薬剤師の脳みそ

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バフセオ錠(バダデュスタット)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【他のHIF-PH阻害薬との違いを比較】

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(ここからが記事本文になります)

2020年6月29日に承認された腎性貧血を適応とするバフセオ錠(成分名:バダデュスタット)についてまとめた記事です。
バフセオ錠はHIF-PH阻害薬と呼ばれる薬剤で、内因性エリスロポエチンの増加作用等により腎性貧血を改善する薬剤です。
これまで腎性貧血にはネスプ(成分名:ダルベポエチン アルファ)やミルセラ(成分名:エポエチン ベータ ペゴル)などのESA製剤が使用されてきましたが、HIF-PH阻害薬はそれに代わる薬剤(ポストネスプとも呼ばれます)として期待されています。
  
  
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バフセオについて

まずはバフセオ錠の承認の背景について簡単にまとめます。
バフセオ錠(バダデュスタット)は腎性貧血に対する適応を有するHIF-PH阻害薬(HIF-PHI*1)と呼ばれる薬剤です。
腎性貧血は腎機能の低下に伴いエリスロポエチン(EPO*2)の産生が低下することによって生じる貧血です。
これまでは腎性貧血の治療にはEPOの補給を行うためにネスプ(成分名:ダルベポエチン アルファ)やミルセラ(成分名:エポエチン ベータ ペゴル)などの赤血球造血刺激因子製剤(ESA*3製剤)が投与されてきました。
それに対してHIF-PH阻害薬は、HIFプロリン水酸化酵素(HIF-PH*4)を阻害することで、HIF経路を活性化させ、内因性EPOの産生を増やし、腎性貧血を改善する薬剤です。(このメカニズムの解明は2019年のノーベル医学・生理学賞を受賞しています)
その作用機序からHIF-PH阻害薬、HIF安定化薬、HIF活性化薬と呼ばれています。
これまで腎性貧血に対して使用されてきたESA製剤とは異なり、経口投与の薬剤のため透析を行っていない(透析と同時にESA製剤を投与できない)保存期CKDの患者さんのQOL改善が期待されていますが、唯一のHIF-PH阻害薬だったエベレンゾの適応は透析期の腎性貧血のみでした。
バフセオ(と同時に承認されたダーブロック)は保存期CKDの腎性貧血にも使用可能な初のHIF-PH阻害薬でHIF-PH阻害薬の大本命です。
この記事ではバフセオの特性や注意点などについて詳しく解説します。
  

バフセオの基本情報

基本情報をまとめます。

医薬品名 バフセオ錠150mg
バフセオ錠300mg
開発コード MT-6548
成分名 バダデュスタット
英語名 VAFSEO(Vadadustat)
製造販売元 田辺三菱製薬株式会社
命名の由来 特になし
効能・効果 腎性貧血
用法・用量 通常、成人にはバダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまでとする。
指定等 なし
審議 2020年5月29日付 薬食審第一部会
(web審議)
承認日 2020年6月29日
薬価収載日
収載時薬価
2020年8月26日
バフセオ錠150mg:213.50円/錠
バフセオ錠300mg:376.20円/錠
薬価算定方式 類似薬効比較方式(Ⅰ)
エベレンゾ錠100mg(薬価:1,399.00円/錠)の1日薬価457.00円を元にバフセオ錠300mgの薬価376.20円/錠(1日薬価457.00円)を算出
エベレンゾ錠100mgとエベレンゾ錠50mgの規格間比:0.8174を元に150mgの薬価を算出
販売開始 2020年8月26日(薬価収載即日発売)
新医薬品の
投与日数制限
対象(2021年8月末日まで)

ついに保存期CKDに使用可能なHIF-PH阻害薬が登場したんだね!

ESA製剤と比べると注射の負担がないので保存期CKDの患者さんのQOLを大きく改善することが可能な薬になりそうだね。

昨年(2019年)のノーベル医学生理学賞(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素の酸素感知および応答経路)を利用した薬剤なので作用機序もしっかり理解しておきたいね!

  
  

腎性貧血とバフセオの作用機序

まず、腎性貧血について簡単に説明してからバフセオの作用機序について説明していきます。
  

腎性貧血とは?

腎性貧血とは慢性腎臓病(CKD*5)の進行に伴い生じる貧血で、その主な原因は腎臓でエリスロポエチン(EPO)が十分に産生されなくなることです。
EPOは赤血球の産生を促進する造血因子の一つで、骨髄中の赤芽球系前駆細胞を刺激し、赤血球への分化と増殖を促進します。
エリスロポエチンの働き
  

CKDの基礎とeGFR

日本でのCKD患者数は1,330万人(成人の8人に1人)と考えられており、新たな国民病の一つと言われています。
CKDの原因は多岐に渡りますが、腎炎などの腎疾患だけでなく、自己免疫疾患、加齢、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)、薬の副作用など様々なものがあります。
その定義は「腎臓の構造または機能の異常が3カ月を超える場合」とされています。
CKDの定義

下記のいずれか(もしくは両方)が3ヶ月以上続く状態

  • 尿検査※1、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らか
  • eGFR※2 < 60ml/分/1.73㎡

※1:タンパク尿 ≧ 0.15g/gCr(アルブミン尿 ≧ 30mg/gCr)
※2:eGFR(ml/分/1.73㎡) = 194×Cr-1.094×年齢(歳)-0.287(女性は×0.739)

CKDが進行することで末期腎不全(ESKD*6)となり透析や腎移植が必要となってしまいます。
ですが、それ以上に問題になるのが心血管疾患(CVD*7)による死亡です。
CKD患者ではESDKに移行するリスクよりも死亡リスクの方が高くなっており、その原因はCVDによる死亡です。
そのため、CKDではCVDによる死亡を回避するために、腎機能だけでなく新血管リスクまでを考慮していくことが重要となります。(もう少し後で心腎貧血症候群という概念を説明します)
  
CKDの重症度は、原疾患(Cause)、腎機能(GFR)、蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)の頭文字をとったCGA分類で評価しますが、腎性貧血においては以下の表に示すeGFRによるステージ分類が目安となります。
CKDのステージ分類
CKDステージ
eGFR値 90以上 60〜89 30〜59 15〜29 15未満
腎臓病の程度 正常 CKD ESKD
軽度低下 中程度低下 高度低下
治療法 予防 食生活の改善・薬物療法 透析・腎移植
  

腎性貧血の発症機序

腎性貧血は「腎臓においてヘモグロビン(Hb)の低下に見合った十分量のエリスロポエチン(EPO)が産生されないことによって引き起こされる貧血であり、貧血の主因が腎障害(CKD)以外に求められないもの」と定義されています。
CKDステージ3以降に腎性貧血の頻度が増加しますが、合併症などによっては早期から貧血を起こす場合もあります。
  
日本人における腎性貧血の診断基準値は以下のようになっています。
JSDT腎性貧血ガイドライン2015による腎性貧血の診断基準
性別 60歳未満 60歳以上
70歳未満
70歳以上
男性 Hb<13.5g/dL Hb<12.0g/dL Hb<11.0g/dL
女性 Hb<11.5g/dL Hb<10.5g/dL Hb<10.5g/dL
  
腎性貧血の原因は主にEPOの産生不足とされていますが、他にも様々な原因が考えられます。
腎性貧血の原因

  1. 赤血球の造血抑制
    • EPO産生不足
    • 尿毒症性毒素による造血抑制
    • 高サイトカイン血症によるEPO感受性低下
  2. 赤血球寿命の短縮(尿毒素)
  3. 鉄代謝の障害(高ヘプシジン血症)
  4. 透析回路における残血、出血
  5. 栄養障害(ビタミン、葉酸など)

JSDT腎性貧血ガイドライン2015

貧血は心不全を悪化させる原因となり、腎性貧血が進行するほど末期腎不全への移行や死亡率が上昇します。(RENAAL試験のサブ解析)
貧血による虚血や酸化ストレスが体液貯留や炎症を引き起こすことで、心臓病や腎臓病の病態悪化に関与すると考えられており、心腎貧血症候群という概念として提唱されています。
  

腎性貧血の治療

腎性貧血と診断されたからと言って、必ずしもすぐに治療が必要となるわけではなく、治療開始は個々の状態によって判断されます。
特に腎性貧血においては健常者と同等のHb=13g/dl以上を目指した場合、有害事象が増え、予後が改善されないことが明らかになっています。(CREATE 研究、CHOIR研究)
そのためガイドラインでは、HD*8(血液透析)・PD*9(腹膜透析)・ND*10(保存期CKD)それぞれの場合において、死亡リスクの上昇、QOL低下のエビデンスを元に開始基準となるHb値と共に目標Hb値が定められています。

第 2 章 腎性貧血治療の目標Hb値と開始基準
CQ1.腎性貧血治療において維持すべき目標 Hb 値と開始基準は何か?
ステートメント 1

  1. 成人の血液透析(HD)患者の場合,維持すべき目標Hb値は週初めの採血で10g/dL以上12g/dL未満とし,複数回の検査でHb値10g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを推奨する.(1C)
  2. 成人の保存期慢性腎臓病(CKD)患者の場合,維持すべき目標Hb値は11g/dL以上13g/dL未満とし,複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案する.(2C)
    ただし,重篤な心・血管系疾患(CVD)の既往や合併のある患者,あるいは医学的に必要のある患者にはHb値12g/dLを超える場合に減量・休薬を考慮する.(not graded)
  3. 成人の腹膜透析(PD)患者の場合,維持すべき目標Hb値は11g/dL以上13g/dL未満とし,複数回の検査でHb値11g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案する.(2D)
    PD患者のESA投与方法は,基本的に保存期CKD患者に準じて考えることが望ましい.(not graded)
  4. HD,PD,保存期CKD患者のいずれにおいても,実際の診療においては個々の症例の病態に応じ,上記数値を参考として目標Hb値を定め治療することを推奨する.(1C)

慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン2015
HDを受けている場合、日本では週初め(月曜日or火曜日:中2日)の透析前に採血する施設がほとんどです。
その場合、循環血が除水を受ける直前なので、Hb値が最も低い(Hb濃度が薄い)状態での数値になるため、HDの場合のHb値はPD、NDの場合よりも低くなっています。
  
鉄補充療法を選択する場合
JSDT腎性貧血ガイドライン2015では、それまでESA投与が基本とされていた腎性貧血の治療が「ESA投与」と「鉄補充療法」のいずれか適切な方法で行うように変更されました。
当然ですが、鉄欠乏の状態だといくらEPOによる刺激があっても正常な赤血球が増加できないので貧血は改善しません。
その場合は鉄欠乏の治療を行う、もしくは鉄補給と同時にESA投与(HIF-PH阻害薬の投与)が必要となります。
  
参考までに鉄補充療法を選択する場合についてJSDT腎性貧血ガイドライン2015では以下のように記載されています。

第 4 章 鉄の評価と補充療法
CQ2:鉄の評価はどのような方法が推奨されるか?
ステートメント 2

  1. 貧血を合併するCKD患者は鉄欠乏・鉄過剰となることがあるため定期的な鉄評価を行う(鉄投与中は月1回,非投与時には3か月に1回程度).(not graded)
  2. 鉄評価には血清フェリチン値,TSATを用いることを推奨する.(1C)

CQ3:鉄剤の投与・中止基準は何か?
ステートメント 3-1

  1. ESA製剤も鉄剤も投与されておらず目標Hb値が維持できない患者において,血清フェリチン値が50ng/mL未満の場合,ESA投与に先行した鉄補充療法を提案する.(2D)
  2. ESA投与下で目標Hb値が維持できない患者において,血清フェリチン値が100ng/mL未満かつTSATが20%未満の場合,鉄補充療法を推奨する.(1B)

ステートメント 3-2

  1. ESA投与下で目標Hb値が維持できない患者において,以下の両者を満たす場合には鉄補充療法を提案する.(2C)
    • 鉄利用率を低下させる病態が認められない場合
    • 血清フェリチン値が100ng/mL未満またはTSATが20%未満の場合
  2. 血清フェリチン値が300ng/mL以上となる鉄補充療法は推奨しない.(2D)
※このステートメントは,作成ワーキンググループ会議にて全会一致ではなく2/3以上の合意をもって採択された 唯一の記載である.したがって,この内容に関してはまだ議論が多く残されていると考えている.

慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン2015
  

HIF-PH阻害薬の作用機序

いよいよここからはバフセオの作用機序についてまとめていきたいと思います。
バフセオの有効成分バダデュスタットはPHDを阻害することでHIF経路を活性化(HIF-PH阻害薬)し、腎性貧血に対して効果を発揮します。
中心となるのはエリスロポエチン(EPO)産生促進ですが、HIFの活性化による様々な作用により腎性貧血を改善します。
HIF活性化による作用

  1. EPO産生促進
  2. 腸管の鉄吸収促進に関わる遺伝子の転写促進
  3. トランスフェリン・トランスフェリン受容体遺伝子の転写促進
  4. ヘプシジンの産生・放出の抑制

腎性貧血の治療で従来使用されてきたESA製剤に置き換わる薬剤となります。

これまで腎性貧血について深く関わる機会がなかった薬局もHIF-PH阻害薬の登場で腎性貧血に関わる機会が増えるかも!

まずは中心的な作用となるEPOの産生促進について解説していきます。
  

HIF経路によるエリスロポエチン産生

HIF-PH阻害薬によるEPO産生促進のメカニズムを知るために、まずは腎臓でHIFがどのように働いてEPOが産生されるかについて解説します。
  
エリスロポエチンは主に腎臓の近位尿細管周辺の間質に存在する繊維芽細胞様細胞(EPO産生細胞)で生成されます。
貧血により腎血流量が低下し、酸素供給が低下した結果、EPO産生細胞の酸素分圧が低下します。
この酸素分圧の低下に呼応してEPOの産生が高まるのですが、そこで中心的な役割を果たすのが低酸素誘導因子(HIF)です。
HIF経路
HIFはαサブユニット(HIFα)とβサブユニット(HIFβ、ARNT*11)からなる2量体の転写因子です。
HIFはEPO遺伝子の転写を促進する働きを持っています。
※HIFにはHIF1、HIF2、HIF3が存在し、それぞれのαサブユニットとしてHIF1α、HIF2α、HIF3αが存在しますが、この記事の中では特に区別していません。
HIFαは細胞質に存在し、核内でHIFβと結合して2量体(HIF)となり、EPO遺伝子の転写を促進します。
細胞質にはHIFαのプロリンを水酸化するプロリン水酸化酵素(PHD*12)が存在しています。
PHDはHIFαのプロリンを水酸化し、プロリンが水酸化されたHIFαは細胞質内のユビキチン・プロテアソームにより分解されてしまいます。
PHDは酸素存在化で活性化される酵素です。
そのため、貧血によりEPO産生細胞の酸素分圧が低下(酸素が不足)するとEPOの産生量が増加して貧血が改善されます。
このように、HIF経路によるEPO産生ではPHDが酸素センサーの役割を果たし、EPOの産生量を調整しています。
  
腎障害時のHIF経路
ですが、腎障害時にはHIF経路がうまく機能してくれません。
正常な腎臓では尿細管でのNa再吸収が活発に行われることで酸素が消費されています。
そのため、酸素供給が低下すると、酸素消費と酸素供給のバランスが崩れて酸素分圧が低下(酸素が不足)します。
酸素がない環境ではPHDが抑制されるため、HIFが活性化しEPOの産生が増加します。
正常な腎臓でのEPO産生調節
腎機能が低下した場合は、尿細管の機能が低下しているため、酸素の消費量が減少しています。
酸素消費量が少ない場合、酸素供給量が低下しても酸素分圧がそれほど低下しない(酸素が不足しない)ため、PHDの働きは低下せず、EPOの産生は増加しません。
腎障害時のEPO産生調節
  
腎機能が低下した状態では、何らかの理由で赤血球数が減少してもEPO産生増加によるフィードバックが機能しないため、EPOの相対的欠乏により貧血を起こしてしまいます。
これが腎性貧血の主な原因と考えられています。
  

HIF活性化によるEPO産生促進

酸素濃度によって調節されているHIF経路ですが、HIF-PH阻害薬はPHDを直接阻害することで、酸素分圧に関係なくHIFを活性化します。
HIF-PHIの作用機序
活性化されたHIFによりEPO遺伝子の転写行われ、EPO産生を促進します。
この内因性EPOの増加作用こそがHIF-PH阻害薬が腎性貧血を改善する主たる作用になりますが、そのほかにも腎性貧血の改善に繋がる作用が期待されています。
  

HIF活性化による鉄吸収の促進

HIFは腸管での鉄吸収に関与するDMT1*13遺伝子やDcytb*14遺伝子の転写も促進します。
さらに、体内での鉄輸送を担うトランスフェリンの産生やトランスフェリン受容体の産生に関わる遺伝子の転写も促進します。
そのため、HIF-PH阻害薬によりHIFが活性化されることで体内の鉄吸収や鉄輸送が促進されます。
HIF-PHIによる鉄吸収促進
  

HIF活性化による高ヘプシジン血症の改善

腎性貧血の原因の一つに高ヘプシジン血症があります。
ヘプシジンは血清鉄濃度の恒常性を担うホルモンです。
ヘプシジンは血清鉄濃度が上昇することで肝臓から放出され様々な作用で血清鉄濃度を低下させます。
ヘプシジンの作用

  1. 肝臓からの貯蔵鉄の放出抑制
  2. 小腸上部での鉄吸収抑制
  3. マクロファージによる老化赤血球からの鉄回収抑制

腎性貧血ではEPOによる赤血球への分化が不足しているため、鉄の利用が低下し、血清鉄濃度が上昇しています。
また、慢性的な炎症(CKD)により高IL-6血症を起こしているため、IL-6によるヘプシジンの産生が促進されています。
高ヘプシジン血症
このように、高ヘプシジン血症により血清鉄濃度が低下してしまうのも腎性貧血の原因となっています。
HIF活性化によりEPOが産生、鉄利用が促進することでヘプシジンの放出が抑制されると同時に、HIF自体がヘプシジンの産生を抑制する効果もあると考えられています。
HIF-PHIによるヘプシジン産生・放出抑制
このようにHIF-PH阻害薬は高ヘプシジン血症を改善することでも腎性貧血に対する効果を発揮できると期待されています。
  

そのほか期待される効果

HIF経路は他にも様々な働きに関与していることが知られています。
HIFによる作用

  • VGEF産生増加(血管新生による組織の酸素増加)
  • 嫌気的解糖に関連する酵素の誘導(酸素不足化のエネルギー供給改善)
  • cytochrome oxidaseサブユニットの発現調節(好気的解糖の調節)

このあたりの作用もHIF-PH阻害薬の効果に影響していると言われています。
※ただし、バフセオについては審議結果報告書の中で、in vitroの試験でVEGF濃度に影響を与えなかったと記載されています。
  
EPO抵抗性貧血に対する効果
腎性貧血の中にはESA製剤に対して低反応性の、EPO抵抗性を有する腎性貧血も存在します。
ESA抵抗性については様々な理由が考えられますが、内因性EPOの増加だけでなく様々な貧血改善作用を持つHIF-PH阻害薬が効果を発揮する可能性があるため期待されています。
また、極めて稀とは言われていますが、ESA製剤では抗エリスロポエチン抗体による赤芽球癆(PRCA*15)が報告されています。
HIF-PH阻害薬であればPRCAも回避できるはずなので、それも大きなメリットとなりそうです。
  
  

バフセオ錠のDI

ここからはバフセオ錠の添付文書、インタビューフォーム、RMP、審査結果報告書から得ることのできる情報についてまとめていきたいと思います。
  

警告

血栓塞栓症に関して警告が記載されています。
RMPにも記載されていますが、バフセオを含むHIF-PH阻害薬では血栓塞栓症が最も重要なリスクになります。

1. 警告
本剤投与中に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、本剤の投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は、患者の状態を十分に観察し、血栓塞栓症が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。血栓塞栓症が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
  
インタビューフォームには下記の通り警告の理由が記載されています。

VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目
1.警告内容とその理由
(解説)
国内第II相及び第III相臨床試験では血栓塞栓症の副作用は認められなかった。しかし、本剤の作用機序から血栓塞栓症が発現する可能性が考えられること、同一の作用機序を有する類薬で血栓塞栓症に関する注意喚起が添付文書の警告の項に設定されていること等を踏まえ、本剤でも血栓塞栓症リスクについて設定した。

バフセオ錠 インタビューフォーム 田辺三菱製薬株式会社
あとで紹介する重要な基本的注意やRMP(重要な特定されたリスク)に記載されていますが、HIF-PH阻害薬ではHb値の上昇に伴い血液粘稠度が増すことで血栓塞栓症が発現する恐れがあるため、定期にHbを測定して投与量を調節する必要があります。
バフセオ錠については国内第II相及び第III相臨床試験では血栓塞栓症の副作用は認められていませんでしたが、他のHIF-PH阻害薬と同様に警告が記載されています。
同様の機序で血栓塞栓症のリスクが知られているESA製剤では警告記載はありませんが、HIF-PH阻害薬には警告が記載されています。
これはHIF-PH阻害薬は経口投与であるため、(1年後には)長期投与となり、Hb測定が疎かになった結果、血栓塞栓症が発生することがないように注意が必要なためではないかと考えます。
また、注射剤に抵抗があり治療を躊躇っていた境界域の患者さんでも使用可能になるケースが多く、使用する患者さんが多くなる可能性が高いことも警告記載の理由かもしれません。
  

効能・効果:腎性貧血(保存期・透析期に関わらず使用可能)

バフセオ錠の効能・効果は「腎性貧血」です。
バフセオ錠は腎性貧血であれば透析期・保存期の区別なく使用可能です。
(用法・用量については透析の有無などで分かれているので後で解説します)
HIF-PH阻害薬として最初に承認されたエベレンゾ錠が透析期の適応しか取得していなかったので、保存期(CKD)に使用できるというのが大きなメリットになります。
なお、同時に承認されたダーブロック錠も透析期・保存期に関わらず使用可能です。
簡単な表にまとめてみます。
各HIF-PH阻害薬の適応
医薬品名 腎性貧血
保存期 透析期
エベレンゾ錠
(ロキサデュスタット)
×
バフセオ錠
(バダデュスタット)
ダーブロック錠
(ダプロデュスタット)
エナロイ錠
(エナロデュスタット)
  

腎性貧血治療開始の目安

効能・効果には以下の注意書きが加えられています。

5. 効能又は効果に関連する注意
赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合の本剤投与開始の目安は、保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とする。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
腎性貧血の説明で紹介したJSDT腎性貧血ガイドライン2015の治療開始基準に従って投与を開始します。
腎性貧血の治療開始の目安(JSDT腎性貧血ガイドライン2015)
状態 治療開始のHb値 目標Hb値
ND(保存期CKD) 11g/dL未満 11g/dL以上13g/dL未満
PD(腹膜透析)
HD(血液透析) 10g/dL未満 10g/dL以上12g/dL未満
  

用法・用量(保存期・透析期、ESA治療の有無で開始用量が変化)

6. 用法及び用量
通常、成人にはバダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまでとする。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
用法・用量は保存期か透析期か、ESA製剤治療中か未治療かで3つにわけて記載されていますが、用法・用量で整理すると2パターンです。
他のHIF-PH阻害薬とあわせて用法・用量を表にまとめてみます。
各HIF-PH阻害薬の用法・用量
適応 バフセオ ダーブロック エベレンゾ



病期 ESA 初期 最高 初期 最高 初期 最高




300mg
(連日)
600mg
(連日)
2mg
4mg
(連日)
24mg
(連日)
-

4mg
(連日)
24mg
(連日)




50mg
(週3回)
3.0mg/kg
(週3回)

70mg
100mg
(週3回)
3.0mg/kg
(週3回)

エベレンゾは適応が異なるのでひとまず置いておいて、バフセオは用法・用量がシンプル!

ダーブロックは状態に応じて細かい調節が可能なのがメリットになるのかな?

血栓塞栓症のリスクを考えると用量調節がメリットになるんじゃないかと思うけど、それは今後広く使用されることで検証されていくだろうね。

  

増量・減量に関する注意点

増量・減量の段階について以下のように記載されています。

7. 用法及び用量に関連する注意

  • 7.1 増量する場合は、増量幅は150mgとし、増量の間隔は4週間以上とすること。
  • 7.2 休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開すること。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
段階的な増量を守る必要があるのはHb濃度の急激な上昇(4週以内に2.0g/dL超)を防ぐためですね。
  
また、重要な基本的注意には以下の通り、用量に関する注意が記載されています。

8. 重要な基本的注意

  • 8.1 本剤投与開始後は、ヘモグロビン濃度が目標範囲で安定するまでは、2週に1回程度ヘモグロビン濃度を確認すること。
  • 8.2 本剤投与中は、ヘモグロビン濃度等を4週に1回程度確認し、必要以上の造血作用があらわれないように十分注意すること。赤血球造血刺激因子製剤の臨床試験においてヘモグロビンの目標値を高く設定した場合に、死亡、心血管系障害及び脳卒中の発現頻度が高くなったとの報告がある。
  • 8.3 ヘモグロビン濃度が4週以内に2.0g/dLを超える等、急激に上昇した場合は速やかに減量または休薬する等、適切な処置を行うこと。
  • 8.4 血液透析患者において、赤血球造血刺激因子製剤から本剤への切替え後にヘモグロビン濃度が低下する傾向が認められていることから、切替え後のヘモグロビン濃度の低下に注意すること。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
Hb値の目標は以下の通りです。
保存期CKD、PD:11g/dL以上13g/dL未満(重篤なCVD合併:12g/dL未満)
HD:10g/dL以上12g/dL未満
この数値を目標に安定するまでは2週間ごとに検査、安定後は4週間ごとに検査する必要があります。
  

患者背景に関わる注意点

合併症など患者の状態による注意点をまとめます。
  

鉄剤投与の必要性

8. 重要な基本的注意

  • 8.7 造血には鉄が必要であることから、鉄欠乏時には鉄剤の投与を行うこと。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
腎性貧血の治療方法についての部分でも解説しましたが、鉄欠乏により貧血が起きている場合には鉄剤の投与が必要となります。
JSDT腎性貧血ガイドライン2015に記載されている鉄欠乏についての基準を表にまとめておきます。
腎性貧血における鉄の投与基準(JSDT腎性貧血ガイドライン2015)
血清フェリチン値 TSAT その他
ESA投与前 50ng/mL未満 - -
ESA投与中 100ng/mL未満 20%未満 -
100ng/mL未満 - 鉄利用率を低下させる
病態が認められない
- 20%未満
※血清フェリチン値が300ng/mL 以上となる鉄補充療法は推奨しない。
  
HIF-PH阻害薬投与中の鉄欠乏については、ESA投与中と同様に「フェリチン<100ng/mLまたはTSAT<20%」で判断するべきと考えます。
ただし、バフセオ錠は経口鉄剤との相互作用によりAUCが低下するため、鉄剤併用の際には注意が必要です。(相互作用の部分に詳しくまとめます)
  

血栓塞栓症の既往がある患者

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

  • 9.1 合併症・既往歴等のある患者
  • 9.1.1 脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の患者、又はそれらの既往歴のある患者
    本剤投与により血栓塞栓症を増悪あるいは誘発するおそれがある。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
警告にも記載されていたように、造血作用を持つHIF-PH阻害薬(ESA製剤も)では血栓症のリスク増加が知られています。
そのため、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等については既往を含めて注意が必要となります。
  

高血圧を合併する患者

8. 重要な基本的注意

  • 8.6 本剤投与により血圧が上昇するおそれがあるので、血圧の推移に十分注意しながら投与すること。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

  • 9.1 合併症・既往歴等のある患者
  • 9.1.2 高血圧症を合併する患者
    血圧上昇があらわれるおそれがある。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
これも、造血作用を持つHIF-PH阻害薬(ESA製剤も)のリスクです。
同じように、過度もしくは急激な造血作用により高血圧が発症、憎悪することが知られています。
そのため、高血圧を合併している場合は注意が必要です。
  

血管新生によるリスク

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

  • 9.1 合併症・既往歴等のある患者
  • 9.1.3 悪性腫瘍を合併する患者
    本剤の血管新生促進作用により悪性腫瘍を増悪させるおそれがある。
  • 9.1.4 増殖糖尿病網膜症、黄斑浮腫、滲出性加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症等を合併する患者
    本剤の血管新生促進作用により網膜出血があらわれるおそれがある。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
作用機序の部分で少し触れましたがHIFの活性化はEGFRを増加させ、血管新生を促進します。
バフセオ錠については審議結果報告書を見る限り、EGFRの産生を促進させる作用は強くはないかと思いますが、作用機序的に悪性腫瘍や黄斑変性など血管新生が関与する疾患を悪化させてしまう可能性は否定できません。
  

肝機能障害・腎機能障害の影響はなし

バフセオ錠の投与により肝機能障害が現れるおそれはありますが、正常肝機能者と中等度肝機能障害患者とで薬物動態パラメータに明確な差はありませんでした。
腎機能障害患者についても影響はほとんどありません。
  

妊婦・授乳婦・小児に関する注意

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

  • 9.5 妊婦
    妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)において本剤又はその代謝物の胎盤通過性が認められている。ラットにおいて本剤の最大臨床用量の1.7倍の曝露量で、母動物の体重増加抑制及び摂餌量の低値に伴う胎児体重の低値及び骨化不全が認められている。
  • 9.6 授乳婦
    授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)において、本剤又はその代謝物が乳汁中へ移行することが認められている。また、ラットの母動物において本剤の最大臨床用量の1.2倍の曝露量で、出生時から離乳後初期まで出生児体重の有意な低値が認められている。
  • 9.7 小児等
    小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

    バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社

ラットのデータですが、妊娠中の投与により母動物の体重増加抑制及び摂餌量の低値に伴う胎児体重の低値及び骨化不全、授乳中の投与により出生時から離乳後初期まで出生児体重の有意な低値が認められています。
ただし、妊婦・授乳婦に関しては禁忌には設定されていないので、注意は必要ですが使用する可能性はあるということになります。
小児については適応外になりますね。
  

相互作用:注意すべき医薬品が複数存在

バフセオ錠には併用禁忌はありませんが、使用する機会の多い薬剤が併用注意に記載されています。

10. 相互作用
バダデュスタットは主としてグルクロン酸抱合代謝を受ける。バダデュスタットは、OAT1及びOAT3の基質であり、BCRP及びOAT3に対して阻害作用を有する。また、バダデュスタットの代謝物O-グルクロン酸抱合体は、OAT3の基質であり、OAT3に対して阻害作用を有する。
10.2 併用注意(併用に注意すること)

  • 多価陽イオンを含有する経口薬剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等を含む製剤)
  • プロベネシド
  • BCRPの基質となる薬剤
    • ロスバスタチン
    • シンバスタチン
    • アトルバスタチン
    • サラゾスルファピリジン 等
  • OAT3の基質となる薬剤
    • フロセミド
    • メトトレキサート 等

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
  

多価陽イオンを含有する経口薬剤による影響

10. 相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)

  • 薬剤名等:多価陽イオンを含有する経口薬剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等を含む製剤)
  • 臨床症状・措置方法:本剤と併用した場合、本剤の作用が減弱するおそれがあるため、併用する場合は、本剤の服用前後2時間以上あけて投与すること。
  • 機序・危険因子:本剤を鉄含有剤と同時投与したところ、本剤のCmax及びAUC0-∞が低下した。本剤とこれらの薬剤がキレートを形成し、本剤の吸収を抑制すると考えられている。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
鉄剤投与の必要性についての部分でまとめましたが、バフセオ錠を服用中に鉄欠乏が認められる場合は鉄製剤の併用が必要となります。
また、CKDが進行し高リン血症が認められる場合にはリンの吸収抑制のために鉄製剤を服用します。
間隔を2時間以上開けるということですが、リンの消化管吸収を抑制する鉄製剤はいずれも1日3回(リオナ:食直後、ピートル:食直前)の服用が必要なので容易ではありません。
どの程度の影響があるかを表にまとめました。
バダデュスタットの薬物動態に及ぼす経口鉄剤及び鉄含有リン吸着剤の影響
併用薬 鉄含有量 バフセオ用量 薬物動態パラメータ
幾何平均値の比
(併用/単独)
Cmax AUC0-∞
クエン酸第一鉄ナトリウム製剤
(フェロミア錠50mg)
200mg 150mg 48.66% 44.79%
硫酸鉄徐放錠
(フェロ・グラデュメット錠105mg)
210mg 150mg 8.09% 10.31%
クエン酸第二鉄水和物錠
(リオナ錠250mg)
2000mg 150mg 36.25% 31.10%
スクロオキシ水酸化鉄チュアブル錠
(ピートルチュアブル錠500mg)
1000mg 150mg 57.95% 45.99%
※クエン酸第二鉄としての投与量
※バフセオ錠 インタビューフォーム 田辺三菱製薬株式会社「VII.薬物動態に関する項目 1.血中濃度の推移 (4)食事・併用薬の影響」
いずれの経口鉄剤の併用でもAUCが半分以下に低下しています。
実際に併用する場合の用量により変化はあるでしょうが大きく低下させることは間違いないと思います。

フェロ・グラデュメットの影響は特にすごいね!

経口鉄製剤との相互作用がバフセオ錠の最大の欠点かも・・・。

  
鉄製剤以外の金属イオン(多価陽イオンを含有する経口薬剤)の影響はどうでしょうか?

VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目
7.相互作用
(2)併用注意とその理由:
(解説)
1)多価陽イオンを含有する経口薬剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム等を含む製剤)
薬物相互作用試験において、経口鉄含有製剤との併用により、本剤の吸収が妨げられるとの報告がある。また、国内第III相試験結果において、経口鉄含有製剤を本剤と2時間以上間隔をあけて投与した結果、本剤の有効性の減弱は認められなかったことから設定した。また、鉄以外の多価陽イオン(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等)を含有する経口製剤においても本剤の吸収が妨げられる可能性は否定できないため、経口鉄含有製剤と同様に設定した。

具体的なデータはないが2時間以上開ける方が望ましいようですね。

酸化マグネシウムなど服用している人も多いと思うので厄介だな・・・。

  

BCRPの基質となる薬剤

バフセオ錠は薬剤排出トランスポーターの1つである乳がん耐性たん白質(BCRP*16)を阻害するため、BCRPの基質となる薬剤の作用を増強する可能性があります。

10. 相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)

  • 薬剤名等:BCRPの基質となる薬剤
    • ロスバスタチン
    • シンバスタチン
    • アトルバスタチン
    • サラゾスルファピリジン 等
  • 臨床症状・措置方法:本剤と併用した場合、これらの薬剤の作用が増強するおそれがあるため、 併用する場合は、患者の状態を慎重に観察すること。
  • 機序・危険因子:本剤をこれらの薬剤と併用したところ、これらの薬剤のCmax及びAUC0-∞が上昇した。本剤のBCRP阻害作用により、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇するおそれがある。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
バダデュスタットの薬物動態に及ぼす経口鉄剤及び鉄含有リン吸着剤の影響
併用薬 併用薬 バフセオ用量 薬物動態パラメータ
幾何平均値の比
(併用/単独)
Cmax AUC0-∞
ロスバスタチン
(クレストール)
20mg 600mg 274.80% 246.86%
シンバスタチン
(リポバス)
40mg 600mg 123.15%
(291.84%)※1
194.56%
(246.21%)※1
アトルバスタチン
(リピトール)
40mg 600mg 100.45%
(91.20%)※2
(230.48%)※3
142.05%
(112.01%)※2
(167.57%)※3
サラゾスルファピリジン
(ピートルチュアブル錠500mg)
500mg 600mg 275.32%
(84.81%)※4
(98.53%)※5
457.87%
(119.13%)※4
(139.10%)※5
※1:b-ヒドロキシシンバスタチンアシッド体(活性代謝物)
※2:o-ヒドロキシアトルバスタチン
※3:p-ヒドロキシアトルバスタチン
※4:スルファピリジン(活性代謝物)
※5:メサラミン(活性代謝物)
バフセオ錠 インタビューフォーム 田辺三菱製薬株式会社「VII.薬物動態に関する項目 1.血中濃度の推移 (4)食事・併用薬の影響」

どの薬剤もそれなりに影響が大きいので注意が必要ですね。

  

プロベネシド

バフセオ錠は有機アニオントランスポーター(OAT*171およびOAT3)の基質であため、OAT1/OAT3を阻害するプロベネシドと併用することで作用が増強するおそれがあります。

10. 相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)

  • 薬剤名等:プロベネシド
  • 臨床症状・措置方法:本剤と併用した場合、本剤の作用が増強するおそれが あるため、併用する場合は、本剤の減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。
  • 機序・危険因子:本剤をプロベネシドと併用したところ、本剤の未変化体及び代謝物O-グルクロン酸抱合体の AUC0-∞が上昇した。プロベネシドのOAT1及びOAT3阻害作用により、 本剤の血漿中濃度が上昇する。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
プロベネシシド500mgとバダデュスタット300mgを併用することで、バダデュスタットのCmaxは102.79%、AUC0-∞は182.13%になり、バダデュスタットのO-グルクロン酸抱合体のCmaxは110.38%、AUC0-∞は226.39%と上昇します。
  

OAT3の基質となる薬剤

バフセオ錠はOAT3を阻害するため、OAT3の基質となる薬剤の作用を増強する可能性があります。

10. 相互作用
10.2 併用注意(併用に注意すること)

  • 薬剤名等:
  • 臨床症状・措置方法:本剤と併用した場合、これらの薬剤の作用を増強するおそれがあるため、 併用する場合は、患者の状態を慎重に観察すること。
  • 機序・危険因子:本剤をフロセミドと併用したところ、フロセミドのCmax及びAUC0-∞が上昇した。本剤のOAT3阻害作用により、これらの薬剤の血漿中濃度が上昇するおそれがある。

バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
フロセミド40mgとバダデュスタット600mgを併用することで、フロセミドのCmaxは171.25%、AUC0-∞は209.21%と上昇します。
  

副作用は非常に少ないが・・・

副作用は非常に少なくシンプルに記載されています。

11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
11.1.1 血栓塞栓症(4.2%)
脳梗塞(0.4%)、シャント閉塞(1.0%)等の血栓塞栓症があらわれることがある。
注)有害事象に基づく発現頻度。国内臨床試験において副作用は認められていない。
11.1.2 肝機能障害(頻度不明)
AST、ALT、総ビリルビンの上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。

ダーブロック錠 添付文書 グラクソ・スミスクライン株式会社
やはり問題になるのは血栓塞栓症でしょうね。
HDの場合はシャント閉塞も起こします。
バフセオの臨床試験では認められていないようですが、薬剤の性質上、避けることができない問題と思います。
起こさないためにはHb値を定期的に検査し、高値にならないように、急激に上昇させないように用量の調節を行うことが大切になります。
肝機能障害はバフセオ錠固有の副作用ですね。
  

RMPに記載されている注意点

安全性検討事項(RMP)

  • 重要な特定されたリスク
    • 肝機能障害
    • 血栓塞栓症
    • 高血圧
  • 重要な潜在的リスク
    • 心血管系事象(血栓塞栓症を除く)
    • 悪性腫瘍
    • 網膜血腫
    • 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者における病態の進行

  

肝機能障害(重要な特定されたリスク)

2020年2月18日時点の国内・海外臨床試験の集計において、因果関係が否定できない肝機能障害がバフセオ投与群で約4500名中27名(31件)、ダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)製剤で2名に認められています。
国内第2相/第3相臨床試験(保存期及び透析期の慢性腎臓病患者)ではバフセオ群とダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)製剤群との肝機能障害の発生頻度に大きな差は見られませんでした。
ですが、海外臨床試験で報告されている因果関係が否定できない肝機能障害の多くは重篤として報告されている症例でHy’s lawに該当する症例やrechallenge陽性の症例を含むことため、肝機能障害に関する事象は注意を要するものと判断され、「重要な特定されたリスク」に設定されています。
Hy's Law(Hyの法則)

Hy Zimmermanにより提唱された法則で、臨床試験で以下の3項目を満たす患者が1例以上認められた場合、被験薬が重篤な肝障害を起こす可能性があることを示す。
Hy's Lawの3要素

  • AST 又は ALT が基準値上限の3倍以上に増加。
  • 総ビリルビンが基準値上限の2倍以上に増加し、ALP 増加を伴わない。
  • アミノトランスフェラーゼ及び総ビリルビンがともに増加する原因が他に認められない。
    (例:A型、B型又はC型肝炎、急性肝疾患、肝障害の原因となる他の薬剤を併用した等の理由が見当たらない)

アレセンサカプセル インタビューフォーム 中外製薬株式会社

rechallenge陽性


再投与(rechallenge)後も同様の副作用が再発すること。
リチャレンジによる情報は因果関係の強いエビデンスを与えるが、通常、リチャレンジ情報が得られる機会は限られている。

  

血栓塞栓症(重要な特定されたリスク)

バフセオ錠の効果が過剰に発現された場合、過度の赤血球生成による血液粘稠度の上昇が起こり、血栓症とそれに伴う組織虚血を起こしてしまう可能性があります。
そのため血栓塞栓症は「重要な特定されたリスク」に設定され、添付文書の「警告」にも記載されています。
HIF-PH阻害薬(ESA製剤)の副作用として最も特徴的なものになります。
ただし、バフセオ錠において国内第3相臨床試験の安全性評価(〜52週)では因果関係は否定されています。
国内第III相試験での血栓塞栓症関連事象発現頻度
試験対象 薬剤 血栓塞栓症の発現割合 重篤な事象の発現割合
保存期CKD バフセオ群 0.7%(1/151名) なし
ダルベポエチンアルファ群 3.9%(6/153名) 1.3%(2/153名)
血液透析期 バフセオ群 7.4%(12/162名) 4.9%(8/162名)
ダルベポエチンアルファ群 8.7%(14/161名) 6.2%(10/161名)
※因果関係が否定できない症例は存在せず
  

高血圧(重要な特定されたリスク)

腎性貧血に対してESAを投与した場合にコントロール不良の高血圧が発現するリスクが知られており、高血圧性脳症や痙攣発作の報告もあります。
また、腎性貧血の改善に伴い高血圧が発生することが知られており、「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン 2015 年版(日本透析医 学会編)」において、貧血改善により組織中低酸素濃度も是正され、拡張していた末梢血管が収縮すること、また 血液粘稠度が亢進すること等により、末梢血管抵抗が増加することに起因すると説明されています。
バフセオ錠の臨床試験で報告された高血圧関連の有害事象の発現頻度がESA群と同程度だったことと合わせて高血圧は「重要な特定されたリスク」に設定されています。
国内第III相試験での高血圧関連事象発現頻度
薬剤 高血圧発現割合
保存期CKD 血液透析期
バフセオ群 0.7%(1/151名) 1.2%(2/162名)
ダルベポエチンアルファ群 1.3%(2/153名) なし
  

心血管系事象(血栓塞栓症を除く)(重要な潜在的リスク)

腎性貧血患者にESA製剤を投与した際、特に高い目標Hb値、2週間に1g/dLを超えるHb値の上昇及び高用量のESA投与が死亡及び重篤な心血管系事象の発現リスクの増加と関連することが知られています。
バフセオ錠の臨床試験で報告された心血管系関連の有害事象の発現頻度がESA群と同程度であったため「重要な特定されたリスク」に設定されています。
国内第III相試験での高血圧関連事象発現頻度
試験対象 薬剤 心血管イベント関連事象 重篤なもの
保存期CKD バフセオ群 2.0%(3/151名) 2.0%(3/151名)
ダルベポエチンアルファ群 2.6%(4/153名) なし
血液透析期 バフセオ群 6.2%(9/162名) 4.9%(8/162名)
ダルベポエチンアルファ群 8.7%(14/161名) 6.2%(10/161名)
  

悪性腫瘍(重要な潜在的リスク)

国内第III相試験において悪性腫瘍の副作用は報告されていません。
ですが、バフセオ錠の血管新生亢進作用を考慮して「重要な潜在的リスク」に設定されています。
  

網膜血腫(重要な潜在的リスク)

バフセオ錠による網膜出血への影響は明確ではありませんが、悪性腫瘍と同様に血管新生亢進作用を考慮して「重要な潜在的リスク」に設定されています。
  

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者における病態の進行(重要な潜在的リスク)

国内第III相試験において常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD*18)の進行への影響を示唆する有害事象は認めらていません。
ですが、バフセオ錠の作用機序からADPKDの進行リスクが想定されているため、「重要な特定されたリスク」に設定されています。
ADPKDとは?

常染色体優性多発性嚢胞腎
遺伝性の疾患で、PKD1もしくはPKD2の変異を原因とします。
両側の腎臓に嚢胞ができ、年齢とともにその数が増えていく疾患です。
嚢胞の増加、肥大に伴い、腎機能が低下していき様々な症状を引き起こします。
多発性嚢胞腎は難病に指定されており、ADPKDの他にARPKD*19(常染色体劣性多発性嚢胞腎)が存在します。

  
  

まとめ

バフセオ錠の特徴をまとめます。
まずはHIF-PH阻害薬としての特徴と注意点です。
HIF-PH阻害薬の特徴

  • 経口投与で腎性貧血に効果を発揮
    • 内因性EPO増加
    • 鉄吸収促進
    • 高ヘプシジン血症の改善効果
  • ESA抵抗性(EPO抵抗性)貧血に対しても効果?
  • 急激なHb上昇や高Hb値での血栓塞栓症に注意
  • 貧血改善による高血圧に注意

HIF-PH阻害薬の注意点

  • 増量間隔は4週間以上
  • 定期的な検査が必要
    • 用量調節期:2週間ごと
    • 目標Hb濃度達成後:4週間ごと
  • Hb濃度高値や急上昇は血栓塞栓症や高血圧のリスク
    • 急激なHb濃度上昇:4週間以内に2.0g/dL超の上昇)
    • Hb濃度は13g/dL未満(HD:12g/dL未満)

  
つづいてバフセオ錠の特徴をまとめます。
バフセオ錠の注意点

  • シンプルな用法・用量
    • 1日1回 300mg(最大600mg)
  • 肝機能障害の副作用あり
  • 鉄剤(そのほか多価陽イオン含有製剤)併用時は投与間隔を2時間以上あける

  

HIF-PH阻害薬の比較

2020.10.4時点の情報でHIF-PH阻害薬を比較してみます。
HIF-PH阻害薬の比較
薬剤名 エベレンゾ ダーブロック バフセオ エナロイ
適応 透析施行中の腎性貧血 腎性貧血
禁忌 過敏症
妊婦
過敏症 過敏症
妊婦
用法 週3回 1日1回 1日1回 食前
または就寝前
用量
  • ESA製剤未治療
    :50mg開始
  • ESAから切替
    :70mgまたは100mg開始
いずれも最高投与量は3.0mg/kg
  • 保存期 ESA製剤未治療
    • Hb<9.0g/dL:4mg開始
    • Hb≧9.0g/dL:2mg開始
  • 保存期 ESAから切替
    :4mg開始
  • 透析期:4mg開始
いずれも最高投与量は24mg
300mg
(最大600mg)
  • 保存期・腹膜透析:2mg開始
  • 血液透析:4mg開始
いずれも最高投与量は8mg
相互作用
  • リン結合性ポリマー
  • 多価陽イオン含有薬剤
  • HMG-CoA還元酵素阻害剤
  • プロベネシド
  • CYP2C8阻害剤
    • クロピドグレル
    • トリメトプリム
  • リファンピシン
  • 多価陽イオン含有薬剤
  • プロベネシド
  • BCRPの基質
  • OAT3の基質
  • リン吸着薬
  • 多価陽イオン含有薬剤
主な副作用
  • 血栓塞栓症
  • 嘔吐、悪心
  • 便秘、下痢
  • リパーゼ増加
  • 血栓塞栓症
  • 血栓塞栓症
  • 肝機能障害
  • 高血圧
  • 下痢、悪心
  • 血栓塞栓症
  • 高血圧
  

HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation

2020年9月29日付で日本腎臓学会から「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」が公開されました。
日本腎臓学会 HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation 2020年9月29日版

  1. HIF-PH 阻害薬総論
  2. 治療に関する推奨
  3. 注意点

の3つにわけて記載されています。
このうち、推奨の部分について簡単にまとめてみます。

HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation

  1. どのような患者に使用することが望ましいか(ESAからの切り替えも含め)
    • ESAとHIF-PH阻害薬の選択は、個々の患者の状態や嗜好、通院頻度、ポリファーマシーや服薬アドヒアランス等に応じて、医師が判断
    • HIF-PH阻害薬を使用する際は、事前に悪性腫瘍、網膜病変の検査を行い、合併がないか、適切な治療がなされているかを確認した上で開始
    • 虚血性心疾患、 脳血管障害や末梢血管病のある患者については、そのリスクを評価した上で適応の可否を慎重に判断
    • ESA抵抗性の原因が不明もしくは対応が困難な場合(鉄利用障害など)には、HIF-PH阻害薬への変更を考慮
    • 高用量のESAからの切り替え直後にHb値の低下が認められることがあり、 Hb値の推移を十分に観察してHIF-PH阻害薬の用量を調節するべき
    • ESAとHIF-PH阻害薬の併用は想定されておらず、行うべきではない
  2. 鉄補充をどうすることが望ましいか
    • フェリチン<100ng/mLまたはTSAT<20%をHIF-PH阻害薬使用中の鉄補充のカットオフに設定することが妥当
    • 目標ヘモグロビンに到達しない場合、HIF-PH阻害薬の増量よりも鉄欠乏状体を評価した上で鉄補充を優先
    • HIF-PH 阻害薬開始時に急激に造血が亢進することで、TSATやフェリチンが 著しく低下する症例があるため、薬剤開始 1 か月後には、再度これらのマーカーを評価し、鉄欠乏があれば鉄を補充
    • HIF-PH阻害薬投与中は、消化管からの鉄の吸収が改善するために経口鉄の効果が従来よりも期待できる
    • クエン酸第二鉄やスクロオキシ水酸化鉄などの鉄含有リン吸着薬によっても鉄が補充されることを考慮

  

所感

個人的に考えたところをまとめます。
  

保存期CKDに使用できるHIF-PH阻害薬が登場したことの意義

これまで腎性貧血の治療にはESA製剤の投与のため注射が必要でした。
透析期の場合は透析時にESA投与を行うことができますが、保存期CKDや腹膜透析では注射を行う必要があります。
それが嫌でなかなか治療を開始できない患者さんもいますし、定期的な注射が苦痛でQOL低下に繋がっている患者さんもいます。
保存期CKDに使用可能なHIF-PH阻害薬(ダーブロック、バフセオ)は患者さんにとって大きな選択肢になります。
また、ESA投与でなかなか症状が改善しないESA抵抗性の腎性貧血に対してHIF-PH阻害薬が効果を発揮する可能性があります。
そのためESA抵抗性の腎性貧血の患者さんにとってHIF-PH阻害薬は期待される薬剤です。
経口投与が可能な薬剤ということで投与しやすくなる一方、腎性貧血はHb濃度の管理に注意が必要な疾患です。
急激なHb濃度上昇や高値になることを防ぎつつ治療を行なっていく必要があるため、ESA投与と同じく定期的にHb濃度を測定して管理を行なっていく必要があります。
ESA製剤は薬局で調剤する機会はありませんでしたが、HIF-PH阻害薬の登場により薬局も腎性貧血に深く関わっていくことになります。
しっかりと対応できるように勉強しておきたいですね。
  

バフセオの特徴(ダーブロックと比較)

HIF-PH阻害薬としてのバフセオ錠の特徴は大きく3つあると思います。

  1. シンプルな投与量
  2. 肝機能障害
  3. 臨床で出会う機会の多い相互作用

  

シンプルな投与量
バフセオ錠の投与量はとてもシンプルです。
透析の有無・種類・Hb値に関わらず300mg開始で最大600mg、減量時の用量は150mgとなっています。
用量としては原則150mg、300mg、450mg、600mgの4段階になります。
ダーブロックは8段階、エナロイは5段階(エナロイは空腹時投与)で病態によって開始用量も異なるのでバフセオが一番単純です。
用量の微調整ができないと考えるべきなのか最大投与量が他より低くなっているのか、実臨床においてどちらに当てはまるのかは比較されていないのでわかりませんが、問題がないのであれば用法・用量はシンプルであるに越したことはないですよね。
バフセオ錠300mgは発売と同時に出荷調整に入りましたが、想定を上回る需要があったためとのこと。
シンプルな投与量が評価に繋がった証拠ですね。
  
肝機能障害と副作用
バフセオ特有の副作用として肝機能障害があります。(HIF-PH阻害薬由来のものではなくバダデュスタット由来の副作用)
国内臨床試験ではESA製剤と比較して発現頻度は多くなかったようですが、国際臨床試験ではESA製剤よりも頻度が多く、重篤なものがほとんどだったようなので注意が必要です。
ちなみに、バフセオの国内臨床試験では血栓塞栓症も報告されてないし、高血圧の頻度も低くなってます。
血栓塞栓症についてはHIF-PH阻害薬の作用機序に由来する副作用であるため、この結果だけでバフセオだけ発現頻度少なくなることの証明とするには弱いとは思いますが、日本人を対象とした試験で副作用が少ないというのはある意味バフセオの特徴でもあります。
  
金属イオンとの相互作用
バフセオの最大の欠点が相互作用です。
鉄剤(鉄含有リン吸着剤を含む)併用時にAUCが50〜90%低下するため2時間以上の投与間隔が必要となっています。
鉄剤だけでなくマグネシウムやカルシウムも同様の相互作用を起こす可能性が高いため同じように2時間の投与間隔が必要となっています。
腎性貧血では鉄欠乏時に鉄剤を併用しますし、透析期になれば鉄含有リン吸着剤を併用します。
また、CKDでは酸化マグネシウムを常用している方も少なくないためこの相互作用はけっこう厄介かなぁと思います。
ダーブロックのクロピドグレルとの相互作用も気になるところですがあちらは用量の幅が広いため用量調節で対応しやすいのではないかと考えています。
  

バフセオ(バダデュスタット)の最新情報

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今後、学会や論文などで新しい報告が出ればそれが記事として公開されるはずですから定期的にチェックしたいですね!
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参考資料

  • バフセオ錠 添付文書 田辺三菱製薬株式会社
  • バフセオ錠 インタビューフォーム 田辺三菱製薬株式会社
  • バフセオ錠に係る医薬品リスク管理計画書 田辺三菱製薬株式会社
  • バフセオ錠 審議結果報告書 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課
  • 日本腎臓学会編.CKD 診療ガイド 2012,東京医学社, 2012.
  • 日本腎臓学会編.エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン 2018,東京医学社, 2018.
  • 日本透析医学会:2015年版慢性血液透析患者における腎性貧血治療のガイドライン.透析会誌49:89-158,2016.(2015 JSDT Guideline for Renal Anemia in Chronic Kidney Disease)
  • KDIGO 2012 clinical practice guideline for the evaluation and management of chronic kidney disease. Kidney Int 2013;Suppl 3:1‒150.
  • 日本透析医学会雑誌 49 巻 2 号 2016
  • Kraus A, et al. HIF-1α promotes cyst progression in a mouse model of autosomal dominant polycystic kidney disease. Kidney International. 2018;94:887-899.
  • Hofherr A, et al. HIF-1α drives cyst growth in advanced stages of autosomal dominant polycystic kidney disease. Kidney International. 2018;94:849-851.
  • Mohanram A, Zhang Z, Shahinfar S, Keane WF, Brenner BM, Toto RD. Anemia and end-stage renal disease in patients with type 2 diabetes and nephropathy. Kidney Int 2004;66:1131.(RENAAL試験)
  • Drüeke TB,Locatelli F,Clyne N,Eckardt KU,Macdougall IC,Tsakiris D,Burger HU,Scherhag ;CREATE Investigators. Normalization of hemoglobin level in patients with chronic kidney disease and anemia. N Engl J Med2006;355:2071-2084.(CREATE 研究)
  • Singh AK,Szczech L,Tang KL,Barnhart H,Sapp S,Wolfson M,Reddan D;CHOIR Investigators. Correction of anemia with epoetin alfa in chronic kidney disease. N Engl J Med 2006;355:2085- 2098.(CHOIR研究)
  • 日本腎臓学会 HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation 2020年9月29日版
  • アレセンサカプセル インタビューフォーム 中外製薬株式会社
  • エベレンゾ錠 添付文書 アステラス製薬株式会社
  • ダーブロック錠 添付文書 グラクソ・スミスクライン株式会社
  • エナロイ錠 添付文書 日本たばこ産業株式会社

*1:HIF-Prolyl Hydroxylase Inhibitor

*2:ErythroPOietin

*3:Erythropoiesis Stimulating Agent

*4:HIF-Prolyl Hydroxylase

*5:Chronic Kidney Disease

*6:End-Stage Kidney Disease

*7:CardioVascular Disease

*8:HemoDialysis

*9:Peritoneal Dialysis

*10:Non-Dialysis

*11:aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator

*12:Prolyl HyDroxylas

*13:Divalent Metal Transporter 1

*14:Duodenal cytochrome b

*15:Pure Red Cell Aplasia

*16:Breast Cancer Resistance Protein

*17:Organic Anion Transporter

*18:Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease

*19:Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease

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