デエビゴ錠(レンボレキサント)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【ベルソムラとの違いを比較】【オレキシン受容体拮抗薬】

2019年11月29日、薬食審・第一部会でエーザイのデエビゴ錠(一般名:レンボレキサント)の製造販売について審議が行われ承認が了承されました。
その後、2020年1月23日に正式に承認、4月22日に薬価収載され、7月6日に販売開始となりました。
ベルソムラに続く2番目のオレキシン受容体拮抗薬というだけあって、ベルソムラの欠点を多く克服した薬剤になっています。

目次

デエビゴの基本情報

まずは基本情報からまとめていきます。

医薬品名デエビゴ錠2.5mg
デエビゴ錠5mg
デエビゴ錠10mg
成分名レンボレキサント
英語名Dayvigo(lemborexant)
製造販売元エーザイ
命名の由来Day(日中)+Vigor(活力)+Go(ready to go)
効能・効果不眠症
用法・用量通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする。
指定等なし
審議2019年11月29日 薬食審第一部会
承認日2020年1月23日
薬価収載日
収載時薬価
2020年4月22日
デエビゴ錠2.5mg:57.30円/錠
デエビゴ錠5mg:90.80円/錠
デエビゴ錠10mg:136.20円/錠
薬価算定方式類似薬効比較方式(Ⅰ)
デエビゴ錠5mg:類似薬(ロゼレム錠8mg)の1日薬価(90.80円)に合わせて算出
デエビゴ錠2.5mg:ベルソムラ錠15mgとベルソムラ錠20mgの規格間比(0.6636)を元に算出
デエビゴ錠10mg:類似薬の通常最大用量を超える用量に対応する規格であることを考慮して0.5850を規格間比として算出
販売開始2020年7月6日
新医薬品の
投与日数制限
対象
(2021年4月末日で解除)
子ぺんぎん(ジェンツー)
ベルソムラ(スボレキサント)に続く2剤目のオレキシン受容体拮抗薬です。
ぺんぎん薬剤師
ベルソムラとの違いを簡単にまとめると、
1、高齢者の用量制限がない。
2、併用禁忌がない。
3、一包化調剤が可能。
子ぺんぎん(ジェンツー)
ベルソムラのホッチキス止めから開放されるのは嬉しい!

2剤目のオレキシン受容体拮抗薬

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デエビゴ錠の成分であるレンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬です。
ベルソムラ(スボレキサント)に続く2番目のオレキシン受容体拮抗薬になります。
オレキシンは視床下部で産生される神経ペプチドの一つで、睡眠と覚醒の調整のほか、食欲や報酬系に関与していることが知られています。
レンボレキサントはオレキシン受容体に結合することでオレキシン神経伝達系を阻害し、睡眠導入や睡眠維持を促進します。

子ぺんぎん(ジェンツー)
とにかく名前が言いにくい!「デエビゴ」って・・・。
ぺんぎん薬剤師
命名からわかるようにデイビゴで申請したんだけど、先頭3文字が重複するディビゲルが存在していたのでデエビゴに改めたらしいよ。

睡眠のメカニズムと不眠症治療薬

ベルソムラについてまとめる前に不眠症治療薬についておさらいしておこうと思います。
睡眠メカニズムの基本と各薬剤の作用機序と特徴について簡単にまとめます。

子ぺんぎん(ジェンツー)
このあたりは復習なのでわかっている人は読み飛ばしてね。

睡眠のメカニズム

睡眠メカニズムは単純なものではなく、様々な生理活性物質の作用が複雑に影響します。
ここでは不眠症治療薬の作用をわかりやすくするために簡潔に説明していきたいと思います。

睡眠とは覚醒力と睡眠欲求のバランスによってもたらされる結果です。
これを上の図のように覚醒力と睡眠欲求のシーソーに例えて説明していきます。

日中(通常、覚醒している時間帯)では、睡眠欲求は小さくなり、覚醒力が大きく働いています。
このような状態ではシーソーは覚醒に傾き、その結果として「覚醒」が保たれます。

逆に夜間(通常、睡眠している時間帯)では、睡眠欲求が大きくなり、覚醒力が弱くなります。
このような状態になるとシーソーが睡眠に傾き、その結果として「睡眠」がもたらされます。

睡眠と覚醒は睡眠欲求と覚醒力のバランス

下の図は睡眠欲求と覚醒力の日内変動を表したものです。
青い棒グラフが睡眠欲求、オレンジの棒グラフが覚醒力です。

日中は基本的に覚醒力が優っていますが、夜間になると睡眠欲求が勝っています。
その結果、日中は覚醒し、夜間は睡眠状態になります。
このグラフを見てもらうと、睡眠欲求と覚醒力、それぞれの働きは単純ではないことがわかると思います。
(例えば、覚醒力のピークは日中ではなく21:00くらいにあります)
それぞれが複雑な変化を起こし、相反する作用の変化の結果として睡眠や覚醒に繋がっているということがわかると思います。

従来(オレキシン受容体拮抗薬以外)の不眠症治療薬

現在使用されている不眠症治療薬は以下のように分類されます。

  • GABAA受容体作動薬
    • バルビツール酸系
    • 非バルビツール酸系
    • ベンゾジアゼピン系
    • 非ベンゾジアゼピン系(Zドラッグ)
  • メラトニン受容体作動薬
  • オレキシン受容体拮抗薬

単純に睡眠の強さ(催眠作用)を比較すると
バルビツール酸系(非バルビツール酸系) > ベンゾジアゼピン系 > 非ベンゾジアゼピン系 ≧ オレキシン受容体拮抗薬 > メラトニン受容体作動薬
といった感じでしょうか?(私見が入っています)

まずはオレキシン受容体拮抗薬以外の薬について復習していきます。

GABAA受容体作動薬

いわゆる睡眠薬として広く知られ、使用されている薬はGABA受容体を介して作用を発揮するものです。
GABAA受容体作動薬は、中枢神経系における抑制アミノ酸であるγ-アミノ酪酸(GABA*1)のイオンチャネル型受容体 GABAA受容体を介して鎮静作用を示します。

GABAA受容体作動薬は「睡眠欲求」を高めることで睡眠作用を発揮します。
ただ、抑制系を亢進して脳の機能を低下させた結果、睡眠を引き起こすため、睡眠の質はあまり良くないとされています。
また、耐性・習慣性(依存性)、翌日も効果が持続する持ち越し効果(hang over)、認知障害(前向性健忘)が問題とされることもあります。

バルビツール酸系

GABAA受容体のバルビツール酸結合部位に働くことで、不眠や不安症状に対して効果を発揮します。
ですが、高濃度ではGABAAを直接活性化する作用を持つため、選択性・治療指数が低く、致死的な副作用を引き起こす危険性があります。
依存性が高いことも問題とされます。
アルコールと同じく、レム睡眠(REM*2 sleep、脳波的には覚醒しているが体は眠っている状態)が短くなります。

バルビツール酸系の製品例

  • ラボナ(一般名:ペントバルビタール)
  • イソミタール(一般名:アモバルビタール)
  • フェノバール(一般名:フェノバルビタール) など
非バルビツール酸系

バルビツール酸系の改良版ですが、やはり習慣性による乱用や依存が問題になりました。
また、催奇性のため販売中止となったものもあります。

非バルビツール酸系の製品例

  • ブロバリン(一般名:ブロムワレリル尿素) など
ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系は英字表記でBZD*3と略されます。
バルビツール酸系と同じくGABAA受容体を介して作用を発揮しますが、結合部位が異なり、ベンゾジアゼピン系結合部位に作用します。
バルビツール酸系とは異なり、単独でGABAA受容体を活性化することができないため、バルビツール酸系と比較して安全性は高くなっています。
バルビツール酸系と比較すれば、レム睡眠の減少はかなり少ないです。

ベンゾジアゼピン系の製品例

  • レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)
  • ハルシオン(一般名:トリアゾラム)
  • サイレース・ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)
  • ネルボン・ベンザリン(一般名:ニトラゼパム) など
非ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系とは全く異なる化学構造を持つにも関わらず、似たような作用を発揮する薬物の総称です。
GABAA受容体のサブタイプであるGABAAα1への選択性が高いため、抗不安作用が少なく、依存性が改善されています。
(選択性の高さ:ゾルピデム>ゾピクロン・エスゾピクロン)
耐性も起こりにくいとされていますが、効果はベンゾジアゼピン系と比較して穏やかです。
レム睡眠にはまり影響を与えず、ノンレム睡眠を増やすことが可能です。
成分名を英語表記した際に全てZではじまる(Zopiclone、Zolpidem)ため「Zドラッグ」という総称されます。
日本神経治療学会のガイドライン(標準的神経治療:不眠・過眠と概日リズム障害)では不眠症治療の第一選択薬とされています。

非ベンゾジアゼピン系の製品例

  • アモバン(一般名:ゾピクロン)
  • マイスリー(一般名:ゾルピデム)
  • ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)

問題はあるとわかっているけれど、なかなか切り離せないのがベンゾだよね。。。

メラトニン受容体作動薬

視交叉上核のメラトニンMT1/MT2受容体に作用することで体内リズムを改善し、睡眠を促す効果を発揮します。

メラトニン受容体が活性化されることにより、血圧・脈拍・体温などが低下、体内は睡眠に向かって準備されます。
従来型の睡眠導入剤とは異なり、依存性や耐性を生じにくいことから、米国において唯一、向精神薬として規制を受けない睡眠導入剤です。

メラトニン受容体作動薬の製品例

  • ロゼレム(一般名:ラメルテオン)
  • メラトベル顆粒小児用(一般名:メラトニン)

オレキシン受容体拮抗薬

ここからがオレキシン受容体拮抗薬についての話になるよ!

さて、いよいよこの記事のテーマであるデエビゴ(レンボレキサント)の作用機序について書いていきます。
デエビゴの有効成分であるレンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬と呼ばれています。
デエビゴはベルソムラ(スボレキサント)に続いて2剤目のオレキシン受容体拮抗薬になります。
オレキシン受容体拮抗薬はレム睡眠・ノンレム睡眠の両方を増やし、自然な眠りを促すという特徴を持っています。

オレキシン受容体拮抗薬

  • ベルソムラ(一般名:スボレキサント)
  • デエビゴ(一般名:レンボレキサント)

オレキシンとは?

オレキシンとは脳内の神経ペプチドの一種で、元々は摂食行動(食欲)に関わる因子として注目されていました。
ですが、その後の研究により、オレキシンの産生が不十分な場合に、ナルコレプシーが引き起こされることがわかりました。
(オレキシン産生ニューロンの変性や脱落はナルコレプシーの原因となります)
そのことから、オレキシレンが覚醒調整系において重要な役割を担っていることが明らかになりました。
脳内のオレキシンが多いと覚醒し、少なくなると眠くなります。

オレキシンにはオレキシンA(orexin A)とオレキシンB(orexin B)の二つのイソペプチドが存在しますが、同じ前駆体から切り出されるペプチドのため、発現する細胞は同一です。
別名をヒポクレチンと言い、オレキシンAはヒポクレチン-1、オレキシンBはヒポクレチン-2に相当します。

オレキシン受容体とは?

Gタンパク質共役型受容体で、オレキシン1受容体(OX1R*4)とオレキシン2受容体(OX2R*5)が存在します。
脳内の組織分布はサブタイプにより異なります。
例えば、背側縫線核(DR*6)ではセロトニン作動性ニューロンに両方の受容体が発現、外背側被蓋核(LDT*7)や脚橋被蓋核(PPT*8)ではコリン作動性ニューロンにOX1Rのみが発現、GABA作動性介在ニューロンには両方の受容体が発現しています。
OX1RとOX2Rの両方が覚醒・睡眠の調整に関わっています。
(OX2Rの方が覚醒/睡眠に強く関わっているという報告もあります)

オレキシンによる睡眠調整

体内時計や感情、栄養状態などの影響によりオレキシンは覚醒中枢に放出されます。

  • 体内時計:朝 → オレキシン↑ → 神経細胞活性化(覚醒)
  • 感情:気持ちの高ぶり → オレキシン↑ → 神経細胞活性化(覚醒)
  • 栄養状態:空腹 → オレキシン↑ → 神経細胞活性化(覚醒)

その結果、覚醒中枢が活性化され、睡眠中枢の働きを上回ることで目が覚めます。
逆にオレキシンの働きが小さくなると、睡眠中枢の働きが覚醒中枢の働きをを上回ります。
すると、覚醒中枢やオレキシンの働きを抑制する信号が睡眠中枢から送られ、脳の活動は沈静化して眠くなるというわけです。

デエビゴ(オレキシン受容体拮抗薬)の作用機序

レンボレキサント(デエビゴ)はオレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の両方を阻害することから、DORA*9(デュアル オレキシン受容体拮抗薬)と呼ばれています。
どちらか一方のオレキシン受容体を阻害するよりも両方を阻害するDORAの方がより強い睡眠促進作用があると考えられています。

GABAA受容体作動薬は脳内の抑制系に働いて覚醒を無理やり抑える形で睡眠を促していました。
それに対し、DORAのレンボレキサントは覚醒中枢の働きを直接抑制することで、より自然な睡眠を促すことが可能と考えられています。

メラトニン受容体作動薬も自然な眠りを引き起こすことができると考えられていますが、体内時計に対して作用するため情動による覚醒に対しての効果は期待できません。
ですが、レンボレキサントは覚醒系全体に対する効果が期待できます。

レンボレキサントとスボレキサントの受容体選択性の違い

レンボレキサントとスボレキサントのヒトオレキシン受容体に対する結合親和性(Ki値)は以下のとおりです。

オレキシン受容体のサブタイプオレキシン1受容体
(OX1R)
オレキシン2受容体
(OX2R)
スボレキサント
1.4nmol/L
2.2nmol/L
レンボレキサント
8.1nmol/L
0.48nmol/L

Ki値が低い方が結合親和性が高くなります。

また、ヒトオレキシン受容体へのオレキシンAの結合に対するレンボレキサントとスボレキサントの50%阻害濃度(IC50)は以下のとおりです。

オレキシン受容体のサブタイプオレキシン1受容体
(OX1R)
オレキシン2受容体
(OX2R)
スボレキサント
8.8±2.5nmol/L
12.0±2.8nmol/L
レンボレキサント
6.1±1.4nmol/L
2.6±0.4nmol/L

IC50が低い方が阻害活性が高くなります。

実際の作用の強さについては組織での濃度に依存するため、この数値だけでは比較できませんが、

  • スボレキサント(ベルソムラ):両方を阻害するがOX1Rをより強く阻害
  • レンボレキサント(デエビゴ):両方を阻害するがOX2Rをより強く阻害

という違いが見られます。
この違いが実際の効果にどう反映されるか・・・気になりますね。
睡眠/覚醒に関する働きが強いと言われているOX2Rに対する選択性が高いことが今後ベルソムラとの違いとして現れるのでしょうか?

デエビゴのDI

ここからはデエビゴ錠の添付文書、インタビューフォーム、RMP、審査結果報告書から得ることのできる情報についてまとめていきたいと思います。

デエビゴとベルソムラの比較もしていくよ!

二次性不眠症に対しても使用できる

デエビゴの適応は「不眠症」です。
ベルソムラにある「効能又は効果に関連する使用上の注意」の記載はありません。

効能又は効果に関連する使用上の注意
二次性不眠症に対する本剤の有効性及び安全性は確立されていない。

ベルソムラ錠 添付文書 MSD株式会社

このことは審査報告書でも触れられています。(注釈等を加えています)

7.R.2.5 二次性不眠症患者について

機構は、以下のように考える。

  • 『「睡眠薬の臨床評価方法に関するガイドライン」について』(平成23年12月13日付け薬食審査発1213第1号)では、原発性不眠症を対象とするのが一般的であり、二次性不眠症(不眠と併存する疾患に関連した睡眠障害)患者を対象とする場合には、原発性不眠症とは別に実施するべきであるとされているが、その後に作成された診断基準のDSM*10-5(精神疾患の診断・統計マニュアル、2013年)やICSD*11-3(睡眠障害国際分類第3版、2014年)等においては、原発性不眠症と二次性不眠症は特に区別されていない
  • 原発性不眠症と二次性不眠症のいずれも投与対象とされたE2006-G000-303試験(SUNRISE2試験、国際共同303試験)において、並存疾患(うつ、不安障害、胃食道逆流症、偏頭痛、高血圧、糖尿病、腎機能障害)の有無別において有効性に大きな違いは認められていない。安全性について、並存疾患のある患者では並存疾患無しの患者に比べて有害事象の発現割合が高い傾向が認められているが、認められている事象(傾眠)は、本剤群で発現が多く認められる事象であり、添付文書上において注意喚起を行うことが予定されている。
  • 類薬では、原発性不眠症患者のみを対象に試験が実施され、二次性不眠症を対象とした試験が実施されていない場合に、「二次性不眠症に対する有効性及び安全性は確立されていない」旨が注意喚起されている。
  • 以上を踏まえると、添付文書において二次性不眠症に対する有効性及び安全性は確立されていない旨の注意喚起は必要ないとする申請者の考えに大きな問題はない

 

二次性不眠症に対しても積極的に使用できるのは大きいですね。

基本的な服用方法

デエビゴの用法・用量は「1日1回 就寝直前 1回5mg(最大10mg)」となっています。

用法及び用量
通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする。
デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

用法及び用量に関連する使用上の注意

  • 1.効果不十分により、やむを得ず通常用量を超えて増量する場合には、1日1回10mgまでとすること。なお、通常用量を超えて増量する場合には、傾眠等の副作用が増加することがあるので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与することとし、症状の改善に伴って減量に努めること。
  • 2.本剤は就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中で一時的に起床して仕事等で活動する可能性があるときは服用させないこと。
  • 3.入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、本剤の食事と同時又は食直後の服用は避けること。
  • 6.他の不眠症治療薬と併用したときの有効性及び安全性は確立されていない。

デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

(4、5についてはあとで詳しくまとめるので省略しています)
ベルソムラの用法・用量は「1日1回 就寝直前 1回20mg(高齢者は15mg)」でした。
デエビゴはベルソムラと比較して

  • 高齢者での用量調節不要
  • 効果不十分な場合に増量可能

という特徴があります。
用法及び用量に関連する使用上の注意の2、3はベルソムラと同じです。

食事の影響

食事の影響について少し詳しく見てみます。

薬物動態
2. 食事の影響(外国人データ)
外国人健康成人24例に本剤10mgを単回経口投与したときのレンボレキサントのCmax及びAUC(0-t)の幾何平均値の比(摂食下/絶食下)とその90%信頼区間は、0.771[0.687,0.866]及び1.18[1.09,1.28]であり、絶食下と比較して摂食下では、Cmaxは23%低下し、AUC(0-t)は 18%増加した。また、tmax(中央値)は2時間遅延した。レンボレキサントの最終消失半減期(平均値)は、絶食下及び摂食下ではそれぞれ50.8時間及び53.8時間であった。
デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

食後服用では薬物動態に影響があり、効果が十分に発揮できなくなります。
最も影響が大きいのはtmaxが2時間遅延することでしょう。
効果発現が遅れ、スムーズな入眠ができなくなる可能性があります。

食後服用が不適なのはデエビゴもベルソムラも同じですが、薬物動態の変化は少し異なりますので表で比較してみます。

薬品名CmaxAUC(0-t)tmax(中央値)
デエビゴ(レンボレキサント)
(外国人データ)
↓(23%)
↑(18%)
↑(2時間)
ベルソムラ(スボレキサント)
(外国人データ/日本人データ)
↑(23%/9%)
変化なし
↑(1.5時間/1時間)

tmaxが遅延するのは一緒ですが、CmaxやAUC(0-t)の挙動が異なるのは興味深いですね。

ベルソムラは遅めの夕食後に飲めばちょうど寝るくらいに効果を発揮しないこともないでしょうが、デエビゴはCmax自体が下がってしまうからなあ・・・。

重篤な肝機能障害は禁忌

デエビゴ錠はベルソムラ錠とは異なり、強いCYP3A4阻害薬が併用禁忌ではありません。
ですが、重度の肝機能障害のある患者が禁忌となっています。

禁忌

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 重度の肝機能障害のある患者〔レンボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがある。〕デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

中等度の肝機能障害は5mgまで

中等度の肝機能患者については5mgまでの投与となっています。

用法及び用量に関連する使用上の注意

  • 5.中等度肝機能障害患者では、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇するため、1日1回5mgを超えないこととし、慎重に投与すること。
    デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

また、軽度・中等度の肝機能障害については慎重投与になっています。

使用上の注意
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
2.軽度及び中等度の肝機能障害のある患者
デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

CYP3A4阻害剤との併用は禁忌ではないが・・・

レンボレキサントはCYP3A4によって代謝されるため、薬物相互作用が多く存在します。
デエビゴ(レンボレキサント)はベルソムラとは異なり、CYP3A4を強く阻害する薬剤についても併用注意となっています。
(ベルソムラはCYP3A4を強く阻害する薬剤は併用禁忌)
また、スボレキサントは弱いp糖タンパク阻害作用も有しますが、レンボレキサントにはないようです。
そのため、デエビゴ(レンボレキサント)にはp糖タンパクに関する併用注意の記載もありません。

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
CYP3A4を阻害する薬剤
イトラコナゾール
クラリスロマイシン
エリスロマイシン
フルコナゾール
ベラパミル等
本剤の作用を増強させるおそれがある。レンボレキサントの代謝酵素である
CYP3Aを阻害し、レンボレキサントの
血漿中濃度を上昇させるおそれがある。
CYP3Aを誘導する薬剤
リファンピシン
フェニトイン等
本剤の作用を減弱させるおそれがある。レンボレキサントの代謝酵素である
CYP3Aを誘導し、レンボレキサントの
血漿中濃度を低下させるおそれがある。
リファンピシンとの併用により、
レンボレキサントのCmax及びAUC(0-inf)
それぞれ92%及び97%減少
した。
中枢神経抑制剤
フェノチアジン誘導体
バルビツール酸誘導体等
中枢神経系に対する抑制作用を増強させる
おそれがあるため、慎重に投与すること。
本剤及びこれらの薬剤は中枢神経系に対する
抑制作用を有するため、相互に作用を増強
させるおそれがある。
アルコール(飲酒)精神運動機能の相加的な低下を生じる可能性
がある。本剤を服用時に飲酒は避けさせること。
アルコールとの併用によりレンボレキサントの
血漿中濃度が上昇するおそれがある。
また、アルコールが中枢神経抑制作用を示す
ため、本剤との相加作用が考えられる。

デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

ここで気になるのはCYP3Aを誘導する薬剤との相互作用。
デエビゴ(はCYP3A4で代謝されるわけですから、CYP3A阻害剤は血中濃度やAUCを上昇させ、CYP3A誘導剤は血中濃度やAUCを低下させます。
注目はリファンピシンに関する記述。
デエビゴのCmaxを92%減少、AUC(0-inf)を97%減少って、ほとんど効果が失われるということですよね。

リファンピシン飲んでいると効果なくなるってことだよね。これって併用禁忌でもいいのでは・・・。

CYP3A4阻害剤併用時の用量調節

強力なCYP3A阻害剤は併用禁忌ではありませんが、用量調節の対象となります。

用法及び用量に関連する使用上の注意

  • 4.CYP3Aを阻害する薬剤との併用により、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強されるおそれがある。CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で、本剤投与の可否を判断すること。なお、併用する場合は1日1回2.5mgとすること。

デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

「CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤」との併用は禁忌ではありませんが、推奨されてはおらず、併用する場合は1日2.5mgにする必要があります。

これについては審査結果報告書に詳しいデータが記載されています。
レンボレキサントと強いCYP3A阻害剤を併用した場合のデータは以下のようになっています。

  • レンボレキサント未変化体のAUC0-∞:4倍
  • レンボレキサント未変化体のCmax:36〜60%上昇

また、レンボレキサント2.5mgと中〜強のCYP3A阻害薬併用時のデータは以下のとおりです。

  • AUC0-inf:レンボレキサント10mg単独投与と類似
  • Cmax:レンボレキサント5mg単独投与と類似

ということで、2.5mgにしても通常用量の5mgと同等というわけではなく、暴露量(≒AUC)に関しては10mgと同等になっています。
臨床試験の結果では、10mg投与では傾眠、睡眠時麻痺等増加、レム睡眠潜時の短縮の副作用が増加しています。
なので、「CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤」と併用する場合に、デエビゴ錠を2.5mg/日にしたら安心というわけではなく、10mg投与しているものとして副作用に注意する必要があるということになりますね。

ちなみにレンボレキサントと弱いCYP3A阻害薬併用した場合のAUC0-tは1.77倍(予測値)、Cmaxは1.21倍(予測値)とされています。

CYP3A阻害薬とデエビゴ・ベルソムラ

デエビゴ・ベルソムラとCYP3A阻害薬を併用する場合の用量を表にまとめてみます。

併用する3A4阻害薬の強さデエビゴ
(レンボレキサント)
ベルソムラ
(スボレキサント)
強い
2.5mg
禁忌
2.5mg
10mg
弱い
5mg(最大10mg)
10mg
なし
5mg(最大10mg)
20mg(高齢者15mg)

あくまでも添付文書に記載されている用量であり、記載通りに減量しても通常より副作用に注意が必要になります。

「夢」に関する副作用

オレキシン受容体拮抗薬であるデエビゴはベルソムラ同様にレム睡眠を延長させるという特徴があります。
人間はレム睡眠(浅い眠り)の際に夢を見ます。
これまで使用されていたベンゾジアゼピン系などの睡眠薬の場合、レム睡眠は抑制されていました。
ですが、オレキシン受容体拮抗薬の場合はレム睡眠の時間が増加させるため、夢を見ることが増える傾向にあります。
そのことが副作用にも反映されています。

副作用
その他の副作用

  • 神経系障害:睡眠時麻痺(1〜3%未満)
  • 精神障害:異常な夢、悪夢(1〜3%未満)
  • 精神障害:幻覚、錯乱状態(1%未満)

デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

精神疾患やストレスを抱えている方で、悪夢が多く見られる場合は薬剤の変更を検討しないといけない可能性がありますね。

運転禁止薬

デエビゴ錠は他の不眠症治療薬と同様に運転禁止薬となっています。

使用上の注意
重要な基本的注意
1.本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

副作用
その他の副作用

  • 神経系障害:傾眠(3%以上)
  • 神経系障害:注意力障害(1%未満)

デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社

一包化が可能!

そしてこれこそがデエビゴ錠の一番の特徴!
と思っている人も多いのではないでしょうか?
デエビゴ錠は一包化調剤が可能です。

IV. 製剤に関する項目
4. 製剤の各種条件下における安定性
デエビゴ錠 2.5mg、5mg及び10mg

試験保存条件保存形態保存期間試験項目結果
無包装温度・湿度40°C/75%RHポリエチレン容器
(開放)
12ヵ月外観
類縁物質
溶出性
含量
いずれの試験項目においても
変化なし
総照度120万lx・hr以上+
総近紫外放射エネルギー200W・hr/㎡以上
シャーレ
(開放)

デエビゴ錠 インタビューフォーム エーザイ株式会社

高齢者に使いやすくて一包化できるのはかなり嬉しい!

RMPに記載されている内容について

RMPに記載されているリスクは以下の通りです。

  • 重要な特定されたリスク
    • 睡眠時麻痺
    • 傾眠
  • 重要な潜在的リスク
    • ナルコレプシー症状
    • 乱用の可能性
    • 自殺念慮及び自殺行動
    • 睡眠時随伴症

※重大な副作用は記載なし

RMPに関しては過剰に不安になる必要はないのですが、薬剤師としては頭の片隅においておくようにしたいですね。

睡眠時麻痺(重要な特定されたリスク)

レム睡眠時は脳は起きているけど、体は眠っている状態です。
このタイミングで目を覚ましてしまうと、目が覚めているのに体が動かないという状態になってしまいます。
これを睡眠時麻痺と言います。(いわゆる金縛りです)
通常、睡眠はノンレム睡眠から開始されますが、レム睡眠から開始してしまった時に睡眠時麻痺が起こりやすくなります。
デエビゴ錠の臨床試験において、睡眠時麻痺は5mg服用では報告されていませんが、10mg服用で報告されています。

傾眠(重要な特定されたリスク)

傾眠については臨床試験では5mg服用と比較して10mg服用の方が多く報告されています。
つまり、用量依存的に起こる副作用です。
傾眠の副作用は事故などに繋がる危険もあるので注意が必要です。
減量の必要がないとは言っても影響が大きいとされる高齢者、腎機能障害、肝機能障害、弱いCYP3A阻害薬併用時などは傾眠のリスクが高まることが予想されます。

ナルコレプシー症状(重要な潜在的リスク)

オレキシンに関する説明に記載した通り、オレキシンの働きとナルコレプシーには強い関連があります。
そのため、オレキシン受容体拮抗薬であるレンボレキサントはナルコレプシー様症状を引き起こす可能性を否定できません。
RMPには以下のように記載されています。

重要な潜在的リスクとした理由:
本剤はオレキシン受容体拮抗剤であり,オレキシン受容体(OX1R, OX2R)を介したオレキシン(神経ペプチド)による覚醒の安定化及び睡眠抑制を拮抗する。オレキシン受容体欠損マウスではナルコレプシー症状を呈することが示されている。本剤は,マウスにおいて,高用量で陽性情動刺激によりカタプレキシー様症状を誘発した。
日本を含む国際共同第3相試験(国際共同303試験 投与第1期)において,「ナルコレプシー症状」関連の有害事象として「入眠時幻覚」,「覚醒時幻覚」,「カタプレキシー」が認められた。その関連の有害事象の発現はプラセボ群 0%(0/319例)に対し,本剤5mg群 0.3%(1/314例),10mg群 1.3%(4/314例)であり,10mg群で高かった。「カタプレキシー」の有害事象は1例のみであった。
「ナルコレプシー症状」は臨床試験での発現状況から本剤との因果関係を特定するには至らないものの,作用機序から発現する可能性が示唆されるため,重要な潜在的リスクとして設定した。
デエビゴ錠2.5mg デエビゴ錠5mg デエビゴ錠10mg に係る医薬品リスク管理計画書

乱用の可能性(重要な潜在的リスク)

BZP系薬剤と比較して乱用リスクは少ないとされているオレキシン受容体拮抗薬ですが、リスクが完全に否定されているわけではありません。
RMPには以下のように記載されています。

重要な潜在的リスクとした理由:
本剤の臨床試験(103試験)において,薬物乱用に対する影響を検討した。娯楽目的の多剤使用経験のある健康成人39例に本剤10,20又は30mgを投与したとき,本剤の薬物嗜好性及びその他の乱用傾向に関する主観的評価は,ゾルピデム30mg及びスボレキサント40mgと同程度であった。
本剤による「乱用の可能性」を否定できないことから,重要な潜在的リスクとして設定した。
デエビゴ錠2.5mg デエビゴ錠5mg デエビゴ錠10mg に係る医薬品リスク管理計画書

自殺念慮及び自殺行動(重要な潜在的リスク)

自殺に関連する作用があるわけではありませんが、中枢系に作用する薬剤である以上、考慮しなくてはいけない内容ですね。
日本を含む国際共同第3相試験で「自殺念慮及び自殺行動」関連の有害事象として「企図的過量投与」が認められています。
また、自殺念慮についてはプラセボ群、デエビゴ錠5mg群、デエビゴ錠10mg群で自殺念慮及び自殺行動の発現状況に差はありませんでした。
ただし、一般的に不眠症治療薬服用時には自殺のリスクが上昇することを踏まえて重要な潜在的リスクとして設定されています。

睡眠時随伴症(重要な潜在的リスク)

睡眠時麻痺も睡眠時随伴症の一種ではないかと思うのですが、薬剤師の性質上起こりうる副作用かと思います。
RMPには以下のように記載されています。

重要な潜在的リスクとした理由:
日本を含む国際共同第3相試験(303試験 投与第1期)において,「睡眠時随伴症」関連の有害事象として「悪夢」,「異常な夢」,「爆発頭部症候群」が認められた。その関連の有害事象の発現はプラセボ群 2.2%(7/319例)に対し,本剤5mg群 3.2%(10/314例),10mg群 3.5%(11/314例)であった。
プラセボ群と比較して明らかな差異はないものの,睡眠時随伴症は不眠症治療薬の使用に関連して報告されている事象であり,発現した場合に外傷・事故等の重大なリスクが引き起こされるおそれがあることから,重要な潜在的リスクとして設定した。
デエビゴ錠2.5mg デエビゴ錠5mg デエビゴ錠10mg に係る医薬品リスク管理計画書

爆発頭部症候群・・・。
なんかすごい名前の副作用が出てきました。
初めて聞いたの調べてみました。

爆発頭部症候群

頭内爆発音症候群(EHS*12
寝入りの瞬間や浅い睡眠が続いた時、目覚めた直後に爆発音や短時間の大きな幻聴が発生する状態。

だそうです。
睡眠時に脳内の音を処理するエリアにエラーが起きた際に生じる症状のようです。

臨床試験とその成績

代表的な臨床試験データについてまとめておきます。

SUNRISE1試験(E2006-G000-304試験、外国304試験)

海外で実施された第Ⅲ相臨床試験で55歳以上の不眠症患者を対象として2用量のデエビゴを1ヶ月間投与した時の夜間睡眠ポリグラフ検査(PSG(()))を用いた客観的評価による有効性の優越性をプラセボと比較検討した多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験(JAMA Netw Open. 2019 Dec 2;2(12):e1918254.)です。
副次評価項目に実薬(ゾルピデムER)を対照としたLPSの比較が組み込まれています。
※ゾルピデムERは日本国内では未承認のゾルピデムの徐放製剤です。

SUNRISE1試験の概要

  • 主要評価項目:睡眠潜時(LPS*13)のベースラインからの変化量(Day29/30、プラセボ群との比較)
  • 対象:不眠症患者1,006例(プラセボ群208例、デエビゴ5mg群266例、デエビゴ10mg群269例、ゾルピデムER6.26mg群263例)
    • 男性65歳以上、女性55歳以上
    • 主観的評価による中途覚醒時間(sWASO*14)が60分以上ある夜が週3夜以上(スクリーニング前4週間、導入期前、ベースライン前)
    • 客観的評価によるsWASOが60分以上(スクリーニング前)
    • 総就床時間7〜9時間、就床時刻21〜0時、起床時刻5〜9時(スクリーニング時)
    • 不眠症重症度質問表(ISI*15)スコアが13以上(スクリーニング時及び導入期)
  • 試験デザイン:他施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ及び実薬対照、並行群間比較試験
  • 方法:デエビゴ5mg群、10mg群、ゾルピデムER6.25mg群又はプラセボ群のいずれかに5:5:5:4の比率で無作為化に割り付け、1日1回、毎晩の就床時刻(眠ろうとする時刻)の直前に30日間経口投与した。

主要評価項目であるPSGによる29/30日目の入眠潜時の変化は5mg群及び10mg群ともにプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められており、米国睡眠医学会の診療ガイドラインにおいて臨床的に意義のある変化量の域値であるとされている10分間以上の改善が認められました。
また、同じく中途覚醒についても、29/30日目の時点で5mg群及び10mg群ともに域値である20分を上回って改善しています。
副次評価項目であるゾルピデムERとの比較ですが、デエビゴ群はゾルピデムER群と比較して、客観的にも主観的にも睡眠潜時の短縮が見られました。
有害事象として報告されたのは傾眠、悪夢、浮動性めまい等でした。
傾眠について高度な事象は10mg群の1例のみでした。

SUNRISE2試験(E2006-G000-303試験、国際共同303試験)

日本人を含めて実施

された第Ⅲ相臨床試験で不眠症患者を対象として2用量のデエビゴを6ヶ月間投与した時の睡眠日誌を用いた主観的評価による有効性の優越性を検証したプラセボ対照、多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験です。

SUNRISE2試験の概要

  • 主要評価項目:睡眠潜時のベースラインからの変化量(投与6ヶ月時)
  • 対象:不眠症患者949例(成人[18〜64歳]:687例、高齢者[65歳以上]:262例)(プラセボ群:318例、デエビゴ5mg群316例、デエビゴ10mg群315例)
    • 18歳以上
    • 主観的評価による睡眠潜時(sSOL*16)が30分以上ある夜が週3夜以上(スクリーニング前4週間、導入期前、ベースライン前)
    • 主観的評価によるsWASOが60分以上ある夜が週3夜以上(スクリーニング前4週間、導入期前、ベースライン前)
    • 総就床時間7〜9時間、就床時刻21〜1時、起床時刻5〜10時(スクリーニング時)
    • ISIスコアが15以上(スクリーニング時及びベースライン時)
  • 試験デザイン:他施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
  • 方法:投与第1期においては(1〜6ヶ月時)デエビゴ5mg群、10mg群又はプラセボ群のいずれかに無作為化に割り付け、1日1回、毎晩の就床時刻(眠ろうとする時刻)の直前(5分以内)に経口投与した。投与第2期(7〜12ヶ月時)においては、プラセボ群においては2回目の無作為化を実施し、デエビゴ5mg群又は10mg群のいずれかに無作為に割り付けた。投与第1期にデエビゴを投与していた患者については、継続して6ヶ月間、同じ用量で経口投与した。

主要評価項目である6ヶ月時点での主観的入眠潜時の短縮は5mg群及び10mg群ともにプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善が認められています。
主観的入眠潜時の短縮は投与初期(投与開始7日間)から認められ、いずれの評価時点(7日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月)においても有意差をつけて改善しています。
副次評価項目である投与6ヶ月時の主観的睡眠効率及び主観的中途覚醒時間についても、いずれの評価時点においても5mg群及び10mg群ともにプラセボ群と比較して改善が認められています。
有害事象として報告されたのは傾眠、悪夢、浮動性めまい等で、投与開始7日以内が比較的多かったようです。
傾眠について高度な事象はプラセボ群の1例のみでした。

まとめと感想

最後にデエビゴについてのまとめと雑感について書いておきたいと思います。
デエビゴの特徴をまとめると以下のようになります。

デエビゴの特徴

  • 2番目のオレキシン受容体拮抗薬
  • 高齢者でも減量の必要がない
  • 効果不十分の場合に10mgまで増量可能
  • 二次性不眠症に使用可能
  • 併用禁忌がない
  • 一包化調剤が可能

従来の睡眠薬と比較して安全性が高いと言われていますが注意点がないわけではありません。

デエビゴの注意点

  • 運転禁止薬
  • 中〜高度CYP3A阻害薬併用時には2.5mgに減量(AUCは10mg服用時と同等)
  • 重度の肝機能障害は禁忌、中等度の肝機能障害は5mgまで
  • 悪夢、睡眠時麻痺、
  • 用量依存的に傾眠が増加するので増量時や患者背景には注意

併用禁忌がなかったり、高齢者の用量調節が不要になってはいますが、その分、注意が必要になっているイメージです。
これについては実際に使用が増えないと分からない部分ではありますが・・・。

デエビゴとベルソムラの比較

デエビゴとベルソムラを表でまとめて比較します。

医薬品名
(成分名)
デエビゴ錠(レンボレキサント)ベルソムラ錠(スボレキサント)
規格2.5mg/5mg/10mg10mg/15mg/20mg
禁忌過敏症の既往歴
重度の肝機能障害
過敏症の既往歴
CYP3Aを強く阻害する薬剤
適応不眠症不眠症
二次性不眠症に対する有効性・安全性は未確立
用法・用量1日1回5mg 就寝直前
最大10mg
1日1回20mg 就寝直前
高齢者 1日1回15mg 就寝直前
用法・用量
に関する注意
中等度〜強力なCYP3A阻害薬と併用:1日1回2.5mg
中等度肝機能障害:1日1回5mgを超えない
CYP3A阻害薬と併用:1日1回10mg
併用禁忌なし強いCYP3A阻害薬
併用注意CYP3A4阻害薬
CYP3A4誘導薬
中枢神経抑制剤
アルコール
CYP3A4阻害薬
強いCYP3A誘導薬
ジゴキシン
中枢神経抑制剤
アルコール
取扱い上の注意なし服用直前にPTPシートから取り出す
子ぺんぎん(ジェンツー)
併用禁忌がないのは嬉しいけど、CY3A4阻害薬と併用する際に用量調節がいるのは変わらないね。
ぺんぎん薬剤師
なんと言ってもデエビゴは一包化調剤が可能!
子ぺんぎん(ジェンツー)
高齢者に対する用量制限がなく、通常量(5mg)から増量(10mg)可能なのも特徴だね。
ぺんぎん薬剤師
とは言っても薬物相互作用や肝機能障害で血中濃度の増減もあるし、高用量では傾眠の副作用が増える傾向にあるのだから、用量調節できることがいいことばかりとは言えないよね。用量が固定されているベルソムラの方が使いやすいって可能性もあるかもよ。しばらくは様子見が必要だね。

どんな可能性がある?

同じオレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ(スボレキサント)はせん妄に対する予防効果が期待され、いくつかの研究が行われています。
デエビゴ(レンボレキサント)についても同様の効果が期待されますが、まだそのような報告はありません。
ベルソムラもそのような適応を取得しているわけではありませんが、今後、研究が進むことによって適応が拡大していく可能性もあります。
新薬と言うことでどのように成長していくのか、また、予期せぬ有害事象が起きてしまわないか注視していきたいと思います。

デエビゴ(レンボレキサント)の最新情報

m3.comに登録している方は検索機能を利用して「レンボレキサント」で検索すると下記のようなデエビゴに関する最新の臨床ニュースを閲覧することができます。
デエビゴの臨床試験の結果について紹介された記事が閲覧可能です。

m3.com レンボレキサント検索結果

今後、学会や論文などで新しい報告がされればそれが記事として公開されるはずですから定期的にチェックしたいですね!
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参考とした資料

参考とした資料をまとめておきます。

*1:Gamma-AminoButyric Acid

*2:Rapid Eye Movement

*3:BenZoDiazepine

*4:OreXin 1 Receptor

*5:OreXin 2 Receptor

*6:Dorsal Raphe nucleus

*7:LateroDorsal Tegmental nucleus

*8:PedunculoPontine Tegmental nucleus

*9:Dual Orexin Receptor Antagonist

*10:Diagnostic and Statistical Manual of mental disorders

*11:International Classification of Sleep Disorders

*12:Exploding Head Syndrome

*13:Latency to onset of Persistent Sleep

*14:subjective Wake After Sleep Onset

*15:Insomnia Severity Index

*16:subjective Sleep Onset Latency

 

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