服薬情報等提供料に期待!調剤後の患者への継続的なケアへ~H28年(2016)調剤報酬改定⑦

いよいよ、明後日から改定後の対応が開始となります。
どの薬局も最後の対応に追われているころじゃないかと思います。
今日は服薬情報等提供料についてまとめます。

H28調剤報酬改定についての過去記事はこちらです。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。
解釈に変更等があれば随時更新する予定です。
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服薬情報等提供料と長期投薬情報提供料は一本化

これまで、

  • (旧)服薬情報等提供料:15点
  • (旧)長期投薬情報提供料1:18点
  • (旧)長期投薬情報提供料2:28点

の3つに分かれていたものが、(新)服薬情報等提供料:20点へと一本化されました。

ちなみに、(旧)服薬情報等提供料は平成24年改定で新設されたもので、(旧)服薬情報提供料と(旧)調剤情報等提供料が統合されたものでした。
それを踏まえてまとめると、

    • (旧)服薬情報等提供料
      • (旧)服薬情報提供料:服薬情報等、薬剤の適正使用に必要な情報を医療機関に情報提供
      • (旧)調剤情報提供料:処方された薬剤について、調剤上の問題について医療機関に情報提供
    • (旧)長期投薬情報提供料1:服薬期間中に薬剤の重要な情報が発生した場合に患者に情報提供
    • (旧)長期投薬情報提供料2:服薬期間中に患者からの質問に対して回答

といった感じです。

ただ、今回統合される長期投薬情報提供料1・2についてはあまり算定されていなかったんじゃないかと思います。
算定においてネックとなる部分があったためです。
長期投薬情報提供料1については、薬剤について重要な情報が発生した場合に情報提供を行う旨を、予め患者に説明し、同意を取っておかないと算定ができませんでした。
長期投薬情報提供料2については、患者に情報提供を行い、算定を行う旨を説明して同意を得ないと算定ができませんでした。

服薬情報等提供料の算定要件

まずは通知の内容をいていきます。

平成28年厚生労働省告示第52号
診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 別表第3(調剤点数表)
15の5 服薬情報等提供料:20点

  • 注1 患者、その家族等若しくは保険医療機関の求めがあった場合又は薬剤師がその必要性を認めた場合において、患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も患者の服用薬の情報等について把握し、患者、その家族等又は保険医療機関へ必要な情報提供、指導等を行った場合に、所定点数を算定する。なお、保険医療機関への情報提供については、服薬状況等を示す情報を文書により提供した場合に月1回に限り算定する。これらの内容等については薬剤服用歴に記録すること。
  • 注2 区分番号13の2に掲げるかかりつけ薬剤師指導料、区分番号13の3に掲げるかかりつけ薬剤師包括管理料又は区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定しない。

かかりつけ薬剤師に関する指導料においては、服薬情報等提供料で行われる内容が含まれているということで、服薬情報等提供料との同時算定は不可となっています。

服薬情報等提供料の具体的な算定要件

さらに細かい部分の通知をみていきます。
(旧)服薬情報等提供料の通知から変更された部分を下線で示しています。

平成28年3月4日 保医発0304第3号
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 別添3(調剤点数表)
区分15の5 服薬情報等提供料

  1. 服薬情報等提供料は、保険薬局において調剤後も患者の服用薬や服薬状況に関する情報等を把握し、患者若しくはその家族等又は保険医療機関に当該情報を提供することにより、医師の処方設計及び患者の服薬の継続又は中断の判断の参考とする等、保険医療機関と保険薬局の連携の下で医薬品の適正使用を推進することを目的とするものである。
  2. 服薬情報等提供料は、以下の場合に算定できる。
    • ア 処方せん発行保険医療機関から次の(イ)若しくは(ロ)に掲げる情報提供の求めがあった場合、又は保険薬局の薬剤師が薬剤服用歴に基づき患者の服薬に関する次の(イ)、(ロ)若しくは(ハ)、に掲げる情報提供の必要性を認めた場合にその理由とともに、患者の同意を得て、現に患者が受診している保険医療機関に対して、当該患者の服薬状況等について書面又は電子的な方法(以下「文書等」という。)により提供したときに算定できる。
      • (イ)当該患者の服用薬及び服薬状況
      • (ロ)当該患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等
      • (ハ)当該患者が容易に又は継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報
    • イ 患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該患者の次回の処方せん受付時に提供した情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を行った場合に算定できる。
      • (イ)緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報など、処方せん受付時に提供した薬剤情報以外の情報で患者の服薬期間中に新たに知り得た情報
      • (ロ)患者の服薬期間中に服薬状況の確認及び必要な指導
  3. ここでいう「服薬状況」とは、患者が薬剤の用法及び用量に従って服薬しているか否かに関する状況のほか服薬期間中の体調の変化等の患者の訴えに関する情報を含む。患者に自覚症状がある場合には、当該自覚症状が薬剤の副作用によるものか否かに関する分析結果も含めて情報提供することとし、また、患者に対する服薬指導は、当該分析結果を踏まえたものとする。なお、患者の自覚症状の分析に当たっては、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(厚生労働省)等を参考とすることが望ましい。
  4. 2のアについては、以下の場合も含まれる。
    • ア 保険薬局において患者の服用薬の残薬を確認し、処方せんを発行した保険医療機関に対して情報提供を行った場合
    • イ 「区分番号00」の調剤基本料の「注8」に掲げる分割調剤において、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等について確認し、処方医に対して情報提供を行った場合
    • ウ 保険医療機関からの求めに応じ、入院前の患者の服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合
  5. 2のアの(ハ)については、処方せんの記入上の疑義照会等では算定できない。
  6. 患者1人につき同一月に2回以上服薬情報等の提供を行った場合においても、月1回のみの算定とする。ただし、2以上の保険医療機関又は診療科に対して服薬情報等の提供を行った場合は、当該保険医療機関又は診療科ごとに月1回に限り算定できる。
  7. 保険医療機関への情報提供に当たっては、別紙様式1又はこれに準ずる様式の文書等に必要事項を記載し、患者が現に診療を受けている保険医療機関に交付し、当該文書等の写しを薬剤服用歴の記録に添付する等の方法により保存しておく。
  8. 2のイについて、患者の服薬期間中に新たに情報提供した事項、服薬期間中及び処方せん受付時に確認した患者の服薬状況等及び指導等については、情報提供の都度、薬剤服用歴の記録に記載する。
  9. 服薬情報等提供料は、「区分番号13の2」のかかりつけ薬剤師指導料、「区分番号13の3」かかりつけ薬剤師包括管理料又は「区分番号15」の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。
  10. 電子的方法によって、個々の患者の服薬に関する情報等を保険医療機関に提供する場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(平成25年10月)を遵守し、安全な通信環境を確保するとともに、書面における署名又は記名・押印に代わり、厚生労働省の定める準拠性監査基準を満たす保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI:Healthcare Public Key Infrastructure)による電子署名を施すこと。

 

新しい服薬情報等提供料は長期投薬情報提供料よりも算定しやすい?

2のイの部分がまさに(旧)長期投薬情報提供料に該当する部分ではないかと思います。

イ 患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該患者の次回の処方せん受付時に提供した情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を行った場合に算定できる。

  • (イ)緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報など、処方せん受付時に提供した薬剤情報以外の情報で患者の服薬期間中に新たに知り得た情報
  • (ロ)患者の服薬期間中に服薬状況の確認及び必要な指導

長期投薬情報提供料1にあった「あらかじめの同意を得ること」の文言が消えていることから、対応時の同意でよくなっているのではないかと思います。
また、長期投薬情報提供料2にあった「次回の処方せん(当初に受け付けた処方せんと同一の疾病又は負傷に係るものに限る。)」、「当該処方薬剤に係る問い合わせがあった場合に、本情報提供料の算定について患者の同意を得た上で」の文言が消えているので、処方箋の内容や算定に関する同意については気にしなくてもよくなったのかな・・・と思えます。
だとすると、かなり算定を行いやすくなったといえるのではないでしょうか?

服薬情報等提供料を算定する具体例

また、具体的に算定可能な例も記載されています。

4.2のアについては、以下の場合も含まれる。

  • ア 保険薬局において患者の服用薬の残薬を確認し、処方せんを発行した保険医療機関に対して情報提供を行った場合
  • イ 「区分番号00」の調剤基本料の「注8」に掲げる分割調剤において、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等について確認し、処方医に対して情報提供を行った場合
  • ウ 保険医療機関からの求めに応じ、入院前の患者の服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合

アについては、新しい処方箋様式において、
「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」が、「保険医療機関へ情報提供」となっていた場合が該当すると思います。
つまり、「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」に応じて、

  • 保険医療機関へ疑義照会した上で調剤→重複投薬・相互作用等防止加算を算定
  • 保険医療機関へ情報提供→次回、服薬情報等提供料を算定

といった形になりますね。

また、分割調剤時の二回目以降の報告でも算定可能。

さらに、服用薬の確認も算定可能の内容となっています。
これは、たとえば、患者がお薬手帳に記載されていない一包化薬を持参して、その内容を病院からの依頼で調べたケースも該当するのではないかな、と思います。

疑義解釈その1の服薬情報等提供料に関する部分

H28.3.31の疑義解釈その1で服薬情報等提供料に関する内容が回答されています。

(問51)服薬情報等提供料について、患者、その家族等へ必要な情報提供、指導等を行った場合は月1回の算定制限がないと考えてよいか。
(答)貴見のとおり。<<

(問52)服薬情報等提供料について、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している場合には算定できないこととされているが、同一月内でこれらの指導料等を算定していれば、服薬情報等提供料は算定できないのか。
(答)かかりつけ薬剤師指導料等を算定している月であれば、服薬情報等提供料に相当する業務も当該指導料等の中で行うことになるので、服薬情報等提供料は算定できない。

 

服薬情報等提供料と長期投薬情報提供料が統合されて何が変わった?

まず、長期投薬情報提供料に関する内容が算定しやすくなった(のではないか?疑義解釈が出ないとわかりませんね)ということ。
個人的に、長期投薬情報提供料が求める部分というのは、今後の医療において、とても重要な部分なのではないかと考えています。

服薬情報等提供料を算定できるケース

まず、どのような場合に服薬情報等提供料が算定可能になるかを考えてみます。

投薬時に気づいた情報を提供

上にも書きましたが、残薬についての情報提供がこれに該当します。
他にも、飲み忘れに際して、飲み方の工夫等を提案したことの報告。
次回から用法をまとめる提案、一包化の提案、一包化での調剤上の工夫、合剤等服用数を減らす提案等も可能だと思います。
また、お薬手帳を持っておらず、医師に併用薬を伝えていない患者さんの併用薬を確認した場合、その報告を行うことでも可能のはずです。
列挙してみると、

  • 残薬について
  • 残薬の解消方法について
    • 用法変更の提案
    • 一包化の提案
    • 一包化での工夫の報告(日付印字、貼り付け、お薬カレンダー等)
    • 剤数減の提案(合剤等)
  • 粉砕調剤の提案
  • 剤形変更の提案(口腔内崩壊錠への変更等)
  • 薬剤変更の提案
  • 併用薬の報告
  • 保管方法等の報告(通常の保管で問題が生じる場合)

などが考えられるのではないでしょうか?

投薬後(服用期間中)に気づいた情報を提供

投薬後に患者さんからの相談があった場合に回答した内容や次回処方時からの処方変更の提案等、緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報、回収情報等があった際に指導を行ったことについての報告等が該当します。
副作用・有害自称等についての報告以外は上記ケースとほぼ同じになりますが、普段から患者さんとコミュニケーションが取れていれば、普段の診察だけではDrが得ることのできない情報を薬局が知る機会は多いはずです。
また、残薬を持参してもらった場合、外来服薬支援料を算定して一包化、次回処方からの一包化指示の依頼を服薬情報等提供文書で報告するという流れも考えられます。
病院よりも相談のハードルが低いといわれている薬局だからこそ、服用期間中に気楽に相談してもらえるよう、こちらから呼びかけていくことで、服用中の様々な問題点を知ることができますし、それを医療機関と情報共有することで問題解決につながっていくはずです。
ブラウンバッグの活用や患者さんへの呼びかけを普段から行うことで、様々な問題の解決につながるのではないでしょうか?
副作用についての指導をしっかり行い、相談してもらえるよう工夫することも大切ですね。

薬局薬剤師に求められているもの

これからの医療は、地域包括ケアに代表されるように、病院から診療所、入院から在宅へとのシフトが加速度的に勧められていきます。
入院中の服薬管理と、外来での服薬管理。
この二つを比べたときに、もっとも問題となるのが、受診(通院)と受診(通院)の間です。
薬局で言えば調剤(来局)と調剤(来局)の間。
入院中はその期間、病院スタッフの管理化で服薬状況や副作用の有無、効果の有無を見ていくことができますが、外来ではそれは不可能です。
この部分を埋める役割がこれからの薬局薬剤師にあるのではないかと考えています。
かかりつけ薬剤師指導料でも求められている調剤後の患者への継続的なケアです。

まとめ~新しい服薬情報等提供料に期待されるもの

今回の服薬情報等提供料(同様の要件を含むかかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料)は、服薬期間中の患者への指導や管理、情報収集を求める内容です。
これまでもあった内容を統合しただけに思えますが、より、服薬期間中の管理を重要視した形になっているように思えます。
薬剤師が服薬期間中の患者に目を向け、その情報を把握、必要に応じて医療機関へ情報提供を行えるようになることで、今では点と点での管理になってしまっている外来診療を、入院中のような、より線での管理に近づけていくことが可能になるのではないかと思っています。
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現在、薬局が担っている管理方法としては在宅がもっとも線に近かったのかもしれませんが、服薬情報等提供料とかかりつけ薬剤師指導料(包括管理料)の登場で、より線に近い形での管理が求められるようになったのだと思います。
この部分をより意識して、これからの薬剤師は行動していくべきなのだと思います。

また、より算定しやすくなったことで、薬剤師の役割を医療機関や患者さんにアピールするチャンスでもありますね。
特に、医療機関への情報提供に関しては、今回の改定でいろんな部分で活性化をはかれるはずです。
服薬情報等提供料はそのひとつですね。

服薬情報等提供料に関する様式

最後に、参考までに、様式(服薬情報等提供料に係る情報提供書)の画像を添付しておきます。
どのようなタイミングで算定のチャンスがあるか、やるべきことやれることを見極めて準備しておきたいですね。
平成28年3月4日 保医発0304第3号
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
(別紙様式1)

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