ビベスピエアロスフィアの特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【LAMA/LABA配合吸入薬】

2019年9月4日、ビベスピエアロスフィア28吸入が発売されました。
同日発売されたビレーズトリと同様にエアロスフィアを吸入デバイスとするpMDIです。
ウルティブロ吸入用カプセル、アノーロエリプタ、スピオルトレスピマットに続く4番目のLAMA/LABA配合吸入薬で、pMDIでは初めてのLAMA/LABA配合吸入薬になります。

ちなみに、同時発売のICS/LAMA/LABA配合のビレーズトリエアロスフィアに関する記事もあります。

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2019年9月4日、ビレーズトリエアロスフィア56吸入が発売されました。 テリルジーエリプタに続く2番目の3剤配合吸入薬で、pMDIでの3剤配合薬は初めてです。 テリルジーと同様にCOPDに対する適応のみを取得しています。 […]

ビベスピエアロスフィアってどんな薬?

ビベスピエアロスフィアは慢性閉塞性肺疾患(COPD*1)に対する適応で製造承認を取得しています。
LAMA*2/LABA*3の配合吸入薬の配合吸入薬はウルティブロ吸入用カプセル、アノーロエリプタ、スピオルトレスピマットに続いて4製品目になります。
ウルティブロ吸入用カプセル(ブリーズヘラー)、アノーロエリプタがDPI*4、スピオルトレスピマットがSMI*5なのに対してエアロスフィアはpMDI*6になります。
pMDIを含めMDI*7として初のLAMA/LABA配合吸入薬です。

基本情報

医薬品名ビベスピエアロスフィア28吸入
ビベスピエアロスフィア120吸入(薬価未収載)
開発コードPT010
成分名グリコピロニウム臭化物、ホルモテロールフマル酸塩水和物
英語名Bevespi Aerosphere 56 inhalations
Bevespi Aerosphere 120 inhalations
製造販売元アストラゼネカ
命名の由来ビベスピ(Bevespi):優れた2剤配合剤で呼吸を届けるという狙いから、「Bi」(2剤配合剤)、「Best」(一番の)、「spi」(respire:呼吸するの意)を合わせて「Bevespi」と名付けられた。
エアロスフィア(Aerosphere):薬剤結晶と比べて比重の軽い担体がキャリアとなって薬剤を送達させる技術を用いたことから、空気のように軽い「Aero」と担体の「sphere」をとって「Aerosphere」と名付けられた。
効能・効果慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法・用量通常、成人には、1回2吸入(グリコピロニウムとして14.4µg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6µg)を1日2回吸入投与する。
指定等なし
審議2019年5月30日付 薬食審第二部会
承認日2019年6月19日
薬価収載日
収載時薬価
2019年9月4日
ビベスピエアロスフィア28吸入:1,787.0円/キット
薬価算定方式新医療用配合剤の特例
シーブリ吸入用カプセル50μg(薬価:194.10円/cap)の1日薬価194.10円、オーキシス9μgタービュヘイラー60吸入(薬価:3,419.60円/キット)の1日薬価114.00円を元に薬価を算出
販売開始2019年9月4日(薬価収載即日発売)
新医薬品の
投与日数制限
解除済(2020年9月末日まで)
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2019年8月28日、厚生労働省の中医協総会が開かれ、新薬12製品(12成分17品目)の薬価収載を了承、9月4日に薬価収載されました。 前回(5月22日)に薬価収載見送りとなっていた鉄乏性貧血治療薬のフェインジェクト(カルボキシマルトース[…]

薬価は独自の算定方法

※薬価に関しては薬価収載時の情報を元に記載しているので改定後の薬価とは異なりますのでご注意ください

ビベスピエアロスフィア28吸入用の薬価(1,787.0円/キット)はシーブリ吸入用カプセル50μg、オーキシス9μgタービュヘイラー60吸入の薬価を元に、新医療用配合剤の特例(自社品の薬価と最も高い他社品の薬価の合計の0.8倍、オーキシスが自社製品に該当)で算定されています。

  • シーブリ吸入用カプセル50μg:194.10円/cap
  • オーキシス9μgタービュヘイラー60吸入:3,419.60円/キット(1日薬価:114.00円)

※2019年9月末までの薬価

194.10+114.0=308.1 これを0.8倍して308.1×0.8=246.48
ビベスピエアロスフィア28吸入 1キットは7日分なので246.48×7=1,725.36
これにキット代等の修正を加えて1787.0円/キットとなっています。

他のLAMA/LABA配合吸入薬の薬価と比較してみましょう。

ビベスピエアロスフィア28吸入:1787.0円/キット(255.28円/日)

  • スピオルトレスピマット28吸入用:3875.60円/キット(276.79円/日))
  • スピオルトレスピマット60吸入用:7709.20円/キット(256.97円/日))
  • アノーロエリプタ7吸入用:1847.70円/キット(263.95円/日))
  • アノーロエリプタ30吸入用:7700.30円/キット(256.68円/日))
  • ウルティブロ吸入用カプセル:245.50円/カプセル

ビべスピはウルティブロよりは若干高く、スピオルトやアノーロよりは若干安くなっています。

COPDとビべスピの作用機序

COPDと気管支喘息についての基礎知識とビべスピの作用機序についてまとめていきます。

COPDとは?

ビべスピエアロスフィアは慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する適応で承認されました。まずは慢性閉塞性肺疾患について簡単に説明したいと思います。

COPDとはタバコや大気中の有害物質などで肺が長期間持続して炎症を起こすことで、呼吸機能の低下を起こしてしまう疾患です。日本のCOPD患者の原因の90%は喫煙と言われています。

呼吸により有害物質を肺に取り込むと気管支が刺激され炎症を起こしてしまいます。それが何年も続くと、気管支表面の炎症は慢性的にひどくなっていき、気管支はどんどん細くなります。
症状が進行すると炎症は気管支の奥にある肺胞まで到達します。肺胞は酸素と二酸化炭素を交換する役割を持っている肺の重要な組織ですが、本来は弾力性を持っています。私たちは肺胞の弾力性により吸った息を吐くことができるのですが、COPDが進行すると肺胞の弾力性が失われてしまうために、吸った息を吐くことができなくなってしまうわけです。

このように気管支や肺胞の慢性的な炎症により呼吸機能の低下を引き起こすのが慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。COPDの治療は薬物療法が中心となりますが、COPD症状は基本的には一度進行すると元に戻りません。早い段階で治療を開始し、進行を遅らせることが大事になります。

COPDの薬物療法

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版 ポイント解説(Boehringer Ingelheim)には以下のように記載されています。

  • 治療は、薬物療法と非薬物療法を行う。薬物療法では、単剤で不十分な場合は、LAMA、LABA 併用(LAMA/LABA配合薬の使用も可)とする。
  • 喘息病態の合併が考えられる場合はICSを併用するが、LABA/ICS配合薬も可。
    引用元:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5 ポイント解説(Boehringer Ingelheim

COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版」によると、COPDに対してICSを使用するのは「喘息病態の合併が考えられる場合(エイコー:ACO*10)」とされています。「COPD患者の15~20%にACOが見込まれる」ため、LAMA/LABAに加えてICSが必要となるケース(つまりはCOPDに対してビべスピを使用するケース)もその程度ということになります。

有効成分と作用機序

ビべスピはLAMAとしてグリコピロニウム臭化物(GLY*9)、LABAとしてホルモテロールフマル酸塩水和物(FM*10)を配合した薬剤です。GLY/FMの組み合わせは初めてです。

  • ウルティブロ:GLY/IND*10
  • アノーロ:UMEC*11/VI*12
  • スピオルト:TIO*13/OLO*14
  • ビベスピ:GLY/FM

気管支拡張薬(LAMA/LABA)の作用機序

ビべスピエアロスフィアには長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)としてグリコピロニウム臭化物、長時間作用性β2受容体刺激薬(LABA)としてホルモテロールフマル酸塩水和物が含まれています。LABAもLAMAも気道平滑筋を弛緩することで気管支拡張作用を発揮します。

それぞれの作用についてまとめます。

LAMAの作用機序

気道平滑筋は副交感神経(迷走神経)の刺激により収縮し、交感神経の刺激により弛緩します。副交感神経節後線維終末から放出されるアセチルコリン(Ach)が気道平滑筋細胞のムスカリンM3受容体に結合すると気道平滑筋が収縮します。
気道に関連するムスカリン受容体には他にもM1、M2のサブタイプが存在しています。(ムスカリン受容体としてはM1〜M5まで存在)M1受容体は神経節に存在し、神経伝達に関与しています。M2受容体は副交感神経終末に存在し、アセチルコリンが結合することで副交感神経終末からのアセチルコリンの放出を抑制するネガティブフィードバックの機能を持つ受容体です。気管支拡張作用(気道平滑筋の弛緩)にはM1受容体とM3受容体を選択的に阻害し、M2受容体を阻害しないことが理想的です。短時間作用性抗コリン薬(SAMA*13)と比較して、LAMAではM3受容体に対する選択性を持つものが多くなっています。

グリコピロニウム臭化物の特徴

グリコピロニウムは長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)、いわゆる長時間作用型の抗コリン薬です。アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制して気管支を拡張させます。
一般的にヒト肺組織におけるM3受容体密度は中枢気道に近いほど高いとされています1)

1)Mak JC & Barnes PJ. Am Rev Respir Dis. 1990; 141: 1559-1568. PMID: 2350099

  • スピリーバ吸入用カプセル18μg(チオトロピウム臭化物水和物)
  • スピリーバ1.25μgレスピマット60吸入※1(チオトロピウム臭化物水和物)
  • スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入※2(チオトロピウム臭化物水和物)
  • シーブリ吸入用カプセル50μg(グリコピロニウム臭化物)
  • エクリラ400μgジェヌエア(アクリジニウム臭化物)
  • エンクラッセ62.5μgエリプタ(ウメクリジニウム臭化物)

※1:COPDに対する適応なし(喘息適応のみ)
※2:COPDと喘息の適応
上記以外は全てCOPDに対する適応のみ

子ぺんぎん(ジェンツー)
グリコピロニウムを含有するpMDIはビベスピ(とビレーズトリ)が初めてです。

LABAの作用機序

気道平滑筋細胞にはβ2受容体が存在しており、刺激を受けると以下のような流れで気道平滑筋が弛緩されます。

  1. 気道平滑筋細胞にのβ2受容体刺激
  2. アデニル酸シクラーゼの活性化
  3. 細胞内cAMP濃度の上昇
  4. プロテインキナーゼAの活性化
  5. 気道平滑筋の弛緩

LABAが登場する前のβ2刺激薬はサルブタモール硫酸塩(サルタノール/ベネトリン)、プロカテロール塩酸塩水和物(メプチン)に代表されるSABA*14(短時間作用型β2刺激薬)のみでした。SABAという呼び名からも分かるように効果が短いためリリーバー(発作治療薬)として使用されていました。
その後、LABAが開発され、今では気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD((Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の治療薬(コントローラー)として広く使用されています。LABAの持つ疎水性の側鎖はβ2受容体の非活性部位に強力に結合します。その状態で親水性部分が受容体の活性部位に結合することで、長時間にわたってβ2受容体を刺激します。LABAは気道平滑筋のβ2受容体を刺激する直接的な作用に加えて、コリン作動性神経終末のβ2受容体を刺激することによりアセチルコリンの遊離を抑制(ムスカリンM3受容体の刺激を抑制)して間接的な作用で気道を拡張します。

LABA:ホルモテロールフマル酸塩水和物

ホルモテロールは長時間作用性β2刺激薬(LABA)です。
アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩させ、気管支を拡張させます。
一般的にヒト肺組織におけるβ2受容体密度は末梢気道に近いほど高いとされています2)
LABAは効果の持続性に優れているのが特徴ですが、ホルモテロールは即効性も併せ持っています。

2)Ikeda T et al. Br J Pharmacol. 2012; 166: 1804-1814. PMID: 22300233

  • セレベント25ロタディスク(サルメテロールキシナホ酸塩)
  • セレベント50ロタディスク(サルメテロールキシナホ酸塩)
  • セレベント50ディスカス(サルメテロールキシナホ酸塩)
  • オーキシス9μgタービュヘイラー(ホルモテロールフマル酸塩水和物)

※:セレベントはCOPDと喘息の適応、オーキシスはCOPDのみの適応

子ぺんぎん(ジェンツー)
吸入LABA単剤って意外と少ないですね。
吸入以外では貼付剤としてホクナリンテープ(ツロブテロール)もあります。

参考までにβ2刺激薬の作用発現時間を記載しておきます。

β2刺激薬の作用発現時間

  • インダカテロール:7.8±0.7分
  • ホルモテロール:5.8±0.7分
  • サルメテロール:19.4±4.3分
  • サルブタモール:11.0±4.0分

単離ヒト気管支に対してβ2刺激薬を投与した際の作用発現時間(Naline E, et al. Eur Respir J. 2007;29:575-581.)

配合吸入薬を用いるメリットは?

配合剤にすることで1回でまとめて使用できるため、使用が容易になり使用忘れも防ぐことができます。内服に比べて手技が煩雑な吸入薬ではこのメリットがより大きくなります。また、LAMA、LABAはそれぞれ単独で使用した場合と比較して併用することで効果が強くなることが知られてます。

LAMA/LABA

ヒト気管支において、β2受容体は末梢気道に多く分布しており、M3受容体は肺中枢に多く分布しています。そのため、肺全体に気管支拡張効果を得るためにはLABAとLAMAの併用が有用であると考えられています。さらに、LAMA/LABA配合吸入薬では2剤を同時吸入するため肺の同じ部分で作用し、単独使用の組み合わせ以上の効果を期待できると考えられています。そのポイントとなるのがLABAのアセチルコリンに対する作用です。LABAは副交感神経終末からのアセチルコリンの遊離を抑制するため、LAMAのM3受容体に対する抗コリン作用を増強します。


3)Cazzola M & Molimard M. Pulm Pharmacol Ther. 2010; 23: 257-267. PMID: 20381630

新規デバイス エアロスフィアとは?

エアロスフィアは新規のpMDIですが、その特徴はデバイスの構造ではなく、担体として使用される多孔性粒子(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン及び塩化カルシウム水和物から成る)にあると理解しています。
個人的にはこれが非常に面白いと感じたので少し詳しくまとめてみたいと思います。
(資料にはあまり詳しく掲載されていないので、MRさんから聞いた内容や個人的な理解・解釈も含みます)

多孔性粒子を用いることで得られる特徴

多孔性粒子とは粒子にいっぱい穴が開いたものです。

活性炭とか軽石みたいなイメージですね。

ビべスピ(ビレーズトリも)の担体の粒子径は約3μmで、この大きさは肺の中枢から抹消に薬剤を到達させるのに適している言われています。ただ、粒子径が小さくなるとその分、薬剤が接着する面積が小さくなり、3種類の薬剤を均等に接着させるのは難しくなってしまいます。
エアロスフィアで担体に多孔性粒子を採用している理由の一つがここです。
同じ粒子径で比較した場合、通常の粒子と比較して多孔性粒子は表面積が大きくなります。担体として使用することで、薬剤の接着部位も広がり、均等に薬剤を吸着させやすくなるというわけです。また、粒子径に加えて比重が軽いことも薬剤を中枢まで到達させる要因になっているようです。

ここから書く内容は説明会でMRさんが口頭で説明してくれたもので資料には掲載されていないのですが・・・。
多孔性粒子とすることで、同じ粒子径のものと比較して比重が軽くなります。
比重が軽いことで、落下しにくく、吸着しにくく、つまり拡散性が低くなります。
その結果、噴霧後の滞留時間が長くなり、pMDIの課題である同調の難しさが少し解消されるというメリットもあるようです。(極端に言うと噴霧後、空中に留まっている状態なのでスペーサーを使っているのに近い状態)
具体的なデータ等はないのだと思いますが(拡散性が少ないことを示す動画はありました)、とても面白い性質だと思いました。

また、多孔性粒子は肺サーファクタントと同様にリン脂質で構成されているため、肺や気道の表面に沈着しやすいと考えられています。

  • pMDIなので吸気速度が低下していても使用可能
  • 粒子径約3μmの担体を使用することで肺抹消から肺中枢まで薬剤が到達可能
  • 担体に多孔性粒子を採用
  • 薬剤を均等に吸着
  • 空気中の滞留時間が長いため同調の必要性が低い

治療学的特徴

インタビューフォームには下記の通り治療学的特徴がまとめられています。

I.概要に関する項目
2.製品の治療学的特性

  • 有効性
    • 速やかかつ優れた呼吸機能改善効果
      • ビベスピエアロスフィアは吸入5分で中等症から最重症のCOPD患者のFEV1を改善した。
      • ビベスピエアロスフィアは中等症から最重症のCOPD患者の12~24週のトラフFEV1を改善した。
  • 安全性
    重大な副作用として、心房細動(0.1%)、重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)が報告されている。主な副作用(1%未満)として、口内乾燥、悪心、頭痛、浮動性めまい、落ち着きのなさ、不眠症、振戦、頻脈、動悸、筋痙縮、尿閉、胸痛、過敏症が報告されている。
    添付文書の副作用の項及び臨床成績の項の安全性の結果を参照すること。

引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 インタビューフォーム

DI

ここからはビベスピエアロスフィアの添付文書・インタビューフォーム・RMPについて詳しく見ていきたいと思います。

禁忌

外用とは言っても抗コリン薬であるグリコピロニウムを含むため、閉塞隅角緑内障と前立腺肥大等による排尿障害が禁忌となっています。

禁忌
2.1 閉塞隅角緑内障の患者
2.2 前立腺肥大等による排尿障害がある患者
2.3 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

効能・効果

効能・効果は「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」となっています。
以下の通り、効能・効果に関連する注意にも記載されていますが、あくまでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期管理に使用する薬剤で、COPDの急性増悪や気管支喘息に使用することはできません。

5. 効能・効果に関連する注意
5.1 本剤は慢性閉塞性肺疾患の症状の長期管理に用いること。本剤は慢性閉塞性肺疾患の増悪時における急性期治療を目的として使用する薬剤ではない。
5.2 本剤は気管支喘息治療を目的とした薬剤ではないため、気管支喘息治療の目的には使用しないこと。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

用法・用量

用法・用量は「通常、成人には、1回2吸入(グリコピロニウムとして14.4µg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6µg)を1日2回吸入投与する。」となっています。
ちなみにオーキシス1吸入=ホルモテロールフマル酸塩水和物9μgなので、ビベスピのホルモテロール含有量の方が少し多くなっています。
シーブリ・ウルティブロは1capにグリコピロニウム50μgなので一見ビベスピの方が少なく見えますが、DPIとpMDIによる差なので同等と考えて問題ないかと思います。
(類薬であるスピリーバカプセル1capにチオトロピウム18μg、スピリーバレスピマット2吸入チオトロピウム5μgでおよそ3.6倍の差がある)

LAMA/LABA配合吸入剤に新たな選択肢

ビベスピエアロスフィアはpMDIなのでSMIであるスピオルトと同様に十分な呼気速度を確保できない患者さんでも使用可能です。
ただし、噴霧と呼吸のタイミングを合わせる必要があります。
(SMIであるスピオルトは吸気のタイミングを合わせる必要性が低い)
ただ、エアロスフィアは従来のpMDIよりも同調の必要性が低いのかもしれません。
(正確な資料で言われているわけではないので、あくまでもその傾向があるのでは?という話です)
逆にDPIであるウルティブロ吸入用カプセル、アノーロエリプタは自発呼吸により吸入を行うため、COPDが悪化して十分な呼気速度を出せない患者さんの場合には使用が困難になります。
ただし、吸気の同期を行う必要はありません。
患者さんの状態・状況に応じた薬剤の選択肢の一つになりますね。

使用する上での注意点

外用薬とはいえ医薬品ですし、複数の成分を含んでいるわけですから注意点はいっぱいあります。
ですが、LAMA、LABA、そして吸入薬に一般的な注意点がほとんどで、ビベスピ特有の注意点は少ないです。

あくまでも長期管理を目的として使用される薬剤

ビベスピに限らず、LABA、LAMA全般に言えることですが、あくまでも長期管理を目的として使用される薬剤です。ですので他のコントローラーとして使用される薬剤と同様の注意が記載されています。

5.効能・効果に関連する注意
5.1 本剤は慢性閉塞性肺疾患の症状の長期管理に用いること。本剤は慢性閉塞性肺疾患の増悪時における急性期治療を目的として使用する薬剤ではない。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

急性憎悪に対してはSABA*15などの使用が考慮されるべきです。
また、中止した場合に症状が悪化する恐れがあるので自己判断での中止がないように指導を行わないといけません。

8.重要な基本的注意
8.3 本剤の投与期間中に発現する慢性閉塞性肺疾患の急性増悪に対しては、短時間作用性吸入β2刺激剤等の他の適切な薬剤を使用するよう患者に注意を与えること。また、その薬剤の使用量が増加したり、あるいは効果が十分でなくなってきた場合には、疾患の管理が十分でないことが考えられるので、可及的速やかに医療機関を受診し医師の治療を求めるよう患者に注意を与えること。
8.4 本剤の投与中止により症状が悪化するおそれがあるので、患者自身の判断で本剤の使用を中止することがないよう指導すること。また、投与を中止する場合には、観察を十分に行うこと。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

吸入後の気管支痙攣

製剤によって記載は様々ですが、気管支痙攣も吸入薬全般に記載されている注意になります。

8.重要な基本的注意
8.2 気管支痙攣が認められた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。他の吸入薬と同様、本剤の吸入後に気管支痙攣が誘発されるおそれがある。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

RMPに記載されている内容について

RMPに記載されているリスクは以下の通りです。

  • 重要な特定されたリスク:
    • 心血管系事象
    • 重篤な血清カリウム値の低下
  • 重要な潜在的リスク:喘息に関連した死亡、入院及び挿管
  • 重要な不足情報:なし

一つずつまとめていきます。

心血管系事象

LAMAによる催不整脈作用がリスクと考えられています。

重要な特定されたリスクとした理由:
心血管系事象は、本剤の有効成分に含まれる長時間作用性抗コリン薬(以下LAMA)において既に知られている催不整脈作用に関連して発現する可能性があると考えられ、また、類薬において当該事象の発現リスクの増加が懸念されていることから、本剤においても重要な特定されたリスクに設定した。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入RMP

添付文書の中でも複数箇所に記載されています。

8.重要な基本的注意
8.5 過度に本剤の使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあるので、用法・用量を超えて投与しないよう注意すること。また、患者に対し、本剤の過度の使用による危険性について理解させ、用法・用量を超えて使用しないよう注意を与えること。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心血管障害(虚血性心疾患 、不整脈、心不全等)及びQT間隔延長のある患者
β1作用により、症状を増悪させるおそれがある。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.1心房細動(0.1%)
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

重篤な血清カリウム値の低下

血清カリウムの低下はホルモテロールに由来する副作用です。

重要な特定されたリスクとした理由:
有効成分にFFを含む類薬の国内市販後の使用経験において、重篤な血清カリウム値の低下が認められた症例が報告されていることから、本剤においても重要な特定されたリスクに設定した。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入RMP

添付文書にも記載されています。

9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.6 低カリウム血症の患者
Na+/K+ATPaseを活性化し細胞外カリウムを細胞内へ移動させることにより低カリウム血症を増悪させるおそれがある。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

11.副作用
11.1 重大な副作用
11.1.2 重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

喘息に関連した死亡、入院及び挿管

ホルモテロールの類薬(サルメテロール)による喘息関連死リスクと喘息に使用するICSとしては用量が不十分であることを踏まえてリスクとされています。

重要な潜在的リスクとした理由:
本剤の配合成分のひとつであるホルモテロール(長時間作用性β2刺激薬:以下LABA)の類薬であるサルメテロールに関して、米国で実施された大規模試験SMART(Salmeterol Multicenter Asthma Research Trial)において、標準的な喘息療法に加えてサルメテロールの投与を受けた喘息患者では、プラセボ投与を受けた患者と比較して喘息関連死のリスクが高いことが示された。
本リスクは喘息患者におけるLABA単剤による喘息関連の重篤な副作用の発現リスクの増加であるが、本剤が適応となるCOPD患者においては、気管支喘息を合併している患者も存在することが予測され、このような患者では気管支喘息の治療が適切に行われる必要性があることから、注意喚起のために重要な潜在的リスクとして設定した。
なお、気管支喘息患者における本剤の安全性及び有効性は確立されておらず、本剤に気管支喘息の適応はない。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入RMP

9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.7 気管支喘息の患者
気管支喘息の管理が十分行われるよう注意すること。
引用元:ビベスピエアロスフィア28吸入 添付文書

ビベスピエアロスフィアの使用方法

ビベスピエアロスフィアの使用方法について詳しく見ていきます。
患者向医薬品ガイドの最後に使用方法の説明書が添付されているのでそれを見ればわかりやすいです。
ビベスピエアロスフィア28吸入 患者向医薬品ガイド
他のpMDIと同じようなものかと思うと、少し異なるのでポイントを押さえておきたいですね。

エアロスフィア各部の名称

ビベスピエアロスフィア28吸入 患者向医薬品ガイド

ボンベの上部に残量目盛りがついているのは珍しいですね!
吸入デバイス本体をアクチュエーターっていうんですね・・・。

ビベスピエアロスフィアの初回操作

pMDIなので初回の空噴霧が必要となります。
未使用の場合の空噴霧は4回ですが、他と異なるのはよく振ってからまとめて4回噴霧ではなく、「よく振ってから空噴霧」を4回繰り返すという点です。
ビベスピエアロスフィア28吸入 患者向医薬品ガイド

振る→空噴霧→振る→空噴霧→振る→空噴霧→振る→空噴霧
という形になりますね。

ビベスピエアロスフィアの吸入方法

これはもう画像の通りです。
ビベスピエアロスフィア28吸入 患者向医薬品ガイド

「よく振る→軽く息を吐く→吸入口を加えゆっくり深く息を吸いながら噴霧→3秒息止め→ゆっくり息を吐く」を2回繰り返します。
使用後には口の中や喉に残った薬を洗い流すためにうがいをしっかり行います。

ビベスピエアロスフィア28吸入は32吸入使える?

ビベスピエアロスフィアには残量を示す小窓がついています。
ビベスピエアロスフィア28吸入 患者向医薬品ガイド

30→15→0と残量の目安がわかるようになっているのですが、これを見るとビベスピエアロスフィア28吸入は新品状態で32吸入分くらいの薬剤が入っていることがわかります。
28吸入が治療に使用するものですが、4吸入は初回の空噴霧分、ということですね。

ちなみに、同時発売のビレーズトリエアロスフィアは1週間ごとに洗浄と空噴霧が必要となっています。
ビベスピエアロスフィア28吸入は1キット1週間分なのでその点は省略されていますね。

まとめ・雑感

今回は新規pMDIデバイス エアロスフィアを用いたLAMA/LABA配合吸入薬 ビベスピエアロスフィアについてまとめました。
新規開発されたエアロスフィアはアストラゼネカが一つの会社を買収してまでして導入したデバイスです。
最大の特徴はデバイスの構造ではなく、担体に多孔性粒子使用していること。
これにより、薬剤が付着する担体の比重が軽くなり、肺抹消から肺中枢まで薬剤を到達させることを可能としています。

すでに、ウルティブロ吸入用カプセル、アノーロエリプタ、スピオルトレスピマットが発売されているためLAMA/LABA配合吸入薬としては4製品目ということになります。
この状況下でどの程度採用されるかは、今後のエアロスフィアの評価にかかっていますね。

参考にしたページや資料

*1:Chronic Obstructive Pulmonary Disease

*2:Long-Acting Muscarinic Antagonist:長時間作用性抗コリン薬

*3:Long-Acting Beta2-Agonists:長時間作用性β2刺激薬

*4:Dry Powder Inhaler:ドライパウダー吸入器

*5:Soft Mist Inhaler:ソフトミスト吸入器

*6:pressurized MeterDose Inhaker:加圧式定量噴霧吸入器

*7:Metered Dose Inhaler:定量噴霧吸入器

*8:GLYcopyrronium bromide

*9:ForMoterol fumarate hydrate

*10:INDacaterol maleate:インダカテロールマレイン酸塩

*11:UMEClidinium bromide:ウメクリジニウム臭化物

*12:VIlanterol:ビランテロールトリフェニル酢酸塩

*13:TIOtropium bromide hydrate:チオトロピウム臭化物水和物

*14:OLOdaterol hydrochloride:オロダテロール塩酸塩

*15:Short Acting Beta2-Agonist:短時間作用性β2刺激薬

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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