。
- 本来の医薬分業のあるべき姿を実現するには、かかりつけ薬局の普及が必要。
- 「物」や「情報」の提供は、通信販売やインターネットに代替されつつある。薬剤師は、「対物業務」より「対人業務」に力を入れていくべき。
- 本当に薬剤師にしかできない業務とそうでない業務を切り分けていくことが必要。
- 薬剤師は医師より多く、薬局はコンビニより多い。この社会的資源を有効活用すべき。
- 薬剤師の専門性を一層発揮できる方策の検討が必要。
- リフィル制度を進めてはどうか。
- 薬剤師の業務は調剤室の中で行われるので、メリットが患者に見えにくい。
リフィル処方の話まで取り上げられています。
たしかに、リフィル処方が認められれば、病院・医院の近くの薬局で薬をもらうよりも、自宅や勤務先の周辺にある薬局で薬をもらうメリットが高まります。
それはかかりつけ薬局の推進にもつながると思います。
昨日の記事で話題にした、新薬の処方制限についてもリフィル処方で対応するという選択もあるかもしれませんね。
その他(ICTの活用等)
- 医療機関と薬局の連携が重要。
- 薬剤師がチーム医療に参画すべき。薬学を医療のPDCAサイクルに組み込む必要がある。
- 薬剤師が患者情報を一元的に確認するため、マイナンバー等のICTの活用を進めるべき。
ICTの活用では、電子処方箋やお薬手帳電子化などが考えられると思います。
アメリカの例を見ると、リフィル処方箋の管理もあわせてすべてオンラインで管理されています。
日本でどうなるかはさておき、ICTの医療での活用はもっともっと進むべきかもしれません。
まとめ
今回はおおまかにまとめてみました。
医薬分業の問題については必ず、次の診療報酬改定で反映されるわけではないですが、その可能性が高いと思います。
今後も注意深く見守っていきたいと思います。
また、このような問題を考える上で、やはりアメリカでの薬局の取り組みが参考になると思います。
アメリカの医療についても、そのうち、機会を作って詳しくまとめたいと思います。