平成30年2月7日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2018年度診療報酬改定案を了承し、加藤勝信厚生労働相に答申しました。
個別の改定項目については少しずつまとめて行こうと思います。
今回は調剤基本料についてまとめます。
調剤基本料の改定内容について
P470〜471
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
【IV-7 効率性等に応じた薬局の評価の推進-①】
①いわゆる門前薬局の評価の見直し
骨子<IV-7(1)(2)(3)(4)>
- 第1 基本的な考え方:
- 医薬品の備蓄等の効率性や医療経済実態調査に基づく薬局の収益状況等を踏まえ、現行の処方箋受付回数及び特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤割合に基づく調剤基本料の特例対象範囲について拡大するとともに、特に大型の門前薬局について、更なる評価の見直しを行う。また、同様に医薬品の備蓄等の効率性も考慮し、いわゆる同一敷地内薬局の評価を見直す。
- 薬価調査が適切に実施される環境整備を図るため、「流通改善ガイドライン」を踏まえ、調剤基本料等に係る未妥結減算制度を見直す。
- 第2 具体的な内容:
- 現行の処方箋受付回数及び特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤割合に基づく調剤基本料の特例対象範囲について以下のとおり拡大する。
- (1)調剤基本料3について、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の基準を引き下げる。
- (2)調剤基本料3について、グループ全体の処方箋受付回数が多い、特に大型の門前薬局の評価をさらに適正化する。
- (3)調剤基本料2について、処方箋の受付回数が 2,000回を超える保険薬局における特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の基準を引き下げる。
- (4)調剤基本料2について、以下の場合を追加する。
- ①当該保険薬局の所在する建物内に複数保険医療機関が所在する場合にあっては、当該保険医療機関からの処方箋を全て合算した回数が一定数を超える場合。
- ②同一グループに属する他の保険薬局において、保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が最も高い保険医療機関が同一の場合は、当該他の保険薬局の処方箋を含めた受付回数が一定数を超える場合。
- (5)特定の医療機関との不動産取引の関係がある等のいわゆる同一敷地内薬局に対する評価を見直す。
- 保険薬局の調剤基本料について、簡素化も考慮し、未妥結減算及び薬剤師のかかりつけ機能に係る業務を実施していない場合の減算を統合する。
調剤基本料についての改定
今回は調剤基本料についてまとめます。
これまでは集中率や妥結率によって5種類+1種類に分けられ、それぞれにかかりつけ業務の実績不十分の際の減算が存在していました。
今回の改定で、調剤基本料は4種類+1種類に整理され、妥結率についてはかかりつけ業務の実績不十分と統合され、減算の条件に含まれることになりました。
- 旧 調剤基本料1:41点 → 新 調剤基本料1:41点(±)
- 旧 調剤基本料2:25点 → 新 調剤基本料2:25点(±)
- 旧 調剤基本料3:20点 → 新 調剤基本料3:イ20点(±)、ロ15点(−)
- 旧 調剤基本料4:31点 → 廃止
- 旧 調剤基本料5:19点 → 廃止
- 特別調剤基本料:15点 → 10点(−)
調剤基本料3のロ 15点!
特別調剤基本料 10点!!
かなり衝撃的な点数ですね。。。
医療ビル・モールも対象となる調剤基本料2
P472〜473
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
調剤基本料2
- イ:以下のいずれかに該当する保険薬局。ただし調剤基本料3のイ、調剤基本料3のロ又は調剤基本料の注2の(1)に該当する保険薬局を除く。
- 処方せんの受付回数が1月に4,000回を超える保険薬局(特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が7割を超えるものに限る。)
- 処方箋の受付回数が1月に2,000回を超えること(特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が8割5分を超える場合に限る。)
- 特定の保険医療機関に係る処方箋の受付回数(当該保険薬局の所在する建物内に複数保険医療機関が所在する場合にあっては、当該保険医療機関からの処方箋を全て合算した回数とする。)が 月4,000回を超えること
- 特定の保険医療機関に係る処 方箋の受付回数(同一グループに属する他の保険薬局において、保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が最も高い保険医療機関が同一の場合は、当該他の保険薬局の処方箋の受付回数を含む。)が月4,000回を超えること
ロ:妥結率が5割を超える保険薬局
集中率の高い門前薬局を対象とした調剤基本料2については、
- 集中率70%以上で処方箋の受付回数4,000回/月を超える薬局
- 集中率85%以上で処方箋の受付回数2,000回/月を超える薬局(改定前は90%)
- 特定の医療機関による処方箋の(薬局の所在する建物に所在する全ての医療機関を合計)の受付回数が4,000回を超える(医療ビルの場合は建物内の全ての医療機関の処方箋受付回数を合計する旨が追加)
- 特定の医療機関による処方箋の(同一グループ内で集中率の最も高い医療機関が同一の場合は他の薬局の受付回数を含む)の受付回数が4,000回を超える(同一グループについての考え方が追加)
以上4つのいずれかに該当する薬局が対象となっています。
点数こそ変わらず25点のままですが、医療ビル・モール(薬局の所在する建物に所在する全ての医療機関を合計)に対する対応や同一医療機関の門前に作られたグループ薬局(同一グループ内で集中率の最も高い医療機関が同一の場合は他の薬局の受付回数を含む)など、かなり具体的に対象を絞り込んでいますね。
受付回数2000回超の薬局に課せられる集中率も85%になりました。どのような形であれ経営効率の高い薬局は調剤基本料1は取りにくくなっていますね。
平面型で各医療機関が第三者である地主と賃貸借契約を結んでいるタイプの医療モールであれば効率的なのかな?
大型チェーン薬局を対象とする調剤基本料3
P473〜474
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
調剤基本料3のイ
- 同一グループの保険薬局における処方箋受付回数の合計が1月に4万回を超えて、40万回以下のグループに属する保険薬局のうち、以下のいずれかに該当する保険薬局。 ただし、調剤基本料3のロ又は調剤基本料の注2の(1)に該当する保険薬局を除く。
- 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が8割5分を超える保険薬局
- 特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局
ロ:妥結率が5割を超える保険薬局
調剤基本料3のロ
- 同一グループの保険薬局における処方箋受付回数の合計が1月に40万回を超えるグループに属する保険薬局のうち、以下のいずれかに該当する保険薬局。ただし、調剤基本料の注2の(1)に該当する保険薬局を除く。
- 特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が8割5分を超える保険薬局
- 特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局
ロ:妥結率が5割を超える保険薬局
大規模チェーン薬局を対象にした調剤基本料3については、これまでのグループ内の処方箋受付回数4万回を超える場合に加えて、さらに上の40万回を超える場合が追加になっています。
新たに加わった40万回を超える場合は15点です・・・。
- 同一グループの処方箋受付回数が4万回を超えて40万回以下のグループに所属する薬局:20点
- 同一グループの処方箋受付回数が40万回を超えるグループに所属する薬局:15点
グループに所属する薬局が調剤基本料3になる場合の条件については集中率が厳しくなっています。
- 特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が8割5分を超える保険薬局(改定前は9割5分)
- 特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局
集中率に関する部分が95%超から85%超になったことで、前回の改定では何とか免れていたけど今回で対象になる薬局はけっこう多いのではないでしょうか?
それとも大手チェーンなんかはこの改定を見越して集中率を下げてたりするんでしょうか?
そんな方法があるのかは知りませんが。。。
さらに。
40万回を超える薬局となるとだいぶ限られると思います。
1日平均80枚前後の薬局だと200店舗以上必要になります。
全国規模のチェーン薬局は該当しますね。
日本調剤など具体的に対象を絞り込んでいると言ってもいい内容なのではないでしょうか?
敷地内薬局が対象に!?特別調剤基本料
P471〜472,475〜476
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
注2:別に厚生労働大臣が定める保険薬局においては、注1本文の規定にかかわらず、特別調剤基本料として、処方箋の受付1回につき10点を算定する。
[調剤基本料注2に規定する厚生労 働大臣が定める保険薬局]
次のいずれかに該当する保険薬局であること。
- 病院である保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局であって、当該病院に係る処方箋による調剤の割合が9割5分を超えること。
- 調剤基本料1、2、3のイ及び 3のロのいずれにも該当しない保険薬局
前回改定では特別調剤基本料は調剤基本料3(チェーン薬局に対する特例)の未妥結減算(妥結率50%以下)が対象となっていました。
短冊を見たときは完全に気づいていませんでしたが、特別調剤基本料に敷地内薬局を思わせる内容が追加されているんですね。
病院との特別な関係って?
問題となるのは以下の部分です。
病院である保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局
この文章が病院と同一の敷地内にある薬局を指しているという話になっています。
大病院の敷地内に誘致されている薬局が該当するのは当然として、診療所や個人病院が該当するかどうかが気になります。
でも、「病院」と記載されている以上、「診療所」は対象にならないのかな?
(でも、この記事の最初に掲載した見出しの具体的な内容の中では病院ではなく医療機関となっていますね。。。)
診療所が対象となる場合、薬局と診療所が直接的に不動産取引を行っているケースは少ないと思います。
土地の所有者がいて、診療所と薬局がそれぞれ所有者と賃貸契約を結んでいるケースがほとんどではないでしょうか?
そう言った場合、特別調剤基本料の対象となるのかならないのか・・・?
「その他の特別な関係を有している」という一文の解釈も気になるところですね。
かかりつけ業務の実績に加え妥結率等の報告内容も減算の対象に
P476
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
注3:別に厚生労働大臣が定める保険薬局においては、所定点数の100分の50に相当する点数により算定する。
[調剤基本料の注3に規定する保険薬局]
次のいずれかに該当する保険薬局であること
- 当該保険薬局における医療用医薬品の取引価格の妥結率に係る状況について、地方厚生局長等に定期的に報告し、妥結率が5割以下であること。
- 当該保険薬局における医療用医薬品の取引価格の妥結率、単品単価契約率及び一律値引き契約に係る状況について、地方厚生局長等に定期的に報告していない保険薬局であること。
- 薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的な業務を1年間実施していない保険薬局。ただし、処方箋の受付回数が1月に600回以下の保険薬局を除く。
- 妥結率が5割以下
- 単品単価契約率・一律値引き契約の定期報告を行っていない
- 薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的な業務を1年間実施していない保険薬局(受付回数600回以下の薬局を除く)
以上の内容に該当する場合は、調剤基本料が1/2に減算になります。
調剤基本料の特例の除外はやはり厳しそう
P81〜82
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
【I-2 かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価 – 7】
⑦地域医療に貢献する薬局の評価 骨子<I-2(9)>
第2 具体的な内容
- 医療資源の少ない地域の中で、医療提供体制が特に限定的な区域に所 在する薬局について、調剤基本料の特例対象から除外する。
[調剤基本料の注1ただし書きに規定する施設基準]
次のすべてに該当する保険薬局であること。
- イ:「基本診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第62号)の別表第六の二に規定する地域に所在すること。
- ロ:当該保険薬局が所在する特定の区域内において、保険医療機関数(歯科医療を担当するものを除く。)が10以下であって、許可病床数200床以上の保険医療機関が存在しないこと。ただし、特定の保険医療機関に係る処方箋の調剤割合が7割を超える場合であって、当該保険医療機関が特定区域外に所在するものについては、当該保険医療機関を含むものとする。
- ハ:処方箋受付回数が一月に2,500回を超えないこと。
P475
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193510.pdf
(1)次のすべてに該当する保険薬局であること。
- イ:「基本診療料の施設基準等」(平成20年厚生労働省告示第62号)の別表第六の二に規定する地域に所在すること。
- ロ:当該保険薬局が所在する特定の区域内において、保険医療機関数(歯科医療を担当するものを除く。)の数が10以下であって、許可病床の数が200床以上の保険医療機関が存在しないこと。ただし、特定の保険医療機関に係る処方箋の調剤割合が7割を超える場合であって、当該保険医療機関が特定区域外に所在するものについては、当該保険医療機関を含むものとする。
- ハ:処方箋受付回数が一月に2500 回を超えないこと。
前回改定では、
- 当該保険薬局に勤務している薬剤師の5割以上がかかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に適合した薬剤師であること。
- かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料にかかる業務について相当な実績を有していること。(薬剤師一人当たり月100件以上算定(自己負担のない患者を除く))
が特例除外の条件でしたが、これは削除されています。
今回、特例除外の対象となるのは「医療資源の少ない地域」です。
そういった地域の場合、集中率が高くなるのはやむを得ないというのが理由です。
対象地域はまた別にまとめるとして、気になるのは「ハ:処方箋受付回数が一月に2500 回を超えないこと。」。
月に2,500回って、日に100回前後ですよね?
これは厳しいなぁ。。。
まとめ
調剤基本料についてはさすがにチェーン薬局に対して厳しい改定になっています。
各科の改定率とは別に、
上記のほか、いわゆる大型門前薬局に対する評価の適正化の措置を講ずる。
と表記されていたわけですから、ある程度予想はしていましたが。。。
ただ、高い家賃や土地代を払って敷地内薬局を作った方や医療ビルの建設した人にとってのダメージは計り知れないものがあります。
患者さんの利便性という意味では地域に貢献できているケースもあるんじゃないかと思いますし、経営努力として認めてもいいんじゃないかとな思うんですが。。。
もちろん、金儲け主義に傾いてしまっているようなケースはダメと思いますが。
そこまで規模の大きくない薬局で特別調剤基本料の対象となってしまうと、撤退や廃業の可能性も出てくるんじゃないかと思い心配です。
逆に大手チェーン薬局以外にとってはこれまでとそこまで大差ない点数配分になっているんじゃないかと思います。
調剤基本料2で受付回数2000回超に課せられる集中率のハードルはあがりましたがこれは想定の範囲内ではないでしょうか?
ただ、門前薬局による効率的な経営というのは難しくなっていますね。
薬局という業界に新規参入するのは今の時代は難しいということでしょう。
特に調剤基本料1を守り抜いた薬局については今回の改定はプラス改定になるんじゃないかと思います。
ただ、今回の改定のポイントは調剤基本料が薬局作りについてかなり具体的に縛りを付けたということだと思います。
国が理想とする薬局は地域に密着した面薬局なんだと思いますが、今後の改定でどんどんその方向に向かっていくのではないかと思います。
逆にそういう薬局にとってプラスになるような改定があってもいいんじゃないかなとは思いますけどね。