重複投薬・相互作用等防止加算は何が変わる?~H28年(2016)調剤報酬改定⑤

引き続き、厚生労働省が平成28年3月4日に説明会を行った平成28年度診療報酬改定についてです。
今回は薬学管理料のうち、重複投薬・相互作用等防止加算についてまとめたいと思います。
これまでの重複投薬・相互作用防止加算から改定後は重複投薬・相互作用防止加算。
名称的には「等」がついただけですが、この「等」が大事なんです!

H28調剤報酬改定についての過去記事はこちらです。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。
解釈に変更等があれば随時更新する予定です。
https://yakuzaishi.love/archive/category/%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A-%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%882016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9Ayakuzaishi.love

厚生労働省の2016診療報酬改定についての資料へのリンクはこちらです。

重複投薬・相互作用等防止加算の改定

今回の改定については、以下のようにまとめられています。

【III-7(重点的な対応が求められる分野/かかりつけ薬剤師の評価)-②】
薬局における対人業務の評価の充実
骨子【III-7(2)(3)】
第1基本的な考え方
3.医師と連携して服用薬の減薬等に取り組んだことを評価するため、重複投薬・相互作用防止加算については、算定可能な範囲を見直す。見直しに伴い、疑義照会により処方内容に変更がなかった場合の評価は廃止する。

第2具体的な内容
3.重複投薬・相互作用防止加算について、薬剤服用歴に基づき過去の副作用歴やアレルギー歴を有することから処方医に対して疑義照会を実施して処方変更となった場合等についても当該加算を算定可能とする。

 

重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件

改定後の重複投薬・相互作用防止加算の算定要件です。

【重複投薬・相互作用等防止加算】
薬剤服用歴に基づき、重複投薬、相互作用の防止の目的で、処方せんを交付した保険医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合は30点を所定点数に加算する。

※現在は算定できない同一保険医療機関の同一診療科からの処方せんによる場合も算定できる旨を通知において明確にする。

ちなみに、改定前の重複投薬・相互作用防止加算は、

【重複投薬・相互作用防止加算】
薬剤服用歴に基づき、重複投薬又は相互作用の防止の目的で、処方せんを交付した保険医に対して照会を行った場合は、所定点数に次の点数を加算する。
イ 処方に変更が行われた場合 20点
ロ 処方に変更が行われなかった場合 10点

となっています。

改定前は変更が行われなかった場合でも算定可能でしたが、今回の改定からは変更が行われた場合のみ算定可能となっています。
また、これまでの変更ありの場合が20点だったのに対して、今後は30点と点数がアップしています。

重複投薬・相互作用等防止加算を実施する上での留意事項

実施上の留意事項も通知されていますが、その内容を見ると変更点がよくわかります。

平成26年改定での重複投薬・相互作用防止加算の留意事項

まず、平成26年改定のものは以下の通り。
今回の改定で削除された部分は横棒をつけています。

重複投薬・相互作用防止加算
ア 重複投薬・相互作用防止加算は、薬剤服用歴の記録に基づき、併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)及び併用薬、飲食物等との相互作用を防止するために、処方医に対して連絡・確認を行った場合に算定する。処方医の同意を得て、処方の変更が行われた場合に「注3」のイを算定し、処方に変更が行われなかった場合は「注3」のロを算定する。なお、薬剤服用歴管理指導料を算定していない場合は、当該加算は算定できない。
薬剤の追加、投与期間の延長が行われた場合は、「注3」のイは算定できない。
ウ 重複投薬・相互作用防止加算の対象となる事項について、処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴の記録に記載すること
複数の保険医療機関又は複数の診療科で処方せんを交付された患者について、処方せんの受付時点が異なる場合であっても所定の要件を満たした場合は重複投薬・相互作用防止加算を算定できる。
オ 同時に複数の保険医療機関又は複数の診療科の処方せんを受け付け、複数の処方せんについて薬剤を変更した場合であっても、1回に限り「注3」のイを算定する。
院内投薬と院外処方せんによる投薬に係る処方変更についても、重複投薬・相互作用防止加算は算定できる。
残薬の確認の結果、処方の変更が行われた場合についても、「注3」のイを算定できる。

 

平成28年改定での重複投薬・相互作用等防止加算の留意事項

続いて、今回改定のものは以下の通りです。
新たに加わった文章は下線で示しています。

重複投薬・相互作用等防止加算
ア 重複投薬・相互作用等防止加算(「注4」に規定する加算をいう。以下同じ。)は、薬剤服用歴の記録又は患者及びその家族等からの情報等に基づき、次の内容について、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に算定する。ただし、複数の項目に該当した場合であっても、重複して算定することはできない。なお、薬剤服用歴管理指導料を算定していない場合は、当該加算は算定できない。
(イ) 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
(ロ) 併用薬、飲食物等との相互作用
(ハ) 残薬
(ニ) そのほか薬学的観点から必要と認める事項

イ 重複投薬・相互作用等防止加算の対象となる事項について、処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴の記録に記載する。
ウ 同時に複数の処方せんを受け付け、複数の処方せんについて薬剤を変更した場合であっても、1回に限り算定する。

 

重複投薬・相互作用等防止加算になって変わったこと

「等」が加わって何が変わったか?
一番大きいのは、適用の範囲です。
併用に限ったものではなく、同一処方内の重複投薬や相互作用であっても算定可能となりました。
平成26年時の留意事項にあった「併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)及び併用薬、飲食物等との相互作用を防止するために、処方医に対して連絡・確認を行った場合に算定する。」が削除されていることからそれがわかると思います。
また、今回改定の留意事項アの(ニ)に記載されている部分ですが、「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」が加わっています。

つまり、併用薬との重複投薬や相互作用に限らず、副作用歴やアレルギー歴、そのほか薬学的知見から疑義照会を行い、処方が変更になれば算定可能になったということです。
具体的な例でどこまで算定可能なのかははっきりしない部分もありますが、

  • 過去のアレルギー歴から処方変更を提案し変更になった
  • 腎機能から用量提案を行い処方の用量が変更になった
  • 小児の体重から適切な用量を提案し変更になった
  • 嚥下困難のため剤型変更を提案して処方が変更になった

どこまでが算定可能なのかが気になるところですね。
一番下以外は大丈夫じゃないかと思うのですが、どうでしょう?

こう考えると、薬局の疑義照会に対する正当な評価が加わったなと思うのですが、どうでしょうか?

もう一つ気になる変更部分があります。
旧留意事項から削除された一文「薬剤の追加、投与期間の延長が行われた場合は、「注3」のイは算定できない。」。
ということは、疑義照会の結果、薬剤が追加になったり、処方日数が延長になった場合も算定可能ということですね。
これはどこまで含まれるのでしょうか?

  • 副作用が疑われたのでそれに対応するための薬剤が追加になった
  • 残薬があるため、ほかの薬剤の投与日数を増やすことで日数調整を行った場合
  • 処方漏れがあったことに気づき疑義照会を行い追加された場合

このようなケースは該当するのでしょうか?

もし、すべてが該当するのであれば、かなり算定の範囲が拡大されたことになりますね。

重複投薬・相互作用等防止加算についての疑義解釈

H28.3.31の疑義解釈その1の該当部分をまとめます。

(問30)重複投薬・相互作用等防止加算及び在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定対象の範囲について、「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」とあるが、具体的にはどのような内容が含まれるのか。
(答)薬剤師が薬学的観点から必要と認め、処方医に疑義照会した上で処方が変更された場合は算定可能である。具体的には、アレルギー歴や副作用歴などの情報に基づき処方変更となった場合、薬学的観点から薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合は対象となるが、保険薬局に備蓄がないため処方医に疑義照会して他の医薬品に変更した場合などは当てはまらない。

(問31)これまでの「重複投薬・相互作用防止加算」では、同一医療機関の同一診療科の処方せんについて処方変更があったとしても算定できないとされていたが、平成28年度診療報酬改定で見直した「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」については、同一医療機関の同一診療科から発行された処方せんであっても、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合は算定可能と理解してよいか。
(答)「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」は、薬学的観点から必要と認められる事項により処方が変更された場合には算定可能としているので、上記の内容も含め、これまで算定できないとされていた「薬剤の追加、投与期間の延長」等であっても、要件に該当するものについては算定可能である。

 

重複投薬・相互作用等防止加算の変更点

簡単にまとめてみます。

  • 変更時のみ算定可能
  • 点数がアップ(20点→30点)
  • 同一処方元についての重複投薬・相互作用も算定可能に
  • 重複投薬・相互作用・残薬調整以外の薬学的な疑義照会も対象に
  • 処方追加の場合も算定可能?

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重複投薬・相互作用等防止加算についてのまとめ

今回の改定のテーマのひとつである、「対人業務の評価の充実」。
その中でも、重複投薬・相互作用等防止加算の変更は、薬剤師のやる気をみなぎらせる改定じゃないかと思います。
これまで薬局として、薬剤師として、よい働きをしても評価されなかった部分が評価されることにより、疑義照会の活性化に繋がるのではないかと思うのですがいかがでしょうか?
もちろん、その過程で様々な問題が生じる可能性も否定はできませんが、現在、まだ十分とは言えない、医師との関係性を切り拓いていくものになるような気がしています。
単純にミスの指摘をするだけでなく、医師の治療に沿ったよりよい提案ができるよう、勉強していく必要がありますが、それがこの仕事の醍醐味ではないかと思います。
この改定を通じて、薬剤師の評価が変わっていくのではないかと少し期待している部分もあります。

これまでも十分に行っていた薬局にとっては、それがついに点数として評価される。
これまでできていないかった薬局にとっては、変わっていくきっかけだと思います。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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