(元々は平成27年1月17日に公開した記事でしたが、加筆修正を行いました)
高齢者の保険に関して後輩から質問を受けることが多いです。
たしかに慣れないうちはわかりにくいかもしれません。
特定医療費の詳しい話をまとめる前に高齢者の医療保険を中心に医療保険全般についてまとめてみようと思います。
日本における公的医療保険のまとめ
まず、日本における公的医療保険の分類について整理しておきます。
被用者保険
企業等に勤務している人を対象とした保険です。
いわゆる社保(社会保険)と呼ばれるものです。
ちなみに、制度としての社会保険が意味するのは社会保障制度の一分野で、日本の場合、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類を指しますが、今回の記事ではあくまでも社会保険診療報酬支払基金にレセプトを提出するものを指します。
- 健康保険(組合管掌健康保険):大企業に勤めている人とその家族
- 健康保険(政府管掌健康保険):中小企業に勤めている人とその家族
- 船員保険:船舶船員とその家族
- 共済保険:公務員とその家族
国民健康保険(国保)
75歳未満の自営業の人や被用者保険に所属していない人を対象とした保険です。
後期高齢者医療制度
75歳以上の人と65歳以上75歳未満で一定の条件を満たす人を対象とした保険です。
高齢者の医療保険
さて、ここからが本題です。
日本で高齢者が加入する主な保険についてまとめてみます。
65歳未満が加入する保険
ここは通常通りです。
- 被用者保険(健康保険、船員保険、共済保険):3割
- 国民健康保険:3割
65歳未満(退職後)が加入する保険
所属していた会社を退職した場合は国民健康保険以外に以下の二つが選択肢に加わります。
- 健康保険の任意継続:3割
- 退職者国保:3割
- 特例退職者医療制度:3割
任意継続
任意継続は健康保険加入者(2ヶ月以上)が退職した直後に加入可能で、2年間継続して加入することができます。
退職者国保
退職者国保は65歳未満で老齢(退職)年金を受給している人が加入可能となります。
退職者がまとめて国保に加入することで、国保の医療費負担が急激に増えることを防ぐためのもので、国保でありながら、医療費の一部を加入していた社保が負担するしくみになっています。
加入者の負担は通常の国保と変わりません。
特例退職者医療制度
特例退職者医療制度とは組合管掌健康保険に加入していた人が退職後、75歳まで加入できる制度です。
国保に変わって健康保険組合が運営しており、加入者にとっては国保や任意継続よりも保険料が安くなるメリットがあります。
65歳以上70歳未満が加入する保険
65歳以上75歳未満は前期高齢者となります。
前期高齢者のうち、一定の条件を満たす人は後期高齢者医療制度に加入することが可能です。
- 被用者保険(健康保険、船員保険、共済保険):3割
- 国民健康保険:3割
- 後期高齢者医療制度(障害認定):1割、3割(現役なみ所得者)
後期高齢者の障害認定とは、65歳以上で一定の障害を持つ人の後期高齢者医療制度に加入を認めるもので
- 障害年金(1~2級)を受けている
- 身体障害者手帳(1~3級)を持っている
- 身体障害者手帳(4級)を持っていて音声機能等の障害・下肢機能障害の一部
- 療育手帳(愛の手帳)(1~2度)を持っている
- 精神障害者保健福祉手帳(1~2級)を持っている
以上のいずれかに当てはまる人が対象となります。
加入するかどうかは自由で、途中で脱退することも可能です。
後期高齢者医療制度では、基本は自己負担1割となっていますが、現役世代なみの所得がある人については3割負担となっています。
後期高齢者医療制度において、現役並み所得者とは、市民税の課税標準額(所得)が145万円以上の所得がある人です。
※単独世帯で収入金額383万円未満、二人以上の場合はその収入金額合計520万円未満の場合は見直しあり
65歳以上70歳未満(退職後)が加入する保険
所属していた会社を退職した場合は国民健康保険・後期高齢者医療制度以外に、
- 健康保険の任意継続:3割
- 特例退職者医療制度:3割
が選択肢に加わります。
70歳以上75歳未満が加入する保険
70歳以上で後期高齢者医療制度に加入していない人には各保険者から高齢受給者証が発行されます。
高齢受給者証の発行により、現在、新規該当者の自己負担割合は原則2割となります。
すでに高齢受給者証が発行されている、誕生日が昭和19年4月1日以前の方は軽減特例措置があったため1割負担になっています。(該当者がいなくなるのは平成31年3月31日まで)
ただし、現役なみの所得を得ている方については、自己負担3割のままとなっています。
高齢受給者において、現役並み所得者とは、70歳以上の被保険者で平均的収入以上(標準報酬月額28万円以上)の所得がある人です。
※単独世帯で年収383万円、夫婦2人世帯で年収520万円未満の場合、見直しあり
- 社保+健康保険高齢受給者証:2割(1割) or 3割(現役なみ所得者)
- 国保+国保高齢受給者証:2割(1割) or 3割(現役なみ所得者)
- 後期高齢者医療制度(障害認定):1割 or 3割(現役なみ所得者)
高齢受給者証による負担割合軽減が1割から2割となったので、障害認定を持つ人が後期高齢者医療制度に加入することが増えていく気がしますね。
70歳以上75歳未満(退職時)が加入する保険
所属していた会社を退職した場合は国民健康保険・後期高齢者医療制度以外に、
- 健康保険の任意継続+健康保険高齢受給者証:2割(1割)
- 健康保険の任意継続+健康保険高齢受給者証:3割(現役なみ所得者)
- 特例退職者医療制度
が選択肢に加わります。
75歳以上が加入する保険
75歳以上の方は全員、後期高齢者医療制度に加入することになります。
- 後期高齢者医療制度:1割 or 3割(現役なみ所得者)
元々、75歳以上の人(さらに以前は70歳以上)は、
- 主保険+老人保健(法別番号:27):1割 or 3割(現役なみ所得者)
に加入していましたが、高齢者の医療費増加などから、高齢者の医療費を分割して管理することが望ましいということになり、後期高齢者医療制度に移行されました。
(障害認定についても後期高齢者と同様)
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まとめ
一番よく見られるパターンの自己負担の推移は、
3割(70歳未満)→2割(70歳以上~75歳未満:高齢受給者 一般)→1割(75歳以上:後期高齢者 一般)
でしょうか?
障害認定を受けた場合は後期高齢者医療制度を利用した方が得か?
質問を受けたので追記。
とは言っても自分のわかる範囲ですが。
保険料についてですが、他の保険では扶養家族が認められていますが、後期高齢者医療制度は本人のみなので、後期高齢者医療制度に加入した場合、家族は別の医療制度に加入し、保険料を支払うようになります。
ですので、扶養家族がいる場合、後期高齢者医療制度に加入することで世帯の保険料は増えることになります。
通常の医療保険の3割負担や高齢受給者証の2割負担に対し、後期高齢者医療制度(現役並み所得者は除く)は1割のため、保険料の増加よりも自己負担額の減少が大きければ、後期高齢者医療制度を選択した方が得ということになります。
もちろん、重度障害やその他の公費を持っていれば自己負担は0なので、わざわさわ後期高齢者医療制度を選択するメリットはなくなります。